尾﨑愛子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ケン・ローチ監督の映画「オールド・オーク」を観てからシリア関係の本を何冊が読んでいる。この本は映画と同じイギリスに来たシリア難民の話である。
主人公のアーヤは才能豊かなバレエダンサー、アレッポでも著名なバレリーナにバレエを習っていた。そして内戦で命からがらシリアから逃げ、途中海で遭難しかかりながらイギリスに着く。ところが父親とは生き別れ、母親も体調が悪く、弟はまだ幼いという頼れる人がいない中、運良くイギリスのバレエスクールに通えることとなり、徐々にアーヤの精神も回復し、未来に向かって力強く歩き始めるという話であった。
たびたび挿入されるバレエの動作、また踊り手の精神がバレエの根幹をなすということ、バレエの先生がユダヤ人でナチの虐殺から亡命したであることなど、ストーリの中に色んな要素が盛り込まれ、厚みのある話となっており、大変良い話だった。
日本人が難民を理解するのに適した本だった。ただしアーヤがもしバレエの才能に恵まれていなかったら、物語は悪い方にしか展開しなさそうで、あくまでお話という感じは否めなかった。 -
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児童書なので読みやすいのもあるけれど、話の展開が気になって一気に読んでしまった。
ヒトラーが政権を握ってから比較的早い段階で、この物語の主人公アンナはドイツからイギリスへ脱出する。このキンダートランスポートという救出システムのことはよく知らなかったが、イギリスの民間の救援団体が組織的にユダヤ人の子どもたちをヨーロッパからイギリスの家庭に送り込む活動のことで、実際に約一万人の子供たちを受け入れたのだそうだ。
このような全くの善意の行動があったことにまず驚かされる。
アンナはその極く一部の幸運な子どもだったけれど、頭の回転の速さと勇敢な行動によってある重大な事件を未然に防ぐことになる。でも、アンナは勇敢とは言えまだ12才で、いつもドイツに残った両親の安否を心配しては夜な夜な悪夢にうなされ、精神的にもギリギリの状態だ。不安な気持ちは頭の中の箱にしまって鍵をかけ考えないようにしているけれど、時折り不吉な予感に押しつぶされそうにもなる。その気持ちの表現が物語に上手く織り込まれているので、ハラハラする展開の中でもただの「冒険もの」にはならないで、奥行きのある小説になっていると思う。
事件のあとのアンナのその後も描かれている。
両親はアウシュヴィッツで亡くなり、パウルおじさんは生き残っていた。アンナは思慮深い子だから、自分の立場もよくわかっていて、罪悪感に苛まれる。そんな葛藤もあり、最終章は感動的だった。
小中学生にもぜひ読んでもらいたい。
ところで、リヴァーズさんとはどうなったんだろう?私も気になる。 -
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ネタバレ第2次世界大戦の児童書もたくさんあって、いろいろ読んだけれど、キンダートランスポートの話は初めて。
いい話で「こんなにうまくいかなよ」ってこともいっぱいあるけど、12歳の子の体験することとしては大変すぎて、二度とないように願わずにはいられない。
「なにが起きても、パパの明るく勇敢な娘でいるんだよ」
「幸せになるように努力しなさい。いつも人にやさしくね。あたえられた機会はすべて、最大限に生かすのよ」
2度と会えないかもしれない12歳の娘に最後に言った両親の言葉に打たれる。
キンダートランスポートで助かった子どもが1万人、命を失った子どもが150万人という事実は重い。 -
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実際に、この作品で描かれたような「冒険譚」を経験した少女がいたのかどうか、はわかりません。どちらかというと、
「YA文学」としてのエンタメ性を持たせるために創り出された物語なのかもしれません。
