小河原誠のレビュー一覧
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この本では主にプラトン、ヘーゲル、マルクスが批判されていました。この3人はポパーが本書を執筆していた時代にはすでに権威と化していた。ポパーはあらゆる情報源に権威はない、どのような情報源だろうと何ものも批判を免れないと言っている(事実、基準そして真理。相対主義へのさらなる批判)。これは彼がリスペクトするカント譲りのもので、カントこそはキリスト教の権威にも臆さず、黄金律と呼ばれていたまやかしの道徳を批判した。ということはプラトン、ヘーゲル、マルクスがどのような権威だろうと、批判すべき箇所があるなら批判すべきだし、彼らだって批判を免れない。そういったわけでポパーは果敢に批判をした。何で彼がこんなに
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ネタバレ注意、長文
ポパー哲学の解説書にして入門書。
ポパーは、全てが批判に開かれている、それゆえに安全が確保されている開かれた社会という理念を擁護し、逆の自身に何らかの権威を付与したり、力づくで批判を不可能にするそれゆえに安全が確保されない閉じた社会やその担い手達を批判した。
また昨今はやたらとエビデンスというものが強調されるが、それについての小河原氏の意見も聞くべきものがある。ポパーはまさにそのようなものを批判した。
■第一章 若きポパー
科学と非科学の境界線、反証可能性、ヒストリシズムの倫理、本質主義の弊害といったポパーが生涯にわたり思考し続けた哲学的議題は、若い頃から存在していた。
ポパ -
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ネタバレ優秀な指導者が国を導くべし
一番賢い人が国を統治すべし
民族の英雄が国を率いるべし
今なお人気なフレーズですが、とんでもないワナが隠されてます。そして、国が詰んでしまう。
自由と民主主義って大事なんだなって気付かせてくれる。
しかし、自由と民主主義は大事なんだよ!と言っても、具体的にどう大事なのか説明できる人ってあんまりいないじゃないですか。
で、そこを開かれた社会の敵につけこまれる。
「ほらみろ、自由の賛美者も自由が何か分かってない」
「個人主義者は周りの人間のことを考えられないエゴイスト」
「国が発展するなら独裁者率いる全体主義だっていいじゃないか」
「私達は自由という放埓と無秩序か -
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ネタバレ!注意!
きつい言葉を使用した感想なので、読む場合は注意してください。
本書はヒストリシズム(歴史法則主義、歴史信仰などと訳される)の弾劾と、非人間的、権威主義、暴力的統治、圧制や抑圧こそを善しとする閉じた社会の共感者「開かれた社会の敵」を分析し、自身の理性を使い、話し相手の理性も信頼し、自分が間違ってるかもしれないという謙虚な態度を持ち、民主的な改革を望む人達が、閉じようとする勢力にどう対処すべきか解決策を模索するようにできている書です。
ヒストリシズムというのは、歴史には最初から目的があり(共産主義社会の実現に向けて動いている等)私達には知られていない私達を影から動かしている法則と -
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知的誠実さが極めて高い論証を読みたい人におすすめ。
ヒストリシズムや本質主義、自然主義に依拠するあらゆる言説を批判するとともに、プラトンが全体主義と酷似した政治理論を提示したことを論証する。
対して、個人の権利や自由を保証するために国家が必要であるとする「保護主義」を擁護するとともに、保護主義がプラトンに遡って不当に批判されてきたことを示す(不当な批判としては、個人主義と全体主義、利己主義と人道主義の関係を整理し、それぞれの組み合わせが可能であるにもかかわらず個人主義と利己主義を同一視して人道主義の義憤を促すといったものがあった)。
カントについて触れた、自然科学の人間中心的な説明も面白く -
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岩波文庫で500ページ超×4分冊の構成になるようだ(まだ1冊目しか出版されていない)。
ナチズムの虎口を脱したポパー(1902-94)は、亡命先のニュージーランドで、左右の全体主義と対決し、その思想的根源をえぐり出す大著の執筆に着手した。その第一巻では、プラトンを徹底的に弾劾、大哲学者を玉座から引きずりおろすとともに、民主主義の理論的基礎を解き明かしていく。政治哲学上の主著の全面新訳。全四冊。
構成は、第1分冊(本書)と第2分冊で第1巻「プラトンの呪縛」を、第3分冊と第4分冊で第2巻「にせ預言者ーヘーゲル、マルクスそして追随者」をカバーしている。500ページのうち本文は300ページで著者注