あらすじ
ネビュラ賞・ローカス賞など5賞受賞の異世界ファンタジイ パン屋で働く14歳のモーナはパンと焼き菓子限定の魔法使い。でも、店で死体を見つけたことで、街を揺るがす騒動に巻き込まれた!
...続きを読む感情タグBEST3
匿名
かわいい表紙とは裏腹に重い!
可愛らしい表紙なのに中身はとても重たいファンタジーです。
パンに関する魔法しか使えないモーナ。それはクッキーを動かしたり、パンをふっくらさせたりなどにとどまっていたのですが、「魔力持ち」と呼ばれる人たちが次々暗殺される事件が起きてすべてが一変します。
命を狙われ逃げ回るモーナ。もう優しい日常には戻れない。魔力持ちはどんどん逃げるか殺されるかでいなくなる。なのに、残虐な敵が街に攻めてくることになった。モーナはどうする、というハラハラする内容です。
英雄になんかなりたくない、どうして大人がしっかりしていないの!というモーナの叫びが突き刺さる作品でした。
Posted by ブクログ
あらすじだけを読むと、ラノベのような親しみやすさだが、実はとても深い物語。
十四歳の魔法使いモーナは、パンと焼き菓子にだけ魔法をかけることが出来る。叔母タビサのパン屋で働いている彼女は、ある日、店に少女の死体があるのを見つけた。異端審問官のオベロンは、モーナを犯人と断定するが、女公のとりなしでモーナは釈放される。だが、それはオベロンの陰謀の始まりだった。彼は女公の目を盗んで街から魔法使いを一掃し、傭兵集団カレックスを街に引き入れようとしていたのだ。
カレックスの集団が街に迫る中、女公の軍隊はオベロンの奸計ではるか遠くに遠征中。街にいる魔法使いはモーナただ一人。
モーナはパンと焼き菓子だけに使える魔法で、街を守ろうとする。
ネタバレになるが、異端審問官オベロンは二度、街を危機に陥れる。城にいる時に女公を傀儡にしようとした時と、それがバレて追放されカレックスと街を襲撃した時だ。
一度目はモーナが女公に知らせたおかげで計画はご破算になり、モーナは街の人々から英雄モーナと呼ばれるようになる。
二度目は、最初から英雄と呼ばれてみんなから頼られ、できるかどうか分からないまま、女公に力を貸すことになる。街を、パン屋を、愛しているから。
この「英雄」という存在を、作者はものすごく注意深く描こうとしている。
英雄になんかなりたくなかった。そう、モーナは何度もつぶやく。特に一度目の危機から街を救った後、みんながモーナに会いたいとパン屋に押し寄せた時に彼女は叔父さんに訴えている。
本当は、大人たちが陰謀を止めるべきだった。大人たちが自分のやるべき仕事をやっていれば、モーナが女公に知らせるために危険を冒さなくても良かった。自分たちを英雄にしたのは、大人たちの怠慢であると。
モーナの叔父も昔、軍隊の上官たちの私欲のせいで、餓死しかけたという。だが、彼らは戦争が終わった後、自分たちに勲章を与えて英雄にすることで真相を解明する手間を省いた。英雄という存在は、権威あるものに便利に使われる。でなければ、なんで英雄なんてものが存在するんだ?
そして、最大の「英雄」、馬運びのモリー。
彼女の最後の魔法は、読んでいて言葉を失うほどだった。
彼女が「もう一人いるよ」と言って、モーナの傍らに現れた時、胸が震えた。
これからモーナは軍や女公とどう付き合っていくのだろう。英雄になんかなりたくないと言ったモーナを、私はずっと忘れないと思う。
Posted by ブクログ
まず冒頭のインパクトがすごい。死体を転がせば物語が始まるとはよく言ったものですが、まさか本当にやる人がいたとは!!
