あらすじ
北アルプスの最奥部・黒部原流域のフロンティアとして、長く山小屋(三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋、湯俣山荘)の経営に
携わってきた伊藤正一と、遠山富士弥、遠山林平、鬼窪善一郎、倉繁勝太郎ら「山賊」と称された仲間たちによる、
北アルプス登山黎明期、驚天動地の昔話。
また、埋蔵金伝説、山のバケモノ、山岳遭難、山小屋暮らしのあれこれなど、
幅の広い「山の話題」が盛り込まれていて、読む者をして、まるで黒部の奥地にいるような気持ちにさせてくれる
山岳名著の一書です。
1964年に実業之日本社から初版が刊行されたときは、多くの読者からの好評を得ました。
近年は、山小屋でのみ購入できたこの幻の名作が、『定本 黒部の山賊』として、
山と溪谷社から刊行されることになりました。
新規原稿も一話加え、底本未掲載の貴重な写真も盛り込んでいます。
巻末には、高桑信一氏と高橋庄太郎氏による『黒部の山賊』へのオマージュも掲載。
おもな内容
◎山賊たちとの出合い
山賊の舞台・黒部の源流/
そのころの世相/
山に山賊がいるという/
慎重にすすむ/
自分の小屋に宿料を払う/
山賊対策会議/
山賊たちの正体
◎山賊との奇妙な生活
山賊一味と暮らす/
山賊事件の真相/
山賊たちの熊狩り/
山賊と岩魚/
アルプスのキティ台風
◎埋蔵金に憑かれた男たち―別派の山賊
星勇九郎の大金鉱/
ほんとうにあるのか山中の埋蔵金
◎山のバケモノたち
道しるべになった水晶岳の白骨/
カベッケの不思議な呼び声/
バケモノに呼ばれた人たち/
人を呼ぶ白骨 /
神がくし?/
洞穴の怪/
巧みな狸の擬音/
三本指の足跡/
カッパの正体
◎山の遭難事件と登山者
薬師岳の遭難/
不思議な遭難/
疑われた同行者/
非情な同行者/
四晩つづいた遭難信号/
謎の手紙/
人事不省一週間の山上の病人
◎山小屋生活あれこれ
山ぼけ/
どうどうめぐり/
山小屋の費用/
アルプスへの空輸/
熊と登山者/
熊をならす/
山で育った犬
◎その後の山賊たち
黒四と山賊たち/
その後の山賊たち ほか、旧版未掲載原稿「遭難者のお礼参り」や、
貴重な写真も新たに加えて再編集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
雲の平山荘で、少し読んで、続きは下山してから読みました。
自分が見た景色と山賊がいた頃の様子がオーバーラップして、とても面白かったです。
山小屋が整備される前の大変な状況や、山小屋を建てる事の大変さ、山賊たちの個性豊かさ、山に潜む妖怪、
伊藤さんにしか書けない内容で、当時の困難さと豊かさが伝わってきました。
Posted by ブクログ
三俣山荘、水晶小屋、湯俣山荘、雲ノ平山荘のオーナーで伊藤新道を開削した伊藤正一氏が黒部の山賊事件を中心にまとめた雑誌記事を元に加筆したもの。
新聞で山賊と報道されたが、猟師(但し保護されているカモシカも獲っていたのは事実)のこと。
黒四ダムができる前の黒部深部の様子が語られている。
Posted by ブクログ
面白い!!これを読むと、昭和の20-30年代くらいまではまだまだかなり自由度の高い時代だったのだなと思う。装備が良くなり、登山者が気軽に山奥まで来られるようになって人が増えたこの数十年を思えば、規制は必要だと思うけれど、この頃山に生きていた人たちの生きざまが、もう、全然違って、輝やかしい。山の奥は人の世ではないから、人の理屈で説明できないこと、街では考えられない危険なども多いのだろうが、ロマンチシズムを感じずにはいられないし、今年こそ雲ノ平に行きたいなと改めて思った一冊。山を拓いた人たちにも敬意を覚える。
Posted by ブクログ
北アルプス黒部源流の三俣山荘を買い取り、黒部に人が通れる道を作ろうと奮闘する著者の実話。山での生活の中で、著者はしばしば山賊たちに遭遇する。山と生きる彼らは自然界における自分の力量をわきまえ、必要以上の恵みをとることもしない。彼ら山賊の生き方に、現代の私たちが学ぶことも多いのではないだろうか。
Posted by ブクログ
最近近場の山を登る機会があり、登山もいいなと思い読みました。山賊と聞くと物々しいですが、独語は何か爽やかな気分。山の怖さや奇妙さ美しさが伝わってきて、黒部源流に行きたくなる一冊でした。
Posted by ブクログ
自分の趣味は読書と山歩きだが、この本の存在を知らなかったことに少し恥じている。
