サミュエル・ハンチントンのレビュー一覧
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最初にでてから20年近く経ってるから、読者はここで提示された問いの幾つかについて、既に答えが出たことを知っているわけですが、そもそも論として、欧州とアメリカ合衆国は別の文明とするべきなのではないだろうか?より正確には、カナダとアメリカ合衆国と英国で一つの文明。大陸欧州で一つの文明。こうすることにより、近年(この書がでてから)起きた幾つかの出来事についての説明がより容易になるように思われる。
本書で提示されたように、ウクライナは分断国家であり、トルコはイスラム国家として再定義を推進し、そして、本書の提示とは逆に、メキシコの北米文明研への再定義はアメリカによって拒絶された。英国のEU離脱は、英国が北米=英国文明圏と大陸欧州文明圏により分断されているとした方が説明がつきやすい。
「西欧文明の東の境界線」をハプスブルク帝国と、オーストリア・ハンガリー、チェコスロバキア、ポーランド、ドイツ東部の国境地帯とする(要は、ローマカトリック&プロテスタントと東方正教会の境界)のはとても納得がいった。
あと、しょせん欧米の人から見ると、日本はそんな扱いかぁ。とか。 -
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文明と文化は、いずれも人々の生活様式全般を言い、文明は文化を拡大したものである。
19世紀のドイツでは文明を機械や技術、物質的要素にかかわるもの、文化は価値観や理想、
高度に知的・芸術的・道徳的な社会の質にかかわるものとし、
文明と文化をはっきり区別していた。
一極・多極世界は四つのパワーレベルからなる。
超大国→地域大国→ナンバー2の地域大国→その他の国。
冷戦後、世界は七つあるいは八つの主要文明に属している。
西欧文明・東方正教会文明・中華文明・日本文明・イスラム文明・ヒンドゥ文明・ラテンアメリカ文明そしてアフリカ文明。
この異なる文明が衝突することになる。
日本は文化と文明の観点からすると孤立した国家であるとハンチントンはいう。
日本文明は日本という国一国と一致し、国外離散者すら存在しないという。 -
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長い(厚い)本だった。中身も重量級の重い内容であり、読むのに二週間ほどかかってしまいました。
さて、トランプさんがアメリカ大統領になって一月ほど経ちました。選挙戦の最中からアメリカを分断するような言動が垣間見られましたが、大統領になってからもそれは変わりません。大統領と言う立場がついてしまったので、より一層分断を加速するような気もします。
ただ、これを読んでわかったのは、アメリカ社会の変質、分断は昨日今日に始まったわけではなく、ずっと以前から始まっていたと言う事。トランプさんが4年の任期を全う出来るか分かりませんが、いづれにしてもアメリカは、もう元には戻れないのではないかと思います。 -
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国際政治学者サミュエル・ハンチントンによる本書には、1993年発表の『文明の衝突』(抜粋)のほか、1998年に東京で行った「二十一世紀における日本の選択~国際政治の再編成」と、1999年に『フォーリン・アフェアーズ』誌に連載された「孤独な超大国」が収められている。
『文明の衝突』は、冷戦の終結した21世紀の世界を予測した論文として、フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』において「グローバルに民主主義と市場経済秩序が定着し、もはやイデオロギーなどの大きな歴史的対立がなくなる」という典型的な“アメリカ的世界観”を示したのに対して、「民主主義によって一つの世界が生まれるのではなく、数多くの文明間の違いに起因する、分断された世界となろう」という、およそ“非アメリカ的世界観”を描き、欧米世界を驚かせたものである。
その主旨は、以下のようなものである。
◆冷戦後の世界の国家のグループ分けにおいて重要なのは、7つ(中国、日本、インド、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ)或いは8つ(+アフリカ)の世界の主要文明である。地域の政治は民族中心の政治に、世界の政治は文明中心の政治になり、超大国同士の抗争に代わり、文明の衝突が起こる。
◆その世界では、各国は各文明に対して、構成国、中核国、孤立国、分裂国、引き裂かれた国家として関係する。
◆異文明間の紛争は、地域的なレベルでは文明の断層線での紛争が起こり、世界的なレベルでは異文明の中核国家間での紛争が起こる。
