キャサリン・アーデンのレビュー一覧
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故郷を守る代償に、故郷を失ったワシリーサ(ワーシャ)。冬の王から与えられた馬(ソロヴェイ=小夜鳴鳥)と共に旅に出る。男装したワーシャはふとした偶然から次兄アレクサンドル(サーシャ)と再会する。サーシャは母方のいとこドミトリーと行動を共にしていた…。
第2巻のモチーフは"火の鳥"です。そしてワーシャたちの亡き母が"イワン1世の娘だった"という筋立が物語に奥行きを与えて行きます。モスクワへ嫁に行った姉オリガとその娘マーシャも重要な役割を果たします。
ワーシャがぶつかる難題の数々は余りにも過酷で目を背けたくなる所が多々あるのですが、張り巡らされた伏線が少しずつ少しずつ解けていくのが見事です。はたしてワーシャの運命が好転するチャンスは残されているのか?最終巻へと続きます。 -
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私好み!大当たり。全3巻でおよそ1600ページの歴史ファンタジー。しかも舞台は1370年頃のロシア(モスクワ大公国)イワン2世〜ドミトリー•ドンスコイの時代。日本では『全く』と言い切ってよいレベルで知られていない。従って人にはお薦めできない(笑)でも面白い!
著者はアメリカの女性作家。大学でロシア語を勉強し、ロシア留学もしている。そのため本書はロシアの歴史や風土はもちろん、昔話や伝承なども下敷きになっている。第1巻は"麗しのワシリーサ"や"森は生きている"などが隠し味のように織り込まれていて、その辺も私好み。好き!
主人公ワシリーサ(ワーシャ)は、亡き母から受け継いだ"人には見えない精霊を見る能力"をもつ少女だ。しかし父が再婚した継母は敬虔なキリスト教徒。新たにやって来た司祭も精霊の存在を認めないためワーシャは窮地に追い込まれて行くが…。
第1巻はワーシャの成長と旅立ちまでの物語。丁寧に読むと、様々な伏線が張り巡らされているのが分かります。面白い! -
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ネタバレ熊と引き換えに父親が死んでワーシャは魔女として皆から追われ旅に出る。少年の格好をして愛馬ソロヴェイと共に困難を乗り越え成長していく。姉や兄との再会、盗賊からさらわれた娘たちの救出、魔術師との闘い、その影に寄り添うように冬の王が危機のたびに現れ助けてくれる。二人の間に何かが生まれ育っていくのが感じられる。だからこの巻の最後はショックでした。
冬の王などの伝説神話の世界がキリスト教の閉じられた世界に侵食されていく様子、ロシア黎明期のモスクワのハン一族との攻防など歴史物のような奥行きがあって面白い。また虐げられていた女性たちの在り方なども考えさせられる。 -
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ネタバレ真夜中の国へマロースカを探しに行ったワーシャが、勝手に熊を解き放ったんだから責任をとってもらうという態度で、こいつこの恩知らずがと思いながら読んだが、記憶を失ったマロースカとのやりとりと、暑さで弱体化しながらもワーシャのそばを離れないマロースカがいじらしくて良かった。
作者は史実に基づいたタタール人との戦いをやりたかったようだが、それをやるために、メドベードとマロースカの確執が軽く流されていて残念。ワーシャに人生狂わされたコンスタンチンも、悪意なく混沌を招くメドベードも宿敵という感じがなく、かと言ってタタール人との戦いにワーシャが首を突っ込む必要性も感じられず、勝利できて良かったねと思えなかった。
強引なところもあったが、すべて丸く収った結末は良い。ワーシャの勇気の物語だったが、その勇気が身勝手に思えることが多く、けなげにワーシャに尽くし、オリガやサーシャにチクチク言われるマロースカさんに同情した。ソロヴェイの代わりに相棒になったパジャールが気難しくて可愛い。父と乳母のことは思い出さないのに、ソロヴェイのことはやたら引きずるなと思ったら、ラストにサプライズがあって良かった。
「あらすじ覚え書き」※ネタバレあり
コンスタンチンによって火炙りにされかけたワーシャは、祖母の妹でありオリガの侍女であるワルワーラにより真夜中の国へ逃がされる。マロースカはメドベードを解放し、ワーシャを助けることと引き換えに過去の時代に囚われ、真夜中の国でマロースカを見つけたワーシャは、彼を愛していることにようやく気づく。タタール人の軍勢がルーシにせまり、ワーシャはルーシすべての民が団結しなければならないと進言し、モスクワ大公と教会にチョルト達への信仰を咎めないと約束させる。メドベードをしもべにし、生と死、夏と冬をしたがえたワーシャはチョルト達とともに戦い、タタール人の軍勢に勝利する。 -
