寺嶌曜のレビュー一覧
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三年前の事故で婚約者を亡くし、自身も右眼を失明した女性刑事・尾崎冴子。
しかし事故現場を訪れた日から、失明したはずの右眼に“三年前の光景”が映るようになる。
その能力を手がかりに、未解決の一家四人殺害事件の再捜査が始まる。
めちゃくちゃ面白かった。最初にあらすじを読んだ時は「犯行現場が見えるなら全部解決では?」と思ったが、それは大きな間違いだった。能力には様々な制約があり、当然ながら事件は一筋縄ではいかない。その制約があることで、特殊設定でありながら逆にリアルさを感じる。
この物語の面白さは、犯人を探すことよりも「分かっている犯人をどう追い詰めるか」という点にある。まさにタイトル通り、キツネがいることは分かっている。そのキツネをどう追い詰めるのか。その展開が非常にスリリングだった。
ヨーロッパの伝統的な“キツネ狩り”は、賢いキツネを人間がチームで追い詰めていく狩猟。この物語もまさにそれを思わせる構図で、チームで犯人を追い詰めていく展開がタイトルとも重なり印象的だった。
主人公は犯行現場を目撃することになるが、その衝撃や葛藤、見えているのに捕まえられないジレンマが物語の緊張感を生む。前のめりになりすぎて危機に直面する場面もあり、物語に起伏がある。
また周囲の人物も個性的で、チームとしての捜査も見どころ。主人公にしか見えない情報があることで、チームの中に認識のズレが生まれ、それがストーリー展開の面白さにも繋がっている。
後半は一気に物語が動き出し、スリルとスピード感で最後まで釘付けだった。
続編の刊行も決まっているようなので、このままシリーズ化していくことを期待したい。 -
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寺嶌曜『キツネ狩り』新潮文庫。
第9回新潮ミステリー大賞受賞作の異色の警察小説であった。
複数の事件が数珠つなぎのように次々と関係していく様が非常に面白い。そして何より凶悪犯の人物造形が見事である。また、先の見えぬ二転三転の展開と驚愕の結末も見事であった。
驚いたのは若手の新人作家のデビュー作かと思っていたら、自分より上の年齢の作家だったことだ。
3年前のバイク事故で婚約者を失い、自らも右眼を失明した警察官の尾崎冴子は、事故現場の峠を訪れた日から右眼に3年前の光景が映るようになる。そして、3年前の出来事は事故ではなく、何者かが事故を誘発するための罠であったことを知る。
尾崎は右眼の特殊能力を含め、かつての仲間であった弓削拓海と現在は署長となった深澤航軌に事実を打ち明ける。尾崎の特殊能力は深澤に見込まれ、弓削と共に未解決事件を捜査することになる。
尾崎と弓削はバイク事故を誘発させ、その動画をネットにアップしようとしていた犯人を逮捕する。さらに、未解決の一家4人殺害事件の再捜査を行うことになるのだが、バイク事故を誘発させた犯人が投稿していたサイトに一家4人殺害事件の一端が投稿されていたことを発見する。
尾崎は過去を見る眼と懸命な捜査で徐々に姿の見えぬ凶悪犯に迫り、ついにはキツネ顔の男の存在に辿り着くのだが……
本体価格850円
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シリーズ2作目。久々に面白い作家見つけちゃった!と興奮しながら1作目を読んだちょうどそのころに出た2作目。もちろんすぐ読む。安定に好き。事故をきっかけに3年前の過去が見えるようになった右目を持つ隻眼の女刑事。そして彼女を支える型破りな先輩のおじさん刑事と、後輩であり上司でもあるエリートくん。うっとりするような最高なキャラ設定と配置だ。
今回3人が挑むは、弓削(おじさん刑事)が襲われた過去の事件の真相。弓削が襲われた3年前のその現場を右目で捜査開始。そこからはめくるめく展開を見せる捜査。公安も絡んできてどんどん話は大がかりになる。ワクワク。新興宗教法人や過去の地下鉄無差別殺人事件などとの関係も捜査線上にのぼる。
最後はお決まりの緊迫のアクションシーン。真夜中に走らせた地下鉄の車両の中で、右目は3年前の事件を見る。そして、現在に現れた真犯人と走る電車の中で繰り広げる死闘。映像作品になりそうだなぁ。見応えありそうなギミックだ。
THEエンタメ。大満足で本を閉じた。早くも三作目を望む私。多作の作家になって欲しい。 -
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警官の尾崎は交通事故で失明したはずの右眼に、3年前の光景が見えるようになった。
公安の依頼により、かつて地下鉄内で起きた無差別殺人の再捜査を行うことになるが…。
前作『キツネ狩り』の内容を踏まえた上で話が進行していくので、未読の方は順番に読むのがおすすめです。
今作は宗教団体が絡む殺人事件に加え、公安に潜入するスパイ「モグラ」を突き止める壮大なストーリーに。
尾崎の右眼の能力はあくまで最終手段として、前作と同様地道な捜査の過程を楽しめる警察小説です。(死体や拷問シーンがわりと猟奇的なのでご注意を…!)
