【感想・ネタバレ】中国の死神のレビュー

あらすじ

中国の死神である「無常」。寿命が尽きようとする者の魂を捉えにくるこの冥界からの使者は、日本では無名だが中国ではよく知られた民間信仰の鬼神である。冥界と密接な関係をもつ廟で盛んに祀られ、その信仰は中国にとどまらず台湾や東南アジア各地にまで広がっている。

「白と黒」のペアで存在することが多い無常は、謎の高帽子をかぶったり長い舌をダラリと垂らしたりと、強烈な視覚イメージで中国人のあいだに根づいている。だがその一方、無常がいつ、どの地域で、どのように誕生して現在に至るのか、なぜ人々は死神を拝むのか、そうした無常信仰に対する客観的な考察はこれまで十分になされてこなかった。

本書は、2年半に及ぶ中国でのフィールドワークに基づきながら、無常の歴史的変遷を緻密にたどり、妖怪から神へと上り詰めたそのプロセスや背景にある民間信仰の原理を明らかにする中国妖怪学の書。貴重な写真をフルカラーで130点以上収録。

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Posted by ブクログ

各時代の政権や宗教団体に整備された神様然とした神ではなく、特定地域の庶民発・流転を繰り返してきた地元の信仰対象としての死神・無常と庶民の関わりを描く
元々の由来がここで考察されている通りとしたらかなり格が上がりつつあるようにも見えるが、分身の取り入れなど今後も変化が見られそうで楽しみ

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2025年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「無常」という中国の死神の成り立ちや民間信仰の様子を研究する。研究書といっても、言葉は易しく写真も豊富なのでとても読みやすい。推論を立て、文献や現地調査を通じて、少しずつ謎が明らかになっていくという研究の様子が追体験できる。

「無常」という神様は、ノッポの「白無常」(表紙の写真)とチビの「黒無常」のセットで祀られるのが一般的で、中国や台湾の廟で見かける神像のなかでも特に印象的な外見をしている。道教では数多の神様が信奉されているが、その中でもメジャーな存在といえる。(ちなみに、台湾では「七爺」「八爺」とも呼ばれている。)

もともとは没個性的だった「無常」が、どのようにして現在の「白無常」ような姿になったのか、ソロだった「白無常」になぜ「黒無常」という相方ができたのかという謎が解き明かされていくのが非常に面白い。

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2025年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

以前から中国の神様とか神話に興味がありました。
というのも、天帝とか西王母のような存在はあるらしいのですが、どうもそれと宗教や信仰が私の中で結びつかないのです。
でもまあ、死神から勉強してみるか、と思って読んだのですが、思っていたのとはちょっと違う展開になってしまいました。

著者がテーマとして追いかけているのが「無常」という死神です。
ここで中国の世界観が関係してくるのですが、神様は基本的に天にまします。
しかし、寿命が尽きそうな人間がいると、部下に「迎えに行ってやれ」と命じます。
なんと神さまの世界は階級社会で、しかも官僚制です。
上司である神さまに命じられて迎えに来てくれるのが勾魂使者である「無常」なのでした。
あんまり死神っぽくな~い。

しかもこの無常、「白無常」と「黒無常」のペアが一般的なのですが、時代を遡ったり違う地域だったりすると「白無常」オンリーだったり、「ぶさかわ黒無常」との3人組だったりといろいろです。
そんなことから、「無常」とはなんぞや。
いつ、どこで、どのように発生したものなのかを、フィールドワークを中心に解き明かしていきます。

ちなみに中国思想では、神はすべて天に、人はすべて地に、死者はすべて地獄にいます。
善人も悪人も区別なく地獄。
ただし、悪人にはひどい仕置きが待っている、と。
そして善人は、まれに神さまになれたりもします。
私が中国の神様でよくわからなかったのがここです。
人間が修行して道士になったり仙人になったりするのはわかるとして、元が人間の神さま多くね?

清の時代の末期での「無常」の成り立ち。
貧しいけれども、盗んだものを母親に与えたりした孝行息子(?)が、死後にその善行(?)を認められて神さまになったとさ。
え?マジ?
じゃあ、ジャン・バルジャンなんて中国に生まれてたら神じゃん。

しかしもう少し遡って、清代の中期(日本だと江戸時代くらい?)に、山に棲む化け物がいろんな話とまじりあってできたのが「白無常」なのではないか、ということです。
ええと、つまり、それって日本だったら妖怪ってことでいいよね。神じゃないね。
あとがきで著者も、中国にはたくさんの妖怪がいるけれども研究が進んでいないと書いていましたし、やっぱ妖怪なのね。

それこそ民俗学みたいなものが中国にはなくて、どんどん近代化がすすめられているため、近い将来には非常に漂白されてきれいになったものしか残らないのではないかという危惧。
今こそ急いで中国の水木しげるみたいな人に頼んで(誰?)、絵と文で妖怪を紹介していかねば!

そして、結局のところ「無常」が現れてから2~300年くらいしかたっていないということ。
神としてはせいぜい100年ちょいくらい?
中国4000年の歴史を考えるに、あまりにも新しい神さまではありませんか。

民間信仰は民間信仰で祀ってはいるけれど、あくまでも現世での利益をお願いするくらい。
死後の安寧とかそんなもんは一切関係ない。
やっぱり中国人ってリアリストだなあ。

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2025年02月14日

Posted by ブクログ

民俗学系のYouTubeチャンネルで紹介されていたことをきっかけに読みました
元々妖怪好きで日本の妖怪には興味を持って来ましたが、今回この本を読んで中国の妖怪や東南アジアの他の地域に伝わる妖怪伝説のようなものにも断然興味が湧いてきたところです
学術論文の間に挟まる著者のフィールドワークでの体験を書いたエッセイがどれも面白くて最後まで楽しく読めました

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2024年12月29日

Posted by ブクログ

ブサ怖い表紙に誘われて最後まで一気に読んでしまいました。この本を知って台湾等アジアの廟を巡ると面白いかも。民間信仰の無常の歴史良く調べている。
中国の妖怪の原点かな。
とにかく色鮮やかで、ブサ可愛い、不気味で怖い、楽しく入りやすい面白い学術書です。
こんなの初めて見ました!

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

何かで紹介されていて、表紙を見た時から読みたかった一冊。
中国の「死神」無常に関してのとても丁寧な解説書。今の在り方だけではなく、その発生過程を愉快なフィールドワークで丹念に記している。
個人的には、一服のように添えられているそのフィールドワークも、一冊の本として読んでみたい。

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2024年01月30日

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