矢野アロウのレビュー一覧
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第十一回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作である。短い作品だがアイデアがてんこ盛りで、凝った設定となっている。ガール・ミーツ・ボーイがあり、取っつきにくい作品ではない。
大昔の超文明によって人工的に作られたと思われる超巨大ブラックホールの調査がおこなわれている。特別な装備でブラックホールへと降下する役目の少年イオは、過去・現在・未来を見通す前後に分かれた脳を持つパメラ人である。この特殊な能力と彼の主観が、この作品の重要なポイントだ。
主人公の少女シンイーは、イオとコンビを組む惑星カントアイネ出身のスゴ腕の狙撃手。彼女の標的は、イオの活動の妨げになるネズミと呼ばれる存在(ブラックホール近傍にあらわれる幽霊みたいなもの)である。ネズミが発生する理由というか謎が最後のほうで重要な意味をもってくるのだ。
過去のシーンは詩的に表現されているし、ラストはきれいに纏まっている。 -
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下巻。月で見つかったルナボディに頭部を移植してキメラになった人間第一号は、持ち前のカリスマ性をもって世界に影響を与えようとする。各地で起きているアメリカとロシアや中国との争いを止めようと、ギルドメンバーを集め、宇宙に出ようと。下巻になりストーリーは飛躍。
世界に何人ものキメラがつくられ、彼等の移植手術はうまくいくものの、だんだんと共通の思考の特徴を見せる。ここで、体の細胞が脳の細胞に与える影響についての推理など、登場人物が脳科学者である設定が生きてくる。ほかに、Vチューバーとしてメタバース世界で人気を誇る身体障害者という別の登場人物の設定も活きてくる場面もある。だんだんと物語がある一点に集結してくる。CIAの妻と中国スパイの夫の掛け合いが癒やしになってくるが、やや漫画的。
設定がグローバルだが会話や人物の持つセンスが日本語的なのがやや気になる。と細かなところが気になってくるくらい、サイドストーリーや設定を詰め込みすぎな感じはあるかなぁ。一つ一つがあっさりすぎていき、人物同士の会話もグッとくるものがなくて、ストーリーがただ運ばれていった感があるかなぁ。グッドエンドなのだろうけどもすっきりしない…。
ただ、プロットはたぶん面白いし要素や仕掛けも面白い気がするので、映画もしくはドラマなど、映像化したらもしかしたら面白いのかもしれない。あるいは漫画…?視覚的に見れば、サイドストーリーや登場人物の多さも整理されるかもしれない。 -
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月の裏側で見つかった頭部のない死体、各国の思惑渦巻くなか、中国のスパイ・ヤンジャンミン、そしてその妻CIAのイザベラ、タイの脳科学者ジャム、IT黎明期の実業家アレクサンダー・コーツ、車椅子の少女ミント。地政学的に思惑の渦巻く大国同士の出し抜き合いと、そことは一番無縁に思える大乗仏教国家タイ。少年少女の甘酸っぱい恋も交えつつ、広げた風呂敷をどう閉じるんだと思いながら、
大いなるホラと、時折現れる蘊蓄とウイットを楽しみながらも、頭の良い新人さんらしい冗長さに振り回されながら、単行本1000ページ超えに付き合った結果の着地点は…
・最後ようやくSF大作を思わせる良いシーンとなったら、一気に急ぎ足で畳みすぎ
・犠牲が1人必要だったとしても、あの魅力的なサブキャラを途中退場させる必要はなかったのでは?
