【感想・ネタバレ】フランス革命 歴史における劇薬のレビュー

あらすじ

「自由・平等・友愛」を合言葉に,近代の世界史上に最大の劇的転換をもたらしたフランス革命-.この事件は,人間精神の偉大な達成である一方で,数知れぬ尊い命を断頭台へと葬った暗い影をもつ.なぜ革命はかくも多大な犠牲を必要としたのか.時代を生きた人びとの苦悩と悲惨な歩みをたどりつつ,その歴史的な意味を考える.

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

私たちは往々にして「光と闇」という言葉を使って、ある事象の偉大な部分と悲惨な部分を冷静に両論併記する事こそが最も知的な態度であろうと傲慢に考える。しかし、本書を読んだ後の深い感動は、著者がフランス革命の功罪について網羅的に説明した上でさらに、当事者たちの思いを熱心に汲み取りその意義について読者に余すことなく伝えようとするその情熱からもたらされるものである。社会の表通りを冷笑が闊歩する今の時代にこそ読むべき名著。

0
2025年08月29日

Posted by ブクログ

遅塚忠躬 ちづか-ただみ
1932-2010 昭和後期-平成時代の西洋史学者。
昭和7年10月17日生まれ。北大助教授,都立大(現・首都大学東京)教授などをへて,昭和62年母校東大の教授。専攻はフランス近代史,フランス革命。平成元年フランス革命200周年で日本国内委員会の責任者をつとめた。5年お茶の水女子大教授。平成22年11月13日死去。78歳。東京出身。東大卒。著作に「ヨーロッパの革命」「ロベスピエールとドリヴィエ」など。

0
2025年06月01日

Posted by ブクログ

岩波現代文庫の『フランス革命』とは同じ期間を同じような分量で記述しているが、ちょっと観点が違うので両方読むと参考になる。ちょっと違う角度で同じ事件を見ると、両目による視差のようなもので、歴史の捉え方がそれだけ立体的になる気がする。読む順番はこちらの方が先の方がわかりやすいかも。

0
2025年05月05日

Posted by ブクログ

歴史とは何か(岩波新書)の分析紹介本である。以前読んだが全く忘れていた。ジュニア新書のシリーズ通りわかりやすし、大学生にもわかりやすいと思われる。フランス革命を劇薬として分析している。この切り口でロシア革命、中国の共産党革命、ベトナム革命、ポルポト革命も説明できるであろう。明治維新については劇薬ではなくエリートという武士同士の争いと書いているが、官僚の末端組織としての寺院が民衆によって破壊されたところを考えるとやはり劇薬であろう。

0
2024年08月20日

Posted by ブクログ

革命の功罪
 小谷野敦が名著といってゐたので。
 冒頭に、岩倉具視と明治天皇の絵画、そしてユゴーの『ラ・マルセイエーズ』内の会話が引かれてゐて目頭が熱くなった。
 フランス革命は、真に人間の尊厳を恢復するリベラルな価値観のもと、行なはれたのだと再認識した。しかし、同時にそれは多大な犧牲をもたらした。コインのやうに表裏一体の……

 これを読めば、大江健三郎が『フランス ルネサンス断章』を読んで衝撃を受け、渡辺一夫に師事して戦後民主主義者を名乗った理由が理解できる。大江は左翼といってもマルクス主義者ではなく、リベラルな価値観に根ざした人間愛を持っていたのだ。

0
2024年07月26日

Posted by ブクログ

本書を通して描かれる暴力と平等への表裏一体の情熱はとても胸に響いた。この本を読んだことで民主主義とは単なる制度ではなくよりよい世界を求める運動なのだと思えた。

0
2023年11月01日

Posted by ブクログ

フランス革命から人間の偉大さと悲惨さというテーマに掘り下げられていて面白い。
明治維新は何故フランス革命のようにならなかったかは武士のみが活動に積極的でフランス革命と違い庶民を巻き込まなかったことなどが挙げられていた。
筆者のフランス革命の劇薬説を否定するか肯定するかは読み手に委ねられているため、フランス革命をさらに勉強し改めて読みたいと思った。

