矢野アロウのレビュー一覧
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SFものの群像劇として、最後の展開には想定の上をいくアツさに盛り上がりつつ、ここまで深ぼってきたキャラクターの体験や思考が活かされていくカタルシスを感じられたのかが良かった。あとやはり推しの力はすごい。それぞれのキャラクターにもとても愛着が持てた。「なぜ宇宙を目指すのか」をSF的な設定の中で、長い歴史のある人類史のこの先をどう生き抜いていくべきかという「種の生存」の問いかけや、「意識とは何か」という哲学的な問いかけを様々なエピソードの中で考えられた。他の方もコメントされているように冗長で長すぎる点と、帯コメントによる期待値が上がりすぎてしまったことは、約1000ページという大ボリュームを読み進めていく上では読後に物足りなさを感じてしまった。
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プロローグ
月面裏で発見された謎の構造物
その構造物の中には複数の頭のない遺体が
その遺体を調べると異星人の様相を呈していた
死にゆく人間の頭とその遺体を結合すると、蘇る!
この荒唐無稽の御伽噺にどう向き合うか
我々の度量が試される一冊ではあるのだが果たして
本章
『マイボディ・オン・ザ・ムーン』★4
上下巻合わせて1,000頁強、長尺の割に読ませるには読ませるのだが…
色々詰め込んでいるが、結局は未知の首無し遺体であるルナ・ボディと終盤で登場する細胞L*は、故郷であるペガサス座51星へ帰りたかったのではないかというお話し
帯には、『三体』や『プロジェクト・ヘイル・メアリー』に並ぶ云々…と謳っているが、そこは持ち上げ過ぎ
期待値を上げ過ぎたのは勿体ないところ
前振りなく普通に読んだら、普通に良作かと
早川書房、大ヒット作!欲しかったんだろうな〰
エピローグ
これ言うと身も蓋も無いが、本作の衝撃はエピローグにある
さも、続編を匂わせつつの衝撃的な終わらせ方だ
こういうエンディングなら、本作をキュッと絞って一冊に集約し、期待膨らむエンディングからの続編に持っていった方がよっぽど良かったのに!!!
雨雲だらけの夜空を見上げながら
そう思った!!!
完
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ネタバレ下巻からは、地上に降ろされたルナボディが世界にもたらす影響が描かれる。
キャラクター各人の行動と、世界情勢、ルナボディをめぐる謎が混ざり合いながら進んでいく。中心となるのはルナボディとのキメラにされたコーツの周辺だけれど、いろんなことが起こるし、話と場面があちこちに飛ぶので細かいところをどんどん忘れていってしまうのが難だった。1回通しただけだからまだ消化不良な感じ。この感想はパラパラ読みしながら書いたので、内容が違っていたらごめんなさい。
世界の状況は… 第一部の終わりは2025年、第二部はその5年後。2030年グリーンランドにロシアが侵攻し戦争が勃発する。(ウクライナは2025年にロシアの領土拡大で決着している) ロシアのバックには中国。そしてタイに建設されるランドブリッジ(マラッカ海峡の代替となる陸橋)をめぐる米中の駆け引きなど、国家間はごたごたしている。
メインの4人はこんな感じ。
・ヂャンミン … 国連安保理に参加させられたり、コーツが作り上げた《コスモエイジ》という団体へ潜入させられたりなど。(やはり糊的な存在)中国から受け取る指令がビデオテープなのがスパイものみたいで面白かった。彼が開発した物質解析プログラム《カロカガティア》に関連して、ヒトの視神経は光子を捉える網膜細胞の数よりずっと少ないから、脳は経験で視覚を補っているという部分、人間のとらえる世界の狭さ、見えないもの書かれていないものを見るべしというのは、作品のテーマでもあるのかな。
奥様はCIAの凄腕ハッカーのイザベラがミントちゃんの乗る自動運転AIをハッキングしてとんでも機動で封鎖突破させるのもカッコいい。プライベートでは夫婦でエヴリンの学校選びに苦慮している。おそらくだけど、彼女は特殊なクラスになるんだろうな…という描写がみられる。
