【感想・ネタバレ】はくしむるちのレビュー

あらすじ

デビュー作『月ぬ走いや、馬ぬ走い』で群像新人文学賞と野間文芸新人賞をダブル受賞した大型新人が、圧倒的な筆力で描く衝撃の長篇第一作!
暴力が支配する世界に、「ヒーロー」は現れるのか? 戦争の傷が刻まれたこの島で、新しい地図を描くための「戦い」がはじまる。

きみは沖縄に生まれ育ち、ウルトラマンに憧れるオタクになった。小中学校とエスカレートする「いじめ」を生き抜いたきみは、この島を分断する「壁」に向かって、ある「計画」を実行していく――。
沖縄の今を生きる少年少女と、80年前の戦場を生きた少年兵たち。ともに白紙のような彼らを呑み込んでいく巨大で残酷な暴力に、どう立ち向かうのか?現代と戦中戦後の時空を交差させて描く、鮮烈な青春小説にして、新しい世界文学の誕生!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 2024年に『月ぬ走いや、馬ぬ走い』で群像新人賞を受賞した著者の2作目。ファミリー・ヒストリーに沖縄と戦争にかかる歴史を織り合わせていくスタイルは前作と同様だが、ポップカルチャーとストリート文化の援用がより前景化されていることが目を引く。

 ストーリーは、戦時下の沖縄でも沖縄語を使い続ける徴として「赤インコ」と呼ばれた少年と、彼の死によって生きることができた修二の縁から始まった時間を縦軸に、その孫世代の少年少女が「高い壁」が立ちはだかる現代の沖縄の「生きづらさ」に取り込まれ、対峙していくかたちで展開する。酷い苛めの被害者だった行生がグラフィティ・アートの担い手として想像力にこの島に「タグ」を付けられるようになっていく一方で、行生を守るヒーローになりたかった端人、不良グループの末端でちょっかいを出し続けたことで行生に背負い投げを喰らわされたキサキの「出口のなさ」の方が印象に残るのは、若い人間に安直な希望を託さないという著者の固い決意のあらわれなのだろう。
 クライマックスの琉球舞踊の場面で、数百年続く女性たちの苦難を一身に引き受けたように倒れ込む少女のありようは、演じる身体の中に演じられた人々の記憶が流れ込んでいくという点で、町屋良平の『生きる演技』とも響き合う。

 異なる時間を生きた一族の生をサンプリングするようにつなぎ合わせた前作に比べ、息の長い描写や語りも多く取り入れられていて、著者としての挑戦の意気込みが感じられてすがすがしい。語り手が行生を「きみ」、修二を「お前」と名指していく語りの企みはあまりうまくいっているとは思えないが、著者が「書くこと」の地平を拡げたいという努力はひしひしと伝わってきた。

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2026年02月15日

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