酒井聡平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
戦前、農業と漁業を営み豊かな生活を送っていた硫黄島の住民たち。しかし硫黄島は第二次世界大戦にて戦場となり、23000の人々が島で犠牲になった。島民たちのうち、十六歳以上の男子は軍属として島に残るよう強制され、疎開すること叶わずほとんどが戦死した。
そして現在に至るまで、島民たちの硫黄島への帰島は許されていない。島民たちの戦争は、未だ終わっていないのだ。
なぜ小笠原諸島の中でも、硫黄島への帰島が阻まれているのか。本書では、それを膨大な資料、元島民、島民の子孫たちなどへのインタビュー、取材をもとに、歴史を振り返りながら追求していく。
硫黄島はかつての大戦での激戦地だったということは知っていたが、恥ずかしながら、戦前に人が住んでいたことすら知らなかった。
元島民の語る、牧歌的で豊かな島の暮らしの様子を読んでとても驚き、とても素晴らしい島だったのだ…と想像を巡らせた。
戦争により少ない私物と共に強制疎開を強いられ、内地を転々とした挙句ふるさとに帰れない。島民たちの悲しみは計り知れない。 -
Posted by ブクログ
8月になると戦争に関する番組が増えてくる。広島・長崎の原爆、特攻、東京大空襲、そして終戦の玉音放送。戦後生まれの自分には、今まで自分ごととして咀嚼することはできていなかった。昨年、沖縄のひめゆりの塔、平和記念館を訪れてから、気持ちが大きく変化を見せた。サトウキビの畑の中で、子供たちが死んでいく。防空壕に爆弾が投げ込まれる。多くの疎開の子供を乗せた船が爆沈される。悲しく悲惨な戦争。それは沖縄だけでなく、この本の硫黄島でも起こっていた。「死なないと、帰れない島」。はじめ、それは死んだら魂が本土に帰っていけるのかと解釈していたが、違っていた。アメリカの思惑、日本の思惑が絡んで、返還された後もアメリカの支配や自衛隊の事情から、帰還できない元島民たち。死なないと墓参の機会にしか島には戻れない。あまりに理不尽な対応に怒りが湧いてくる。早く元島民たちのふるさとに帰りたいという希望が叶うことを願う。
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Posted by ブクログ
日本の領土で戦場になった地域の一つ「硫黄島」
戦没者約2万人のうち、約半数の1万人が見つからないことを起点にこのノンフィクションが始まる。
作家は北海道新聞社に勤めていた酒井聡平氏。
「続けたいことを続けられないのは、時間がないからでも、担当外になったからでもない。意志の問題だ」という言葉を胸に硫黄島への訪問と遺骨収集に参加の執念を燃やす。
1万人が見つからない「ミステリー」に対して滑走路の下説や風化説などを取り上げつつ、硫黄島にまつわる「ミステリー」も各種資料や証言を取り上げつつ説明される。
「戦没遺骨帰還問題」は古いが解決できてない問題だと知る。激戦地という言葉だけで片付けられない硫黄島。
大本営が硫黄島守備隊が全滅したと発表した後も、通信兵が様々な情報を送信し続けていたという証言も胸を打たれる。 -
Posted by ブクログ
太平洋戦争末期の1945年2月19日、硫黄島に米軍が上陸、36日間の激戦の末、日本軍は約2万3千人のうち、2万2千人が命を落とし玉砕した。
硫黄島は、もともと、緑と花とフルーツの樹に満ちた島。約1千人が家族のように暮らしていた。
サイパン島が敵手に落ち、空襲が激しくなった1944年、一部の若い男性のみを軍属として残し、島民たちは本土に強制疎開となった。
1968年、硫黄島を含む小笠原諸島の施政権が日本に返還され、父島・母島の島民は帰島を果たしたが、硫黄島民やその子孫は帰島が認められていない。
いまだに1万人もの遺骨が家族の元に帰れないことに焦点を当てた「硫黄島上陸」を書いた著者が今度は、この問題に真正面から取り組んだ。
著者は、情報公開請求も駆使しながら、当時の公文書議事録を読み解き、帰島の可能性が閉ざされる過程を執念で追及していく。
1984年、首相の諮問機関である小笠原諸島振興審議会の下部組織「硫黄島問題小委員会」は、火山活動や産業の成立条件から定住は困難と位置づけた。
しかし、著者は、それ以前の1977~78年、都知事の諮問機関である「硫黄島問題調査研究会」で一部島民による「自力帰島」計画が具体化する中で、防衛庁による自衛隊基地化の意向を受けて帰島が阻まれていたことを知る。
著者は、さらにさかのぼって、戦後、硫黄島を、米軍が核兵器を隠す秘密基地や太平洋の中間地点に位置する軍事拠点、さらには栄光の記念碑として位置付けていたという核心にたどり着く。
島民の引き揚げ後の生活は大部分が資本も縁故もなく、窮乏を極めた。
しかし、彼らは、いつか帰島ができると信じていたため、本土で恒久的職業に就こうとしない傾向があり、これが生活を困難にした一因ともなっていた。
彼らは帰島の希望を捨てず、陳情を続けた。
そんな彼らを犠牲にし、安全保障上のメリットを得てきた政府と国民。旧島民の切実な思いに真摯に向き合い、理不尽な行政措置を明るみに出すという側面から戦争を考える著者の渾身の力作だ。