矢野アロウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「マイボディ・オン・ザ・ムーン 下」(矢野アロウ)を読んだ。
(下)に入ってすぐにこれがただのはちゃめちゃSFではないことに気づく。
ズシリと重たい読み応え。
大国のエゴ、他者への不寛容のムーブメント、差別と分断の先鋭化、とうとう行くところまで行ってしまった人類の愚行のその先にには・・・。
この世の理不尽さを見事に抉り出す怪作名作だった。最高点の星五つだな。
(まじ矢野アロウって何者だこの人⁈)
あー面白かった!
P.S.
主要登場人物の中にタイのモーケン族のハルキ少年がいるのだけれど、なんと名前の由来が彼の両親の好きな日本の作家の名前からつけたとあって(上82頁)、え!アロウさんありですか?と唸った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「星を継ぐもの」と「三体」に比肩する…という触れ込みだったので、両方読んだ身としてはこれは読んでおかねば…と書店で手に取って、うっ分厚い…!となる。
上は501ページ、下は558ページ。でも読みだすと早かった。
プロローグは2017年。チェンマイの寺でAIを使って株のトレードをする僧侶。もうこの時点でおもしろそうじゃないですか。そこに国立天文台から届く“門が開いた”というメッセージ。最期まで読んで戻ってくるとなかなかに深い言葉。
4人の登場人物まわりをメインに、それぞれの背景が丁寧に描かれる。4者4様のパートが、その先をもうちょっと読みたい!と思うようなところで切り替わるので、脳が刺激される感じ。うん。ドーパミンコントロールだね。
4者4様の魅力とは…
・ヂャンミン(NASA職員で中国共産党のスパイ) … 妻のイザベラはNASA職員で実はCIAのエージェント、娘はエルモに夢中の幼児エヴリン(能力は未知数)というスパイファミリーのパパ。いつエヴリンからパパと呼んでもらえるのか、それが本書の駆動力のひとつでもある(本当に) 二重スパイとして中国とアメリカの両方から、月でみつかった〈ルナボディ〉について問いただされる。その後も家族一緒だったり別行動したりしながらルナボディの真相に迫り、他の登場人物らに関わっていく糊のような存在。
・ジャム(タイの脳神経科学者でダイビングが趣味) … 2004年のスマトラ沖地震の津波で母を亡くしたことによるサバイバーズ・ギルトを抱え「死」の観察に魅せられた女性。日本のK大学の研究員として出会ったALSを発症した死刑囚の南井真一へ惹かれていく様子などは、社会派小説のようなほの暗い趣があって、スパイファミリーとの差に風邪ひきそうだった。でも好き。
・ミント(電動車椅子ユーザーのタイの少女でVTuberに夢中) … メタバース内のゲーム〈ディオマタス〉の実況をする人気VTuber〈地獄のベティちゃん〉に入れ込む少女。小6の課題をしているので12歳くらいかな。左側の手足が短く生まれたが、仮想空間のアバターを操作することで幻肢を感じるようになる。タイの少数民族モーケン族の少年ハルキという素敵なボーイフレンドがいて、彼はアメリカと中国の対立とルナボディの秘密に巻き込まれていく。ミントちゃんのパートはカラフルでポップで恋の甘酸っぱさでジューシーだ。
・コーツ(シカゴの成り上がり実業家で時の旅人) … 80年代のアメリカで頭角をあらわした実業家のひとり。顧問弁護士を従え、やり手の実業家らしい振る舞いが描かれるが、いまひとつどんな人間かつかめなかった。出生の逸話とか、アバターで入る電脳空間ではだれもがみな平等になれるとの考えや、高いところに上ると人はその位置エネルギーを開放したくなるとか、意識とは静止したデータではなく0から1との狭間に存在するとか、興味深い話をたくさんする。コーツのパートは海外SF的な雰囲気。言及のあるサイバーパンクの名作「ニューロマンサー」は読みたいと思ったまま未読なんだ…
この作品における「星を継ぐもの」的な部分の最大はもちろん「月で見つかるヒト的な何か」を解析するところ…だよね。中国の探査機が月面で発見した神秘小屋と名付けられた施設のなかに、透明なドームに入れられた数十体の座禅する人体的なものがあった。そのルナボディには頭部がない。なんて魅力的な謎!
「星を継ぐもの」と違うのは、この世界はあの、戦争を放棄した人類の世界ではなく、ほんの数年前のわたしの現実から分かれた世界なんだという事。スペースXもあるし、アルテミス計画もある。マインクラフトもあるし、コロナ渦も経ている。ロシアはウクライナに侵攻しているし、中国とアメリカは牽制しあっている。そんなところに、ルナボディが発見されるのだ。月面での対立で、すわ戦争か?みたいな危機もあったけど、そこはなんとかこらえて、ともかくルナボディとは何か…というところに注力される。2017年のオウムアムア(話題になっていたのに忘れてた…)とか、小学生の時に学級文庫で散々読んだキャトルミューテーションとか、ワクワクするネタが散りばめられていて、読むのが楽しかった。
それにしてもなぜルナボディには頭がないのか。……って、そんなこと考える???そして、やってしまうの???????!!!というところで前半が終わるのであった。思い返せばちゃんとヒントは散りばめられているのに、めちゃめちゃびっくりしたね。
後半は怒涛の展開が待っている。 -
Posted by ブクログ
「三体」「プロジェクトヘイルメアリー」に比肩する、という謳い文句はかなり言い過ぎかなと思いますが(「大風呂敷を広げて、読者に考えさせるタイプのSF」という意味では合ってるかなと思いますが)、それをいったん脇に置けばかなり面白いSF小説でした。今年ベスト級。
一見何の関係もない主人公4人の物語が、ルナボディの謎を解き明かすという一点に向かっていくワクワク感は凄まじかったですね。意識を宿すのはニューロンではなく、アストロサイトという設定も興味深かったですし、舞台設定も現代とリンクしているので想像しやすく、ハラハラしながら最後まで読み切れました。首なし遺体の正体が明かされる展開も納得感がありお見事でした。(ずっと伏せられてたエヴリンの人間性について、最後にフワッとですが答えが示されましたが、作品通してミントやルナボディ移植者のことを通して「普通とは何か」を問うてきたことを踏まえると、「多少周りとは違うとしても普通に生きていくことを示した」と思うといい落とし所だなと感じました)
ただちょっと政治色強めなところは気になるところ。話が中々進まずヤキモキしたのも正直な所だったので、もう少し端折っても良かったのかなと思いました。あとラストにかけての展開も、次巻への伏線なのかスッキリ終わらないのはモヤモヤしました。できればこの作品だけで細胞L*や首があるルナボディの正体に決着つけて欲しかったです。この辺りが5点つけられない理由でした。
※以下、気になる点
・カロカディアは細胞L*由来で合ってる?(だとしたらジャンミンはいつカロカディアを作った?)