0
2022年07月15日

Posted by ブクログ

恥ずかしながら、この一冊のおかげでフランス革命の推移がやっと分かった。89年のバスティーユ襲撃から91年体制→93年体制→テルミドール反動までの流れと、なぜ右に左にと振れたのか。そして恐怖政治にまで至ったのかも。フランス革命を歴史の劇薬とする著者の主張も頷けるものだ。「たとえ今血を流しても、ただ未来を信じる」革命の理想はフランスの誇りだと思う。でもここでも金持ちの思惑次第だったんだね。産業革命と資本主義の勃興期だったとはいえ、ブルジョワの意向で社会が変わったなんて。

0
2022年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

フランス革命は「劇薬」だったという主張の一冊

▼身分制(革命の前提)
1790年前後のフランス当時は身分性が敷かれていた。

「聖職者>貴族>市民」
聖職者&貴族は合わせて全体の2%程度。かなりの割合が市民

一方で実は市民のなかにも2つの立場がある。
ブルジョワといわれる高級市民たちは地主として農民に土地を貸したり、親方として職人を従えたりしていた。当時の制度ではお金さえ払えば貴族にもなれる。
一方で市民の中でも下層にいる「大衆」とも言われるような市民たちはかなりの貧困の状態。

▼フランス革命が起こった背景
①vsイギリスでの劣勢
ヨーロッパの覇権を争っていた英仏。戦争なども行って植民地を取り合ったり。
一方でイギリスで産業革命が起こり英仏の経済力で明暗がはっきりしだしてくると、フランス国内では現体制(貴族を中心にした王政)に限界があるのではという不満が高まっていた。

②ブルジョワが求める資本主義
ビジネスで経済的に成長してきたブルジョワ層。彼らにとっては貴族は税金免除で自分たち市民にだけは税金が課されることなどには不満であり、より自由主義な資本主義的な体制がつくられていくことを求められていった。
一方でブルジョワは「貴族になりたい」という想いを持った階層でもあった。お金を払って実際に貴族になっていく者たちも多かった。なので貴族たちの現体制に反抗するモチベーションももちつつ、その体制に取り込まれるモチベーションも持ち合わせていたのがブルジョワの立場。

③大衆の貧困
ブルジョワたちだけでは「貴族への反発」「貴族への羨望」の矛盾の中で革命に踏み出せない。そこに大衆の革命意欲が重なったことでフランス革命は起こった。
思い重税の中で身分制のしわ寄せにあっていた大衆層たちは反発する理由を持っていた。

一方で革命の最初の時点で大衆層から見るとブルジョワも貴族も一緒。
「貴族↔ブルジョワ、ブルジョワ↔大衆」だったのが「貴族↔(ブルジョワ↔大衆)」という対立はしながらも貴族を共通の敵として変えていこうという動きをとった。

▼フランス革命の変革
本当のきっかけは自由主義貴族たちの王族への反抗。
当時イギリスとの覇権争いに破れかけていたフランスは財政的にも苦しく、それまで特権階級だった貴族にも課税をしようとしていた。これに反抗したのが貴族。彼らは3つの身分の代表を集めて三部会という議会を開いた。
一方で思惑と外れたのはブルジョワ層あっちが想像以上に貴族層に反発するようになった。
思惑が外れた貴族たちが武力で制圧しに来るだろうという空気が流れる中でブルジョワ以下の大衆も立ち上がりバスティーユ牢獄の襲撃などが起こり始める。その流れが大衆層の反乱にも繋がっていく

・91年体制:
最初は大衆とブルジョワで手を組んで革命を開始するも、大衆の反乱が大きすぎることからブルジョワは一度大衆と手を切って貴族と手を組む。あまりにも大衆の勢いが大きすぎるとブルジョワが持っている所有の権利も侵されてしまう。