とはいえ、そのことは本書の魅力を減じるものではなく、ナチスの支配するドイツからイギリスへ亡命するためのキンダートランスポートに助けられる場面、イギリスにわたってからの疎開生活での苦労、両親への想い、次第にイギリスへと迫るナチスへの恐怖など、当時の少女が抱いたであろう心情がとても精緻に描かれています。
現実は救いがない結末となることも少なくありませんが、本書で語り手(アンナの孫)が「ぼくは、どうしてもパウルおじさんにハッピーエンドがほしかった。」と述懐する場面は、まさに読者の気持ちを代弁していると感じました。
この本の主人公、アンナはキンダートランスポートで命を救われましたが、実際には命を救われた子どもたちは1万人、一方でホロコーストの犠牲になった子供たちは150万人にも及ぶと言われています。両親の犠牲の上で生き残ったことに罪悪感を抱くアンナに叔父が語った言葉は、ホロコーストを生き延びたすべての人々に対するメッセージなのかもしれません。さらに広げて考えれば、戦争という行為やそれに付随する不幸の犠牲になったすべての方々への追悼とともに、今(=戦争の後に続く歴史)を生きる私たち全員が、心にとどめておくべき言葉であるかもしれません。 -
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キンダートランスポートについては、以前読んだ児童書の登場人物を通して少しだけ知っていた。
本書では主人公のアンナが、キンダートランスポートによってドイツからイギリスへ渡り、
慣れない環境の中里親家族のもとで成長していく。
ドイツからイギリスへの列車の旅も決して安全なものではなかった。
親と別れ大きな不安を抱えながらも子ども同士年上の子が年下の子の面倒を見て支えあう姿に、戦争というものの残忍さを感じずにはいられない。
アンナは同級生の偏見や里親家族の姉弟とのぎくしゃくする関係など、辛いことも両親との約束を思い出し乗り越えていく。
村にナチスが潜伏していることを発見し、ドイツにいた頃のトラウマに苦しみながらも大きな役割を果たす。
戦争は、いつでも弱い立場の者が犠牲になる。
平和であれば経験する必要もなかった苦しみや憎しみに襲われる。
授業で味見読書をする機会があれば、ぜひリストに加えてほしい一冊だ。
夏休み前には戦争に関する本を薦めるようにしている。
2023 -
Posted by ブクログ
すごくよくて、最後は涙をこらえながら読んだ。
たしかに、アーヤにバレエの才能があり、逃れた先でもすばらしい先生と出会い……という展開は、甘いといえば甘いのかもしれないけど、希望がないとなかなか先を読む原動力が生まれない。
でも甘いだけでなく、アーヤの今と、これまでを描くなかから、シリアでバレエ好きのふつうの少女として暮らしていたこと、ある日戦争がどんどん迫ってきて逃げ出すしかなくなったこと、過酷な逃避行とお父さん……、難民キャンプのつらさ、ひたすら希望のない待機を迫られる難民申請の理不尽さなどなど、きびしい現実も描かれていて、日本の入管などのことも頭に浮かび、つらくなる。
そして、そういったもろもろのことを外からの視点じゃなく、ある日突然「難民」にならざるを得なかったアーヤの視点から読むことができるのがいい。周囲の無理解や偏見を受ける心の痛み、失われた人や暮らしへの悲しみ、自分と家族の人生が「申請」と「審理」で決められてしまう絶望感、一縷の希望、そして自分だけがイギリスで踊り続けてもいいのかという罪悪感などがありありと伝わってくる。
かわいいバレリーナの(ちょっと日本人ぽい……というか、ヨーロッパ人ぽい?!)表紙だけど、踊る人にも踊らない人にも、男の子にも女の子にも手にとってほしい本。 -
Posted by ブクログ
キンダートランスポートってなんだろう?と疑問に思いながら手に取り、帯の「なにが起きても、パパの明るく勇敢な娘でいるんだよ」の言葉にひかれて購入した。
我が子を助けるためにキンダートランスポートを利用し、子どもだけをドイツからイギリスに移住させること。親元を離れ、異国の地で見ず知らずの里親たちと暮らすこと。どちらの立場で考えてみても想像を絶するつらさだ。でも、それすら叶わなかった子どもや大人がたくさんたくさんいた。そのことを忘れてはならないし、決して他人事ではなく誰にでも起こりうることだという認識をもっていなければと思った。
