遅塚忠躬のレビュー一覧

  • フランス革命 歴史における劇薬

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    私たちは往々にして「光と闇」という言葉を使って、ある事象の偉大な部分と悲惨な部分を冷静に両論併記する事こそが最も知的な態度であろうと傲慢に考える。しかし、本書を読んだ後の深い感動は、著者がフランス革命の功罪について網羅的に説明した上でさらに、当事者たちの思いを熱心に汲み取りその意義について読者に余すことなく伝えようとするその情熱からもたらされるものである。社会の表通りを冷笑が闊歩する今の時代にこそ読むべき名著。

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    2025年08月29日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    遅塚忠躬 ちづか-ただみ
    1932-2010 昭和後期-平成時代の西洋史学者。
    昭和7年10月17日生まれ。北大助教授,都立大(現・首都大学東京)教授などをへて,昭和62年母校東大の教授。専攻はフランス近代史,フランス革命。平成元年フランス革命200周年で日本国内委員会の責任者をつとめた。5年お茶の水女子大教授。平成22年11月13日死去。78歳。東京出身。東大卒。著作に「ヨーロッパの革命」「ロベスピエールとドリヴィエ」など。

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    2025年06月01日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    岩波現代文庫の『フランス革命』とは同じ期間を同じような分量で記述しているが、ちょっと観点が違うので両方読むと参考になる。ちょっと違う角度で同じ事件を見ると、両目による視差のようなもので、歴史の捉え方がそれだけ立体的になる気がする。読む順番はこちらの方が先の方がわかりやすいかも。

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    2025年05月05日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    歴史とは何か(岩波新書)の分析紹介本である。以前読んだが全く忘れていた。ジュニア新書のシリーズ通りわかりやすし、大学生にもわかりやすいと思われる。フランス革命を劇薬として分析している。この切り口でロシア革命、中国の共産党革命、ベトナム革命、ポルポト革命も説明できるであろう。明治維新については劇薬ではなくエリートという武士同士の争いと書いているが、官僚の末端組織としての寺院が民衆によって破壊されたところを考えるとやはり劇薬であろう。

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    2024年08月20日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    革命の功罪
     小谷野敦が名著といってゐたので。
     冒頭に、岩倉具視と明治天皇の絵画、そしてユゴーの『ラ・マルセイエーズ』内の会話が引かれてゐて目頭が熱くなった。
     フランス革命は、真に人間の尊厳を恢復するリベラルな価値観のもと、行なはれたのだと再認識した。しかし、同時にそれは多大な犧牲をもたらした。コインのやうに表裏一体の……

     これを読めば、大江健三郎が『フランス ルネサンス断章』を読んで衝撃を受け、渡辺一夫に師事して戦後民主主義者を名乗った理由が理解できる。大江は左翼といってもマルクス主義者ではなく、リベラルな価値観に根ざした人間愛を持っていたのだ。

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    2024年07月26日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    本書を通して描かれる暴力と平等への表裏一体の情熱はとても胸に響いた。この本を読んだことで民主主義とは単なる制度ではなくよりよい世界を求める運動なのだと思えた。

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    2023年11月01日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    フランス革命から人間の偉大さと悲惨さというテーマに掘り下げられていて面白い。
    明治維新は何故フランス革命のようにならなかったかは武士のみが活動に積極的でフランス革命と違い庶民を巻き込まなかったことなどが挙げられていた。
    筆者のフランス革命の劇薬説を否定するか肯定するかは読み手に委ねられているため、フランス革命をさらに勉強し改めて読みたいと思った。

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    2022年07月15日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    恥ずかしながら、この一冊のおかげでフランス革命の推移がやっと分かった。89年のバスティーユ襲撃から91年体制→93年体制→テルミドール反動までの流れと、なぜ右に左にと振れたのか。そして恐怖政治にまで至ったのかも。フランス革命を歴史の劇薬とする著者の主張も頷けるものだ。「たとえ今血を流しても、ただ未来を信じる」革命の理想はフランスの誇りだと思う。でもここでも金持ちの思惑次第だったんだね。産業革命と資本主義の勃興期だったとはいえ、ブルジョワの意向で社会が変わったなんて。

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    2022年06月15日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    ネタバレ

    フランス革命は「劇薬」だったという主張の一冊

    ▼身分制(革命の前提)
    1790年前後のフランス当時は身分性が敷かれていた。

    「聖職者>貴族>市民」
    聖職者&貴族は合わせて全体の2%程度。かなりの割合が市民

    一方で実は市民のなかにも2つの立場がある。
    ブルジョワといわれる高級市民たちは地主として農民に土地を貸したり、親方として職人を従えたりしていた。当時の制度ではお金さえ払えば貴族にもなれる。
    一方で市民の中でも下層にいる「大衆」とも言われるような市民たちはかなりの貧困の状態。

    ▼フランス革命が起こった背景
    ①vsイギリスでの劣勢
    ヨーロッパの覇権を争っていた英仏。戦争なども行って植民地

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    2022年12月01日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    著者は社会を変革する偉大な効果を発揮すると同時に、他方で独裁や恐怖政治の悲惨な痛みをもたらしたことから、フランス革命を「劇薬」と表現した。この「劇薬」という単語はまさにフランス革命の両面性を表しているように思う。

