遅塚忠躬のレビュー一覧
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革命の功罪
小谷野敦が名著といってゐたので。
冒頭に、岩倉具視と明治天皇の絵画、そしてユゴーの『ラ・マルセイエーズ』内の会話が引かれてゐて目頭が熱くなった。
フランス革命は、真に人間の尊厳を恢復するリベラルな価値観のもと、行なはれたのだと再認識した。しかし、同時にそれは多大な犧牲をもたらした。コインのやうに表裏一体の……
これを読めば、大江健三郎が『フランス ルネサンス断章』を読んで衝撃を受け、渡辺一夫に師事して戦後民主主義者を名乗った理由が理解できる。大江は左翼といってもマルクス主義者ではなく、リベラルな価値観に根ざした人間愛を持っていたのだ。 -
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ネタバレフランス革命は「劇薬」だったという主張の一冊
▼身分制(革命の前提)
1790年前後のフランス当時は身分性が敷かれていた。
「聖職者>貴族>市民」
聖職者&貴族は合わせて全体の2%程度。かなりの割合が市民
一方で実は市民のなかにも2つの立場がある。
ブルジョワといわれる高級市民たちは地主として農民に土地を貸したり、親方として職人を従えたりしていた。当時の制度ではお金さえ払えば貴族にもなれる。
一方で市民の中でも下層にいる「大衆」とも言われるような市民たちはかなりの貧困の状態。
▼フランス革命が起こった背景
①vsイギリスでの劣勢
ヨーロッパの覇権を争っていた英仏。戦争なども行って植民地 -
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自由や平等といった高い理想を掲げながら、同時に多くの人をギロチンにかけ、多大な犠牲を払ったフランス革命。フランス革命とは何だったのか。著者は、極めて有効でありながら危険な副作用も持つ「劇薬」のようなものだった、という自説を展開しながら、読者にも自分で考えてみるように促している。
中高生の若い読者を想定しているので、とても読みやすい。17世紀のイギリス革命、19世紀の明治維新との比較もあり、その時代を生きた人々の「偉大と悲惨」に思いを馳せる。「○○年に××が起こった」というような教科書的な記述ではなく、歴史を学ぶ意義や楽しみを感じられる良い本だ。フランス革命についても、もっと読みたくなった。 -
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文句なしで名著。フランス革命について、高校生くらいを想定して著述されている。概説書だが、ポイントを絞って史料を掲載し、当時の人々のナマの声を載せていてくれているのは非常にありがたい。
ロダンの青銅時代という像に始まり、それで終わる。彼の言葉も興味深い。レ・ミゼラブルも面白そう。フランス革命は歴史における劇薬という表現を使っている。偉大と悲惨。この言葉はパスカルに由来する。劇薬とは情熱のこと。人々の熱情。
ロベスピエールは、正義を実行をしようとした。恐怖のない徳は無力だと語り恐怖政治にとりつかれてしまった。重要なのは自らが正義だと確信した人ほど過酷な暴力を行使してしまうと言うこと。ナチス後の -
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ジュニア新書であり言葉遣いは平易ながら、非常に高度な内容で、歴史を学ぶとはどういうことなのか立ち返らせてくれる名著。ある程度、基礎的な知識を得た大人の読者の方がより深く学ぶことができる気がする。
本書はフランス革命を時系列に並べたような、ありふれた概説書ではない。歴史学者である著者がフランス革命の意味をどう捉えているかを解説するものである。著者はフランス革命を「劇薬」と評する。すなわち、自由・平等・友愛という人類史に輝かしい前進をもたらしたことも、断頭台に代表される血生臭い恐怖政治をもたらしたことも、ともにその効果だというのだ。そして、それらは別々のものではなく、切り離して考えることはできな -
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遅塚忠躬(1932~2010年)氏は、東大文学部卒、東大大学院中退、北大文学部助教授、東京都立大学人文学部教授等を経て、元東大文学部教授、お茶の水女子大学名誉教授。専門は西洋史学。
フランス革命は、世界で最も有名な市民(ブルジョワ)革命のひとつで、「自由・平等・友愛」というスローガンのもと、民衆の力で絶対君主制・封建体制を倒し、新たな近代国家体制を築くきっかけとなった一方で、独裁と恐怖政治により多くの犠牲者を出したことから、革命はフランス人にとってプラス面よりもマイナス面が大きかったと主張する人さえあり、フランスの人々の中に今も修復できない亀裂を残しているという。
本書は、そのフランス革命を、