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ネタバレ中世時代のロシア、ルーシを舞台にしたファンタジー。2巻はモスクワが舞台となり、マースレニツァ祭や、モスクワ大公がらみの陰謀、男装した主人公が活躍する王道展開があり1巻よりも楽しめた。なじみのない極寒の世界やロシア文化が面白く、ルーシの人々が何かというと風呂小屋(サウナ)に入りたがるのが意外だった。
魅力的なキャラは多いものの、ワーシャの目的がはっきりせず、何をする物語なのかよくわからない。「海に沈む太陽を見る」ために村を出たはずなのに、たまたまサーシャと出会ったからモスクワに行き、悪いタタール人がいたから戦い、ドミトリーの人柄に惚れると家来になれたらと思う。魔女の血のルーツを探すとか、チョルト達のために何かするとか旅の目的があった方が良かったと思う。
あと、長い髪を切らなかったり、ソロヴェイを賭けの賞品にしたり、マロースカに世話になりっぱなしのくせに魔除けの石を持つことを拒否したり、身勝手すぎてモヤモヤした。ワーシャを解放するためにマロースカが石を取り上げ、ワーシャがマロースカを求めに行く流れの方がまだ納得できたと思う。ワーシャを好きになったばかりに、どんどん落ちぶれて行くコンスタンチン神父はとても良い。何の伏線もなく魔術師が出てきてびっくりしたが、不死身のコシチェイという元ネタがあるよう。
「あらすじ覚え書き」※ネタバレあり
謎の盗賊が村を焼き、子供達を連れ去る被害がルーシ各地で起きていた。故郷を出て旅をしていたワーシャは、盗賊退治に来ていた兄サーシャと再会し、モスクワ大公ドミトリー、骨の塔の領主カシヤンと出会う。カシヤンの正体は不死身の魔術師であり、ワーシャが青い宝石を身に着けているのを見ると死神の奴隷だとののしった。消えかけていたマロースカは、ワーシャの魔女の血によって生きのびていたが、利用されていたことに怒ったワーシャは宝石を手放してしまう。モスクワ大公の座を狙うカシヤンは、タタール人の盗賊達とともに宮殿を襲う。姉オリガの屋敷にいた幽霊がカシヤンの妻タマーラであり、カシヤンの命を持っていると気づいたワーシャはカシヤンの命を壊す。タマーラは、ワーシャの実の祖母でもあった。霜の魔物は生き続けることはできない。力を失ったマロースカはワーシャの前から姿を消す。 -
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ネタバレ主人公が生まれる前の話から始まり、モスクワでの政治的な思惑や、仲の良かった兄弟達がそれぞれ別の道に行くなど、物語が大きく動くまではとても良かった。が、継母と神父を連れて父が戻ってからは、日本の因習村みたいなドロドロジメジメした展開が続き退屈だった。特に、美形で美声で絵画も描けるハイスペ神父の視点が多く、こいつが改心してヒーローになるかと思ったらそうでもなく、最後まで読んで美形設定いらんかっただろと思った。
不思議な力で精霊達を見ることができるワーシャが、村人達から魔女と怖れられるなか、兄のアリョーシャと異母妹イリーナだけが、ワーシャを信じて味方するのが良かった。冬の王マロースカは、いまいちキャラがつかめず次巻に期待。ロシア民話のジェド・マロースがモデルのようだが、弟であるメドベードのモデルは見つけられなかった。
「あらすじ覚え書き」※ネタバレあり
人々の話によれば、ぼろをまとった少女が馬に乗り、クレムリンの門をくぐってきた。少女は動物を手なずけ、のちに起こることを夢で知り、雨を呼ぶことができたという。北部領主の娘ワーシャは、この祖母の力を受け継いでいた。北部の土地は良き精霊によって魔物から守られていたが、熊の魔物メドベードがコンスタンチン神父を惑わせ、村人から精霊への信仰を失わせる。生ける屍に村人が襲われてゆくなか、修道院へ入るよう言い渡されたワーシャは森に逃げ込み、冬の王マロースカにかくまわれる。不思議な力を持つ雄馬ソロヴェイを得たワーシャは、復活したメドベードと戦い、ワーシャを救うために父ピョートルが命を落とす。広い世界を見るためワーシャは村を出て旅立つ。 -
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ネタバレ第3部 〈完結編〉
堕ちた神父に煽動された暴徒たちによって愛馬を殺され、魔女として捕らえられて火刑に処される寸前でかろうじて異界へ逃れる…と、初っ端からまたしても満身創痍すぎるワーシャ。あまりにも強大で邪悪な敵に対し、17歳の少女がたった1人でどうやって立ち向かえばよいのか(やめておけばいいのに、なぜ何度もわざわざ危険な目に遭うのか…)。 孤立無援の苦しい旅の中で、初めて現れた小さな仲間(キノコの精)や馬たちとの交流が微笑ましい。そして、再会した冬の王とのロマンスも。。