また、物語としてもたいへんおもしろく、ドキドキワクワクしながら読むことができた。子どもたちにはもちろん、大人にもぜひ読んでもらいたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレまたとても心に残る児童書に出合った。
何も知らない私だけれど、難民、庇護申請、などなど、このお話で教えてもらった。
世界中で起こっている紛争、戦争、そこで生まれる「難民」
それは現在も過去にも。
シリアの少女、11才のアーヤは、病んだ母、幼い弟の世話をしながら必死でイギリスへ向かうために過ごしている。
バレエを支えにして。
シリアでの平和な暮らしと、あまりにも過酷な脱出の旅が並行して語られる。
そして、過去の難民であった大人にも出会う。
バレエの描写が美しく強く哀しかった。
たくさんの大人、子供たちにこの本が読まれますように
≪ 流されて 難民への道 先見えず ≫ -
Posted by ブクログ
ネタバレシリアの内戦により、アレッポからイギリスに避難してきた家族の話。
長女アーヤの物語。
児童文学なだけあっめ、読みやすい分かりやすい。
知ってるようで知らない難民のこと。
難民とは?庇護申請者とは?
庇護申請を出し認められて初めて難民と認定されるのは知らなかった。
勉強になった。
海を渡ってイギリスに来るまでのシーンは悲しかった。
パパとの最後のシーンはキツイ。
タイタニックを思い出してしまった。
バレエを通し友達や先生にも恵まれ、幸せになってくところがよかった。
意地悪してきた子とも仲良くなれてよかった。
英語が話せなく心身弱ってく母を支え、小さな弟の面倒をみたりと
そんな子は、たくさんいるんだろーなと思った。
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Posted by ブクログ
飼い犬が野生化し、過酷な自然の中で知恵と勇気を絞って生き延びてゆく、という設定は、無情な自然に振り回されたり愛や安心を求めては挫折を味わう犬の姿にもの悲しさを感じると同時に、圧倒的な相手に勇敢に立ち向かう姿には熱いロマンを見せてくれます。
主人公のもとにやってきた子犬・ゾーヤは、愛情をたっぷり注がれる、と思ったその晩、チェルノブイリ原発事故により1日も立たずに人の力を借りずに生き延びねばならなくなります。
あらたな人間との出会い、オオカミとの逢瀬、そして子育て。やがて彼女とオオカミの血を引いた息子・ミーシャの冒険を通して、数奇な運命の環の全体像が見えてきます。
犬の視点から描かれる場面と、その犬と触れ合う人の視点での語りのバランスが良く、ボリュームのある作品ですが飽きずに最後まで読み進めることができました。
ひょっとすると、東日本大震災の後の福島第一原発事故でも、同じようなことがあったのかも、と思うと他人事ではありません。とはいえ、日本の山ではオオカミのような敵はいないと思いますから、ロシアの森林に比べれば生きやすいのかもしれませんが……
かつて人間に変われていた犬が野生化し、群れをつくって脅威に立ち向かうところなど、どことなく漫画「銀河;流れ星銀」のシリーズを思い出しました。 -
Posted by ブクログ
本書は児童書(YA向け)です。が、
これがなかなか侮れない内容なんです。
本書の主人公アンナはドイツでユダヤ人迫害が強まり、キンダートランスポートでイギリスに逃れ、里親のもとで疎開生活を送ります。
この「キンダートランスポート」私も始めて聞く言葉なんだけど、イギリスの民間救援団体が
ユダヤ人の子供達を救出して列車と船でイギリスに送る大作戦で、なんと一万人の子供達がイギリスの里親のもとへ無事受け入れられました。
この作戦の凄いところは政府公認にもかかわらず、資金は団体や個人で賄われていたことと、善意と親切心だけをたよりに遂行された綱渡りのような計画だったということです。
日本だったらどうなんだろう?