◆世界的なレベルの衝突としては二つが想定される。一つは、アメリカと儒教的特徴をもつアジアとの対立で、特に中国の発展はアメリカにとってぬきさしならぬ挑戦となる可能性がある。もう一つは、既にアフガン戦争、湾岸戦争として顕在化していた、イスラムと他文明との衝突である。
◆異文明間の戦争を避けるには、他文明内の衝突に中核国家が干渉しないこと、中核国家が互いに交渉して自分たちの文明に属する国家や集団の関わる地域レベルの紛争を調停すること、あらゆる文明の住民が他の文明の住民と共通して持っている価値観や制度や生活習慣を模索し、それを拡大しようと努めること、が必要である。
そして、「二十一世紀における日本の選択~国際政治の再編成」では、「東アジアの将来の平和と幸福は、日本と中国がともに生き、ともに進む道を見つけることにかかっている」、「孤独な超大国」では、「アメリカにとっては、多極体制の世界における大国の一つとなるほうが、唯一の超大国であったときよりも要求されるものは少なく、論争も減り、得るものは大きくなるだろう」と述べている。
昨今の世界情勢を見ると、ハンチントン氏の予測が如何に鋭かったかがわかるし、衝突を避けるためのルールも依然有効なものである。
今、読み返す価値のある著作と言える。
(2009年5月了) -
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かの有名な国際政治に関する論文である「文明の衝突」の抜粋の他、2論文を収録した論文集。
◯「二十一世紀における日本の選択ー世界政治の再編成」
「文明の衝突」理論によれば、今日の世界の在り方を規定するものはイデオロギーではなく、文化や文明の類であり、事実、イデオロギーで分裂していた東西ドイツは結合を遂げ、逆に文明の相違があるにもかかわらず結合していた旧ユーゴは分裂への道を辿った。そして同じ文明を共有する国同士は、ユーゴ紛争での旧ユーゴ各国への各々の支援勢力を見ればわかるように、理解し合い、助け合う傾向にある。
一極・多極世界から、多極世界へと移り行くなかで、特に東アジアでは、異なる文明に属するアメリカと中国との対立が決定的となり、そこでどちらの文明でもない日本は文明という枠にとらわれることなく純粋に損得の判断から行動することができる。また、日本の外交政策は、結果的にはどうあれ一貫してバンドワゴニング(日英同盟、三国同盟、日米同盟など、いわゆる、「勝ち馬(になりそうな方)に乗る」)である。そのため、アメリカが超大国としての地位を失ったあかつきには、日本は中国と結びついていくとする。
著者は、日本はバンドワゴンの行動原理に基づいていずれ中国と手を組むと指摘するが、現状安倍政権は、バンドワゴンかバランシングかということでいえば後者の戦略を採用しているようだ。まあ、こういう細かいところでは予測と違うことが起こっていても、超大国と地域No.2の大国は、地域大国の覇権を阻止するために手を結ぶ傾向にあるという、日本がバンドワゴン戦略を取りやすいということより大きな原則の部分では概ね妥当しているように見える。バンドワゴン戦略は、組む大国との信頼があるか、地理的な遠さなどで影響
が及ばない場合でないと不当な影響力の行使の下に置かれかねない点でリスクがあり、現状の日中間にそれほどの信頼関係がない以上、著者の言うとおりの未来が訪れることはないと思う。
◯「孤独な超大国ーパワーの新たな展開」
アメリカは慈悲深い覇権国を自称し、国際社会の利益のためと称して自己の利益の増進を追求してきたが、かつての冷戦下の二極体制や、湾岸戦争時の一極体制の時とは異なり、アメリカが自己利益の代弁者だと考える国は一極・多極体制の下では減少し、むしろ地域大国からの反発を招き、超大国として覇権的に振る舞うことへのコストと利益のバランスが崩れてきている。そこで、アメリカは超大国であり続けるよりも多極体制の下で地域大国として振る舞う方が、世界へリソースを支出しなくてもよくなり、反発も買わず、地域大国と超大国との間では必然の対立も回避できることで役割やコストを低減し、利益を増進させることにつながるとする。
シリアとか、ウクライナ、南シナ海の問題とかみてると、まだアメリカにヘタレて引きこもってもらうには早いのかなーという気がする。シリアなんかではサウジとかの地域大国が積極的に役割を果たさない以上、世界に影響を与える同地域の安定化のためには、どうしてもアメリカが出てきてもらわなくては困るということがあるんじゃないかなぁ。ロシアとかイランだけに任せるという選択肢は無いだろうし。その点で、この論文が見通すような未来はまだ訪れているとはいえないのかな、と感じた。
◯「文明の衝突ー多極・多文明的な世界」
冷戦終結後の多極化してゆく世界では、文明が国家の行動を規定し、そのことにより文明の断層線におけるフォルト・ライン紛争が発生しやすくなり、しかもそれは、紛争当事国と文明を同じくする国々をも巻き込んで大規模化しやすく、きたる多極世界に対する最も深刻な危機が、この文明の衝突であるとする。その上で、文明の衝突を予防するためには、世界はいまや文明によって規定されていることを自覚し、文明に基づいた国際秩序の構築、すなわち不干渉、共同調停、そして例えば異文明間でも共通する最低限の道徳観など、共通点を模索、拡大するという、共通性のルールに基づいた国家の行動が求められるとする。
