大谷亨のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
なんと民俗学のフィールドワークをTikTokの動画検索により進めて行くと言う。
中国国内には専用のTikTokが運営されており、そこには中国全土から、都市部から田舎まで老若男女が投稿する様々なお祭りなどを映した動画が存在する。
中国民俗学を専門とする著者は、文献だけでなくTikTokをも駆使して、論文にも載っていないまだ見ぬ中国のローカルな神様たちの信仰の原点を探してゆく。
興味のある動画があれば、投稿主にアポを取り現地まで赴く。その道中や現地でのレポートはとても面白い。
中国のお祭り(正月など)は爆竹を鳴らしまくるというめちゃくちゃ偏ったイメージしかなかったが、どういった理由で爆竹を鳴らすのか(鳴らすようだ)、どうしてあんなに装飾が派手なのか、他にもお供えものにどういう意味があるのかなどなど、もっといろいろ書いてあるのだがそれらの情報全部が新鮮でとても興味深かった。本書で軽く文化に触れることで、なんだか全然知らない中国の人たちがとても身近に感じられた。
知れば知るほど豊かな国なんだ面白いなと思った。
どれも面白かったけど、大黒天の話とお盆フェスの話が特に好き。
本書が面白かったので、著者の他の本も読もうと思う。
以下目次
はじめに
フィールドワークのしおり
第一章 逆立ち張五郎を探せ!
第二章 張五郎にチラつく鬼の形相
第三章 セクシー九尾狐に魅入られて
第四章 タイの神秘とセクシー九尾狐
第五章 大黒天の逆輸入
第六章 お盆フェスの聖と俗
第七章 闇に惹かれる人々、増殖する無常
第八章 中原に花咲く無常信仰
おわりに -
Posted by ブクログ
中華文化圏の民間信仰にて崇拝される神・無常について解説した書。異形の死神である無常の多種多様な様相を文献調査やフィールドワークを踏まえて紹介すると共に、その起源と変遷の歴史について考察する。
本書は、著者の博士論文『無常鬼の研究―<精怪>から<神>への軌跡』をベースに書籍化したものである。中国並びに東南アジアの華人文化圏にて信仰される神――無常。死者の魂を冥界へと連れていく「勾魂使者」であるこの神格は、そのおどろおどろしい容貌とは裏腹に今日もなお民間信仰の場では人気を博している。本書はそんな異形の鬼神である無常について紹介すると共に、その起源から今日の姿に至るまでの変遷史を追った書物である。様々な文献やフィールドワークの現場で登場するのは、時代や地域によって種々様々な形態をとる無常、その前身となる(没個性的な)勾魂使者、そして山魈や模壁鬼といった「魂を取る(惑わす)」諸々のバケモノたち。無常探求の果てに著者が見出すのは、アナロジーの重複に基づく鬼神と妖怪の混交、権威を増大させるための神化が為される民間信仰のダイナミズムであった――。
『中国TikTok民俗学』の著者の前著に当たる本書は、著者の中国民間信仰研究の原点となる無常を扱ったものである。中国の多様な民間信仰の現場を活写する著者の姿勢は既に本書の時点で確立されているといっても過言ではなく、多数の図版や写真で紹介される無常の姿は見ているだけでも面白いものとなっている。各論の合間には著者のフィールドワーク中での出来事を記した紀行も挟まれており、研究書としてだけではなく読み物としても楽しめる一冊。 -
Posted by ブクログ
現代中国の民間信仰において崇拝される神々について、レポ形式で紹介・解説した書。張五郎や聖人公媽といったローカルな神から九尾狐や和式大黒天といった新進のムーブメントまで、今日の中国に息づく民間信仰の実態をフィールドワーク時の体験談も交えて活写する。