・93年体制:
一方で保守的貴族たちがオーストリア・プロイセンと手を組んで革命を抑え込もうとしたため、「革命が失敗したら自分たちの目指すことも実現できない」と、再度揺り戻しが起こり、再びブルジョワと大衆が手を組むように。92年に王政が倒れてフランスが共和国になる。徹底革命路線に。

ロベスピエールなどジャコバン派は革命を断行するためには大衆と手を組んでいくことが必要だと特定しており、そのためにブルジョワの権利を守りつつ、大衆にも一定の情報をしていくバランスをとっていった。
例えば91年体制で完全でパンの価格は自由化をされていたが実際には談合が行われてパンの値段が釣り上げられるようなことが起こっていた。これにたいして談合を徹底的に禁止するなど。
一方で議会も複数の意見に分かれていく。もっとブルジョワ側に寄ろうとする一派や、もっと大衆側に寄ろうとする一派などを。それをロベスピエール中心に粛清していったのが恐怖政治時代。

・94年体制:
しかし大衆側は反資本主義。あまりもこちらに揺れ戻りすぎることもブルジョワにとってはマイナス。その流れから1794年のテルミドールのクーデーターが起こり、最終的にはブルジョワが求める資本主義的な共和国家に近いところで革命は終着する。

実際の民主主義的な選挙などはナポレオンの王政などを経て1850年近くになってから、生存権的な「誰しもが生きることができる最低ラインを確保して、その上で所有権を認める」というような主張などは近代の福祉国家的な思想に繋がっていっている。

▼なぜ恐怖政治、独裁は起こったのか
①議論では解決しない
そもそもにおいてブルジョワは資本主義を実現したいが、大衆は資本主義になるとより一層貧富の差が生まれるので反対。一方で大衆の力がなければ革命は断行できない。
つまり会話でこの議論を収束させることができない。それゆえに解決策としての独裁・粛清は魅力的だった。

②自分たちが「正義」と信じられる論理を持っていた。
ロベスピエールは自分たちを「一般的利益」、大商人とのつながりが強いジロンド派を「個別的利益」を追求していると定義していた。
相手は自分たちの利益を追求しているだけで、自分たちが正義なのだと。

③大衆の扇動
ロベスピエールは大衆を煽って、あいつらは個別的利益を追求しているのだから議論に攻め込んで改革しようと。
大衆の反乱で議会が成立していなかったがその勢いをも取り込んで革命を起こした背景があった。

▼日本とイギリス
イギリスでは貴族がブルジョワ化していき彼らを中心に革命が起こっていた。フランスでは革命の中心になった大衆が、イギリスでは脇役。
フランスでは平等が求められたのに対して、イギリスでは「自由」が中心になった。もともと貴族だった方々がブルジョワ的に経済面でも力を持ち、彼らにとって望ましい国家に作り変えられていった。

日本でもブルジョワに当たる大商人たちは江戸末期に発達していたが、まだ革命を起こすだけの力を持っていなかった。
そのなかで黒船がやってきて外圧により強制的に革命を起こさざるを得ない状況に。結果的に起こったのは身分制における「武士」の層を中心に革命が起こったこと。
結果的にフランスなどは下の身分の人が自分たちで権利を勝ち取っていった(回復の民権)が、日本の場合は武士が自分たちで回していた体制を革命で壊し、市民たちに上から権利を与えるという形をとっていた(恩賜の民権)

▼議会ではなく反乱
・大衆層は議会に対して代表を出していない。92年体制以降の議会でも実は議会で革命を起こそうとしていたのはブルジョワ層。
対して大衆層は議会ではなく反乱で世論を動かそうと。法や制度を帰るのではなく暴力を通じて議会に圧力をかけて、ブルジョワ中心の議会を動かそうとするということをやっていた。

0
2022年12月01日

Posted by ブクログ

著者は社会を変革する偉大な効果を発揮すると同時に、他方で独裁や恐怖政治の悲惨な痛みをもたらしたことから、フランス革命を「劇薬」と表現した。この「劇薬」という単語はまさにフランス革命の両面性を表しているように思う。

