小林正のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレキショいほどの記憶力を発揮するジュリヤンは貴族のオッサンにその能力を買われ、パリにくる。仕事上、とあるサロンに通うようになるのだが、メッチャ美人の超ド級ツンデレ侯爵令嬢が居た!
前半はその心理的攻防を克明かつ執拗に描いていく。
確かに恋愛小説と言えるが、ハーレクイン的な甘く感傷を揺さぶられることはほぼない。描き方はクールかつドライである。間違っても湖上の妖精だとか、そういった類いのモノは出現しない。
幕切れは新約聖書に出てくるサロメや、現代で言うならば School daysを想起させる。なかなかエグい展開となるが、これも愛の成せるわざである。
レーナル夫人は旦那に始末されたのでは?と予想 -
Posted by ブクログ
国語便覧に載るような有名な小説なので、読んでおこうと思い手にとった。平たく言うと材木屋のせがれのジュリヤン・ソレルが貴族社会で成り上がろうとして、挫折する話である。読み終わってから知ったが、実話に着想を得ているという。
赤は軍服、黒は僧服を表している(諸説あり)。本当は副題に「1830年代記」と付されているらしいが、新潮文庫版にはなかった。原書は1830年刊行なので、「1830年記では」という疑問が頭をよぎった。
文学史的には主観的リアリズム小説の先駆であり、心理小説、社会小説の傑作とされている。バルザックと比較されることも多いようだが、文学史に明るくないのでよくわからない。王政復古時代の雰 -
Posted by ブクログ
ナポレオン失脚後の復古王政時代のフランスを、下層階級の生まれでありナポレオン信者である主人公ジュリアンの視点から鮮明に描いた作品。
正直、多少なりともこの時代のフランスについて知識を持っていないと何が何やらさっぱりだと思われる。
実際読んでいていまいち背景が掴めない部分もあったので、ざっくりとだが勉強し直したりもした。
言ってしまえば、田舎から都会へと立身出世を夢見て上京した野心溢れる青年が、将来の成功と眼前の色恋に揺れ人生を狂わされていく物語。
個人的に恋愛要素はあまり必要としていないのでいささか強く感じられたが、当時の貴族や聖職者、ブルジョワジーや労働者などの思想や価値観などがありあり