蔡駿のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
蔡駿『忘却の河 (下)』竹書房文庫。
生まれ変わりという超常現象と複数の殺人事件に纏わるミステリーとを融合した中国小説の下巻。
上巻は非常に展開が早く、非常に面白いと思ったのだが、下巻は少し間延びした感がある。それでも、申明が刺殺された事件の背景が徐々に明らかになり、犯人の正体と事件の全貌、結末が知りたくて、ページを捲る手が止まらなくなる。
輪廻転生と因果応報。生まれ変わりと人びとの犯した罪の無限ループ。
2011年。高校生に進学した申明の生まれ変わりの司望は、申明のかつての教え子で教師になった欧陽小枝と運命の再会を果たす。司望は申明の死に纏わる真相を解き明かそうとする。
申明の教え子の女子高生である柳曼の毒殺の謎、柳曼とただならぬ関係にあったと噂された申明の殺害、申明の婚約者だった谷秋莎とその父親である谷長龍の死、申明の友人である賀年の死、一連の事件の捜査に携わっていた捜査官・黃海の転落死。申明と司望を中心とした死の連鎖は果てしなく続く。
時はさらに流れ、大学受験を目前にした司望は……
人間の運命は過去に犯した罪の重さで決まるのか。登場人物たちの複雑に絡み合った過去の罪がまるで意思を持った一つの輪となり、永久に回り続ける。
本体価格1,400円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
著者は<中国のスティーヴン・キング>と呼ばれるベストセラー作家らしい。
バスで隣り合わせた女性から預かった謎の箱を幽霊客桟に届けに行った作家、周旋から毎日届く長文の手紙。そこに描かれる幽霊客桟は不気味な雰囲気に満ちており、宿泊客も謎めいていた。手紙は日に日に現実離れした話になっていき、ついに…
本筋とは関係ないが、そんな辺鄙なホテルに行くときに周旋が持って行った本が森村誠一の『野生の証明』なのがちょっと笑った。
全体として少々冗長な気もするが、ゴシックホラーめいた幽霊客桟の雰囲気がよかった。ホラーとミステリの融合もなかなかいい感じ。
続編もあるようで、引き続き翻訳を期待したい。 -
Posted by ブクログ
浙江省東部の海岸に建つ三階建ての客桟。それが幽霊客桟だった。亡くなった女優の田園から託された木匣を幽霊客桟に持っていくことになった小説家の周旋は浙江省K市西冷鎮行の長距離バスに乗った。田園からの電話は途中で途切れて「幽霊客桟に持って行ってほしいの。場所は…。」だけで、場所も住所も分からなかったが、周旋は古い友達の警察官の葉䔥にその場所を探してくれるように頼んだ。そして今は幽霊客桟のある西冷鎮行のバスに座っている。これからどんなことが待っているか分からないのに…。幽霊客桟についた周旋は毎日友達の葉䔥に手紙を書いた。その中にこの悲劇が綴られていた。
-
Posted by ブクログ
愛情と狂気の深淵に飲み込まれる。親友が訪れた幽霊客桟から手紙が届くのだが… #幽霊ホテルからの手紙
■あらすじ
警察官の葉䔥(イエシャオ)に自宅に、かつての親友である周旋(ジョウシュエン)が訪ねてくる。彼は美しい女性と出会った逸話を話しだす。その彼女から木箱を預かり、木箱を幽霊客桟に届けてほしいとお願いされたのだ。
幽霊旅館がどこにあるか不明だったが、葉䔥が調べあげることに成功。周旋は木箱を届けるために、幽霊客桟に旅立ったのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
めっちゃ濃厚!
プロットもストーリーも人間関係もねばっこく、じっくりと味わえる良作です。
世界観としてはド真ん中ホラーで、つねに生死の間を漂っているかのようで不気味。それでいて愛に対しては純粋すぎて、その背景にある人間の業があまりにも怖い。
美しい描写が多く、また文中に様々な文学作品の引用やエピソードがちりばめられていて、ストーリーにも厚みが増す。日本の作品からの引用は、文学への恵愛と尊敬に溢れていて、同じ本を愛する者として、大変優しい気持ちになりました。
本書のメインは「第二章 幽霊客桟からの手紙」ですが、これはちょっとスゴイ。まさに周旋から葉䔥に宛てた手紙を読んでいくことになるのですが、幽霊客桟やその土地の歴史や謎、利用客の面々の描写がめっちゃ力強いです。
特に上手なのは小道具の使い方。木箱、蓄音機、写真、お墓、彫像など… 過去の人間の歴史を暗示する仕掛けが不安さを煽る。現実なのか幻なのか、本当なのか嘘なのか、生きているのか死んでるのかすらよくわからない。不気味さのなかにある混乱が、より読者を怖がらせ、でも熱中して読み続けてしまうんです。
そして謎解きとしても、おそらくよくミステリーを読んでいる人こそ唸らせる内容。そういうことだったんだ~と言う、からりとしたトリックではありません。作者のねばっこい、たくらみといった仕掛けで、ただ読み終わった後は胸にじんわりとくるものになっています。
海外ミステリーを読むたびに、いつも世界は広いなぁと感じますが、本作も例外ではありません。あきらかに本や文学、物語を愛している作家先生と分かる作品で、読んでいて嬉しくなりましたね。中国文学や文化を知るきっかけにもなるし、読んでよかったと思える作品でした。
■ぜっさん推しポイント
第二章後半の手紙。こんなに純粋な愛情表現は、久しぶりに読んだ気がします。情愛と狂気、そして憎しみや業が入り交じり、人間の底知れぬ部分が丸裸になっていく。
私はここまで情熱をもって生きたことがあっただろうか…
年を取ると安定やバランスばかり求めてしまいますが、力強く生きることの大切さは忘れずにいたいですね。