友枝康子のレビュー一覧

  • 流れよわが涙、と警官は言った
    三千万の視聴者を持つ人気タレントのタヴァナーは、ある朝見知らぬ安ホテルで目覚める。そしてこの希代の名タレントのことを誰も知らないことが判明する。彼のマネージャーや愛人でさえも・・・。さらに出生記録といったあるとあらゆる彼に関する情報が国家のデータバンクから消失していたのだ!"存在しない男"となった彼...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    アイデンティティという薄っぺらな幻想

    「悲しみは最も完全で圧倒的な体験、だから悲しみを味わいたいのよ。涙を流したいの」

    愛するということの人それぞれの解釈、そして、愛を得て失うという痛みが、主人公ジェイスンの置かれた状況に絡みつく登場人物達によってもたらされる。
    キャシイ、ルース、メアリー・アン...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    最愛の人に去られたディックの自伝的小説という趣の強いこの作品は、自己の同一性や認識している世界の崩壊というディックの作品に通底している恐怖をベースにしつつ、もう一つのテーマとして愛を割と純粋に語っている作品でもある。愛は自己保存の本能を凌駕し他者への献身、執着をもたらす。
    作中で様々な人物が自分なり...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    「いったい何が起こっているんだ?」
    主人公を襲う、夢なのか現実なのかわからないサスペンス劇、かと思いきや……?
    「これからどうなる?」というドキドキやハラハラで終盤まで引っ張り、昨今のエンタメに慣れた人にも面白く読める。そして明かされた謎……も良くできているが、この作品の本題はそこではないのだろう。...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    主人公のタヴァナーの言動行動がどこか人間味に欠けるなぁと思っていたら、そういうことだったのか…!ある種のアンドロイドなんだ。
    一見悪役であったバックマンがタヴァナーと違って他人にシンパシーを感じ悲しみに涙することのできる人間だったんだな。前半と後半ではストーリーの軸というか誰を主人公と捉えて読むかが...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    自家用飛行機が飛び交う世界。3000万人の視聴者をもつ人気エンターテイナーーの男はある日突然安宿で目覚める。この世界では絶対に必要な身分証も無く、あるのは直前に持ち歩いていた大量の現金だけ。
    出会うひとも、電話をかけた相手も誰も自分の事を知らない。
    世界観はSFではあるけれど、中身は二人の男の愛と喪...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    非常にエモーショナルな作品でした。「哀れっぽい哀しみ」というか、無力感に裏打ちされた希求というか。中盤、ある女性がうさぎの話に続けて語る愛の話は、特にストレートで、今の自分に共鳴しました。(エピローグで彼女のその後を知ってから読むとまた。)あとがきを読んだ限り、当時の作者の精神状態をおおいに反映して...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    フィリップ K ディック 「 流れよわが涙と警官は言った 」
    近未来SFの面白さもあるが、キーワードは 涙の意味であり、愛のサイクルの物語(愛する→失う→悲しむ→悲しみが去る→また愛する)だと思う。特に ジェイスンとルースレイの愛についての会話は素晴らしい

    近未来SFとしての面白さ
    *遺伝子操作→...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    最後バッドエンドじゃなくて本当に良かった。読むのを迷ってる皆様、バッドエンドじゃないから安心して読んで下さいと言いたい。あ、でも若い学生さんとには少し難しいかも。

    SF冒険奇譚かと思ってたんですが、あとがきで衝撃。そういう視点もありですね。なるほど、そこからあのタイトルかー。登場人物も面白く個性的...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    デッィクに慣れてきたのかそれともそういう本なのか、いつになく話の筋がすっきり見える本だった。そのぶんグラグラ感は少なかったけど夢中で読んだ。やっぱりディック面白い!自分がある日存在しない世界に飛んでしまった男の物語。冒頭プルーストのくだりでにやり/人間何が起こるかわからないし理屈通りには動かない/<...続きを読む
  • 辺境の人々
    SFとは思えない短編集だがいい味の作品もある
    表紙   6点田中 光
    展開   7点1989年著作
    文章   6点
    内容 650点
    合計 669点
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    ディックの不条理物 違和感を感じるがそれがディック
    表紙   7点上原 徹
    展開   6点1974年著作
    文章   6点
    内容 700点
    合計 719点
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    TVスターがトラブルで手術室に運び込まれ,目が覚めると世界中の誰も自分を覚えていないし,データバンクに彼の存在を示す記録が何も残っていない,,,という,ディックお得意の「現実と非現実の違いって何?」というお話し.
    と聞くと極めてSFチックなのだが,ただし,実は設定はそれほど重要ではなく,読んでみると...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    解説というものを人生の中で指折りで数えられるくらいしか読んだことがないが、読んだ。
    小説に対する某かの感想なんてあまり意味のないように感じていたが、これは理解を深める上では役立つこともあるのかもしれない、と思い直した。

    名は体を表す、か。
    肝に銘じておこう。
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    作者のメッセージ性が強いですが、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」などと比べると少し伝わりにくい内容なのではないかと思います。

    ただ主人公の行く先を追っているだけでは読み終わった時に ん? となりそうです。

    途中途中の伏線が最後に結びつくのでじっくり読むことを推薦します。
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    起きたら自分が存在しない世界に放り出されていた…。
    マルチ・タレントの主人公は警察から逃げ回った。自分の世界に戻ったと安心したのも束の間、今度は殺人犯として追われる羽目に。それが、たった一錠の時間保存薬(?)を飲んだだけ?
    改造人間が限界を駆使して挑む!
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    ディックの名作とされる作品。ただ後半はよくわからなかった。なぜ警官はタヴァナーに罪を押しつけなければならなかったのか。タヴァナーが世界を異動したことの意味、エピローグの意味は何なのか、とか。もう一度読む必要があるか、、、。
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    タヴァナーが主人公かと思いきや、バックマンが実質的な主人公。ただ、バックマンにはあまり魅力を感じられなかった。文章は読みやすい一方で、時折読みづらくなる。タヴァナーの状況は想像するだけで恐ろしいけど、彼は顔が良いので大丈夫。「俺はスィックスだから我慢できたけど人間だったら我慢できなかった」そんなノリ...続きを読む
  • 流れよわが涙、と警官は言った
    近未来的で、どこか古臭い。
    この本が出版された当時想像されていた“近未来”が、頭の中に浮かんでくる。
    どこか退廃的で薄暗い雰囲気は、前に読んだ電気羊を思い出させてくれた。ディックの書く近未来は、なぜか心地良い。

    巻末の解説を読むと、執筆当時の著者の状況が色濃く反映されているようだ。
    読み始めた当初...続きを読む
  • 地球の呼び声
    にほん人に馴染みのない異世界らしい名前の登場人物になれてきた頃、ストーリーが進み、興味深くなった頃終わる。
    善作を読んでいなくてもおおよその展開は見えてくるが最後が不完全燃焼。ロード・オブ・ザ・リングスの映画の1を見終わったときの不満も似たものを感じる。
    このあとは日本で出版されたものが見つからない...続きを読む