    フランス革命という劇薬が用いられた理由:
    ①旧体制の行き詰まり

    ②革命の担い手が劇薬服用を求めた
    ブルジョワとは対照的に、大衆が革命の担い手となったことで、恐怖政治の悲惨の流血を生むこととなった。

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    2022年01月29日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    自由や平等といった高い理想を掲げながら、同時に多くの人をギロチンにかけ、多大な犠牲を払ったフランス革命。フランス革命とは何だったのか。著者は、極めて有効でありながら危険な副作用も持つ「劇薬」のようなものだった、という自説を展開しながら、読者にも自分で考えてみるように促している。
    中高生の若い読者を想定しているので、とても読みやすい。17世紀のイギリス革命、19世紀の明治維新との比較もあり、その時代を生きた人々の「偉大と悲惨」に思いを馳せる。「○○年に××が起こった」というような教科書的な記述ではなく、歴史を学ぶ意義や楽しみを感じられる良い本だ。フランス革命についても、もっと読みたくなった。

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    2021年06月01日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    書き手の口調が柔らかく、伴走してくれるようでやさしい。もっと早く読みたかった。当たり。
    1、第3身分のうち上流(ブルジョワ)と下流(平民)が担い手。経済的利益を重視するブルジョワと、食料や住居など、基礎的な物資をもとめる平民とで利害が異なるため、革命後に虐殺や覇権争いが発生。
    2、革命の理念は100年かけて各国の憲法に実装された。人間の理想を求める姿勢は、ポスト資本主義を形作る要素になりうる考え方だと思う。

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    2021年01月05日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    文句なしで名著。フランス革命について、高校生くらいを想定して著述されている。概説書だが、ポイントを絞って史料を掲載し、当時の人々のナマの声を載せていてくれているのは非常にありがたい。
     ロダンの青銅時代という像に始まり、それで終わる。彼の言葉も興味深い。レ・ミゼラブルも面白そう。フランス革命は歴史における劇薬という表現を使っている。偉大と悲惨。この言葉はパスカルに由来する。劇薬とは情熱のこと。人々の熱情。
     ロベスピエールは、正義を実行をしようとした。恐怖のない徳は無力だと語り恐怖政治にとりつかれてしまった。重要なのは自らが正義だと確信した人ほど過酷な暴力を行使してしまうと言うこと。ナチス後の

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    2020年09月02日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    フランス革命の書と言うよりは、歴史そのものを取り扱っている。そのためフランス革命の流れを知るには不適。ただ、この本は著者の魂を削って書いたのかと疑うほどの迫力ある筆致がすばらしい。歴史に取り組む際の知性溢れる姿勢を学んだ。名著。

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    2014年03月16日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    岩波ジュニア新書の中から選んでなんか書けっていう大学入学前の課題的なやつで買ってた本、10年ぶりに読んでみた
    私はどちらかというと王家の動きだったり市民の劣悪な暮らしだったりに興味があったから、学校で習うような「革命を動かした人たち」のことはスルーしてきた。でもやっぱり各立場の人たちの置かれた状況を知ることで全体像が見えてくるし、あの革命はなんだったのか色々考えることができる
    学生だったころより熱心に勉強してるの、自分でも呆れるけどやっぱり知るって楽しい

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    2024年04月29日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    岩波ジュニア新書の名著であり、ジュニアの名にそぐわない本質的な内容を扱っている。

    単なる通史でなく、著者のフランス革命観や史料の検討、他国との比較といったアカデミックな歴史学の実践を味わえる点で、他とは違う貴重な本。

    ただ一方で、紙幅の都合だろうが議論が一本道で、著者のメッセージが前面に出すぎているようにも感じた。

    面白い本ではあるが、高校生のうちに読んでいればもっと面白かったはず。

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    2022年12月08日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    ジュニア新書であり言葉遣いは平易ながら、非常に高度な内容で、歴史を学ぶとはどういうことなのか立ち返らせてくれる名著。ある程度、基礎的な知識を得た大人の読者の方がより深く学ぶことができる気がする。

    本書はフランス革命を時系列に並べたような、ありふれた概説書ではない。歴史学者である著者がフランス革命の意味をどう捉えているかを解説するものである。著者はフランス革命を「劇薬」と評する。すなわち、自由・平等・友愛という人類史に輝かしい前進をもたらしたことも、断頭台に代表される血生臭い恐怖政治をもたらしたことも、ともにその効果だというのだ。そして、それらは別々のものではなく、切り離して考えることはできな

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    2022年06月09日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    遅塚忠躬(1932~2010年)氏は、東大文学部卒、東大大学院中退、北大文学部助教授、東京都立大学人文学部教授等を経て、元東大文学部教授、お茶の水女子大学名誉教授。専門は西洋史学。
    フランス革命は、世界で最も有名な市民(ブルジョワ)革命のひとつで、「自由・平等・友愛」というスローガンのもと、民衆の力で絶対君主制・封建体制を倒し、新たな近代国家体制を築くきっかけとなった一方で、独裁と恐怖政治により多くの犠牲者を出したことから、革命はフランス人にとってプラス面よりもマイナス面が大きかったと主張する人さえあり、フランスの人々の中に今も修復できない亀裂を残しているという。
    本書は、そのフランス革命を、

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    2021年10月20日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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     岩波ジュニア新書の中でも良書と評判の高いことは聞いていたので、読んでみることに。

     フランス革命は、人権宣言に代表される近代の幕開けとする評価の一方、多くの犠牲者を出した恐怖政治のマイナスを無視することもできない、今なお評価の難しい出来事である。
     そうした革命の偉大と悲惨をどうして持つことになったのか、著者は“劇薬としてのフランス革命"との仮説を元に、革命の原因、効果、影響について考えていく。

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    2021年07月25日
  • フランス革命 歴史における劇薬

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    読後感は、時分のなかにずっしりと重い塊が残った感じ。好むと好まずとに関わらず、フランス革命当時の人々は劇薬を飲んでいた。歴史における、個人の自由意志と時代の傾向の関係性など、多面的に検証と著者の考えをまとめられていた。結局、時代を動かすものは、個人と集団こ熱情の噴出だった。

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    2021年02月08日