共通性のルールっていうのが、心に残った。つまり、異文明で、相手が何を考えてるのか全くよくわからなくても、根本は自分たちと同じ、人間なんだということを心に留めておこうということなんだな。
「解題」
京大教授中西輝政による解説。この論文をどう読めばいいのかという視点を指し示してくれてありがたい。
文明というものを通して世界を見るという体験は結構視野が広がるものだと思ったけど、やはり日本はいずれ中国の覇権に服することになるという著者の主張は飲み込めなかった。中西氏の言うように、中共の事実上の一党独裁が続く限り中国の覇権は、性急で未成熟なナショナリズムによる粗野な覇権にならざるをえないような気がするし、それよりは不満もあるが経験済みのアメリカの覇権の下にいるほうが良いというのがいまの日本の立場なんだろう。 -
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ハンチントンの文明の衝突を買いに、地域の大型書店を訪ねたが、在庫がなく、この本を代わりに手に取った。
あとがきで引用されている、”不死の幻影”、自分たちの社会は人間社会の最終型だと思い込む。だが、そのように自分たちの歴史は終わったと思い込む社会は、衰退に向かって行っていることに気づいていない、という表現は非常にスリリングである。
国家論、文明論に関する興味は満たしてくれる著作だった。ただし2000年に記されており、12年後の現在と照らし合わせながら読む姿勢が必要だ。逆に言うとハンチントンの予想が、現在進行形の中でも意識されるのは面白い。
中でも興味を惹いたのは日中関係。ドイツとフランスが達成した相互関係を、日中が確立するには、相互信認という点で非常に大きなハードルがある。中国は、東アジアの覇権を求める方向に向かうだろう。中国は、日米同盟が弱まり、日本が軍事増強、核武装の方向に向かうことを恐れている、と著者は指摘していた。これは2000年当時には真実だったのかもしれない。そのターニングポイントを逃してしまった現在、中国はもはや日本を恐れてはいないのだろう。尖閣問題をどうとらえるか。経済的観点から収束に向かうだろうという見通しや、自主独立などこれまではタブーと目されてきた問題へと回帰する国家意識など、様々な立場が意識されるようになってきている。
バランシングとバンドワゴニングという国際関係の力学において、著者はこれからの日中関係は、日本が中国の覇権に入る、バンドワゴニングの方向に向かうと予測している。これはこれまでの日本の国際関係というのが、英国、ドイツ、米国と時の世界の覇権国と手を結ぶことで成立してきたことを取り上げ、日本の階層的な外交構造からこれまでと同様のstrategyをとると考えたからだ。
著者曰く、文明というのは、家族のようなものだ、と。その意味で日本は、家族を持たない文明である。東アジア情勢がtensiveになっている昨今、少なくとも日本は自己のアイデンティティの確立の大切さを漸く気づきはじめた。戦後史をまとめた著作、これからの採るべき方針を論じた著作が売れているのは良い傾向だろう。 -
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ネタバレ国家間の紛争の根本となる原因は何か、今後の世界情勢及び日本の外交政策は今後どの方向で進んでいくかを考えるネタのために読んだ本。
冷戦時代の自由世界、共産圏、第三世界から、今は文明ごとに勢力が分かれていることについて、歴史的背景や宗教などをもとに丁寧に解説された良書でした。
とくに文明毎に世界の勢力がわかれていくという視点が自分には欠けていたので、大変勉強になった。
今の各国の国家政策において、なぜ某国と某国の関係が良いのか、なぜ某国は某国と関係がよくないのかの理由が本書を読んで少しづつ考えられるようになった。
またビジネスにおいても相手国がどういう文明に属しているか、どういう価値観であるかを考慮して展開していくことが重要とも考えた。 -
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1998年に現在の「文明の衝突」の到来を予見した書籍。一方で、その文明の理解や予測の具合には極めて強い「西欧的支援」と感じる。
上巻では7つ乃至は8つの文明のアイデンティティの衝突を西欧社会対非西欧社会という構図で捉え、下巻になると西欧的視点から捉える「非西欧社会」が中心となる。中盤の多くを旧ソ連時代の東欧圏・中央アジア圏・中東圏におけるイスラム文明に割いているが、これらの思想が2000年代の米国の対外政策の根底に流れている、つまり一部の偏ったシンクタンクの戦略に基づいていたと感じてしまう。
