友枝康子のレビュー一覧

  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    非常に読みやすい!
    ディック長編の入門書としてもおすすめかもしれない作品。

    実は「逆まわりの世界」を読み始めたんだけど、
    内容は絶対好きなやつなのに、2〜3日経っても全然読み進められず、、
    それでそちらを諦めて、次に本棚から手に取ったのがこちら。
    とっても読みやすくてあっという間に読んでしまった。

    面白いのが、読み手のドキドキの対象(語彙力ほしい…)がある時点でガラリと変わること。

    最初、パラレルワールド的な展開に直面して「やっほー私の大好物!!」となったと思いきや、
    なんとその真相は非常にアッサリと解決されてしまう。笑

    でもそこで何故か全然落胆(期待外れ感)はなくて、
    その後は凄いス

    0
    2024年06月02日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    ジョン・タウランドの『流れよ、わが涙』(涙のパヴァーヌ)をタイトルに持つ本作。作中にも触れられていて、ディックはクラシック音楽が好きなんですね。

    ある朝、男が目を覚ましたら誰も自分を覚えていない…国家データバンクからも記録が消失した”存在しない男”になっていた。男の名は、ジェイスン・タヴァナー。一般人ならいざ知らず、彼は歌手であり司会も務める、三千万人の視聴者に愛されるマルチタレント。誰もが知っているはずなのに、かつての愛人まで知らないと言う。そして、管理社会であるこの世界で必須のIDカード(身分証明書)も無い…あるのは大量の現金だけだった。

    彼は、何が起きているのか確かめるためにも、偽造

    0
    2024年04月26日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    「有を名TVのMC・歌手で3000万人の視聴者を持つ男」が目覚めたら薄汚いモーテルにいた。誰も自分を知らず、政府のIDバンクにもデータがない「名無し」になる、というサスペンスフルで思わず読みたくなる導入から始まる。が、そこから主人公と女たちの会話に重点が置かれて愛と別れが語られ文学的な味がする作品となる。後半ではもう一人の主人公である警察署長に視点が移ってしまい当初の緊迫した謎や展開はどこかにいってしまう。
    個々のエピソードは素晴らしいが全体としてみると序盤の期待が外れてしまうため残念がところがある。はじめから愛と別れをテーマにした文学作品だと思えばいいのかもしれない。

    0
    2025年05月05日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    アイデンティティという薄っぺらな幻想

    「悲しみは最も完全で圧倒的な体験、だから悲しみを味わいたいのよ。涙を流したいの」

    愛するということの人それぞれの解釈、そして、愛を得て失うという痛みが、主人公ジェイスンの置かれた状況に絡みつく登場人物達によってもたらされる。
    キャシイ、ルース、メアリー・アン、バックマン、アリス……

    「ブレード・ランナー」のような世界観とはひと味違うが、これもまた、特別なフィリップ・K・ディックの世界。

    0
    2023年07月18日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    最愛の人に去られたディックの自伝的小説という趣の強いこの作品は、自己の同一性や認識している世界の崩壊というディックの作品に通底している恐怖をベースにしつつ、もう一つのテーマとして愛を割と純粋に語っている作品でもある。愛は自己保存の本能を凌駕し他者への献身、執着をもたらす。
    作中で様々な人物が自分なりの愛を見出そうとしているが、その中で主人公であるジェイスン・タヴァナーだけは愛を理解しない。それは彼がスイックスだからかそれとも生来のものなのか。

    現実の分裂は観測者だけのものではない。観測されるものもそれに巻き込まれる。
    また絶望の底に落ちてからの再生を匂わせて終わるところもらしい部分である。

    0
    2023年03月03日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    「いったい何が起こっているんだ?」
    主人公を襲う、夢なのか現実なのかわからないサスペンス劇、かと思いきや……?
    「これからどうなる?」というドキドキやハラハラで終盤まで引っ張り、昨今のエンタメに慣れた人にも面白く読める。そして明かされた謎……も良くできているが、この作品の本題はそこではないのだろう。
    真実が明かされた後に描かれる人間の葛藤・ドラマにこそ、その真価がある。愛と涙。心が洗われるようなラストシーン。哀しみは美しくすらあり、最後にはどこか暖かい気持ちが残る。そして迫ってくるタイトルが、あまりにも秀逸だ。

    0
    2021年02月08日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    主人公のタヴァナーの言動行動がどこか人間味に欠けるなぁと思っていたら、そういうことだったのか…!ある種のアンドロイドなんだ。
    一見悪役であったバックマンがタヴァナーと違って他人にシンパシーを感じ悲しみに涙することのできる人間だったんだな。前半と後半ではストーリーの軸というか誰を主人公と捉えて読むかがガラリと変わる本。

    0
    2020年04月04日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    自家用飛行機が飛び交う世界。3000万人の視聴者をもつ人気エンターテイナーーの男はある日突然安宿で目覚める。この世界では絶対に必要な身分証も無く、あるのは直前に持ち歩いていた大量の現金だけ。
    出会うひとも、電話をかけた相手も誰も自分の事を知らない。
    世界観はSFではあるけれど、中身は二人の男の愛と喪失の物語。面白かった。

    0
    2019年08月17日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    非常にエモーショナルな作品でした。「哀れっぽい哀しみ」というか、無力感に裏打ちされた希求というか。中盤、ある女性がうさぎの話に続けて語る愛の話は、特にストレートで、今の自分に共鳴しました。(エピローグで彼女のその後を知ってから読むとまた。)あとがきを読んだ限り、当時の作者の精神状態をおおいに反映しているそう。次々に女性が現れるのも、結婚離婚を繰り返した作者の人生を反映しているのでしょう。SF的仕掛けに着目するよりも、登場人物達の語りに聴き入りたい本。