フランス革命という劇薬が用いられた理由:
①旧体制の行き詰まり

②革命の担い手が劇薬服用を求めた
ブルジョワとは対照的に、大衆が革命の担い手となったことで、恐怖政治の悲惨の流血を生むこととなった。

0
2022年01月29日

Posted by ブクログ

自由や平等といった高い理想を掲げながら、同時に多くの人をギロチンにかけ、多大な犠牲を払ったフランス革命。フランス革命とは何だったのか。著者は、極めて有効でありながら危険な副作用も持つ「劇薬」のようなものだった、という自説を展開しながら、読者にも自分で考えてみるように促している。
中高生の若い読者を想定しているので、とても読みやすい。17世紀のイギリス革命、19世紀の明治維新との比較もあり、その時代を生きた人々の「偉大と悲惨」に思いを馳せる。「○○年に××が起こった」というような教科書的な記述ではなく、歴史を学ぶ意義や楽しみを感じられる良い本だ。フランス革命についても、もっと読みたくなった。

0
2021年06月01日

Posted by ブクログ

書き手の口調が柔らかく、伴走してくれるようでやさしい。もっと早く読みたかった。当たり。
1、第3身分のうち上流(ブルジョワ)と下流(平民)が担い手。経済的利益を重視するブルジョワと、食料や住居など、基礎的な物資をもとめる平民とで利害が異なるため、革命後に虐殺や覇権争いが発生。
2、革命の理念は100年かけて各国の憲法に実装された。人間の理想を求める姿勢は、ポスト資本主義を形作る要素になりうる考え方だと思う。

0
2021年01月05日

Posted by ブクログ

文句なしで名著。フランス革命について、高校生くらいを想定して著述されている。概説書だが、ポイントを絞って史料を掲載し、当時の人々のナマの声を載せていてくれているのは非常にありがたい。
 ロダンの青銅時代という像に始まり、それで終わる。彼の言葉も興味深い。レ・ミゼラブルも面白そう。フランス革命は歴史における劇薬という表現を使っている。偉大と悲惨。この言葉はパスカルに由来する。劇薬とは情熱のこと。人々の熱情。
 ロベスピエールは、正義を実行をしようとした。恐怖のない徳は無力だと語り恐怖政治にとりつかれてしまった。重要なのは自らが正義だと確信した人ほど過酷な暴力を行使してしまうと言うこと。ナチス後の女性引き回しの写真などから指摘される。
 事件と言うより傾向が歴史を作ることもあり得る。

0
2020年09月02日

Posted by ブクログ

フランス革命の書と言うよりは、歴史そのものを取り扱っている。そのためフランス革命の流れを知るには不適。ただ、この本は著者の魂を削って書いたのかと疑うほどの迫力ある筆致がすばらしい。歴史に取り組む際の知性溢れる姿勢を学んだ。名著。

0
2014年03月16日

Posted by ブクログ

岩波ジュニア新書の中から選んでなんか書けっていう大学入学前の課題的なやつで買ってた本、10年ぶりに読んでみた
私はどちらかというと王家の動きだったり市民の劣悪な暮らしだったりに興味があったから、学校で習うような「革命を動かした人たち」のことはスルーしてきた。でもやっぱり各立場の人たちの置かれた状況を知ることで全体像が見えてくるし、あの革命はなんだったのか色々考えることができる
学生だったころより熱心に勉強してるの、自分でも呆れるけどやっぱり知るって楽しい

0
2024年04月29日

Posted by ブクログ

岩波ジュニア新書の名著であり、ジュニアの名にそぐわない本質的な内容を扱っている。

単なる通史でなく、著者のフランス革命観や史料の検討、他国との比較といったアカデミックな歴史学の実践を味わえる点で、他とは違う貴重な本。

ただ一方で、紙幅の都合だろうが議論が一本道で、著者のメッセージが前面に出すぎているようにも感じた。

面白い本ではあるが、高校生のうちに読んでいればもっと面白かったはず。

0
2022年12月08日

Posted by ブクログ

ジュニア新書であり言葉遣いは平易ながら、非常に高度な内容で、歴史を学ぶとはどういうことなのか立ち返らせてくれる名著。ある程度、基礎的な知識を得た大人の読者の方がより深く学ぶことができる気がする。