犯人を追っているはずがいつの間にか追い詰められていたり、繋がりのなさそうな人がどこで交わってくるのかドキドキしました。
口は悪くても仲間の体調や体裁を気遣い、緊迫した事件の場で自分ならどうするかを常に考える、人情派(?)刑事の弓削さんがかっこよかったです。
小説で宗教団体が関わると、大体悲惨な結末になる気がしてやりきれないですね…。
犯人が守りたかったものを守り通した覚悟に行き場のない悲しみを感じます。
カナリアと犯人の心情があまり描かれていないので少しモヤッと感が残るものの、次回作でその辺りの詳細が読めるのを楽しみに待ちたいと思います。 -
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子供の頃から好きだった作家たちの本は今や読み尽くし、新しいお気に入り作家を探す放浪の旅に出てから、随分たった。(もちろんこの場合の放浪とは、読書行動におけるバーチャルな放浪)。そんな私に、「あれ!なんかいいかも!」と思わせてくれた初読み作家さん。
刑事ものだ。ただ、主人公には、事故を契機に不思議な力が宿っている。視力を失った右目は、過去の風景を見ることができるのだ。3年前の事件現場に行けば、当時の現場の様子を見ることができる。もちろん、タイミングが合えば、犯行を目撃することもできる。そんな力を知った主人公とその仲間が、未解決事件を追う。
ワクワクするこの設定を、白けさせることなく書くこの作家は何者…?急いで調べる。なんと、続編も出版されてる!久々に心が踊った。
ちなみに、同僚の先輩刑事は、なぜか脳内で浅野忠信が演じた。いつかみたドラマ、刑事ゆがみのイメージから連想しているのは明らかだ。映像化するなら浅野忠信でやってほしい笑 -
3年前の人生
ある事故により失明した右目に再び光がよみがえった時「今立っている場所での3年前の景色が視えるようになった」という特殊設定のなかを物語はゆっくりリアルに進みます。ある刑事が感情的になる場面で物語は停滞してじれったくなります。じれったく感じさせるのは物語に魅力があるからです。
ですからテンポが合わないなどと読むのを止めないで最後まで読むと、しっかり着地していて、深く考えさせらることに気づかされると思います。
解決部分では多くの登場人物が説明づけられていきますが最後のカナリアだけは(ほんの一部だけ)読者の判断に任せられます。
2、3年時間をあけて新しい気持ちで読み返してみたくなる作品です! 主要人物たちが女性である事も本書の味になっています。前著の「キツネ狩り」は後から読んでも大丈夫ではあります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ三年前の事故で右目を失明し、その事故現場を訪れたことで三年前のその日の出来事が見えるようになった尾崎。
その能力を活かし、自身の事故の真相を追い、過去の一家四人殺人事件を再捜査する。
犯人が見えるのなら、捜査は簡単なんじゃ?と思ったら大間違い。
右目が使えるこは規制や制限があるし、3年前と現在では建物や状況が当たり前だが違う。
一筋縄で行かない捜査の過程も面白い。
また、一番の大きな問題は過去の出来事が見えるということが警察内では共有出来ず、能力を知ってるのはチームのメンバーのみということ。
犯人(キツネ)がわかっていても、似顔絵でしか共有出来なかったり、事件との関連や目撃者の信憑性に欠けたりする。
そんな中でどーやって、キツネの正体を突き止め、追いつめていくのかがこの本の見せ場だ。
キツネの正体がわかり、追いつめてく展開はスピーディーでハラハラさせられる。
痕跡を残さないキツネが不気味だ。
ただ、尾崎と話すキツネの話し方や性格が自分の想像していたキツネとはかけ離れていたため、そこはちょっと違和感だった。
動機が弱いわけではないのだけど、あんなに緻密なのに妙に子供じみていて違和感。
とはいえ、とても面白かったし次も刊行がもうすぐなので楽しみ。
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Posted by ブクログ
『キツネ狩り』の続編というか、シリーズになるのかな?
事故で右眼の視力を失った尾崎と上司の弓削が、署長の深澤の指示で、継続捜査支援室を創設して未解決事件を捜査する。
今回は、公安から依頼されて再捜査をするのだが、地下鉄内で起きた殺傷事件で、覚醒剤により6人死亡、3人が負傷し、犯人も死亡したわけだが、テロを疑っていた。
カルト集団によるテロなのか…
だが公安内にモグラがいる可能性もあり…
尾崎の右眼に頼った捜査で、地下鉄内での状況がわかるのだが、予想もつかない結果となる。
最後は、ふわっとしたままなのは、やはり続きがあるのだろうか…
しかし、いつまでも尾崎の右眼がもつのか、どうかと思ってしまう。
深澤も転勤の可能性が確実そうだしなぁ。