あらすじ
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“どこにでもある眺めとここにしかない眺めが交錯する”
これまで取りこぼしてきた日々の感情を忘れないために短歌を詠む、人気歌人・岡野大嗣さん初の短歌×散文集です。
さまざまな場所をテーマに、
短歌を詠むときのまなざしから生まれた散文とたね(短歌が出来上がる前のメモ)、150首の短歌をもとに、〈夏のとある街〉を作りました。
今まさにその場所にいるような、その場所とつながっているような感覚になれる新しい本。
さまざまな場所と出合いなおすことで、
短歌と散文、感情が響き合って、懐かしさとともに新しい風景があふれだします。
ぜひ、短歌の世界と歌人のまなざしを追体験しながら
うたとたねをヒントに、夏のとある街の地図を心に描いてお楽しみください。
※装画・挿絵:中村一般さん
<岡野大嗣さんよりコメント全文>
タイトルに「夏休み」と入れておきながら僕は、夏があまり得意ではありません。
命の危険を感じる暑さからも、ただ生き延びることにやたらと意味を浴びせてくる光からも、なるべく距離を置いていたい。
でも、夏にふと感じる、ほっとするようなさびしさとは握手をしたくなります。
暑さを逃れて立ち寄った本屋さんで迎えてくれる涼しいインクのにおい。信号待ちの日傘に感じるなつかしい気配。
図書館の片隅で空調の音に包まれてめくられるページの響き。
この本には、そんなさびしさが集まっています。
時間はたっぷり百年用意しました。
いくらでものんびりと、この街で涼んでいってくださいね。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
全然わからない。
何が書いてあるのか。
何を詠んでいるのか。
岡野大嗣さんって、もっとわかりやすい歌を詠まれていた気がするのだけど。
とても不思議な世界観の本。
既定の型にはまらない作品集。
タイトルからして不思議です。
「うたたねの地図」~百年の夏休み
散文も、詩でもないし、エッセイでもないし、小説でもない。
何なんだろう、これは…。
一番初めに載っていた歌だけはキャッチコピーのようにわかりやすいのですが、あとは全然わかりません。
一番最初の歌と、わからないけどいいと思ったものをいくつか載せます。
<夏という季節がかつてありまして終わりをさびしがるものでした>
<すこし寝たらすっきりとした頭だけつれて花屋へ出かけられたら>
<再放送のアニメの色がおかしくてラジオは四時をお知らせしない>
<金貨より高くなる日にわたしたちカートいっぱい野菜を乗せて>
<スーパーを寒がるうなじと巡り会うここにはまだ無い季節の果てに>
<Tシャツのパジャマでごみを出しに行くキャンプのにおいのする雨上がり>
<水ヨーヨー落としてとまらない涙 星じゃあるまいしの勢いで>
<建物の寝息のはなし 雨音にかき消されない程度の声で>
<日傘には時差の雫がついていて乗車の前にきちんと払う>
<デパートを街角みたいにゆく午後のパフェのりんごのみみの明るさ>
<回り続けるペン sinceを付けるにはまだ日が浅いカフェの窓辺で>
<ひらがなの背表紙つづくここでならひみつのひとつふたつくらいは>
<この街でいちばん軽い本を買うパンの袋に明るく入れる>
<AMは風 FMは水の音 ラジオ勤めの鳩が言うには>
<美術館の順路のようにゆく路地の 音符になって降る雨粒の>
<部屋に差す光が減って部屋に差す光が部屋を満たしはじめる>
<大型の天使のような白い犬 小型のころの面影のまま>
Posted by ブクログ
どこでもない街と、誰でもないひと。
過去も現在も未来も同列につながり、夏というループの中に100年ぶん閉じ込められる。
そこでは、わたしたちを隔てている身体も、意識も関係なく自由に飛び回り、小学生にも、ポメラニアンにも、猫にもなれるし、「あなた」も思うことができる。
この本に一人称は、ない。
不思議な読み心地の本でした。
短歌と日記のような詩のような散文が交互にやってきて、ときおりイラストが挟まれ、夏のワンシーンをことばとイラストで彩る。
もしも、「街」が生きていて、ひとびとの記憶を見られるのだとしたら、こんな感じかな、と思った。
散文は「うたたね」=「歌(の)タネ」にもなっているようで、岡野さんが何にインスピレーションを受けて、出来事をどう短歌に料理しているのかが、垣間見ることができるような気がして、おもしろい。
短歌は後半にいくにつれて難解なものが多くなってるような。
なんでしょうね。自分の短歌に飽きたんでしょうかね。
Posted by ブクログ
散文と短歌が交互に現れ、短歌が生まれるきっかけや流れが感じられるような構成が素敵です。
広がりゆく情景、深まる想い。短歌集を読むことに慣れていない身には、気負いをするりと解き放してくれるようで、とても助かりました。
Posted by ブクログ
なんとなくフィーリングで手に取って、フィーリングで鑑賞。短歌と、短歌っぽいけどなんか違う不思議なレイアウトの文章と、エッセイと詩の中間みたいな文章。
読んだ後に確認したら、短歌と、短歌のネタと、散文という扱いだったみたい。
Posted by ブクログ
表紙やイラストが夏らしくてとてもかわいい。
今回は短歌だけでなく、短歌のタネと散文も収録されていて、岡野さんの感性に新しい形で触れられるのがよかった。
特に短歌のタネは、レイアウトも工夫されていて、見てよしよんでよしでした!
去年に引き続き、今年の夏も暑すぎるくらいに暑くて殺人的だけれど、短歌にうたわれている夏は、どことなく懐かしくて優しい色合いの夏だなぁと思いながらよんだ。
夏休みというイベントがもうずっと過去のできごとだからかもしれない。あの夏の記憶をなぞるような短歌が好きになりました。
Posted by ブクログ
いいなと思った歌
精肉と鮮魚のあいだ姓と名を
区切る空白みたいな通路
→見慣れた違うもの同士を関連づける視点がおもしろい。
燃え殻を浮かべたままのプラバケツ
ゆうべの声を水にとかして
→散文がなくても手持ち花火のことだとわかったと思う。余韻がある。
大型の天使のような白い犬
小型のころの面影のまま
→子犬のころだったら普通で読み流してしまうところ、小型と表現することでズレが生まれている。
Posted by ブクログ
短歌と散文でサンドし合っている感じの本。散文は思い出なのか現在なのか空想なのかよく分からないというか、それらが混ざりあって特定を故意に避け続けるようなあいまいな文章で好みではなかった。「うたたね」だからそういう感じなんだろうか。「サイレンと犀」はいいなと思ったんだけど、この本は短歌も直感的にわかるものが少なくて句跨り?も多くてあまり刺さらないなと思った。
後ろ手に歩くんですね初めての星をなじみの近所みたいに
この歌だけすごく気に入った。夏に一服の爽やかSF感。