衝突のフォルト・ラインを中核国のバンドワゴニングと文明間のバランシングで分析しているものの、日本が中国にすり寄って西欧対非西欧陣営の衝突、はさすがにそれは無いのでは…と言わざるを得ない。「文明の衝突」というコンセプトは分かり易い一方、もう少し「非西欧文明」に対する深い洞察が欲しいところ。
いずれにせよ文明のアイデンティティという著者の主張は正しいところで、現時点に限ればそれは国単位の文明どうしではなく国内の文明どうし、特に西欧社会においてそれが起こっていると言えよう。 -
Posted by ブクログ
下巻は、冷戦後期以降の具体的な国際関係の展開について述べられている。
その内容は、日米の経済上の反目、中国の台頭、イスラムの国境紛争、ソ連・ロシアとイスラムとの戦い、およびバルカン戦争である。
ユーゴスラヴィア弱体化に伴う90年代のバルカン情勢、つまり、
イスラムのボスニア、正教のセルビア、カトリックのクロアチア、という三勢力の争いは、まさに「文明の衝突」の代表事例と言えるだろう。
オスマントルコの侵攻したボスニアはイスラムが、オーストリア・ハンガリー支配下だったクロアチアはカトリックが優勢となっている。
個人的な経験だが、人間性を決定づけるのは宗教だという考えに自分が至ったのも、かつてバルカンについて学んだことからだった。
民族や言語が同一でも、宗教だけで全く異なる文明に属するという事例だ。
この経験がなければ、文明上の違いについて自分が考えるにあたり、人種や遺伝などの影響が排除できなかったと思う。
筆者は最後に自国アメリカに触れる。
アメリカを多文化・多民族からなる国家とする多文化主義を否定し、
『アメリカ人は文化的に西欧の家族の一部なのだ』(p241)
と明確に主張する。
この根拠として引用されている梅原猛の主張、
「ソ連崩壊は、政治的イデオロギーのみで社会を規定することの不可能性を示しており、それはマルクス主義のみならず自由主義にも適用する」
と言うところは説得力がある。
筆者の主張を端的に表した言葉でもあると思う。
上下巻通じて、文明≒宗教が衝突を引き起こす、という主張は一貫しており、その裏付けも詳細に富んで、世界で広く読まれるのももっともと感じた。
多大な波紋を呼んだ著書であったようだが、さまざまな思想や利害に影響を与えた証だろう。
ただしウィキペディアの情報によると、エマニュエル・トッドは本著を批判し、「国家観が古い」としたともいう。
トッドの主張も興味深い。
さいごに。
日本版のあとがきを書いているのは、昨年残念ながら火災で亡くなった猪口孝氏である。
本著を最後まで読み、改めて、この国は惜しい人を亡くしたと感じた。
文明の衝突の中で、得難い人材ほど失われやすいのは、悔やまれるべき世の常である。
御冥福をお祈りする。 -
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翻訳は2000年刊行。
話題になった本だったような記憶がかすかにある。
自分の年齢を考えたら、リアルタイムで読んでいてしかるべき本なんだけど。
…でも、今からでも読む!
だって、どのみち今も昔も、国際政治音痴だし。
喪うものはないはずだ。
と開き直って読んでみた。
現在の状況と合致する部分のみが強く印象に残りやすいのだろう、とは思うけれど、本書の内容は現在にも通用する部分が多いと感じる。
アメリカの覇権の弱体化。
一極集中ではなく、世界が多極化する。
1990年代から2000年代での見通しは、まさしくその通りになりつつあると感じられる。
そこでどのような新しい国際秩序ができるか。
本書では採られる方策を二つに類型化した。
ひとつは「バランス化」(バランシング)。
もう一つは「相乗り」(バンドワゴニング)。
覇権国(アメリカ)と地域の中核国の関係、あるいは中核国と地域の二番手の国との関係にそうした方策が採られ、関係が出来上がる。
さらに、その関係形成に、文明の違いや近さが影響を与えるというところが、この本の眼目。
共通する文化を持つ二つの国や集団の間では緊張関係があっても比較的協調関係が生まれやすく、異なる文化の間では紛争が激化しやすいということらしい。
国民国家と文化のまとまりが一致していないところで民族紛争が起きるという話もある。
そういう眼で米中関係、現在のロシアとウクライナの関係を見ていくと、ああ、なるほど、と頷けるところはたしかにある。
ところで、本書にはアメリカの多文化社会化に否定的な見方が示されている。
歴史的に見て、多文化を追求する国が永続したためしがないからだということだ。
トランプ政権が誕生したり、その後のバイデン政権も、白人の、中産階級のアメリカを再生させようとしていることを見ると、今揺り戻しが起きているようだ。
筆者がいうように連合国家になる、という選択肢もアメリカにはあり、そういう未来を選択することもできるのではないかと思うけれど、ダメなのかな?