本書は、ウェブマガジン『ROARSIDERS' weekly』連載の「スリープウォーキング・チャイナ」コーナーの著者原稿を加筆・修正し書籍化したものである。思想・宗教の統制を敢行する共産主義国家であり文化大革命といった大規模な宗教排撃を経た中国において、民間信仰は(香港などの一部地域を除いて)ほぼ壊滅したと思われがちである。だが実際の現場においては、伝統的な信仰はもちろん新出の信仰も活況を呈する実にカオスな様相が広がっている。著者は動画投稿SNS(Tiktok, Douyin)を活用したフィールドワークによって現代中国で崇められる「珍神」たちを調査すると共に、それらの信仰の形態や様相を(フィールドワーク中の体験談も交えて)ユーモアたっぷりに紹介している。湖南・紀州にて崇拝される逆立ちの神・張五郎、タイ発祥のお守りに由来する「セクシー九尾狐」こと九尾狐仙、日本から逆輸入された和式大黒天に「お盆フェス」こと中元普渡(盂蘭勝会)で祀られる聖人公媽、そして中原地域や東南アジアにおける無常信仰――。仏教・道教の正統信仰ではない、市井の場において発生したこれら"異形"の神々の姿は単に面白いというのみならず、現代中国の民間信仰の「今」を映し出す鑑としても興味深い。いずれの調査も理論化・体系化まで至らぬ調査第一報の段階であるのは惜しいところだが、それ故にこれからの調査の進展が楽しみである。
本文はフィールドワーク中の珍道中についても紙幅を割いており、学術的な本としてだけではなく紀行としても楽しめる。様々な意味で可能性を秘めた一冊と言えるだろう。 -
Posted by ブクログ
面白すぎる。中国はお廟がたくさんあって民間信仰が盛んだ…というくらいは知っていたけど、今も実際に神懸かりするシャーマンなどがいて人々に日常的に慕われているんだ、というのを中々初めて知り、心底驚いたしワクワクした。
遼寧省の道教寺院で、神懸かりしている一般男女がずらりと並んでいたというのはかなり圧巻だった。調べるとこのお寺はトリップドットコムでも紹介されているくらい観光可能な有名なお寺。行ってみたすぎる!
和式大黒天の章などは、民間信仰が現在進行形で作られていく様がよく分かり大変興味深かった。
バスが止まっていても乗合タクシーのおっちゃんに車に詰め込まれるとか、ホテルの前にいたおばあさんの紹介でめっちゃ解説&案内してもらえるとか、フィールドワーク中の細かなエピソードも秀逸。
さまざまな障壁でそんなに思い通りにいかない、でもいろんな人が世話を(おせっかいを)焼いてくれてどんどん物事が進んでいく、中国を探検するあの高揚感を久しぶりに追体験できてとても楽しかった。
「春の死神パン祭り」とか「神懸かるゲップ女とタンバリン男」「李爺さんのスパッツ事件」とか、筆者のネーミングセンスもいちいち面白い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ中国版TikTok (抖音) で見つけた動画をもとに中国各地や東南アジアをめぐり、現地の民間信仰の様子を探るルポルタージュ。逆立ち姿のローカル神・張五郎、セクシーな九尾狐、日本式大黒天、聖俗ひっくるめたお盆の祭り (中元普渡、盂蘭勝会) 、各地で独自の進化をとげる死神・無常など、リアルな信仰形態の一端をうかがうことができる。そして、それは現在進行形で変化しているようだ。
旅行記としても面白く、現地で新たな情報を得て、思いがけない展開を見せたりするのがいかにも中国らしい。
以下は、漢族の宗教的宇宙観について。
漢族の宗教的宇宙は上から、神が暮らす「神界」、人間が暮らす「人界」、鬼 (怨霊) が暮らす「鬼界」の三つで構成され、神は人間に福をもたらし、怨霊は人間に災いをもたらすとされている。
一般的な神は「正神」と呼ばれ、祀られる廟は「正廟」と呼ばれるのに対して、怨霊もときとして「陰神」として「陰廟」に祀られる。正廟と陰廟の見分け方は簡単で、陰廟は薄暗くおどろおどろしい雰囲気をしている。
陰廟には怨霊の管理を任された鬼界の神々(閻王、地蔵王菩薩、大士爺、城隍神など)も祀られる。無常も公式には鬼界の神とされ、陰廟に祀られる。
(こうした背景があるので、マレーシアで訪れた関帝廟で正神の関羽と一緒に無常が祀られているのに筆者は驚いた)