大平健のレビュー一覧
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コロナの自粛期間で読んだ。そういう時でもないと、こういう難解な本を読むのは難しい。『夢判断』の原著の初版は1899年に刊行。100年以上前の名著だ。それほど昔の本なのに、訳者は「この道で最も優れた本」とまで書いている。
夢は誰もが見る身近なものだ。でも、誰もがその正体が掴めずにいる。意味不明な夢を見て、戸惑ったりする。しかし、無意味な夢は存在しないと本書にはある。無意識から湧き上がった願望が"夢の仕事"によって歪められ、夢として顕在化する。この"夢の仕事"、歪曲といったあたりがポイントだ。夢には願望が表現されるはずなのに、なぜ苦痛な夢や意味不明な夢が存 -
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著者は、聖路加国際病院精神科部長でもあります。患者の治療を目的として、童話や昔話を話します。確かに、童話や昔話は、勧善懲悪だったり、最後に愛は勝つだったり、子供を良い方向へ導くための物語です。しかし、長い間語り継がれてきたのには、それだけではない理由があるのでしょう。話す人・聞く人の心を癒すという大きな理由が。
ここでは、『ねむりひめ』『三ねんねたろう』『幸運なハンス』『食わず女房』『ぐるんぱのようちえん』『ももたろう』『赤ずきん』『うたしまたろう』『三びきのこぶた』『いっすんぼうし』『つる女房』『ジャックと豆の木』のお話が書かれています。その中で、『三びきのこぶた』が一番印象に残りました -
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童話や昔話といった物語を心療に用いる精神科医、大平健先生エッセイ。
もともとは看護師向け雑誌の「看護技術」(メジカルフレンド社)に連載されていたものから修正・加筆をおこなったもの。
物語を”面接の鏡”として、そして推理として用いることによって心療を進める様子が12編。
おおきく4章にわかれていて、それぞれの終わりにまとまった解説が加えられていて、話の解釈がさらに深められている。
ある程度抽象化された物語の中に、”自分”を見つけ出す場面が描かれていて興味深かった。
そういった”気付き”を物語によって引き出す過程がおもしろかった。
僕にぴったりの物語は何かあるだろうか・・・と考えてみるのもい -
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昔々あるところに...。子供のころ、さんざん聞かされたフレーズだ。
その昔話、童話、民話、おとぎ話が精神医療に用いられてるとしたら、意外に思うだろうか。
精神を病んだ人が医者に「あなたの病気はこうで、原因はあーです」と言われても、素直に受け入れるほどの心の余裕はないだろう。
そこで、物語療法では誰もが聞いたことのある物語を使う。
あなたの状況は、この物語にそっくりではないでしょうか。突然に物語の話を出された患者は驚き、自身の状況を物語に当てはめて納得する。
子供のころに聞いた物語が、大人にも必要な時がある。
昔々あるところに...。このフレーズが今の社会にも途絶えず子供たち