本書はフランス革命を時系列に並べたような、ありふれた概説書ではない。歴史学者である著者がフランス革命の意味をどう捉えているかを解説するものである。著者はフランス革命を「劇薬」と評する。すなわち、自由・平等・友愛という人類史に輝かしい前進をもたらしたことも、断頭台に代表される血生臭い恐怖政治をもたらしたことも、ともにその効果だというのだ。そして、それらは別々のものではなく、切り離して考えることはできないと説く。劇薬たる所以である。

フランス革命を検証するにあたり、本書は他国との比較という、歴史学では極めてオーソドックスな方法をとる。対象はライバル英国の名誉革命、我が日本の明治維新である。そして、偶然や個人の意思とは別のところにある、歴史の「傾向」がフランス革命の火をつけたと考察していく。

壮大な歴史の流れをうかがわせるが、一方でフランス革命といえば、貴族、ブルジョワ、大衆それぞれの階級の個人が大量に残した手記についても思わずにはいられない。そこには数々のドラマがあり、私などは歴史のうねりに抗う個人の思いにこそ惹かれてしまう。フランス革命は一国の歴史的事象にとどまらず、マクロな視点からもミクロな視点からも深掘りができる、人類史的なトピックだと思う。

0
2022年06月09日

Posted by ブクログ

遅塚忠躬(1932~2010年)氏は、東大文学部卒、東大大学院中退、北大文学部助教授、東京都立大学人文学部教授等を経て、元東大文学部教授、お茶の水女子大学名誉教授。専門は西洋史学。
フランス革命は、世界で最も有名な市民(ブルジョワ)革命のひとつで、「自由・平等・友愛」というスローガンのもと、民衆の力で絶対君主制・封建体制を倒し、新たな近代国家体制を築くきっかけとなった一方で、独裁と恐怖政治により多くの犠牲者を出したことから、革命はフランス人にとってプラス面よりもマイナス面が大きかったと主張する人さえあり、フランスの人々の中に今も修復できない亀裂を残しているという。
本書は、そのフランス革命を、偉大と悲惨の両面を持たざるを得なかった(独裁と恐怖政治は不可避であった)劇薬になぞらえ、考察したものである。必ずしも時系列とはなっていないが、劇薬の効果と痛みという視点から整理・説明されており、フランス革命のポイントを掴むのに有用である。
大まかな論旨、私が印象に残った点は以下である。
◆仏革命の解釈には、前半は良かったが後半に悪くなったとする「革命二分説」と、ひとつの塊と考える「革命ブロック説」があるが、著者は後者を採用する。
◆仏革命に劇薬が用いられた背景は、①古い体制(身分制、領主制、絶対王政)の行き詰まりが深刻で、対外的にはイギリスに劣位になっていたこと、②徹底的に変革を求めて、劇薬の使用を要求する人々が革命の担い手になったことである。
◆仏革命は、貴族、ブルジョワ、大衆(民衆と農民)という3つの社会層の担った3つの革命の複合体である。1787年を始まりとする革命は、貴族寄りのブルジョワ(+貴族)vs大衆寄りのブルジョワ(+大衆)、大衆寄りのブルジョワの中のジャコバン派(左翼・急進派)vsジロンド派(右翼・穏健派)、ジャコバン派の中の左派(エベール派)vs右派(ダントン派)という、いくつもの対立(その結果の追放・処刑)を経て、勝ち残ったロベスピエールも94年にクーデターで処刑され、混乱の中で99年にナポレオン独裁政権が生まれて終わりを告げた。
◆革命の中で制定された93年憲法では、直接民主制、人民の蜂起の権利の容認、生存権の優位などの原理が取り入れられた。同憲法はその後の混乱で実施されることはなかった(実施・定着したのは第三共和政下の1875年以降)が、人々の意識の変化により新しい政治文化が成長し、それはフランスの重要な遺産となった。また、この過程で、穀物価格の談合の禁止、領主的諸権利の無償廃棄などが実現した。
◆他国との比較では、仏革命は、大衆が主役となり、デモクラティックな(平等を目指す)変革であった代わりに、恐怖政治に苦しんだ。イギリス革命(17世紀のピューリタン革命と名誉革命)は、大衆は脇役であり、リベラルな(自由を目指す)変革であった代わりに、デモクラシーの達成を先延ばしにした。日本の明治維新(19世紀)では、ブルジョワも大衆も成熟しておらず、武士による「上から」の改革が行われ、殖産興業と富国強兵の影で、基本的人権の保障がなおざりにされた。
◆仏革命は、指導者も大衆も含めて、偉大でもあり悲惨でもある人間たちがあげた魂の叫びであり、巨大な熱情の噴出であったといえる。人間が(個人でも集団でも)その全人格を傾けて、ある目的のために身を捧げるという情念がなければ、世界史ではどんな偉大な事業も成し遂げることはできない。
フランス革命を劇薬になぞらえ、その効果と痛み、偉大と悲惨を考察した好著である。
(2021年10月了)

