地政学の本はこれまでに50冊以上読んできていますが、この本の著者のものは初めてです。Yutubeで地政学の観点からの解説をしている有名な人のようです。この本では、各国(アメリカ、ロシア、中国、日本)について、戦争を起こした理由を解説しています。
日本が、日清戦争・日露戦争で獲得した領土、太平洋戦争で真珠湾攻撃をしたのかも理解できました、それが良いことかどうかは別として。戦後、地政学を学ぶことが禁止されていた理由もわかりました。その国の置かれている地理的な状況によって、国の振る舞うべき内容が異なっていることも理解できました。
以下は気になったポイントです。
・アメリカはなぜ特別なのか IT に強いから、経済力があるから、民主主義を愛するから、これらを全て凌駕するアメリカの特徴が、2つの大きな海に守られていることである。南北は弱き 隣国に、東西は魚に囲まれている、この特殊な地理的安全性 こそがアメリカの力の源泉である とドイツ 首相 ビスマルクは言った(はしがき)
・世界情勢を動かしているのは 人間の医師だと思いがちであるか、人間の思考や行動は私たちが思っている以上に「地理」に動かされている (はしがき2)
・2000年代の争いの多くは 民族対立や思想 対立 、 特に イスラム過激派との戦いが占めており、領土 や了解といった 恣意的要素はあまり大きな争点ではなかった。それに対して2010年代は、 単位 紛争の数が増えただけでなく、争いの主体が思想から地理へと移った点で それまでと大きく異なる。これはロシアのクリミア侵攻 や中国の海洋進出 をイメージすると良い。必然的に 地理的観点から大国間 争いを考察する地政学に関心が集まる 土台を形成した(p31)
・地政学が誕生した この時期(1904年頃)のイギリスとドイツの関係は、現在のアメリカと中国の関係によく似ている(p32)
・手段とは、目標を達成するための方法 、 目標とは目的を達成するために必要な 結果、目的とは 最終的に実現したいことである。言い換えると手段とは、どのように達成するのか、目標とは何を達成するのか、目的はなぜそれを達成したいかである(p35)
・ 現在の世界ではアメリカに立ち向かう 対抗 連合が存在しない。冷戦が終わってからアメリカは唯一の超大国 として 絶大な勢力を誇っている にもかかわらず世界には複数の国が協力してアメリカを抑えようとする動きが見られない。アメリカに対抗する国々は存在する、 イラン・北朝鮮・ロシア・中国は その最たる例であるが 連合は欠如している、基本的には個別に行動しており 対抗 連合 と呼べるほどの団結はしていない(p53) 反米連合が存在しない理由は、アメリカがそれほど圧倒的に強いわけではないから(p100)
・ 北朝鮮の真の恐ろしさは 軍事力ではなく、行動が予想できないところである 。中国やロシア 北朝鮮が 周辺国に警戒されやすい一因は、この判別性の低さにある(p63)
・攻撃・防御 有利性に影響を与える 地理的要素は 3つ とは、 距離 ・地形・海である。距離が短いほど 移動 が簡単なので攻撃 有利、長いほど 移動が難しいので防御 有利になる。 平野などは移動を促すので 攻撃 有利、山・川・森といった自然的障壁 は移動 を妨げるので防御を有利にする。 陸で接する国を攻めるのは容易なので攻撃 有利、海で隔てられた国を攻めるのは困難なので防御 有利になる(p69)
・ 第二次世界大戦の 開始時、日本軍が次々とヨーロッパ諸国のアジア 植民地に上陸し 各地を制圧できたのは、ヨーロッパ諸国が 本国に戦力を引き上げていたから。戦争後期には 形勢が逆転し 、 米軍は日本占領地域の島々への上陸を成功させた。しかし 米軍が上陸したのは 駐屯する日本軍が自給自足できない 小さな島 ばかりで、仏印・蘭印(ベトンナム、ラオス、カンボジア、インドネシア)マレー、台湾など大きな島や陸地は避けた。上陸した、サイパン島・ペリリュー島・ガダルカナル島・硫黄島では、熾烈な戦いを強いられた、大きな島である沖縄では、投入戦力の4割が戦傷した、死者数もアメリカ史上3番目に上る激戦になった(p83)
