T キングフィッシャーのレビュー一覧
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入江王国の第三王女マーラ。北方王国に嫁いだ長姉が亡くなり、続いて嫁いだ次姉は苦境に陥っている。修道院でひっそりと暮らしていたマーラだったが、姉をなんとか救いたい一心で手立てを探す。北方王国を守護する魔法に打ち勝つために、マーラはまじないを操る墓守女の助力を求めるが…。
2023年ヒューゴー賞受賞作。
冒頭部、与えられた課題をこなすマーラ。痛みに耐えながら刺草(イラクサ)のマントを織り、墓穴で“骨の犬”を作る。
ティム・バートンの映画の世界観に似通った嗜好を感じる。(嫌いじゃない。むしろ、好き)
中盤から一人、また一人と同行人が増えていく、RPGやハイ・ファンタジーでは王道のスタイル。その辺りからは一気読みでした。
欲を言えば、各人の“存在意義”がもう少し明確に創り込んである方が好き。ちょっと物足りない。
それと文章。回りくどい。思い入れたっぷりの表現なのは分かるけど、すごくアクが強い。訳文のせいかな。“てにをは”もヘンテコなのはそのせいか?
登場人物のキャラクター設定はポリコレを意識しているのかな?その辺りも謎。
とりあえず、“ハイ・ファンタジー好き”や“旅の仲間好き”にはヒットする。興味を持って読めると思います!
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ヒューゴー賞受賞の王道ファンタジーと宣伝されていたので手に取った。あるところに王女さまがいて、他国に嫁いだ姉が夫から過酷な扱いを受けているのを救うため、旅に出て、仲間を集めて目的を果たし、帰るまでの物語である。ジブリアニメにありそう。
王道ファンタジーなのでストーリー展開に意外性はない。もう少し設定や物語の牽引方法を工夫してもよかったのではと思う。主人公たちではなく、作者が魔法に頼りすぎた感は否めない。
主人公が30歳を過ぎた女性で、仲間の婆さんたちが大活躍という点は少し現代的か。キャラクターは生き生きしていると思う。英雄的な要素をはぎとられた主人公がいい味を出しているが、敵役の姉の夫は時代劇の悪者レベルの造詣たった。
ストーリーは淡々とというより、安易といっていいほど淀みなく進むが、それが主人公の冴えない感じを上手く出しているとも言える。三人称で書かれてはいるが、読者に示されるのは主人公の目をとおした世界である。因果と示唆に富み、あらゆるものが蠢く複雑な世界をやや愚鈍な主人公は遠くまで見通すことができない。思いつきで動き、場当たり的に対処し、流されるように進む感じを上滑りするようストーリー展開であえて出しているなら成功している。
訳によるのか、文章はやや読みにくい。指示語が何を指すのか曖昧なものが少なくない気がした。 -
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SNSで「T・キングフィッシャーはいいぞ」という声を見て、「そうなのか~」と手に取ってみた一冊。ジャンルは児童文学/ファンタジイで私のような読書ライト勢でも気軽に手が出せ、そしてとても面白かった。 主人公は、パンに関する魔法を使える14歳の女の子。元気いっぱいのパン職人で、物語は彼女の一人称で語られ、その語り口は思わず「お嬢ちゃん」と声をかけてしまいそうなほどあどけない。でもこの小説、パン屋の厨房で身元不明の少女の死体が転がっているところから始まる。誰もが寝静まっている早朝、主人公は厨房で死体と二人きり。Ohかわいそ……でもSAWよりはマシか。知らない場所に拉致されているわけでも、拘束されてるわけでもないし……。 けれど話は街全体を覆う暗い陰謀へ広がっていく。SAWよりずっと規模が大きい戦いに巻き込まれていく主人公たち。いい加減SAWから離れた方が良い。ほんとそう。(やかましい)