・ジャムのアユタヤでのやり取りを見るに、細胞L*はすでに地球に存在していた?
・首のあるルナボディは作中に出てきた全ての生命とは別の生命体?
誰かー!モヤモヤしてしょうがないので、考察でも大丈夫ので教えてくださーい笑 -
Posted by ブクログ
初読みの作家さん。三体やプロジェクトヘイルメアリーの日本版という呼び込みに惹かれて手に取った大長編SFの上巻。日本版というからには日本が舞台かと思いきや、日本の他、タイやアメリカも舞台に。なぜタイ?首無しの僧侶の身体が何体も月の裏側で発見されるところから、この物語が始まるからだろう。
実は、読む前の期待が高まりすぎて、読んだ感じ、三体やプロジェクトヘイルメアリーほどではないな…というのが正直な感想。どこがって言うと、まずは読み口かな…なんだか読み進めづらかった。世界各地にいるメインの登場人物達のサイドストーリーが、どうやってメインの月の首無し僧侶「ルナボディ」にたどり着くのかがなかなかピンと来ないまま長く進んで行くためと思われる。
とはいえ、SF要素てんこ盛りで贅沢丼な感じは楽しめる。月からメタバースからCIAから中国のスパイからニューヨークの裏社会からシリコンバレーから脳の冷凍保存から。そこに身体障害者やALSの死刑囚という要素まで加わる。これらがどう終結していくのかがわからないまま、上巻はルナボディに人間の頭部を移植手術するという話へ。さてこの物語は何処へゆく。 -
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(上下巻読み終えて)扱っているテーマの幅広さと、それを支える取材量、上下巻1000頁超、多国籍・多視点という規模だけを見ても、非常に野心的な作品ですが、その野心の広さが、物語としての求心力をやや薄めてしまっている面も否めません。『三体』的な期待値で手に取ると、謎解きの緊張感という点では物足りなさを覚える読者もいるだろうと思います。
それでも、国際政治や環境問題、身体と意識といったテーマを背景にした人間ドラマとして読むならば、読み応えのある一冊です。SFというジャンルの謎解きの快感を求める読者よりも、複数の社会的テーマが絡み合う群像劇をじっくり読みたい読者に向いている作品だと感じました。 -
Posted by ブクログ
(上下巻読み終えて)扱っているテーマの幅広さと、それを支える取材量、上下巻1000頁超、多国籍・多視点という規模だけを見ても、非常に野心的な作品ですが、その野心の広さが、物語としての求心力をやや薄めてしまっている面も否めません。『三体』的な期待値で手に取ると、謎解きの緊張感という点では物足りなさを覚える読者もいるだろうと思います。
それでも、国際政治や環境問題、身体と意識といったテーマを背景にした人間ドラマとして読むならば、読み応えのある一冊です。SFというジャンルの謎解きの快感を求める読者よりも、複数の社会的テーマが絡み合う群像劇をじっくり読みたい読者に向いている作品だと感じました。 -
Posted by ブクログ
上巻が、下巻に向けてしっかりと土台を整えていて期待を膨らませてくれる内容で、また4人の主人公がどれも個性が強く良い感じだったので、下巻もとても楽しみにしていた。
が、その期待は超えられなかったかなあと思う。
もちろん SF として設定はとても良かったしのめり込んで読むくらいは面白かったんだけど、「三体やプロジェクト・ヘイル・メアリーに比肩する!」みたいな謳い文句は明らかに違和感を覚えたし、それが無駄に期待を上げすぎてしまったと思う。
本の内容と関係ないところで申し訳ないが、この売り方が少しモヤる部分があり、ただこの謳い文句が無ければ僕は手にとってなかったわけで、結果的に良かったと言えるのかもしれないが、どうも釈然としない…。
という話は置いておいて、話としては完結したが、正直僕の読解力の問題なのか、まだまだ分かってないことが多すぎないか?と思う。
考察をする余地があるというよりは投げっぱなしてないか?と感じてしまうところが幾つかあるのが気になる。
あと終盤の展開に関しては、SF としての面白さというよりも少年漫画的な熱い展開という感じで、面白かったが本を手にしたときの期待とは少し方向が違ったなと思った。
あとはハッキングでなんでもできすぎではないかと思う。
期待値が高すぎたが、面白かったのは間違いないです!