隣国の危機に命の危険があるかもしれないのに参加する人っているのかな?
里親になるのも経済的な問題もあるし…
また「キンダートランスポート」で送り出す側の親の気持ちを考えると言葉かでない。
もう二度と会えないかもしれないという気持ちを抑えて子供達を安心させるために後から自分達も行くからと…。
この後、多数のユダヤ人は死の工場といわれる収容所へ行くことになってしまうのだろう。
そして戦後、ホロコーストの全貌が明るみになる。
子供達、親達を思うと胸が詰まる思いです。
イギリスでの疎開生活は寂しさ不安との戦い。
寂しさ、不安は頭のなかの箱に鍵をかけ考えないようにするアンナの強い心が逆に切なく感じる。まだ12才なのに…
クラスメイトの言葉が印象的です。
「ドイツ人の女の子が学校に通いながらヒトラーに情報を流している。パパが言ってた」
大人が子供へ偏見や差別の心を植え付けないように意識的、無意識な発言に気を付けなければなければいけないと改めて感じた。
イギリスへ行くまでの前半は実際の子供達の手記、史実に基づいて描かれ、後半は『アンネの日記』で有名なアンネ・フランクが、もしイギリスに逃れたらと著者が想像をふくらませ作られたフィクションです。
特に後半は「スパイ小説」を読んでいるいるような緊迫感たっぷりでハラハラドキドキさせられます。
こういった善意の活動が1万人の小さな命を救ったのは本当に素晴らしいことだと思う。
その反面歴史から何を学んだのか未だに世界のどこかで戦争が行われアンナののような子供がいるのも事実。
表紙のまっすぐ前を向くアンナの表情、目にどきっとします。
未来を見据えたようなアンナの目には現代の世界はどのように写っているのだろうか?
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Posted by ブクログ
チェルノブイリ原発事故。放棄される街に取り残され野生で生きることになった子犬と、その子犬を手放すことで心に深い傷を負った女の子のお話。
犬の物語のウエイト多め。兄弟と遊んで、母犬にごちそうをもらって、のんきな子犬のストーリーからふとした時に、まるで晴天にさっと雲がかかるように一瞬で生死を分つ危険な世界に変わる野生の暮らし。
ジュブナイル小説は良作が多いと思う。自分も、10代の頃に読んでいまだにふとあれを再読したいなと思う小説がある。子ども向けの文学作品投票にノミネートされていたので読んでみたけど良かったです。もう投票は終わったけど他のノミネート作品も読んでみます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ限りなく5。
キンダートランスポートは、初めて聞く。
英国で、国の事業では有る物の、実質は民間によって、ユダヤ人の子ども達を英国の里親へと紹介、養育するというプロジェクトだったそうだ。
孫息子が戦争についてのレポを書くため、祖母に尋ね、その昔語りを聞くという体。
アンナは、ドイツで、出版社の3代目の父のもと、裕福な家で何不自由なく育ったものの・・・
このプロジェクトでケント州の農家の家庭へ。
ベッドルームが2つしかない、決して豊かとは言えない家庭が、里親に名乗り出て、精一杯の愛情を注ぐ。
ついにドイツと英国も戦争状態になり・・・
そして戦局を左右しかねない大きな事件が・・・
というお話。
あとがきで、訳者も言っていたように、友情もの、成長ものであり、スパイものであり、ホロコーストものであるという、さまざまな要素がてんこ盛り。
それでも、ぜんぜん破綻していないのが素晴らしい。
一気読み確実。
アンナは孫がいるくらいなのだから、無事に曲面を乗り切ったことはわかっているのにねw
アンナの姿勢、とにかく命あることに感謝し、全力投球する姿勢は、シニアになった私も励まされる。
できることなら少女の頃に出会いたかったな。
著者は小学校の教師を務め、その中でキンダートランスポートの女性に出会い、着想を得たという。
フィクションながら、キンダートランスポートの当事者の手記などを使たとか。
英国へ向かう車内での出来事が、事実だということには、驚かされた。