馬の死体を扱う中年女性の魔法使いが本当に良くってぇ……クライマックスのアレコレは映像で観てみたいなぁ。 子供の時に読んだとしたら、大人になってから「ああ、そういうことだったのか」と思えるようなテーマが色々と盛り込んであり、すごく素敵な一冊だった。読めて良かった。 -
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入り江の小国の三番目の姫マーラは、北方の大国に嫁いだ姉姫が窮地に陥っていると知り、姉の結婚相手である王子を殺すため墓守女を探す旅に出る。骨でできた犬、無愛想だが面倒見の良い墓守女、ゴブリンに囚われていた戦士、祝福が苦手なゴッドマザーを連れ、マーラは強固な魔法に守られた強大な北方王国へと向かう。ヒューゴー賞受賞ファンタジー。
てっきり児童文学かと思って読み進めたら、主人公のお姫様が30歳でびっくり。お姫様が若いとは限らないのは事実だけれど、30歳らしさも無かったので、修道院に居た年月をもっと短くして若い設定にしても良かったのではないかと思う。妊娠・出産についての話が生々しいので子ども向けにはならないのかなぁ。
伏線のようにたくさんの謎めいた材料が散りばめられているけれど、そのほとんどは詳細がわからないまま終わるのでモヤモヤしたものが残る。しかし、日本人にはあまり馴染みのないゴブリン市や墓守女などが出てきて、面白かった。
全体にマーラの感情の起伏に生き生きとした感じが薄く、淡々としているので、ロマンスはロマンスらしくドキドキさせて欲しいし、絶望は絶望らしくもう少ししっかり落ち込んで欲しいところ。 -
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早川書房さんのTwitter(現X)で知り、「たまには海外のファンタジー作品でも」ということで手に取ってみた。
舞台は、魔法が存在する中世ヨーロッパ(注:イメージ)。叔母のパン屋で働く主人公のモーナは、パンやクッキー生地に魔力を注いで上手に焼き上げたり、焼きあがったジンジャーブレッドを使役することが出来る等、「焼き菓子限定」で力を発揮できる14歳の魔法使いの女の子。
ある日の早朝、朝の仕込みの為に厨房へやって来たモーナは、そこで女の子の死体を見つける。モーナの話を聞いた叔母タビサの通報で2人の巡査が駆けつけるが、そこにはもう一人、異端審問官オベロンの姿が。そして、殺人の罪で連行されてしまうモーナ。"ただの"パン職人の魔法使いの少女は、街の命運を左右する陰謀に巻き込まれていく―――。
政治的陰謀に巻き込まれたパン屋の魔法使いの少女が、"焼き菓子限定魔法"で町の存亡を賭けた戦いに身を投じることになるファンタジー物語。ヤングアダルト向けのファンタジー作品で、邦題の語感やパンとクッキーに囲まれた可愛いモーナの表紙イラストと作品内容に齟齬はないので、(多分)ジャケ買いOK!一風変わった魔法使いの少女が奮闘する、ジュブナイル・ファンタジーを楽しむことが出来る一冊。
また、個人的には映像化して欲しい一冊でも。駆け回るジンジャーブレッド、立ちはだかるクッキーゴーレム、そしてクライマックスは・・・。映像映え間違いなしかと! -
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・T・キングフィッシャ-「パン焼き魔法のモーナ、街を救う」(ハヤカワ文庫FT)を読んだ。正に書名通りの物語である。これ以下でもない、これ以上でもないといふ、正にそのものズバリの内容である。小説の題名となると、作家は、あるいは訳者はその内容に添つた題名をつけるのだが、そのものズバリはあまりつけなのではないか。やはり思はせぶりな、もしかしたら関係あるやうなないやうな題名をつけるのではないか。その方が読者も食指をそそられる可能性がある。ところが本書はそのままである。「パン焼き魔法のモーナ、街を救う」、これだけである。世に魔法使ひは多いから、14歳の、中学生くらゐの魔法使ひ、いや魔女がゐないことはなからう。その場合、その魔女に得意技はあるか。ありさうな気はする。