北アルプスにも興味があって、白馬岳、槍ヶ岳など登ったこともある。今年は表銀座や日本の秘境と言われている雲の平にも行きたいと思っていたほどだ。
自分が山に行く時は登山計画に沿って行動することが多く、その土地の由来や経緯などはあまり調べてはいない。突然広がる素晴らしい景色や珍しい花々との出会いが山の楽しみであり醍醐味でもあったからだ。
そんな価値観に一石を投じたのが本書だ。山に行く時の楽しみがまた1つ増えてしまった。今度、北アルプスに行ったら「ここに山賊が居たのか」とか「オーイ」と聞こえたら「ヤッホー」って答えようを思うようにもなった。
それにしても山はおもしろい。本当におもしろい。
Posted by ブクログ
登山の厳しさ、楽しさ。そして、不思議だけど、自然とは不思議で壮大なもんだと思わせてくれる。読んで良かった! 良本です。登山好きな有人には勧めていきたいですね。
Posted by ブクログ
終戦間もないころ、北アルプスの三俣山荘を譲り受けた筆者だったが、山荘に近づけずにいた。
黒部の山奥には山賊がいて、崩れかけた三俣山荘をねぐらにしているというのだ。
実際に、漁師や登山者が山賊に襲われたと話す。
意を決して行ってみると、小屋にいたのは話の面白い紳士的な男数人だった。
これが筆者と山賊たちとの出会いだった。
終戦期から黒部の主として山小屋に居続けた伊藤正一氏の、山賊たちとの日々と、山の物の怪や動物たちとの日々をつづる。
かつての黒部を見ることはできないが、読んで想像することはできる。
そこには山賊たちの足跡が残っているはずだ。
Posted by ブクログ
黒部ダムが出来る以前の、まだ厳しい黒部山中に生きていた山の鉄人=山賊たちとの山の日々を綴った一冊。
四人の山賊の個性が際立ちすぎて創作じゃないかと思うほどですが、巻末に写真入りプロフィールありです。
すごく印象的なエピソードとしては、川ぞいを歩きながらスイスイと川魚を釣っていたというもの。生活で鍛え抜かれた名人芸とはどれほど美しいものなんだろうなと思った一節でした。
山賊たち以外には、飼い犬ジャムについて記した章が印象的。
伊藤さんがジャムを家族と言う時、ペットを家族という現代人とは全く重みが異なります(良し悪しの問題ではない)。
物理学者を目指したという伊藤さんが、ところどころで山の怪を素直に描いているのも良かったです。大袈裟でないところがリアル。
それにしても個性豊かな山男たちと渡り合って山暮らしを続けた伊藤さんもすごい。今年6月にお亡くなりになったそうです。お話を聞いた人、聞き書き集でも出してくれないかな。
Posted by ブクログ
久しぶりの山岳もの。山のノンフィクションというとほとんどが生死を彷徨うような事故や事件を扱った物といったイメージを持っていたが、この本はタイトルからして面白そう。
そう思い、手にとって読んでみると、期待通りの面白さであった。戦後の黒部に存在していた山賊の話に始まり、昭和30年代後半までの北アルプス黒部川源流付近の様子が記録されている。
「笹まくら」の主人公も、戦争忌避するなら山賊になるという生き方も、実際には可能であったのか、なんて夢想しながら読み進む。
登山から遠ざかり数十年が経ってしまったが、この本を読むと北アルプスへの登山欲が湧いてくる。
ただし山で遠くから「オーイ!」と声をかけられても「オーイ!」と返さないように気をつけること。
Posted by ブクログ
昔黒部の山奥には山賊がいた、らしい。
話は終戦から30年代のころ。
終戦直後、廃屋同然だった三俣山荘を再建しようとする伊藤氏、が小屋には山賊が住み着いているらしい・・・
しかし手をこまねいていても埒があかない、怖々小屋に行ってみることにする。
山賊とは世間がイメージで作り出した人たちのことで、山で猟をしたり魚を捕ったりしながら暮らす人々のことだった。
小屋の再建に力を貸して貰ったり、猟の仕方を教わったりしているうちにいつしか仲間意識のようなものが芽生え、小屋での共同生活が始まる。
なにしろ彼らは山を知り尽くしているのである、力強い仲間だ。
そんな暮らしの中での怪談めいた話や、河童やかわうそなど実在が明らかではないものたちの話や、遭難にまつわる不思議な話など、小屋番ならではの興味深い話は尽きない。
日本の山の中でももっとも奥深い黒部の源流、高天原や雲ノ平を思う存分歩き、夜は三俣山荘でこの本を再読する、目下の私の目標になった。