・ 第二次世界大戦後にアジア諸国が次々と独立したのは、現地の人々が力をつけていたのに加えて、日本軍が戦時中に 軍事訓練と武器を提供したこともあり ヨーロッパ諸国と戦うことができたからである、戦後の脱植民地化は、ヨーロッパ諸国の倫理観が突然 改善した結果ではなく、海という最強の水 堀が攻撃を不利にした結果であった(p85)
・ ウクライナの NATO 加盟への意欲はロシアの目には 脅威に映った、 ウクライナという 緩衝国が NATO の手に渡ってしまえば、 NATO軍はロシアとの国境沿いに展開できることになる。そこで ロシアはウクライナに経済的・軍事的圧力をかけて NATO 加盟を考え直すように 迫った。2014年と2022年に武力攻撃まで加えた上 へ、クリミア半島や 東部を占拠して ウクライナとは切り離された事実上の緩衝地帯を新たに設けた(p93)
・イギリスやアメリカのような海洋国家 の強さを真に支えるのは 、強い 海軍ではなく「 強い陸軍を必要としない環境」である点 アメリカが持つ最大の武器は海軍ではな「海そのもの」である(p96)
・北大西洋同盟の主軸を構成するのは、アメリカ・イギリス・フランスの三国で、それぞれ 役割がある。 アメリカは、兵力・農業・工業の後方基地、 イギリスは外堀を備えた飛行場 、 フランスは防御の能力を備えた 上陸地点である。ヨーロッパの戦力の役割は、アメリカ本土から 主戦力が到着するまで、ヨーロッパが前途が占領されることを防ぐ点にある(p111) この構想を 東アジアに当てはめると 、 アメリカは後方基地、 日本は 飛行場、韓国は 上陸 拠点になる。自衛隊と韓国軍 、 在日・在韓米軍の真の役割は、個別で洗剤 派遣国に対抗することではなく、アメリカ本土からの出演 力が到着するまで 上陸 拠点を残しておくことである(p112)
・ ロシアでは 、エカチェリーナ2世がロシア人に 崇拝されている、彼女はその治世で 周辺の大国と戦争を行い、西に現在のウクライナからリトアニアに至る 東欧 地域を獲得した、最も偉大な功績と言われるのか。クリミア半島を併合したことである。 これらの領土拡大によりロシアは一気に大国の座を手にした (p139) ロシアがクリミア半島にこだわる理由は、ここが 黒海に出入りする上で重要な会場 交通の要衝(チョークポイント) だからで ある(p169)
・モンゴル帝国 が 5300km 離れた キエフ を攻撃できた理由は、ユーラシア大陸を貫く 広大な平野にあった。 モンゴル軍の騎馬部隊は、この天然の高速道路を 悠々 縦断してきた。ロシア人 たちは北の森林地帯に逃げ込み かろうじて モンゴル軍との直接的な戦闘は避けられた、 モンゴル軍の武器である馬と弓は、 森の中では気に引っかかって使えなかったから、こうしてロシア人 たち は 現在のモスクワ あたりに落ち着いて 200年にわたって モンゴル帝国に服従することになった、ロシア人 たち は この支配体制下の下で徐々に勢力を増していき、1480年には服従を正式に 拒否 して、ようやく モンゴル帝国の支配を抜け出した(p145)
・ 結果的に負けたとはいえ 第一次世界大戦でドイツが一時的にでもハートランド支配を確立したことは大きな脅威であった、そこで二度とドイツがハートランドを支配できないよう、東欧に独立国家群を設けることをマッキンダーは訴えた(p155)
・ ロシアの海洋進出を阻む 地理的障壁 は2つある 、第1の障壁は、 戦略的に重要な海域が分散している、ロシアの海岸は北極海・バルト海 ・黒海・太平洋の4つに分かれている、問題なのは 海軍力を分散して配置しなければならない。第2の障壁が 、北極海 を除いて全て 内海に面している。内海とは、陸地に囲まれ 狭い海峡によって しか 概要とつながっていない海 のことである。オホーツク海 は唯一安全な内海である、この戦略的重要性から、ロシアが日本に北方領土を返還する可能性は、今後もかなり低いと言わざるを得ない(p172)