0
2021年10月20日

Posted by ブクログ

 岩波ジュニア新書の中でも良書と評判の高いことは聞いていたので、読んでみることに。

 フランス革命は、人権宣言に代表される近代の幕開けとする評価の一方、多くの犠牲者を出した恐怖政治のマイナスを無視することもできない、今なお評価の難しい出来事である。
 そうした革命の偉大と悲惨をどうして持つことになったのか、著者は“劇薬としてのフランス革命"との仮説を元に、革命の原因、効果、影響について考えていく。

0
2021年07月25日

Posted by ブクログ

読後感は、時分のなかにずっしりと重い塊が残った感じ。好むと好まずとに関わらず、フランス革命当時の人々は劇薬を飲んでいた。歴史における、個人の自由意志と時代の傾向の関係性など、多面的に検証と著者の考えをまとめられていた。結局、時代を動かすものは、個人と集団こ熱情の噴出だった。

0
2021年02月08日

Posted by ブクログ




授業でフランス革命を習ったけど、結局どんな事件だったか説明できない。そもそも、歴史を学ぶ意味ってあるの?そんな疑問に答えてくれるのが、『フランス革命―歴史における劇薬』(遅塚 忠躬) (岩波ジュニア新書)です。



フランス革命は、フランス人が新しい社会を作るために行った偉大な活動です。でも、多くの犠牲者を出した心の痛む面も持ちます。そのことを、著者は「劇薬」と表現しました。





劇薬は、飲むと効果がバツグン。でも、使いすぎると命の危なくなる薬のことです。とっても恐ろしい薬なんですが、それでも飲まなくてはいけない時がある。それがフランス革命だった……というのが本書の主張。つまり、フランス革命は避けることのできな事件だったと言っているんですよね。





 「フランス革命」というものを、単なる単語ではなく、それそものが著者の情熱のほとばしりになっているのが面白い!

著者にとって歴史を学ぶ意味は3つです。1つめは、過去と現在を比較し、今の生き方を「反省」すること。2つめは、過去から現在までの変化を知って、今を理解するための「参考」。3つめは、歴史の中に生きた人たちを知って、共感し「感動」すること。

この本は、そんな著者の「歴史の学び方実践ノート」を目の前で開いてもらえている気持ちになれます。




 フランス革命は、偉大であり悲惨な事業でした。そんな革命時代に生きた人々を知り共感や感動を覚える。その方法こそ、歴史が退屈な授業ではなく、「面白い!」に変えてくれる。

「今」を知り、「今」に役立てるという歴史を学ぶ意味を教えてくれる一冊です。



0
2020年08月09日

Posted by ブクログ

インパク知8・5
かかった時間150分くらいか?