飛行が得意だとか、変身が得意だとかはあつても、しかし、基本的には何でもこなせるのが魔女であるやうな気がする。いや、それでこそ魔女であり魔法使ひである。ところが本書の場合、14歳の少女モーナは魔法は使へるのだが、使へるのはパンを焼く魔法に限られる。「あたしは粉だらけの手をパン種に突っ込み、そんなに固くなりたくないでしょ、とほのめかした。」(14頁)これが最初の魔法だと思ふ。「パン種は喜んで説得されてくれる。」(同前)といふわけで、固い生地も普通のパンとして焼けるやうになるのである。以下、彼女が使へるのはこの類だけである。あくまでもパンの関係だけ、「パン焼き魔法のモーナ」のモーナたる所以であつた。本書に魔法使ひはたくさん出てくる。いや、魔法使ひといつてはいけないのかもしれない。皆が皆さうではないかもしれないが、本書の魔法使ひにはガンダルフのやうな達人はゐないのかどうか。宮廷魔法使ひ「イーサン卿は空から風を呼び出して敵を叩きつぶせる。(中略)稲妻を操れるらしい。」(70頁)かうなるとガンダルフに近くはなりさうである。しかし、多くはモーナのレベルである。ならば「魔力持ち」(22頁)といふのがふさはしい。できることは皆違ふ。「木の板から節をとるだけの魔力しかないエルウィッジ親方」(同前)、馬運びの「モリーはあたしみたいにすごく力の弱い魔法使いだけど、その才能は(中略)死んだ馬を歩かせること」(63頁)等々、たいしたことではない。しかも一つの技だけである。一つの個性といふところであらう。
・物語は一人の少女がモーナの店頭で死んでゐたことから始まる。モーナはその容疑者とされ、宮廷で裁きを受けること になるが、女王は容疑なしとする。その後、モーナはモリーから、「春の緑の男に気をつけな」(72頁)と言はれる。 「魔力持ち」も含めて、魔法を使へる人間がモーナの王国で次々と殺されつつあつたのだ、といふところから言はば謎解 きが始まる。これは全く難しくない。すぐ解ける。問題はそれに関わる人物である。これがこの種の物語ではあまり見ら れないやうな人間である。ヒロインはモーナである。14歳の女の子、パン焼き魔法しか使へない。女王、「タビサ叔母 ぐらいの年頃で、たっぷり六インチは背が低いことをのぞけば、かなり似た体格だった。」(47〜48頁)、容姿にコ ンプレックスあり。あまりこの手の物語の女王には似つかわしくない。敵方も簡単にやられてしまふ。味方の老魔法使ひ も簡単に死ぬ。戦ひの場面ではモーラのパンの魔法の技が試される。これも魔法の種類が違ふのではないかと思つてしま ふ。といふわけで、これまでかういふ魔法の物語を読んだことがないやうな気がする。ユーモアが勝つた物語である。「指輪物語」とは対極にある物語である。しかし、それはそれでおもしろい。 -
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個人的にはこの表紙、納得いかない。ヒロイン、作中スカートの時なんてほとんどないじゃないか。叔母さんのパン屋で働いていた時はズボンだし、逃亡中も同じ格好だし。王宮だかに忍び込んだ時、侍女に扮装した時ぐらいしかスカート姿じゃなかったのでは?と言う訳で、ファンタジーの女の子=スカート姿というステレオタイプもそろそろ変えた方が良いんじゃないかなぁと思いました。アニメとかマンガでも行動的な女の子がミニスカ姿だと、普通の神経だったら女の子はこの衣装を選ばないよな…と思う事は多いので。
お話はパン種に魔法が使える女の子が、町の脅威と立ち向かう話。彼女の「もっと偉くて力があって頭が良い大人たちは何をしていたの」という叫びにごもっともだな…と頷いてしまいました。でも現実も実際に行動に移せる人って少ないよなぁ。見て見ぬふりをして、禍が通り過ぎるのを待っている方がラクだものなぁと自戒をこめて思いました。
とはいえ自分は肉食の殺意高いパン種からふくらましたパンは食べたくないかな… ドブネズミも取り込んでるしな、あのパン種… 勇敢なジンジャーブレッドクッキーと悪のジンジャーブレッドクッキーが可愛かったです。