・アメリカや フランスは、 ロシアをSWIFT(国際決済網) から締め出す 制裁を課すことに賛成したが、ドイツを含む ロシアに天然ガスを依存する国々は反対した。その後 同盟国の反発にあったこともあり ドイツは渋々 この制裁に同意したが、 ロシア国営 ガス会社 ガスプロム 傘下の銀行だけは制裁から除外するように求めた。天然ガス代金の支払いにこの銀行との決済システムが必要だったから 。欧州はウクライナへの支援金 よりも多額の代金をロシアに支払っていた(p182)
・アメリカは1898年のスペインとの戦争に勝って、キューバ・プエルトリコからスペインを排除し それぞれに 海軍基調を設けた、これにより アメリカ東海岸からパナマ運河に至る航路が遮断される危険は緩和された。イギリスの領土はまだカリブ海に残っていたものの、2つの大戦でドイツに対抗するため イギリスは海軍力を自ら本国に引き上げた点同時並行でアメリカが海軍力を急速に強化したため、イギリスはアメリカ 地中海での 制海を失った、 この時以来 アメリカ 地中海はアメリカの独壇場であり続けている(p196)
・ロシアの南下政策も、ヨーロッパ・アジア大陸で 領土拡大 → ヨーロッパ 地中海・アジア 地中海の 制海権確保という流れを取っている、アメリカ・ドイツ・日本・ロシアがどれも同じ法則で勢力を拡大した歴史があるので、 中国も日本と同じように アジア 帯域の支配に乗り出すと、 スパイク スマンは予言した。日本の場合は、1) アジア大陸で 領土拡大、2)アジア 地中海の制海権確保、 仏領インドシナ・英領マレーシア・蘭領インドネシア・米領フィリピンを占領、3)オーストラリアの中立化(オーストラリアへの空襲、 ソロモン諸島の占領)(P198)
・ モンゴル帝国が日本と西欧を 制服できなかった理由の一つは、水にあると言われる。日本に関しては、対馬海峡がモンゴル軍の移動を阻害した。欧州の場合は、単に距離が遠いことや 進行直前の指導者の急死が主要因ですが、西欧の大河が凍結しないのもモンゴル軍の行軍を遅らせた要因の一つであった(P211)
・ マラッカ海峡はアジア 地中海で一番どころか、世界で一番重要な 海峡に間違いない。 ここは 中国の総貿易量の60%と輸入 天然ガスの70%が通る 中国にとってのチョークポイントである。かつて中国は 明の時代に マラッカ海峡を支配していたがこの支配は長続きせず、マラッカは その後 、ポルトガル 続いて オランダ 、イギリスに支配された。 現在 マラッカ 海峡にある シンガポールは中立を保っているものの、どちらかといえばアメリカよりで国内の海軍基地をアメリカ軍艦の補給拠点としては 明け渡している一方 中国にはその権利を与えていない (P234)
・台湾有事の際 中国の潜水艦は宮古海峡を出て、 沖縄の南海域で 来園してくる 米軍 改定を攻撃しなければいけない そのためには 宮古海峡の通行を安全にする必要があるが、現状としてその航路上には尖閣諸島があり ここは日本の支配下にある。 そこで中国は宮古海峡までの道を安全にするため 尖閣諸島を奪わなければならない(P242)
・幕末 より前 日本への脅威は、海か陸のどちらか一方からしか来なかった。 白村江の戦いと元寇は大陸から、朝鮮出兵 は海からの脅威にそれぞれ 対応した結果であった。しかし 幕末には、 ロシアが大陸から、アメリカ・イギリス・フランス などの 欧米列強が海から同時に迫ってきた(P271)
・日露戦争で日本は、幕末 以来の安全保障の課題を全て解決した、 遼東半島を取り戻し 満州を中立地地帯化し、韓国を完全に自らの 戦力圏に組み込んだ。日露戦争後の日本は海からも 陸からも 脅かされない 非常に 理想的な状態を確立した(P282)
・ 日清戦争も 日露戦争も朝鮮 戦争も、 名前が違うだけで本質的には同じ戦争であった。日清戦争では、日本が中国と戦い それをアメリカが支援した、朝鮮戦争では立場が入れ替わり、アメリカが中国と戦い それを日本が支援した(P305)
2025年11月11日読破
2025年11月12日作成