クライマックスは、ルーシの諸公国が結束して敵国タタールの襲来を打ち破ったクリコヴォの戦いという史実に基づいているが、ワーシャはロシアの土着の精霊(チョルト)たちに呼びかけ共に戦うことで見事勝利に導く、というエンディング。 ふと、今のルーシ(ウクライナを含むロシア)で同じ民族で殺し合っているのを、チョルトたちはどんなに嘆いているだろうと思った。『神などいない —— あるのは信仰だけ』という悪霊の台詞に納得。
誤訳なのか原文のミスなのか、文中に語句の重複があったり、人名の入れ違いのために話の辻褄が合わない箇所がいくつか見受けられたのは残念だったが、トントン拍子に刊行してくれて有難かった。
壮大なファンタジーがあっという間に完結してしまって寂しくもあり、ワーシャと冬の王の後日譚や姪のマーシャを主人公にした続編が出たらいいな。実はバーバ•ヤガーと海の王(⁉︎)の血をひいてたというのも唐突だったので、そのあたりのルーツも気になるところ。 -
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ネタバレ第2部
生まれ育った村を追われる形で、首都モスクワへと辿り着くワーシャ。 途中、盗賊と戦って攫われた少女たちを救出したり、宮廷に渦巻く陰謀に巻き込まれたり、自らの出自にまつわる因縁の魔術師との対決、という怒涛の展開。
当時、ロシアの一定の身分の女性はテレムと呼ばれる小高い住居に篭って暮らし、自由に外を歩くことさえ許されなかった。 年頃になれば、結婚して夫のテレムに移りそこで子を産み育てるか、もしくは出家して修道院に行くか…自由奔放なワーシャにとってはどちらも監獄と同じである。 馬に乗って1人旅立ち、寒さや飢えや身の危険に晒されたとしても広い世界を見たい!というワーシャの望みは叶うのか。
ふと『ピーターパン』の中で、人間が「妖精なんかいない」と言うたびに妖精が1人死んでいく…という話があったのを思い出した。 ロシアの土着の精霊たちや、キリスト教の神でさえ、目に見えないものに対する信仰というのは人間の心に深く根ざしながら、一方で簡単に揺らいでしまう不確かなものだ。
それは、死を司る冬の王マロースカであっても同じで、不死の存在である自らをこの世につなぎ止めるために若い娘を利用してきたが、いつの間にかワーシャを愛してしまったことで力を失い…という切ない展開。 自分の感情に戸惑いながら、ワーシャにどう接したらよいか悩んだりする意外な人間臭さ(ツンデレ)が微笑ましい。 マロースカはまた冬が来たら力を取り戻すの? それとも完全に消滅してしまったの…? 第3部が楽しみ。 -
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第1部
精霊たちの姿を見、会話することができる娘ワーシャが、異端視され魔女と迫害されても自分の世界を信じて困難に立ち向かっていく。ロシア版 精霊の守り人…?
ヒロインのワーシャは美しくない、醜いと形容されるが、美しい緑の瞳と赤みを帯びて輝く黒髪を持ち、その強さと勇敢さで人の心を惹きつける。 これからどんな苛酷な運命が待ち受けているのだろう。
可愛い表紙イラストからしてライトなファンタジーかと思いきや、意外にも重厚なストーリーでかなり読み応えがある。 中世ロシアの陰鬱な農村の暮らし、厳しい寒さと飢え、そして民間信仰などが丁寧に描かれ、なかなかページは進まない…。華々しい冒険活劇というわけでもなく、クスッと笑えるようなユーモアもなく、決して読みやすい物語ではないのだが、登場人物それぞれの心の機微の描き方に深みがあるのは訳者が金原瑞人さんだから? (しかし、ロシア人名は愛称が何通りもあるので慣れていないと時々混乱する。)
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14世紀半ばロシアで、北の豊かな領主の娘として産まれたワーシャ(ワシリーサ)には祖母の精霊を見る力が受け継がれていた。しかし、時代はキリスト教に変わり、新しい美しい司祭によって精霊達の力は衰え、熊と呼称される、まがまがしい力が復活しそうになる。熊と冬の王マロースカ(死の神カラチェン)は兄弟で、マロースカは恐ろしい力を持つものの、人に害はなさない存在。後半、ワーシャは力を復活させたいメドベード(熊)に狙われるが…というところが、この本の概要。昔話の要素を多く取り込み、重厚なフォンタジーだった。そして、長い。三部作なのだけど、この本だけで本編474ページ!こういう民俗的要素取り込んだファンタジータイプの本が好みで、急いで読まなくてゆっくり楽しむ人にオススメします。私は嫌いじゃないけどね、眠くなりやすいのが難。金原瑞人訳だし、続きも読むよ~。しかし、女は健康な子どもを産むのと、家のことやるのが仕事の時代に生まれなくてよかったよ。あと、小夜鳴鳥(ナイチンゲール)なのに馬だったりとか、その辺りの読みなれてる人には多分当たり前の展開が、読みにくさ倍増させてるかもしれません。