岡野大嗣のレビュー一覧
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note主催の読書感想コンテストでライツ社の推薦図書に指定されていて読みました。感想文はnoteに書いたので、ここでは特に好きな歌を月ごとに選んでみます。
1月7日
爪を切る音に安心できるから伸びる時間をまた生きました
2月8日
かごの影きれいで自転車をとめる春より春な冬のまひるに
3月26日
ながいさよならになるなら春服をハンガーラックに吊るす軽さで
4月26日
ちょうどいい気温にふれてごきげんな七分の袖をはみだした腕
5月5日
青空とブルーシートにはさまれてサンドイッチのたねだねぼくら
6月23日
降ってない中を差してた傘とじてミュージカルなら踊り出すとこ
7月22日
体育館 -
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人気歌人、岡野大嗣さんの今までの歌集から短歌をチョイスしたベストアルバム的な歌集。
1ページ一首を1年365日に配してあるのが楽しい。
12ヶ月分、12枚の色の紙を使って、目に賑やか。
私は、岡野さんのサイン本を持っているのですが、岡野さんのサインは書いていくうちに色が変わるマーブル色の色鉛筆で書かれていて、今回の本も、それを意識したのではないかな。
岡野さんの短歌は私にとっては(生活のそこここのシーンを切り取ってるにも関わらず)生活感の薄い短歌。
まるで、透明なビニールでラッピングしてあるかのように、見えてるんだけれど、直接触れないもの。そんなイメージ。←どんなイメージだ。
それが切なさ -
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全然わからない。
何が書いてあるのか。
何を詠んでいるのか。
岡野大嗣さんって、もっとわかりやすい歌を詠まれていた気がするのだけど。
とても不思議な世界観の本。
既定の型にはまらない作品集。
タイトルからして不思議です。
「うたたねの地図」~百年の夏休み
散文も、詩でもないし、エッセイでもないし、小説でもない。
何なんだろう、これは…。
一番初めに載っていた歌だけはキャッチコピーのようにわかりやすいのですが、あとは全然わかりません。
一番最初の歌と、わからないけどいいと思ったものをいくつか載せます。
<夏という季節がかつてありまして終わりをさびしがるものでした>
<すこし寝たらすっき -
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#岡野大嗣 #短歌
生活のちょっとした場面がドラマのワンシーンのように蘇る。平易な言葉で優しい眼差しが伝わる。
バンド活動もされているから音楽に関する歌は特に好き。外来語カタカナや身近な店名が効果的、一コマ空ける効果も活かされていてじんわり沁みとおる。
装丁は名久井直子さん、写真は岡野さん自身で閉じこみが幾つかあるのも楽しめる。
特に気になった歌を抜粋
うしろから3曲目?のやつよかったね お互いおぼろげを泳ぎつつ
いま買ったレコードを見る 出てすぐの階段の夕日の踊り場で
あなたとは次の90年代を巡ってもいいラジカセ掲げて
注文に声を張れない3人で2回に1回は通らない
隠しごとを打ち -
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どこでもない街と、誰でもないひと。
過去も現在も未来も同列につながり、夏というループの中に100年ぶん閉じ込められる。
そこでは、わたしたちを隔てている身体も、意識も関係なく自由に飛び回り、小学生にも、ポメラニアンにも、猫にもなれるし、「あなた」も思うことができる。
この本に一人称は、ない。
不思議な読み心地の本でした。
短歌と日記のような詩のような散文が交互にやってきて、ときおりイラストが挟まれ、夏のワンシーンをことばとイラストで彩る。
もしも、「街」が生きていて、ひとびとの記憶を見られるのだとしたら、こんな感じかな、と思った。
散文は「うたたね」=「歌(の)タネ」にもなっているよう -
Posted by ブクログ
365日、一日一首形式で編まれた岡野大嗣さんのベスト作品集。今日の日付や誕生日のページを徐ろに読むのも楽しいし、季節を感じられる一冊。五月に収められている短歌が好きなものが多かった。
たやすみ、は自分のためのおやすみで「たやすく眠れますように」の意
にんげんがひとり にんげんがふたり 五月の草に眠れるひつじ
たった今うれしい夢をみていたようれしかったのだけがわかるよ
写メでしか見てないけれどきみの犬はきみを残して死なないでほしい
さよならは少しずつした方がいい脱水症に気をつけながら
四季が死期にきこえて音が昔にみえて今日は誰にも愛されたかった
倒れないようにケーキを持ち運ぶ -
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ネタバレ・公演日までが遠くてこの遠さがコンサートってかんじでいいな
・あらすじにふれずに話してくれている大切だった絵本のことを
・夜だからさびしいなんて嘘じゃない?さびしいだからさびしいじゃない?
・裾がいい服を着ていく今日たぶん俯きがちなわたしのために
・電車まだ大丈夫です?遠回りになるけどおすすめの帰り道
・絵に描いたようなピクニック日和にはほんとうに行ってみるピクニック
・ほんとうに?置いてけぼりに思うときそこは先頭かもしれないよ
・人間でいえば何歳、ってあれさ 知ったところで、って話じゃない?
・人が嫌いで人が好きだな降る雪に手を差し伸べてしまう感じに -
Posted by ブクログ
『NHK短歌』の2023年度の選者のお一人でもある岡野大嗣さんの第四歌集です。
岡野さんの歌集は初読みです。
音楽のお好きな方でやっていらしたのかもしれないと思いました。
軽~く詠まれているような感じがしました。
わざとやっていらっしゃるのかもしれないですけど。
ちょっと素人っぽい感じがして、プロっぽくないところがいいと思いました。
<あげるのにもらった気分 巣みたいにラッピングしてもらった陶磁器>
<春といえば鳴らしていない自転車のベルがほのかに鳴ってくる道>
<おかわりを最初とおなじにしてみせるおひつごはんのおいしいお店>
<一生って早いよね、ってどこにでも見られる花をよろこ -
Posted by ブクログ
かわいい装丁に素敵なタイトル。
岡野さんの作品は日常を切り取った歌や、音楽に関する歌が多くて、私は特に日常の歌が好き。それからたまにグサっと刺さる短歌もあって、それも好き。
ふとしたときに思い出して、ふふってひとり微笑みたくなるような、そんな短歌たちだ。
裾がいい服を着ていく今日たぶん俯きがちなわたしのために(90ページ)
今回いちばん好きだなぁと思ったのはこの短歌。やらなきゃいけないことだとか、悪い結果がみえているときだとか、落ち込むことはあるけれど、自分にしかわからない、小さな好きや希望をこっそり携えて出かける。そういう時ってあるよなぁ、と思った。
これからうつむきがちになりそうな日は