大平健のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
純愛ってよく言うけど?というところから疑問なのだが、あえてそれに答えていない点が精神科医ならではの書き方だなあと。実際、自分が信じる「純愛」に憧れ、それを追いかけて破滅寸前に至った人たちの症例が描かれている。なんだか、ひとくくりにはできないけど、はたから見ると、相手あってこその恋愛なのに純愛に憧れるがあまりの独りよがりにしか見えない。でも当の本人達はもうその方向しか考えられない。だから自分の思いに心が支配されて壊れそうになる。いやしかし、こんな精神科医の先生ならば直接話がしてみたい。「自分では分からない(怖い)から誰かにすがりたい、答えを出してもらいたい」心境の患者に対する精神科医の接し方に興
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Posted by ブクログ
この人の本は読みやすくて、それでもって衝撃を与えるので読んでみた。
純愛。誰もが一度は耳にしたことはあると思うし、これに憧れた人も少なくはないと思う。
この本にはそんな純愛に憧れ、突き進み、その結果心を病んだ人たちの症例が書かれている。
印象的だったのが、あとがきにあった「愛の場合においても、現に生活し恋愛をする自分と、それを見つめ、いや、それを小うるさく監督し指示するもう一つの自分とがいて、その葛藤が今風の恋愛を生むのだし、また、恋愛自体を難しくしている」という部分。
このようなことも、自由に恋愛が許される時代だからこそ起こりえることだと思った。縁談が決められていた時代においては、「純」な理 -
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いつの時代にもどんな人にも悩みはある。
多かれ少なかれ悩みはある。
本人にとっては一大事な事でも、大きな目で大きな立場から見れば、何でもない様な事もたくさんある(と思う)。
そっと、何でもないよ、大したことないよ、と優しく導いてくれる精神科医、スゴいなぁ。尊敬。
誰でも知っている物語から学んでいくのは分かりやすいし、受け入れやすい。
紹介されている中には、私の知らない昔話や童話もあり、原作もかなり違うものもあるらしいので機会があれば読んでみたい。
私にも「自分の物語」があるのかなぁ。
子どもの頃読んだ「ちっぽくんこんにちは」は忘れられないなぁ。
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Posted by ブクログ
著者は「あとがき」で、次のように述べています。「ドラマに準えて言えば、今日の“愛”というのは、主人公と監督がともに「自分」の自作自演なのだが、普通の恋愛がとかくその二人の「自分」の妥協によってすっきりしない仕上がりになるのに対して、純愛では、主演の俳優女優の都合に合わせて監督が譲歩するどころか、役者はあくまで監督の理想、つまり「純愛」の物語通りに演じさせられる」。本書は、こうした現代的な「純愛」のありようについて、著者自身の臨床体験を交えつつ論じています。
純愛の「物語」を追及する監督としての自分と、現実のなかで振る舞わなければならない役者としての自分との齟齬によって、精神に変調を来してしま -
Posted by ブクログ
精神科の症例集×童話。患者は精神科へ出向き心の悩みを吐露する。一方、医者は患者の話を聞き『赤ずきん』や『幸運なハンス』などの“童話”の一部に例えて深層心理を明解にする。
少々のこじつけ感は否めないですが、患者側は馴染み深い例えをまえに目の前の霧が晴れたように解決されているので効果的な解決法なのだと思います。謎に覆われた心療内科の世界を覗かせてくれます。
本書では“童話”を迷える患者の「例え」として示していますが、もとは幼い子には「道徳」を教え、大人には時に「訓戒」として忙しい日々に気付きを与えてくれます。“童話”はつい子供のモノと考えがちですが、常に人生に寄り添っていて、大人となっても時々立 -
Posted by ブクログ
精神科医が、いくつかの症例を紹介した本で、キーワードは「純愛」。
「理想の恋愛」や「運命の出逢い」といった言葉に
呪縛されているかのような人たちの姿が浮かび上がる。
自分に相応しい人が必ずどこかにいるはずだから、
手近で間に合わせないで積極的に探しに行こう――でも、
探したけれど見つからない……で、不具合が生じる、と。
自分には人間としてこれだけの価値があるのだから、
充分、釣り合いが取れる相手でなければ、
恋する意味がないという発想に基づいているらしい。
それはつまり他者に対して強く承認を求めるということであり、
裏返せば過剰な自己愛の現れなのではないだろうか。