・急いで畳みすぎたせいで、あれこれ回収されない消化不良感
ところどころ良いシーンもあるし、設定もすごく良いんだ。もう少し削るところ、しっかり書き込むところのバランスが取れてれば、もっと名作になったのではなかろうか。
最後の最後の終わらせ方は良いのに。
それ以外が惜しすぎて、あと帯が違う方向に煽りすぎて、名作になりそこねた大作。
三体やらプロジェクトヘイルメアリーと比肩するとは思わずに、蘊蓄語りものすごい小説版浅野いにをと思って手に取ることをお勧めします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとにかく気になるのが、高い場所に行ったら位置エネルギーを発散したくなるとか、これこれのデータから換算して人間1人には25ヘクタールだかなんだか決まった領域が与えられているなどといった謎理論や謎のなぞらえの数々。
まぁ前者は作中でも普通の人なら首を傾げるみたいな事を言われてますが、そういう、とにかくずれたような解釈が散見されて、読めば読むほど鬱陶しい。
大口のブラックバスは唯一納得できて、良い理論。
そして物語が弱いです。
南井真一が好きなのですが、雑に伝聞で殺されるのは本当勿体無いと感じました。
ミントが思いがけずサスペンスに巻き込まれるのとか、コーツが神秘小屋の上に立って待ち構えてるのとかは面白かったので(その後の展開はあっさりしすぎてるけれど)とにかくこういう予想外でインパクト抜群な臨場感ある展開を増やした方がいいと思います。そればかりし過ぎて逆張り主義になるのもよろしくないですが、良い塩梅でもっとインパクトを作ってほしい。そうしてるつもりなら、まだ閾値に達しておらず足りないです。
知識は相応に備わってると見受けられますので、続編作るつもりなら物語や人間機微についてもっと勉強して欲しいと思いました。
変な帯書かれたせいで負担は大きいと思いますが、がんばって!!
ヂャンミンとウェイルゥのコンビ好きなので本当に続編出すならいっぱい絡み出してください。というわがまま。伝われ〜 -
Posted by ブクログ
プロジェクト・ヘイル・メアリーと比較すると盛り上がりが始まるまでの助走が長めで上から下巻の中盤ぐらいまでは伏線回収に向けた説明パートとでも言える内容で、「大丈夫か?!これ大丈夫なのか?」と思いながら読んでいた(読み続けられる程度には面白かったが)
しかし下巻の中盤からは怒涛の伏線回収でドキドキワクワクが止まらず「これこれー!」という感じで最後まで読み切った。
「頭部のない遺体」という余りにもヒキのある事象の答えとしては、成程と唸る部分もありつつ若干のスケールの小ささが気にはなったものの、ミントの活躍には涙が出たしSFらしい爽快感もあって良かった -
Posted by ブクログ
2026.08.06
読む前からものすごいページ数に圧倒されたが、翻訳のSFと違って文章は圧倒的に読みやすかった。
4人の主要登場人物たちの生い立ちや日常の描写が長すぎて、上巻の残り150ページくらいでやっっっとストーリーの核心が動き出したという感じ。
ジャムの教授との関係は別に要らなかったと思う…。ちょいちょいそういうストーリーに関係なさそうな人間関係や過去の想い出などが挟まれるので、それ以上に大事な部分を読み飛ばしてしまっている気がする。それが伏線なのかもしれないが、長い…。
200ページ台で急に姿を消したアレクサンダー・コーツが第2部でまさかの展開になり、すぐさま下巻に突入した。
読みやすいし面白いけど、いまのところ読む手が止まらない徹夜本という感じではない。約1週間かかってやっと上巻を読み終えられた。この先の展開に期待! -
Posted by ブクログ
2026/07/27〜2026/08/09
「最後の展開について行けなかった」という感想を目にしたが、寧ろ自分には終盤に向けた展開を見越して様々な設定が準備されていたのだと思った。
ジャムのフリーダイバーとしての経験も、ミントの幻肢2.0も。
ウクライナ危機、グリーンランドに食指を伸ばすトランプ大統領。現実が第三次世界大戦に向けて進んでいるような危機感があるからこそ、この物語が全くの絵空事だとは思えないようなヒリつくリアリティをもって迫ってくる。
この作品に描かれたグランドカタストロフを起こさないことこそ、この時代を生き、この本を読んだ僕らに課せられた宿題なのだろう。
ごうほう‐らいらく〔ガウハウ‐〕【豪放×磊落】
[名・形動]《「豪放」も「磊落」もほぼ同じ意味》度量が広く大胆で、小事にこだわらないこと。また、そのさま。「豪放磊落な性格」