Posted by ブクログ
20150308 黒部の歴史。そのままアルプス登山の歴史のようだ。もう三十年以上前に何回か訪れた事を思い出した。機会がどんどん遠ざかる前に又行ってみるか。そんな気にさせる本。
Posted by ブクログ
山岳本の傑作。旧版も持っているけど、定本が出たということで新たに購入。
富山、長野、岐阜の県境に位置する三俣蓮華岳。戦後間もなく、その山頂直下にある三俣山荘の権利を手に入れた著者は、そこに勝手に住み着いていた「山賊」と出会ったという。。。
著者の伊藤正一氏は北アルプスの最深部に位置する三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋を建設し、伊藤新道(現在は廃道)を拓いたという、登山をする人間からみればまさに伝説の人物。そんな人の話が面白くないわけがなく、読み終えてしまうのがこれほど惜しいと思った本は他にない。
超人的な山岳サバイバル術を持つ山賊たち。佐々成政の財宝伝説とそれに翻弄される人々。遭難した者と救助する者のドラマ。そして様々な山の怪異。どんなにおとぎ話めいたエピソードでも、それが日本最後の秘境として知られる黒部源流域で起きた出来事だというなら不思議に納得できてしまう。
本書「黒部の山賊」の旧版は、実際に本の舞台となっている山小屋を訪れなければ買うことができなかった、ということになっている。僕は初めてその山域を訪れた時に、迂闊にもこの本の存在を知らなかったので、せっかくの購入のチャンスを逃してしまった。結局その後ネット通販で古書を入手したわけだが、やはりこの本はあの場所から持ち帰ることによって手に入れたかった。
数年前に、伊藤正一氏の息子さんが小屋主をされている雲ノ平山荘に泊まったが、このことは素晴らしい思い出として心に残っている。北アルプスの名峰に囲まれたそこは、まさに夢の中にあるかのような場所だった。いつかもう一度、この本を持ってあの楽園へ行き、ランタンの明かりで読書を楽しんでみたい。
Posted by ブクログ
読み物として面白いし読みやすい。
体力のない自分には憧れで終わってしまう場所だけど、いろいろ想像できて楽しかった。歴史的資料ともいえるだろう。山の美しさもだけど、怖さ・危険さも伝えられていて、背筋が伸びる思い。
Posted by ブクログ
黒部名水マラソン、黒部峡谷鉄道から、新田次郎の剱岳、吉村昭の高熱隧道と続き、伊藤正一氏の定本 黒部の山賊 アルプスの怪 に行きついた。山の魅力と神秘を伝えてくれる後世に残したい良書。いつか三俣山荘と雲の平山荘を訪れるのが夢になった。
Posted by ブクログ
山岳ノンフィクションというのは面白い本が多いものだが、中でも傑作の部類に入ると思う。戦後間もなく、まだダムも何もできる前の黒部源流に山小屋の権利を買い請け、当時あたりを縄張りにしていた「山賊」たちと一緒に20年にわたって登山者を見守り続けた著者の回顧録。
「アルプスの怪」という副題は、カベッケが原の呼び声をはじめとして様々な山の不思議が物語られることから。原始の黒部には、かつて世界を跋扈していた様々な化け物が、昭和の半ばまで生き残っていたらしい。
本屋で見かけてフラっと手に取った本なのだが、思いのほかの大当たり。
Posted by ブクログ
名著「黒部の山賊」やっと読みました。
当時の北ア黒部(というか奥深い山々すべてが当てはまりそうですが...)が本当に奥深く、未知で情報もなく、一歩間違えれば凍死、滑落、道迷いが隣り合わせな場所であったことをしみじみと感じることができた。
ゴアテックスの登山ウェア、高機能な各装備、地図、そして整備された登山道が用意されている現代ではなかなか想像できない境地といったところだろうか...。
私が趣味の山歩きを楽しめるのも先代が開拓した道々やハイテクな装備あってなんだなあと思うと色々感慨深いものがありました。
山賊(といわれていた山人達)と伊藤さんのふれあいにはすこしほっこり、お互いリスペクトしあってたことがいくらか想像できる。伊藤さんは愉快な性格の持ち主であったことも十分感じ取れた。
カベッケが原やオカルト的な多くの逸話、こうゆうの好きです。
こういったネタがインターネットの出現により激減してしまって寂しいなあといつも思う。
そして何といってもグッと来たのが伊藤新道への熱い想い。
三俣小屋のスタッフが小屋締めで山を下りるときに今でも伊藤新道を使う話には強く心を打たれた...!