さて、本書は「21世紀の日本」ももう一つのテーマとしている。
日本は中華文明から派生してはいるけれど、孤立した文明であるため、例の文明の衝突理論から考えると、なかなか他国と緊密な協調関係を結べないらしい。
力をつけていく中国とどう渡り合うか。
過去と同じように、その時々の覇権国家、別の地域の中核国家の力を借りながら牽制するしかない、ということのようだ。
割と、まあそうなんだろうな、と思っていたことだった。
正月に読む本の選択を誤ったといえばその通りだが、何というか世界の弱肉強食の現実をつきつけられ、暗い気持ちになってしまった。 -
Posted by ブクログ
未来予想を行っている本を後の時代になってよむと、当たっている部分、外れている部分がある。
おひざ元のアメリカの洞察は的確で、結構予想が当たっている一方で、日本や台湾は本書に書かれているほど、中国にすり寄っていない。
だからといって本書の価値が落ちるわけではない。西欧人の視点でとらえたイスラムやロシア、アジアの分析は参考になる部分も多い(アジアの文化・文明はもう少し多様かつ複雑な気もするが…)。
経営学者(というかほとんど予言者(笑))のドラッカーのように、しっかりと本質を捉えていれば、当初の予想とは少し時間軸がずれて実現することもあるので、時折読み返す一冊としたい。
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Posted by ブクログ
本書は『文明の衝突』の著者サミュエル・ハチントンによる論文集だ。九九年に行われた日本講演、超大国アメリカに焦点を当てた論文、ハチントン理論の基盤となる国際論(著書抜粋)が含まれている。
冷戦時代の世界は主として「民主主義国家」「共産主義国家」「第三世界」の三勢力に分かれていた。しかし、21世紀における国家の行動基準はイデオロギーや政治体制でなく、諸国を文化的に類別する“文明”である。また、米ソという二極化したパワーバランスが崩壊した現在、グローバルな超大国は米国のみであり、他には各地域における主要な地域大国が存在するーーつまり、事実上の一極・多極世界だというのが各論文に共通したテーマである。
ハチントンによれば、文明とは数世代にわたる人々の生活様式全般であり、文化的な特徴と現象の集合を指している。現在、世界には①日本文明②中国文明③インド文明④イスラム文明⑤西欧文明⑥東方正教会文明⑦ラテンアメリカ文明(⑧アフリカ文明)が存在しており、各地域の諸国は中核国・構成国・孤立国・分裂国・引き裂かれた国のいずれかに該当する。通常、文明を異にする国家は冷淡で敵対的な関係となり、信頼と友好はあまり見られない。異文明間では断層線の戦争(フォルト・ライン戦争)が激化していくが、平和実現のためには中核国が他文明の紛争に介入せず、構成諸国はフォルト・ライン戦争を回避するよう努めなければならない。
最後に、世界をアメリカ化する多文化主義への警鐘が鳴らされる。10年代を通じてポリティカル・コレクトネスはグローバル社会に蔓延し、共同体の文明的差異が取り払われる傾向ーー例えば米国のユダヤ教徒やイスラム教徒に配慮して“Merry Christmas”の代わりに“Happy Holiday”を用いるといった、多文化主義的傾向がより顕著になった。しかし、著者は「世界帝国がありえない以上、世界が多文化からなることは避けられない」とし、むしろ人々は差異を認め合った上で「他の文明の住民と共通してもっている価値観や制度、生活様式を模索し、それらを拡大」することが共存への道だと説いている。
加熱する多文化社会への反動が保守主義の台頭という形で帰結したと考えれば、西欧文明から引き裂かれることを拒んだ国民がトランプ大統領を誕生させたことにも納得がいく。近年では英国のEU脱退など、同一文明の国家は強固な関係を築き上げると論じる著者の予見に逆行する情勢も見られ、世界はより複雑化の一途を辿っているように感じられる。現在の日本は中国とのバンドワゴニングでなくバランシング戦略を採用し、一方で米国は着実に超大国の座を降りながらも断固とした対中姿勢を表明している状況だ。今の世界は一極・多極体制から、細分化した多極主義体制への過渡期だと見るべきだろう。