伊藤正一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ昔黒部の山奥には山賊がいた、らしい。
話は終戦から30年代のころ。
終戦直後、廃屋同然だった三俣山荘を再建しようとする伊藤氏、が小屋には山賊が住み着いているらしい・・・
しかし手をこまねいていても埒があかない、怖々小屋に行ってみることにする。
山賊とは世間がイメージで作り出した人たちのことで、山で猟をしたり魚を捕ったりしながら暮らす人々のことだった。
小屋の再建に力を貸して貰ったり、猟の仕方を教わったりしているうちにいつしか仲間意識のようなものが芽生え、小屋での共同生活が始まる。
なにしろ彼らは山を知り尽くしているのである、力強い仲間だ。
そんな暮らしの中での怪談めいた話や、河童やかわうそなど実在が明らかではないものたちの話や、遭難にまつわる不思議な話など、小屋番ならではの興味深い話は尽きない。
日本の山の中でももっとも奥深い黒部の源流、高天原や雲ノ平を思う存分歩き、夜は三俣山荘でこの本を再読する、目下の私の目標になった。 -
Posted by ブクログ
毎年アルプスのどこかに山籠りする登山好きとしては、当然読みたい本ラストにランクインしていたのだが、とうとう今年はこの本の舞台辺りに行くことになったので、急いで読むことに…
舞台となる中心地は北アルプスの最奥地である
日本最後の秘境と言われる「雲ノ平」や黒部源流があり、長野県、岐阜県、富山県の三県の境をなす「三俣蓮華」も有名であろう
標高3000M近くの別天地
真夏に凍死するほどの強風(雨に濡れて、暴風が吹いたら気化熱でイチコロである)はもちろん、濃霧による道迷い、黒部の増水や鉄砲水など、恐ろしい場所である
(行くと決めても、やめようかと悩んでしまう場所だ)
そして、なぜ秘境かといえば、それはもうただただ2日程かけないと行けないような奥地なのだ
(今回この奥地を縦走するにあたり、5日間の行程を組んだ)
戦後昭和20年頃
著者の伊藤正一氏は三俣蓮華小屋、水晶小屋を譲り受け、山賊らの協力を得て、この辺りを発展させていった
また最短ルートの登山道を独力で完成させたり、と雲ノ平一体の魅力を多くの人に広めた功績者である
そんな北アルプスの奥地を誰よりも知る人の本が面白くないわけがない!
まず、盗難や殺害など恐ろしい噂ばかりがあった得体の知れない山賊達との出会いがある
情報量がただでさえ少ない時代、ましてや人跡未踏の奥地での話である
噂が噂を読んで真相を知る術もない中、ポケットに短剣を忍ばせ伊藤氏は山小屋にいる山賊に会いに行くのだ
本当は自分が買い取った山小屋なのに、主の如く、その山賊がいる
意外な彼の風采はポマードをつけた恰幅の良い紳士
しかし天井には拳銃、猟銃、たくさんのはいだ獣の皮や丸ごと薫製されたグロテスクな兎が吊るしてある
そこらのサスペンス以上の恐ろしさだ
どんな展開になるのか、恐ろしさと好奇心ではちきれそうになる(笑)
山賊達は、手製のワラジを1日4足履き潰し、常人が4日かかるところを1日で歩く
岩魚、熊、カモシカ、兎などの猟をし、もちろんそれらは食される
巻末には彼らの写真とプロフィールもあり、大変興味深い
こんな調子でとても読みやすく、ワクワク、ゾクゾク、ハラハラ、ドキドキ楽しめる
しかし自然の恐ろしさに関しては、残念ながら楽しいことは何一つない
現代の登山装備があってさえも、ビビってしまう場所なのだが、戦後の時代の装備を考えると確かに亡くなる人は多かったのもわかる気がする(ゴアテックスの凄さを実感)
また山を甘んじる無謀な登山者は今も昔も変わらないのは残念だ
多くの命を救ったであろう伊藤氏の話は切に染みるものがある
死と隣り合わせの登山の恐ろしさを改めてヒシヒシ感じ、身が引き締まった
そして不思議な体験…
死を誘う「オーイ」の呼び声はバケモノ、「ヤッホー」にしよう!
カッパの正体や狸の擬音の巧みさ…
摩訶不思議で恐ろしい体験話がいくつもある
でも山だから…となんか妙に納得してしまうんだな、これが…
他にも
埋蔵金の話し、物資運搬の大変さ(歩荷賃とヘリを使った輸送費は大差ない⁉︎)動物との共存(食料欲しさに山小屋をノックする熊)、黒部(黒四)ダム建設(7年の年月と990万人の人力を費し、167人の尊い犠牲者を出した)など
興味深い話が沢山ある
山の怖さも魅力も全てを知り尽くした作者の著は、登山をするしないに関わらず、興味深く、人々のDNAに響く気がする
そして所々にある写真を見ないと、とても昭和20年代の内容と感じないのも不思議なのである…
そうか、時代が移り変わっても、山の真の姿みたいなものは不変なのか…⁉︎
さて、果たして計画は立てたが行けるだろうか… -
Posted by ブクログ
名著「黒部の山賊」やっと読みました。
当時の北ア黒部(というか奥深い山々すべてが当てはまりそうですが...)が本当に奥深く、未知で情報もなく、一歩間違えれば凍死、滑落、道迷いが隣り合わせな場所であったことをしみじみと感じることができた。
ゴアテックスの登山ウェア、高機能な各装備、地図、そして整備された登山道が用意されている現代ではなかなか想像できない境地といったところだろうか...。
私が趣味の山歩きを楽しめるのも先代が開拓した道々やハイテクな装備あってなんだなあと思うと色々感慨深いものがありました。
山賊(といわれていた山人達)と伊藤さんのふれあいにはすこしほっこり、お互いリスペクトしあってたことがいくらか想像できる。伊藤さんは愉快な性格の持ち主であったことも十分感じ取れた。
カベッケが原やオカルト的な多くの逸話、こうゆうの好きです。
こういったネタがインターネットの出現により激減してしまって寂しいなあといつも思う。
そして何といってもグッと来たのが伊藤新道への熱い想い。
三俣小屋のスタッフが小屋締めで山を下りるときに今でも伊藤新道を使う話には強く心を打たれた...!
沢や藪漕ぎの技術を多少要するので誰もが簡単には歩けないが、行くしかないだろう...! -
Posted by ブクログ
これは特に登山を趣味とするような人でなくても、充分読んで楽しめる作品だ。
「高熱隧道」や「黒部の太陽」で描かれているように、厳しい自然環境に囲まれている黒部源流地域における山男たちの暮らしぶりが、素朴な飾らない文章で綴られている。
時代も昭和20~30年代が中心と、まさに前記2作品と前後して重なる。
あくまでサラリとした口調で書き記されてはいるが、現代よりも遥かに衣食住の環境が整っていない当時に、これほどタフなサヴァイヴァルをしていた著者や山賊たちの屈強さたるや、それだけでも充分憧憬の対象になり得る。
物の怪だってそりゃ出ることだろう。
嗚呼、早く私も北アルプスへ行かなくては。