モーナの視点で物語が進むので全体的にとてもコミカルで読みやすいけれど、テーマは結構深い。
ティーンエイジャーが戦う物語というのは沢山あって、自分がその年代だった頃には何も思わなかったんですけど、最近は「じゃあ大人は何してるんだ?」って思うんですよね。その辺りの無力感とかどうしようもなさがきちんと書いてあるのがいい。あと、魔法に関する考え方が素敵。
Posted by ブクログ
自分にできることなんて......とくすぶっていたモーナが、街の危機に巻き込まれるうちに否応なく魔術師として覚醒。
自己肯定感低めの人はこのあたりで共鳴して胸熱くなりそう。
よくある「味方だと思ってた人がじつは黒幕」みたいな読者への裏切りがまったくない(たぶん)のも好き。
Posted by ブクログ
パン屋で働く14歳のモーナはパン作りに特化した魔法使い。
ある日突然、店で死体を見つけてから不穏な街の様子と陰謀に気付く。
可愛い表紙とコミカルな調子で語られるが内容は辛辣。
何もしなかった統治者と大人たちへの怒り。
「英雄になんてなりたくなかった」というモーナの言葉は重く刺さる。
創意工夫してモーナの魔法で、魔力をギリギリまで使って街を守ろうとするシーンにハラハラさせられた。
Posted by ブクログ
お話が始まったとたん、かわいらしい表紙から受けた印象とは違う雰囲気が漂って期待が膨らんだ。
「魔法」というものは、何かすごい力を使えるものというだけでなく、使う人にとってもリスクがあるのだ、という設定に激しく納得。
これは拾いものでした。
Posted by ブクログ
物語の設定が、まず面白い。
何か一つのことだけしか魔法を使えない。それがこの世界の魔法使い。現実の世界でも、人は誰しも、大した役には立たないけど何か一つちょっとした特技を持っていたりするものだけど。それと同じかな、と思った。
きっと、どんな人のどんな個性も無駄と言うことはなく、みんな世界を救えるだけの価値を持っているんだ、と言うことなのかも。
ただし本書は、主人公モーナの明るさとコミカルな語り口に救われてはいるものの、けっこう重い話でもある。なぜか、ただのパン屋の娘が殺人の濡れ衣を着せられて逃げ回ったり、都市防衛の最前線に駆り出されたりしなければならない、この理不尽。街の魔法使いたちが協力してそれぞれの力を持ち寄って敵を撃退する話かと思ったら、そうはならすず。孤軍奮闘するモーナがちょっとかわいそうだった。最後はいちお、ハッピーエンドなのかな。
あと、ジンジャーブレッド人形がめっちゃ可愛かった(笑)
Posted by ブクログ
モーナとジンジャーブレッドクッキーがとにかく可愛いです。癒し。お話し自体は重めだけど、モーナがお話を明るくしている。
14才のモーナは発酵を促したりパンをふわふわにしたり、と言ったパンや小麦粉、お菓子に関することの魔法使い。
「ただのパン屋です。どうやってパンで人を殺すんです?」と言っていたモーナが、どうやって街を救うのか。
大人があまりにも不甲斐なくて、タビサ叔母さんの頼もしさだけが救い。
Posted by ブクログ
タイトルと装幀に似ず意外とシリアスな戦いの物語。
外敵と通じて国を売ろうとしたあの大臣はなんでそんなことしたんだっけね。
いわゆる権力欲というやつなのか。なんか逃げ延びてるし、続編がありそうではある。
ジンジャーブレッド人形かわいい。パン種のボブはキモカワ?(笑)
Posted by ブクログ
SNSで「T・キングフィッシャーはいいぞ」という声を見て、「そうなのか~」と手に取ってみた一冊。ジャンルは児童文学/ファンタジイで私のような読書ライト勢でも気軽に手が出せ、そしてとても面白かった。 主人公は、パンに関する魔法を使える14歳の女の子。元気いっぱいのパン職人で、物語は彼女の一人称で語られ、その語り口は思わず「お嬢ちゃん」と声をかけてしまいそうなほどあどけない。でもこの小説、パン屋の厨房で身元不明の少女の死体が転がっているところから始まる。誰もが寝静まっている早朝、主人公は厨房で死体と二人きり。Ohかわいそ……でもSAWよりはマシか。知らない場所に拉致されているわけでも、拘束されてるわけでもないし……。 けれど話は街全体を覆う暗い陰謀へ広がっていく。SAWよりずっと規模が大きい戦いに巻き込まれていく主人公たち。いい加減SAWから離れた方が良い。ほんとそう。(やかましい)
馬の死体を扱う中年女性の魔法使いが本当に良くってぇ……クライマックスのアレコレは映像で観てみたいなぁ。 子供の時に読んだとしたら、大人になってから「ああ、そういうことだったのか」と思えるようなテーマが色々と盛り込んであり、すごく素敵な一冊だった。読めて良かった。
Posted by ブクログ
何種類もの魔法を一人が使えるのではなく、
その人に、一つだけの魔法が使えるという世界線。
そんな世界の中でもモーナはパン!
発酵種が意思を持ったり、
クッキーが兵隊になったり、
パンで大きいゴーレムを作ったり、
スコーンで監視してみたり・・・。
魔法は想像するだけで強くなる!
こんなにワクワクするお話は久しぶりだった。
表紙やタイトルのかわいさとは反して
ストーリーは陰謀などが渦巻いていて
なかなか思いストーリでした。
読みごたえは抜群だと思う!
