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中国の死神である「無常」。寿命が尽きようとする者の魂を捉えにくるこの冥界からの使者は、日本では無名だが中国ではよく知られた民間信仰の鬼神である。冥界と密接な関係をもつ廟で盛んに祀られ、その信仰は中国にとどまらず台湾や東南アジア各地にまで広がっている。
「白と黒」のペアで存在することが多い無常は、謎の高帽子をかぶったり長い舌をダラリと垂らしたりと、強烈な視覚イメージで中国人のあいだに根づいている。だがその一方、無常がいつ、どの地域で、どのように誕生して現在に至るのか、なぜ人々は死神を拝むのか、そうした無常信仰に対する客観的な考察はこれまで十分になされてこなかった。
本書は、2年半に及ぶ中国でのフィールドワークに基づきながら、無常の歴史的変遷を緻密にたどり、妖怪から神へと上り詰めたそのプロセスや背景にある民間信仰の原理を明らかにする中国妖怪学の書。貴重な写真をフルカラーで130点以上収録。
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Posted by ブクログ
中華文化圏の民間信仰にて崇拝される神・無常について解説した書。異形の死神である無常の多種多様な様相を文献調査やフィールドワークを踏まえて紹介すると共に、その起源と変遷の歴史について考察する。
本書は、著者の博士論文『無常鬼の研究―<精怪>から<神>への軌跡』をベースに書籍化したものである。中国並びに東南アジアの華人文化圏にて信仰される神――無常。死者の魂を冥界へと連れていく「勾魂使者」であるこの神格は、そのおどろおどろしい容貌とは裏腹に今日もなお民間信仰の場では人気を博している。本書はそんな異形の鬼神である無常について紹介すると共に、その起源から今日の姿に至るまでの変遷史を追った書物である。様々な文献やフィールドワークの現場で登場するのは、時代や地域によって種々様々な形態をとる無常、その前身となる(没個性的な)勾魂使者、そして山魈や模壁鬼といった「魂を取る(惑わす)」諸々のバケモノたち。無常探求の果てに著者が見出すのは、アナロジーの重複に基づく鬼神と妖怪の混交、権威を増大させるための神化が為される民間信仰のダイナミズムであった――。
『中国TikTok民俗学』の著者の前著に当たる本書は、著者の中国民間信仰研究の原点となる無常を扱ったものである。中国の多様な民間信仰の現場を活写する著者の姿勢は既に本書の時点で確立されているといっても過言ではなく、多数の図版や写真で紹介される無常の姿は見ているだけでも面白いものとなっている。各論の合間には著者のフィールドワーク中での出来事を記した紀行も挟まれており、研究書としてだけではなく読み物としても楽しめる一冊。
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