・ジャム … ルナボディと付着している細胞L*の謎を解き明かすとても重要な役割。彼女が心を寄せ観察した南井真一の経過は衝撃的だったな。罪と罰と生と死と。彼女は物語の終盤で、父親のノイを助けるために、とんでもないフリーダイビングミッションに挑むことになる。そこで彼女は自分が救いたかったのは何かを確かめることになる。彼女の映画「アルマゲドン」についての見解にはうんうんと頷くものがあったよ。パスタやカニをおいしそうに食べるところも好き。
・ミント … 政治情勢や大人たちの行動に巻き込まれていくミントとハルキ。ふたりは人気VTuber〈地獄のベティちゃん〉のアカウントを密かに引き継いでいたが、コーツのスキャンダルが飛び火して炎上し、その結果、地元にいられなくなったハルキと離れ離れになってしまう。《コスモエイジ》の一員となったハルキにはるばる会いに行ったのに冷たくされて傷つくこともあったけれど、ジャムの挑む高難易度ミッションの要を担う立役者となり、また前を向き始めた。めちゃ応援しちゃう。現実世界と仮想空間とのふたつの世界をこれからどんなふうに生きていくんだろう。
・コーツ … 下巻はほぼコーツとルナボディの謎についての話なのだ。コーツは部下に嵌められ、その頭部だけをブラウニー生命研究所という場所で保管されていた。ルナボディに人間の頭部を繋ぐ実験をすることになった時、候補になったのが彼。なんと、執刀は彼の息子。妻のマチルダがその経緯を推察したように「コーツ家と異星の陰謀」が本のサブタイトルでもおかしくない。望まずに異星体とのキメラとなってしまったコーツだが、部下に乗っ取られていた自分の会社(仮想空間『ディオマタス』を運営する一大テック企業)を奪い返し、《コスモエイジ》という団体を立ち上げる。目的は恒星間飛行。とんでもないおじさんで、正直あまり好きではない人物。バイタリティというか単純なベクトルの強さというか。とてもアメリカン(開拓者)なイメージがある。ジャムの父ノイとのランドブリッジマラソンが印象的。
ルナボディは異星種族が月に置いていったもので、そのボディは人間との親和性が高いどころか、超免疫力まであることがわかった。うまくいけば、ダメになった体を取り換えて延命することができるかも? そんな独裁者が大喜びしそうな代物なのだ。ちょうどおりよく人体を冷凍保存するシステム、アモルファス励起装置というのも開発されている。そりゃ使ってみたくなるよね。ということで、中米ロの大国はボディを分配して実験する。アメリカ大統領は実験体のコーツを英雄として、国民の分断をまとめるための“物語”として利用する。ロシアでは超免疫力を持つ疲れを知らない兵士として軍事利用する。
しかしだ。そんな得体のしれないものは気軽に使っちゃいけないと思うんだよね。ボディのほうは脳に合わせて姿を変え、脳のほうはボディとの接続を担う細胞L*の影響を受けることがわかってきた。異星の細胞と共生することは“自分”が変容するということ。ルナボディと細胞L*は故郷に帰りたい。そう、ペガサス座51星へ。そのせいでコーツは恒星間飛行を目指す《コスモエイジ》を立ち上げた。細胞L*はルナボディとの接続者だけではなく、鼻や口を経由して人間の脳に感染する。たぶん意図的に汚染された食肉を介して。そんな中、ロシアの宇宙基地から発射された飛翔体をきっかけに、世界7都市に核爆弾が投下される。おそらくそれも細胞L*による地球脱出だったのでは…と思われる。
第3部は核の爆撃にあった都市の悲惨な惨状も描かれるが、登場人物たちの日常は続いていく。《コスモエイジ》が造り上げたロケットは飛ぶのか、ジャムとミントは愛する人を助けられるのか、エヴリンはヂャンミンをパパと呼んでくれるのか。
以下ネタバレ大きい感想
・日本の活躍の最優秀賞→明治「マーブルチョコ」
・感染する細胞L*がヒトを別のものに作りかえていく…という部分は、帯に「天冥の標」の名があったのも納得。宇宙に自分たちの遺伝子を拡散しつつ宇宙を渡るのにもっとも効率良いのは、宇宙戦争を仕掛けて支配領域を広げるのではなく、寄生していくというやり方。
