綿原芹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今回読んだ『ぬひんさまの塔』で特に面白いと感じたのは、東京のど真ん中にある都会的なタワーマンションを舞台にしながら、事件をきっかけに住人たちがどんどんおかしくなり、閉鎖的な村のような異様な空気に染まっていくところだった。主人公として描かれるのは、タワマンに住むことに憧れるバリキャリの女性と、霊能力者の男性。特に、印象に残ったのが、この霊能力者の能力の描き方だった。霊能力が単なる特別な超能力ではなく、自分の精神を整え、感覚を研ぎ澄ませることで発揮されるものとして描かれているところに妙なリアリティがあって面白かった。中でも、好きだったのが「音」による表現。人間は生きているだけで振動し、身体から音を発している。そして化け物からは、化け物特有の嫌な音が聞こえる。目に見えないものを「音」として捉えるこの表現がとても感覚的で、個人的にはかなり好みだった。また、作品全体を通して、人間同士のヒエラルキーや格差も描かれていたように思う。タワマンの高層階と低層階という分かりやすい格差だけではなく、人が集まれば自然と生まれてしまう優劣や比較、他人より上に立ちたいという感情など、人間の嫌な部分がじわじわと見えてくる。そうした描写を読んでいるうちに、「幸せって何なんだろう」と少し考えさせられた。主人公の女性はタワマンに住むことに憧れているけれど、自分はその気持ちにあまり共感できない。どちらかというと、少し田舎で庭があって、余裕を持って暮らせるような場所のほうに魅力を感じる。だからこそ、事件が起きてタワマンがおかしくなっていく場面では、「そんなに危険なら出ていけばいいのに」と最初は思った。ただ、よく考えてみれば、自分だって今持っているものや自分の居場所に執着することはある。実際に自分が同じ状況になったとしたら、今まで手に入れてきたものを簡単に捨てて逃げられるとは限らない。そう考えると、この作品は単に怪異が起こるホラーというだけではなくて、人は何を幸せだと思うのか、何を手に入れようとするのか、そして手に入れたものをどこまで手放せるのかということまで考えさせられる作品だった。
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Posted by ブクログ
タワーマンションの闇を、怪異とヒトコワの両方から攻めてくる一冊。
都会のタワマンなのに、因習村と何も変わらない閉鎖的な小さな世界。
古くからこの敷地に祀られていた「ぬひんさま」信仰が、マンション内でもしっかり息づいている。
それを知らずに、上昇志向の高いバリキャリの主人公がこのマンションを買ったことで、怪異とタワマンヒエラルキーを目の当たりにする。
因習村もタワマンも、閉鎖されて独自の文化が確立されたら結局同じ。場所ではなく、人間の思考が閉鎖的になり、エゴや猜疑心から他力本願に何かにすがることで、因習というものは出来上がっていく。人間の本質が変わらなければ、どんな場所でも因習は生まれるのだな、と感じた。都内の高級タワマンヒエラルキーへの風刺も効いたホラーだった。
ストーリーは前作よりも読みやすく、わかりやすい。そのままホラーゲームにもできそうな感じがある。
「ぬひんさま」という名前のインパクトだけでも素晴らしい。個人的にも2日で読み切るくらい、楽しく読ませていただきました! -
Posted by ブクログ
4篇の短編からなる連作短編集。
昔の同級生が人魚だったのでは…から始まり、身の回りに現れる人魚ではないかと疑うほど美しい女性。少しずつ、その女性が繋がっていき人魚の謎に迫っていく。
短編の中で前に出てきた人がまた登場、はよくあるけど先輩の裏側はそうだったんだ…と結構なクズっぷりに戦慄。
見た目に振り回されていく人々をみて、『見た目より内面』とか安易に言えないなと思いながら読み進めていった。『見た目を気にしない』とか言う人は、そもそもがほどほどの良い見た目、そしてそれを気にしてしまう自分。なかなかルッキズムから抜け出すのは難しい。見た目しかない人魚の生き方も哀れだなぁ…