    0
    2019年01月02日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    フィリップ K ディック 「 流れよわが涙と警官は言った 」
    近未来SFの面白さもあるが、キーワードは 涙の意味であり、愛のサイクルの物語(愛する→失う→悲しむ→悲しみが去る→また愛する)だと思う。特に ジェイスンとルースレイの愛についての会話は素晴らしい

    近未来SFとしての面白さ
    *遺伝子操作→優生学→スイックス
    *KR3服用者の知覚対象全てが 現実世界から非現実世界へ移行

    愛のサイクルの物語
    *愛のサイクル=愛する→失う→悲しむ→悲しみが去る→また愛する
    *ジェイスンが愛するもの(失ったもの)=自分、人々の記憶
    *バックマンが愛するもの(失ったもの)=詩的な美しい世界、ルール→失った

    0
    2018年07月06日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    最後バッドエンドじゃなくて本当に良かった。読むのを迷ってる皆様、バッドエンドじゃないから安心して読んで下さいと言いたい。あ、でも若い学生さんとには少し難しいかも。

    SF冒険奇譚かと思ってたんですが、あとがきで衝撃。そういう視点もありですね。なるほど、そこからあのタイトルかー。登場人物も面白く個性的で、最後は意外にもしっとり。私は好きです。

    0
    2017年03月29日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    デッィクに慣れてきたのかそれともそういう本なのか、いつになく話の筋がすっきり見える本だった。そのぶんグラグラ感は少なかったけど夢中で読んだ。やっぱりディック面白い!自分がある日存在しない世界に飛んでしまった男の物語。冒頭プルーストのくだりでにやり/人間何が起こるかわからないし理屈通りには動かない/<日常>にいる限り人は共通ルールに則っているが<日常の外>の存在はルール通りにはならない/悲しみは私と失ったものをつなげてくれるもの/恐怖は憎悪や嫉妬より始末が悪い/たまたま目に留まっただけで完全な白紙に歯戻せない理不尽/Mr.バックマンが死んだのは2017年

    0
    2017年01月15日
  • 辺境の人々

    Posted by ブクログ

    SFとは思えない短編集だがいい味の作品もある
    表紙   6点田中 光
    展開   7点1989年著作
    文章   6点
    内容 650点
    合計 669点

    0
    2016年09月23日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    ディックの不条理物 違和感を感じるがそれがディック
    表紙   7点上原 徹
    展開   6点1974年著作
    文章   6点
    内容 700点
    合計 719点

    0
    2016年06月22日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    TVスターがトラブルで手術室に運び込まれ,目が覚めると世界中の誰も自分を覚えていないし,データバンクに彼の存在を示す記録が何も残っていない,,,という,ディックお得意の「現実と非現実の違いって何?」というお話し.
    と聞くと極めてSFチックなのだが,ただし,実は設定はそれほど重要ではなく,読んでみると中身はボネガットか,ジョンアーヴィングか,という感じ.
    ディックの作品の例に漏れず,グダグダになっているところもあるし,TVスターは主人公ですらなくなってしまうし,そもそもはじめに述べたトラブルの理屈もサッパリわからないのだが,近しい人を失う喪失の痛みを書いた話です.
    おそらく25年ぶりぐらいの再読

    0
    2016年02月11日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    解説というものを人生の中で指折りで数えられるくらいしか読んだことがないが、読んだ。
    小説に対する某かの感想なんてあまり意味のないように感じていたが、これは理解を深める上では役立つこともあるのかもしれない、と思い直した。

    名は体を表す、か。
    肝に銘じておこう。

    0
    2016年01月22日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    作者のメッセージ性が強いですが、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」などと比べると少し伝わりにくい内容なのではないかと思います。

    ただ主人公の行く先を追っているだけでは読み終わった時に ん? となりそうです。

    途中途中の伏線が最後に結びつくのでじっくり読むことを推薦します。

    0
    2015年01月13日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    フリップ・K・ディックらしい、「現実」と「虚構」の境界が曖昧な一冊だった。国民的スターである主人公が、ある日突然「存在しない人間」になるという不条理な状況に放り込まれ、そこから彼のアイデンティティと社会のシステムが崩れていく過程が描かれる。ラスト近くでは、その異常体験に一応の説明が提示されるが、かなり強引で、「結局何だったの?」という疑問は残る。ただ、その“納得しきれない”感覚こそが、まさにディックらしさでもある。整合性よりも、喪失や孤独、不安といった精神のリアリティが強く伝わってきた。タイトルに込められたルネサンス音楽の哀しみが全編に響いており、読後には不思議な余韻が残る。「説明できないけれ

    0
    2025年06月19日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    世界のみんなから知られているタヴァナー
    しかし、目を覚ますと世界の誰も自分のことを覚えていない
    記録からも消失し、警察からも追われる
    タヴァナーは警察のパワーゲームのために犯罪者の容疑にもされていき、より奈落に落とされていきそうになる
    警官のバックマンが親しき人の深い悲しみに包まれた時に涙が流れる

    0
    2025年03月30日
  • 流れよわが涙、と警官は言った

    Posted by ブクログ

    スイックスという存在に惹かれた。
    いわゆる遺伝子操作された特別人種みたいな存在大好き。
    ディックの小説はSFだけど哲学的なテーマが垣間見えて文学チックで良いよね!

    0
    2024年04月27日