小林正のレビュー一覧
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王政復古後に生まれた野心と自尊心溢れる青年ジュリヤンが、持ち前の知性を活かして地元ヴェリエール、のちにパリの社交界へと進出して「フランス風の」恋愛に翻弄されるアバンチュール作品
出世に向けての計画と人間関係とが葛藤している様が非常に人間的で良かった
フランス革命時代、「三十六歳で将軍になれ」たフランスと、貴族と聖職者が支配する当時のフランスとのギャップで苦悩しながらも天性の才能でのし上がっていくものの、恋愛に翻弄されて罠にはまり自尊心を保ったまま運命を選ぶというのが退廃的な当時は勇ましくみえたんだなぁ、と感慨深くなった
ジュリヤンが、若者の身ながら立身出世しようとレーナル夫人や社交界の手合いと関わっていくうちに、確かに自身の才能で手玉に取れる時もありつつも、やはり大人たちの権力や繋がりには勝てず、内心で葛藤し悩んでいく様がなんとも痛ましく心動かされた
当時のフランス社会や情勢について知らないと「?」マークが飛び交うことになるだろうから、市販されてる世界史の資料集やネットのサイトなど見て調べつつ読むのがいいだろう -
Posted by ブクログ
60年前に桑原武夫訳(河出書房)で読んで以来の再読。後期高齢者になって読んでみて気づいたこと。①若い時読んだ文章はそのまま記憶に保存されている。当時何度も読み返したせいか、デルヴィール夫人の(この美少年、ほんとうにいけないまねをする!)とか、「まあ!かわいい小さな司祭さま」という料理番の娘のセリフとか。ということは、17,8歳の私はこの小説を恋愛小説として読んでいたのだ。②だから、パリの社交界の描写とか政治的陰謀とか地位や金を求めてのかけひきなんかはぼんやりとしかわからなかった。今、読んで気づいたことは、木挽き商のせがれジュリヤンの悩みや野心は60年前の日本でも田舎の有能な青年が抱えていたものと似ているということだ。みんな東京へ行きたがっていた。そこで成功して東京の才気煥発なお嬢さんと恋愛したがっていた。やがて田舎でも東京でも人間の本質は同じだと思い知らされるのだとしても。この小説が今でも心を打つものがあるとすれば、痛ましい青春の姿がありありと描かれているからではないかと思う。
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Posted by ブクログ
ネタバレ舞台はフランスのヴェリエールという町から始まり、出世したいという強い野心に燃える若者ジュリアンが、町長レーナルの子供達の家庭教師として雇われ、そこでレーナル夫人と出逢う。
年齢はジュリアンは十九くらいで、夫人は三十くらいで、さらに百姓の息子と貴族という大きな身分の違いがある。最初は野心から夫人を誘惑をしたのの、互いに激しい恋に落ちていくのであるが、そこで描かれる恋の駆け引きや言動で慌ただしく両者の立場が逆転する心理描写が面白い。
特に主人公の中にある野心と恋心と自尊心が頭の中で噴き上がったり沈下したりと忙しく、冷めたと思ったら愛し始めたりする。僕自身もそうだが相手の一つの動作や言葉が気になったり、魅力的に見えたり幻滅するのは皆もあるはず。そのあたりがジュリアンに共感できると思う。
何より、愛するというのは身分や年齢差なんて関係ないと思わせてくれる一冊だ。 -
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大分時間がかかりましたが、やっと読み終わりました。自尊心がれ異常に膨れ上がった天才肌の美青年ジュリアンが、色恋とその自尊の狭間で命をすり減らし、最終的には自尊心が恋に優り、それゆえに犯した罪の元斬首される話。こんな書き方は全くあらすじではないですが、巻末にある当代の評論家がかいたその批評が、著者スタンダールの執筆意図をしっかりと言い当てています。
フランス革命の前後において、全く変わってしまったフランスの時代的情緒を描いた作品だということです。私個人としてはフランス革命を手放しで称賛することはできない立場ですから、大革命を前後したフランスの時代を描写した本作は、とても大きな印象を私に残しました。
もう一度じっくり読み返してみたいです。人間描写の巧みといいましょうか、それも含めて時代描写の傑作であると思います。
15.07.23 - 15.10.18 -
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初めてこの作品を読んだ時は、高校生。
作品のボリュームや作品に描かれている歴史的背景に
圧倒される、というか苦戦しながらも、内容が面白くて
なんとか最後まで読んでしまった。
この時自分が主人公ジュリヤン・ソレルに対して抱いた感想は
「自分の野心達成のためには手段を選ばない、
女の心を弄んだり、その愛を己の出世のために
利用するひどいやつ」であり、野望ぎらぎらな彼に対し
「最低男」のレッテルを心の中で貼っていた。
不倫相手のレーナル夫人に対しては
「利用されちゃったかわいそうな女性」
といった同情すら覚えた。
ところが2回目、20代の時に読んだ時は、
そんな身勝手なジュリヤンの個性が魅力に変わった。
「大いなる野心を持った、その心の冷たささえも
魅力的なハンサムな青年」、
そんな彼と恋に落ちるレーナル夫人の気持ちも
わからなくはないような気がして・・・。
彼が成功への階段を駆け上り、そしてそこから
あっという間に転がり落ちた「華麗なる出世物語」に
大いにわくわくしながら読んだ。
そして3回目の今回。読み手の私は33歳。
悲しいかな、自分が年を取ってしまったのか。
貧しい百姓の子せがれ、ジュリヤンが英雄ナポレオンに憧れ、
「いつか自分も!」と野心を持ち、色々と奮闘しながらも、
身分の壁に苦しめられたり、いつの間にか誘惑した
女性を本当に好きになってしまったり、
野心と良心の板ばさみになり苦しみ悩む姿に
彼の若さや人間づきあいの下手さというか不器用さを
見てしまった気がする。
読む年齢によって違った感想を抱き、長編であるにも関わらず、
最後まで大いに楽しみながら読むことの出来る本作品は、
それだけ内容の濃い名作と言えよう。
19世紀に書かれた恋愛小説なのに、内容は今の日本の
昼時のドラマの原作に取り上げられても
おかしくないくらい濃厚な恋愛劇、そして登場人物に対する
繊細な心理描写、訳者のわかりやすく、読みやすい訳が、
現代にも十分楽しめる名作と通用する理由だろう。
上巻のラストは、読み終えた後に
「この後どうなるんだろう!」と
すぐ後巻を手に取って読み始めたくなる位、勢いがある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレサマセット・モームの世界十大小説読破を目指して手に取った。先日『ボヴァリー夫人』を読んだばかりなので「また不倫か」と序盤はあまり真剣になっていなかったが、ジュリヤンが神学校に入ってからは面白さが増した。神学校の中は、社会の縮図のようで周りの生徒の反応を見ながら立ち回り方を学んでいくジュリヤンの内面が面白い。下巻は、ジュリヤンの秘書としての姿が描かれているんだろうか。どう転んでいくのか気になって楽しみ。
これをただの不倫ものとして読むか、心理描写や変化を楽しんで読むか、そのあたりが鍵なんだろうな。でもレーナル夫人はチョロい(笑)