渡辺保のレビュー一覧

  • 勧進帳 ――日本人論の原像

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    勧進帳といえば歌舞伎好きの方には「またか」と言われるほどのものと聞いたけれど、だがその昭和以降に根付いてしまった大衆性故に見過ごし、忘れてしまっていた「義経と弁慶」、「弁慶と富樫」という関係を改めて考えなおすことができる良い一冊。もちろん純粋に筋書き、歌舞伎ばかりの側面にかぎらず、弁慶役者といわれた幸四郎についてはもちろん、生み出した7代目團十郎と彼を取り巻く環境や世相、そして現在の勧進帳についても鋭い目を向けている。無視の出来ない能の「安宅」「翁」、軍記物「義経記」、黒澤明「虎の尾を踏む男達」、ピエール・ブルジュアッドの「パスポート」も解説しながら「関を越えるもの」と「関を守るもの」の対立を

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    2012年08月07日
  • 歌舞伎 型の魅力

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    ・渡辺保「歌舞伎 型の魅力」(角川文庫)を 読んでゐる。読み終はつたわけではない。半分ほど読んだところである。それなのに書いてゐるのはなぜか。それは、この先、最後まで読んでも同じことであら うと見当がつくからである。さう、基本的な書き方がどこも同じやなもので、失礼を承知で敢へて言つてしまへば、この書はつまりは金太郎飴なのである。歌舞 伎の型を説明する時、誰々の型がどうこうで……この繰り返しが続く。最初の陣屋の熊谷に始まり、御殿の政岡、十種香の八重垣姫等々、歌舞伎の16人の登場 人物の型が説明される。これもまた失礼を承知で言つてしまへば、本書の内容はそれだけ、それだけの書なのである。歌舞伎の型と

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    2014年01月26日
  • 私の「歌舞伎座」ものがたり

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    歌舞伎座は平成二十二年春、建替えとなって、親しまれたあの建物が東銀座から消える。
    五歳になった昭和十六年から歌舞伎座に通いはじめて、六代目菊五郎、初代吉右衛門はもとより戦後再建された歌舞伎座五十八年間の舞台はことごとく見てきた。
    そんな劇評の第一人者が、魔ものが棲むという劇場でくり広げられる祝祭と、数々の名舞台をふりかえる。

    [ 目次 ]
    魔性の棲家
    改良座
    劇場の顔
    歌舞伎座再開場
    「源氏物語」と歌右衛門襲名
    吉右衛門の花道
    莟会の熱狂
    人間国宝の会
    二人の名女形
    「黄金の丘」〔ほか〕

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文

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    2011年06月07日
  • 勧進帳 ――日本人論の原像

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    歌舞伎評論の第一人者として知られる著者が、「勧進帳」の魅力について論じた本です。

    四代目市川海老蔵(七代目團十郎)が、能の「安宅」をもとに「勧進帳」を構想し、1840年に河原崎座ではじめての上演がなされるにいたるまでの経緯や、明治時代の九代目團十郎の死後、現代にいたるまで「勧進帳」が数多く上演されるようになったことなどが解説されています。

    つづいて著者は、「勧進帳」の作品そのものに立ち入って、その魅力についての考察をおこないます。とくに、「勧進帳」のもとになった能の「安宅」との比較を通して、中世的な無常観にもとづく「安宅」とは異なり、現世に生きる人間の情感がくっきりと示されているという指摘

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    2022年08月25日
  • 東洲斎写楽

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    歌舞伎の批評家として知られる著者が、東洲斎写楽の謎にいどんだ本です。

    著者は、従来の写楽研究が、写楽の作品を「絵を見る」という観点からのみおこなわれてきたと批判します。著者によれば、写楽の作品は美術品ではなく、役者の似顔絵と彼の出演した芝居の物語を表現しています。それゆえ、「写楽を読む」すなわち歌舞伎という演劇空間のなかでその人物がもっている個性や芸風などを作品のうちに読むことが、写楽の作品を鑑賞するさいには求められると著者は主張します。

    つづいて著者は、写楽の作品に登場する役者たちと彼らのおこなった上演との関係について検討をおこない、まずは写楽の正体が狂言作者の並木五瓶であったのではない

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    2022年08月22日
  • 私の「歌舞伎座」ものがたり

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    さすが知識、鑑賞経験豊富で、確かに「私の」と書名につけても良い方。名優も通もいなくなり、戦後の歌舞伎を伝える術がなくなる中、筆者にはできる限り舞台を見続けていただき、そして文章に残してもらいたい。

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    2022年08月15日
  • 私の「歌舞伎座」ものがたり

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    1889年に開設され、2010年に現在の姿に建て替えられることになった歌舞伎座に、60年にわたって通い数々の演技を見てきた著者が、その記憶を振り返っているエッセイです。

    著者は、本書のなかでしばしば「私は歌舞伎座の歴史を書くつもりはない」と述べており、あくまでエッセイとしてのスタイルを崩してはいないものの、著者ならではのするどい批評が随所に示されており、役者たちによって歌舞伎座の舞台がつくられてきたことがていねいにえがき出されています。

    なお、興味深く感じたのは、蜷川幸雄演出の『リア王』と、野田秀樹演出の『愛陀姫』について述べられているところです。著者は、これらの試みが歌舞伎座の「批評」の

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    2020年04月27日
  • 私の「歌舞伎座」ものがたり

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    劇評家の渡辺保さんが、自身の観劇歴をまじえつつ、歌舞伎座の名舞台を振り返る。。歌舞伎ビギナーにも見巧者さんにもオススメな1冊。
    伝統を守るというのは、つまり新しい時代を切り拓いていくこと、変化し続けることなんだなーと思えてきます。

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    2011年11月27日