・「三体」ぽさは延安洞穴とか仮想空間のゲーム〈ディオマタス〉と現実とのつながりとか、AIエージェントとか、量子コンピュータ《銀角》の存在だろうか。《銀角》のヒトの脳と直結するのすごかった。
・続きがきになるけど、戦争が続いていて地球も社会もぼろぼろっぽくなるので、どんどこ細胞L*に感染させて、なんか宇宙に行きたいから戦争は無駄!みたいな流れに…ならないだろうな。ディストピアな世界が始まったらいやだな。
・人間の脳についてあんまり知らないのだけれど、知覚情報の処理とか、意識とはなにか、自分が見ている他者とはなにかとか、哲学っぽく考えたくなる。
・「星を継ぐもの」的な部分、次点は地球外生命体による地球人への影響かなあ。ペガサス51星人は大昔から密かに地球にいたんだね。タイの僧侶みたいな「覚者」というのが、地球のほかの場所にもいるんだろうか。人類がオウムアムアと出会う事が「扉が開く」ことだったんだなぁ。 -
Posted by ブクログ
第十一回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作である。短い作品だがアイデアがてんこ盛りで、凝った設定となっている。ガール・ミーツ・ボーイがあり、取っつきにくい作品ではない。
大昔の超文明によって人工的に作られたと思われる超巨大ブラックホールの調査がおこなわれている。特別な装備でブラックホールへと降下する役目の少年イオは、過去・現在・未来を見通す前後に分かれた脳を持つパメラ人である。この特殊な能力と彼の主観が、この作品の重要なポイントだ。
主人公の少女シンイーは、イオとコンビを組む惑星カントアイネ出身のスゴ腕の狙撃手。彼女の標的は、イオの活動の妨げになるネズミと呼ばれる存在(ブラックホール近傍にあらわれる幽霊みたいなもの)である。ネズミが発生する理由というか謎が最後のほうで重要な意味をもってくるのだ。
過去のシーンは詩的に表現されているし、ラストはきれいに纏まっている。 -
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内容てんこ盛りの近〜現代〜近未来を舞台にしたSFで、月面で見つかった首の無い人類ぽい生物を巡るあれやこれやが、時代と地域をあっちゃこっちゃして展開されるが、いかにも盛り込み過ぎ感が強い。脳科学がひとつ大きなテーマで読んでてつまらなくは無いし、むしろサクサク読めてしまうのだけど、いかにも500ページ超上下巻は長すぎる。現代のウクライナやグリーンランドの地政学的問題も盛り込まれ、このエピソード必要?とツッコむこと多々あり、もっと短くできなかったものか。これから下巻を読むけど、これで結末がガッカリだったらどうしてくれよう(どうにもしないけど)。
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下巻。月で見つかったルナボディに頭部を移植してキメラになった人間第一号は、持ち前のカリスマ性をもって世界に影響を与えようとする。各地で起きているアメリカとロシアや中国との争いを止めようと、ギルドメンバーを集め、宇宙に出ようと。下巻になりストーリーは飛躍。
世界に何人ものキメラがつくられ、彼等の移植手術はうまくいくものの、だんだんと共通の思考の特徴を見せる。ここで、体の細胞が脳の細胞に与える影響についての推理など、登場人物が脳科学者である設定が生きてくる。ほかに、Vチューバーとしてメタバース世界で人気を誇る身体障害者という別の登場人物の設定も活きてくる場面もある。だんだんと物語がある一点に集結してくる。CIAの妻と中国スパイの夫の掛け合いが癒やしになってくるが、やや漫画的。
設定がグローバルだが会話や人物の持つセンスが日本語的なのがやや気になる。と細かなところが気になってくるくらい、サイドストーリーや設定を詰め込みすぎな感じはあるかなぁ。一つ一つがあっさりすぎていき、人物同士の会話もグッとくるものがなくて、ストーリーがただ運ばれていった感があるかなぁ。グッドエンドなのだろうけどもすっきりしない…。
