豊永浩平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自分の苦手なザ・文学だったけど(いわゆる芥川賞ノミネート作品系)、自然と引き込まれていく内容と構成だった。
時代もシチュエーションも目線も時代をジャンプしていったり来たりするなかで、それでもつながる一本の線。その根底というか背景に横たわるのはあの戦争の記憶と惨禍。直接的な被害も間接的な被害も、そこから次世代までつながる哀しみも。
時代は変われど変わらない、変われない、消せないものもある。
僕らにできることは知ることと忘れないこと。ありきたりだけど。
あ、最初にも言ったけど、これ芥川賞ノミネートで良くない?と思うほどの、今年読んだ中でも上位の刺さり度だった。 -
Posted by ブクログ
またものすごい新人登場。
作者がどんな人物なのか知りたくなる
ほどの傑作。
今年読んだ中でNo.1。前回の芥川賞の候補にあがらなかったのはなぜ?少し遅かった?芥川賞はこれでしょう。
章の最後を数珠繋ぎにすることで、世界の連環を示唆し空間と時間を自由に行き来する。
このアイデア!
沖縄が舞台なのが、またいい。
大戦のおそらく最も悲惨な現場であり、現代のおそらく最も困難な現場である沖縄。マジックリアリズムが生き続け、リアリズムが人々を翻弄し続ける沖縄。
矛盾を抱えた沖縄が重層的に語られる。
しかも、この切れ味。
この読みやすさ。
この人はどんな話し方をするのかな。
どんな人生を生きてきたのか -
Posted by ブクログ
古川日出男の小説を思わせるドライブ感で沖縄の近現代を生きた名も無き人々の声を召喚してみせた作品。一つのエピソードの脇役が別のエピソードの主役になっていく展開など構成上の工夫も見事だが、本作が切り出してきた「現場」のアクチュアリティには感心させられた。沖縄戦の時代から始まり、朝鮮戦争、ベトナム戦争、「本土復帰」、1990年代の沖縄がそれぞれ経験してきた出来事を背景に、懸命に、しかし決して仕合わせには生きられなかった人々の声が畳みかけるように、折り重なるように積み上げられていく(逆に言えば、それだけ沖縄の近現代史は惨酷な記憶が累々と積み重なっている、ということだ)。リサーチ力も筆力も卓越していて
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購入済み
群像新人賞受賞作品でセンスの良いタイトルに引かれて購入。特徴的な語り手の切り替え方とキャラクターの書き分けが素晴らしくて、久しぶりにわくわくしながら読んだ。最近の若者言葉小説はわたしには読みにくく興味が待てなかったので、こういう小説らしい小説が出てきてくれて嬉しい。