沢や藪漕ぎの技術を多少要するので誰もが簡単には歩けないが、行くしかないだろう...!
Posted by ブクログ
黒部の奥地開拓時代のお話。
虚実入り乱れているような、昔の山の話。自分で歩いたエリアがほとんどなので、いろいろ想像が働いて面白かった。
山に興味ない人にはおすすめできない。
Posted by ブクログ
巻頭の地図と本文を見比べながら読みました。
歩荷が、三俣山荘構築に使う木のながーーーいのを運んでいる写真が途中にありましたが、あんなの持って歩いたら遭難しちゃうよ!!昔の人ってすごかったんだなーと感じます。
お山に行きたいなーー。以前、あの辺りには何度か登山しているけれども、その時のことを思い出し思い出し読んだ。また行きたいなー。
お山の雰囲気、空気感がピタッと伝わる、良い本でした。
Posted by ブクログ
良書。
どこまで本当の話なのか疑問だが、かつて北アルプスには凄い人々が居た。今の日本人には失われたスキルを持っていた人達。生活に密着した、必要に迫られた山での生活する技術、知恵、経験。
現代の登山は、レジャー化、スポーツ化していると思わされる。
Posted by ブクログ
これは特に登山を趣味とするような人でなくても、充分読んで楽しめる作品だ。
「高熱隧道」や「黒部の太陽」で描かれているように、厳しい自然環境に囲まれている黒部源流地域における山男たちの暮らしぶりが、素朴な飾らない文章で綴られている。
時代も昭和20~30年代が中心と、まさに前記2作品と前後して重なる。
あくまでサラリとした口調で書き記されてはいるが、現代よりも遥かに衣食住の環境が整っていない当時に、これほどタフなサヴァイヴァルをしていた著者や山賊たちの屈強さたるや、それだけでも充分憧憬の対象になり得る。
物の怪だってそりゃ出ることだろう。
嗚呼、早く私も北アルプスへ行かなくては。
Posted by ブクログ
山の恐い話が不思議。
本当にあるんだろうなあ、と思えました。
今度からやっほー、と叫びます。
ジャムがとてもかわいい。写真映り考えてそうなとこがまたかわいい。やっぱ犬は色々わかるのだなぁ。
Posted by ブクログ
少し前の時代にはこんなことがたくさんあって、登山はすっかりレジャー化してしまってるけど、こんなふうに山に溶け込んでみたい(迷いこむのも熊が出るのもオーイって声がするのも嫌だけど)不思議な話がたくさんで、わくわくしながら読んだ。
Posted by ブクログ
ノンフィクションだったんだ。最初の方はホラ話かと思って読んでいました。でも、読み進むほどにこの本の本来の姿が分かってきた感じ。山に入る人なら気にいる可能性が高い本だと思う。
それにしても、黒部の山の奥深くに巨大なダムを作る必要なんかあるのかな?167人もの犠牲者を出して作ったから、ビッグプロジェクトだとか言って建設を美談に仕上げ正当化しなきゃならなかったんだろう。いかにも電力会社や政治家、官僚がやりそうな仕業で、原発と全く同じ構図。結局、無謀な自然破壊っていうだけのことだと思う。電気なんかなければないで済むんだから。
Posted by ブクログ
黒部源流地域は、かつて全くの未開の地であった。
しかし、その山に分け入り、逞しく生きている山の男たちがいた。
時に、彼らは山奥で人を襲うとか、カモシカを密猟するなどの嫌疑をかけられ、時に山賊と呼ばれることがあった。
その山賊たちの巣窟である山にある三俣小屋を引き受け、山賊たちと交わり、そして自らも山の人となった、伊藤正一氏が記した、山賊たちと山の記録。
山小屋の主人の実際の経験や、直接山賊たちから聞いた話は、作り物ではない生々しさを持っており、かつ、冷静な記録として非常に面白い。
Posted by ブクログ
北アルプスの最奥部・黒部原流域のフロンティアとして、長く山小屋(三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋、湯俣山荘)の経営に
携わってきた伊藤正一と、遠山富士弥、遠山林平、鬼窪善一郎、倉繁勝太郎ら「山賊」と称された仲間たちによる、
北アルプス登山黎明期、驚天動地の昔話。
また、埋蔵金伝説、山のバケモノ、山岳遭難、山小屋暮らしのあれこれなど、
幅の広い「山の話題」が盛り込まれていて、読む者をして、まるで黒部の奥地にいるような気持ちにさせてくれる
山岳名著の一書です。