ただ、プロットはたぶん面白いし要素や仕掛けも面白い気がするので、映画もしくはドラマなど、映像化したらもしかしたら面白いのかもしれない。あるいは漫画…?視覚的に見れば、サイドストーリーや登場人物の多さも整理されるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
月の裏側で見つかった頭部のない死体、各国の思惑渦巻くなか、中国のスパイ・ヤンジャンミン、そしてその妻CIAのイザベラ、タイの脳科学者ジャム、IT黎明期の実業家アレクサンダー・コーツ、車椅子の少女ミント。地政学的に思惑の渦巻く大国同士の出し抜き合いと、そことは一番無縁に思える大乗仏教国家タイ。少年少女の甘酸っぱい恋も交えつつ、広げた風呂敷をどう閉じるんだと思いながら、
大いなるホラと、時折現れる蘊蓄とウイットを楽しみながらも、頭の良い新人さんらしい冗長さに振り回されながら、単行本1000ページ超えに付き合った結果の着地点は…
・最後ようやくSF大作を思わせる良いシーンとなったら、一気に急ぎ足で畳みすぎ
・犠牲が1人必要だったとしても、あの魅力的なサブキャラを途中退場させる必要はなかったのでは?
・急いで畳みすぎたせいで、あれこれ回収されない消化不良感
ところどころ良いシーンもあるし、設定もすごく良いんだ。もう少し削るところ、しっかり書き込むところのバランスが取れてれば、もっと名作になったのではなかろうか。
最後の最後の終わらせ方は良いのに。
それ以外が惜しすぎて、あと帯が違う方向に煽りすぎて、名作になりそこねた大作。
三体やらプロジェクトヘイルメアリーと比肩するとは思わずに、蘊蓄語りものすごい小説版浅野いにをと思って手に取ることをお勧めします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとにかく気になるのが、高い場所に行ったら位置エネルギーを発散したくなるとか、これこれのデータから換算して人間1人には25ヘクタールだかなんだか決まった領域が与えられているなどといった謎理論や謎のなぞらえの数々。
まぁ前者は作中でも普通の人なら首を傾げるみたいな事を言われてますが、そういう、とにかくずれたような解釈が散見されて、読めば読むほど鬱陶しい。
大口のブラックバスは唯一納得できて、良い理論。
そして物語が弱いです。
南井真一が好きなのですが、雑に伝聞で殺されるのは本当勿体無いと感じました。
ミントが思いがけずサスペンスに巻き込まれるのとか、コーツが神秘小屋の上に立って待ち構えてるのとかは面白かったので(その後の展開はあっさりしすぎてるけれど)とにかくこういう予想外でインパクト抜群な臨場感ある展開を増やした方がいいと思います。そればかりし過ぎて逆張り主義になるのもよろしくないですが、良い塩梅でもっとインパクトを作ってほしい。そうしてるつもりなら、まだ閾値に達しておらず足りないです。
知識は相応に備わってると見受けられますので、続編作るつもりなら物語や人間機微についてもっと勉強して欲しいと思いました。
変な帯書かれたせいで負担は大きいと思いますが、がんばって!!
ヂャンミンとウェイルゥのコンビ好きなので本当に続編出すならいっぱい絡み出してください。というわがまま。伝われ〜 -
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プロジェクト・ヘイル・メアリーと比較すると盛り上がりが始まるまでの助走が長めで上から下巻の中盤ぐらいまでは伏線回収に向けた説明パートとでも言える内容で、「大丈夫か?!これ大丈夫なのか?」と思いながら読んでいた(読み続けられる程度には面白かったが)
しかし下巻の中盤からは怒涛の伏線回収でドキドキワクワクが止まらず「これこれー!」という感じで最後まで読み切った。
「頭部のない遺体」という余りにもヒキのある事象の答えとしては、成程と唸る部分もありつつ若干のスケールの小ささが気にはなったものの、ミントの活躍には涙が出たしSFらしい爽快感もあって良かった