フランス革命について書かれたジュニア新書。気になっている「世界史との対話-70時間の歴史批評」の前書きにあったので、とりあえずそこから手をつけてみた。
フランス革命を劇薬にたとえ、その功罪を語る。一貫して誠実かつ確固たるフランス革命観をもって、比較的易しいことばで(高校生の時には読めなかったと思うが笑)包括的に説明しつつ、フランス革命に象徴される「人間の偉大と悲惨」を繰り返し強調する。
とくに後半、フランス革命の功罪つまり偉大と悲惨を、人間ほんらいがもつ避けがたいものととらえ、フランスがおかれた状況や歴史の傾向のなかで、それが国全体の熱情として現れたのだと分析しているところは、ちょっと感動的でさえある。

いやあよい本を読んだ。

0
2019年11月27日

Posted by ブクログ

中高生向けの平易な本でありながら、内容はとても深いと思うし、さらなる読書・勉強・思考へと自然に誘導している点も素晴らしい。
岩波ジュニア新書って、良書が多い印象があるなあ。

0
2017年10月15日

Posted by ブクログ

映画『レ・ミゼラブル』を観た後、フランス革命に関する本を是非読みたいと思っていた。ロベス・ピエールという人物に対する見る目が少し変わった。
「すべての人間に健康で文化的な制定限度の生活を保障する」、いわゆる「生存権」を提唱したのはロベスピエールだと初めて知った。恐怖政治だけの印象しかなかったのだ。ロベスピエールこそ、フランス革命のいい部分、悪い部分両方を併せ持った、まさに革命の象徴といえる人物だろう。

0
2014年09月16日

Posted by ブクログ

評論文読書案内から。勘違いしていたんだけど、フランス革命って、もっと長い期間を示すものだと思ってました。そもそもがその程度の理解だから、登場人物も含め、目新しい情報ばかり。結局、貴族-ブルジョア-民衆の三つ巴で、あちらを立てればこちらが立たず、っていうせめぎ合いが生んだうねり、ってことかな。

0
2024年11月11日

Posted by ブクログ

フランス革命の有名人がたくさん出てくるかと思ったら違った。なんでもそうだけど、声のでかい奴につられちゃうのが人なのね。日本も1億総中流なんて時代があったけど、今じゃすっかり格差社会だもんなあ。

0
2021年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

フランス革命は人間の熱情の噴出であり、社会に良き変化をもたらすとともに恐怖政治で多くのものを失わせた「劇薬」であった。
恐怖政治を推し進めたロベスピエールの論理も、それ単独で見れば悪いものではない。生存権は何より優先されること、個人の利益ではなく公共の利益を考えること。しかしそれがよいものであるために、それを正義と盲信しすぎればそれは排除につながる。自分が正義だと信じる人間はどこまでも残酷になれる、というのは昨今の自粛警察やアメリカのデモにも通じることがある気がする。ロベスピエールといえば悪の巨魁のようなイメージだったが全然そうではなく、冷徹で理想に燃える正義漢だったのかなという気がした。生存権は第二次大戦後にやっと根づき、今もその都城にある。いつの日か、と願った彼らの理想は、いつか完遂するのだろうか。人間の悲惨さと偉大さは裏表、というのも分かる気がする。

0
2020年06月10日

Posted by ブクログ

理想を求めがちで情熱的なフランス人の気質は昔からなのだなと妙に納得した。そういったところが芸術には欠かせないのかも知れない。最後らへんの章でイギリスの名誉革命や日本の明治維新との対比について述べてるのも興味深かった。

0
2020年02月11日

Posted by ブクログ

P.157「・・・,個人の人生と,集団としての人間の歴史とでは,まったく異なる点が一つあります。それは,何千何万もの集団としての人間の歴史においては,偶然や個人の意志とは別に,ある方向に向かう「傾向」が生じるということです。」
P.179「『いつの日にか,太陽が,この地球の上で,自由な人間だけを,つまり,自分の理性以外には主人をもたない事由な人間だけを,照らすときがきっと来るだろう』」

0
2017年08月29日

Posted by ブクログ

フランス革命が少し分かるようになった。またフランス革命を通して、明治維新などについても考えさせられる。

0
2014年09月28日

「学術・語学」ランキング