Posted by ブクログ
早川書房さんのTwitter(現X)で知り、「たまには海外のファンタジー作品でも」ということで手に取ってみた。
舞台は、魔法が存在する中世ヨーロッパ(注:イメージ)。叔母のパン屋で働く主人公のモーナは、パンやクッキー生地に魔力を注いで上手に焼き上げたり、焼きあがったジンジャーブレッドを使役することが出来る等、「焼き菓子限定」で力を発揮できる14歳の魔法使いの女の子。
ある日の早朝、朝の仕込みの為に厨房へやって来たモーナは、そこで女の子の死体を見つける。モーナの話を聞いた叔母タビサの通報で2人の巡査が駆けつけるが、そこにはもう一人、異端審問官オベロンの姿が。そして、殺人の罪で連行されてしまうモーナ。"ただの"パン職人の魔法使いの少女は、街の命運を左右する陰謀に巻き込まれていく―――。
政治的陰謀に巻き込まれたパン屋の魔法使いの少女が、"焼き菓子限定魔法"で町の存亡を賭けた戦いに身を投じることになるファンタジー物語。ヤングアダルト向けのファンタジー作品で、邦題の語感やパンとクッキーに囲まれた可愛いモーナの表紙イラストと作品内容に齟齬はないので、(多分)ジャケ買いOK!一風変わった魔法使いの少女が奮闘する、ジュブナイル・ファンタジーを楽しむことが出来る一冊。
また、個人的には映像化して欲しい一冊でも。駆け回るジンジャーブレッド、立ちはだかるクッキーゴーレム、そしてクライマックスは・・・。映像映え間違いなしかと!
Posted by ブクログ
普通の人間と魔法使いが共存している架空の世界が舞台。叔母さんのパン屋でパン使いの魔法使いとして働くモーナ。ある日お店で一人の少女が亡くなっているのを発見してしまう。それを発端に、街に怪しい陰謀がうずまき始め、モーナは渦中に放り込まれることになる。
パン種を発酵させたりする事だけが出来るささやかな魔法使いのモーナが大奮闘。一般向けの文庫として出版されているけれど、児童書として出版され、児童文学の賞ももらっているという。その方がスッキリする。
Posted by ブクログ
・T・キングフィッシャ-「パン焼き魔法のモーナ、街を救う」(ハヤカワ文庫FT)を読んだ。正に書名通りの物語である。これ以下でもない、これ以上でもないといふ、正にそのものズバリの内容である。小説の題名となると、作家は、あるいは訳者はその内容に添つた題名をつけるのだが、そのものズバリはあまりつけなのではないか。やはり思はせぶりな、もしかしたら関係あるやうなないやうな題名をつけるのではないか。その方が読者も食指をそそられる可能性がある。ところが本書はそのままである。「パン焼き魔法のモーナ、街を救う」、これだけである。世に魔法使ひは多いから、14歳の、中学生くらゐの魔法使ひ、いや魔女がゐないことはなからう。その場合、その魔女に得意技はあるか。ありさうな気はする。飛行が得意だとか、変身が得意だとかはあつても、しかし、基本的には何でもこなせるのが魔女であるやうな気がする。いや、それでこそ魔女であり魔法使ひである。ところが本書の場合、14歳の少女モーナは魔法は使へるのだが、使へるのはパンを焼く魔法に限られる。「あたしは粉だらけの手をパン種に突っ込み、そんなに固くなりたくないでしょ、とほのめかした。」(14頁)これが最初の魔法だと思ふ。「パン種は喜んで説得されてくれる。」(同前)といふわけで、固い生地も普通のパンとして焼けるやうになるのである。以下、彼女が使へるのはこの類だけである。あくまでもパンの関係だけ、「パン焼き魔法のモーナ」のモーナたる所以であつた。本書に魔法使ひはたくさん出てくる。いや、魔法使ひといつてはいけないのかもしれない。皆が皆さうではないかもしれないが、本書の魔法使ひにはガンダルフのやうな達人はゐないのかどうか。宮廷魔法使ひ「イーサン卿は空から風を呼び出して敵を叩きつぶせる。(中略)稲妻を操れるらしい。」(70頁)かうなるとガンダルフに近くはなりさうである。しかし、多くはモーナのレベルである。ならば「魔力持ち」(22頁)といふのがふさはしい。できることは皆違ふ。「木の板から節をとるだけの魔力しかないエルウィッジ親方」(同前)、馬運びの「モリーはあたしみたいにすごく力の弱い魔法使いだけど、その才能は(中略)死んだ馬を歩かせること」(63頁)等々、たいしたことではない。しかも一つの技だけである。一つの個性といふところであらう。
・物語は一人の少女がモーナの店頭で死んでゐたことから始まる。モーナはその容疑者とされ、宮廷で裁きを受けること になるが、女王は容疑なしとする。その後、モーナはモリーから、「春の緑の男に気をつけな」(72頁)と言はれる。 「魔力持ち」も含めて、魔法を使へる人間がモーナの王国で次々と殺されつつあつたのだ、といふところから言はば謎解 きが始まる。これは全く難しくない。すぐ解ける。問題はそれに関わる人物である。これがこの種の物語ではあまり見ら れないやうな人間である。ヒロインはモーナである。14歳の女の子、パン焼き魔法しか使へない。女王、「タビサ叔母 ぐらいの年頃で、たっぷり六インチは背が低いことをのぞけば、かなり似た体格だった。」(47〜48頁)、容姿にコ ンプレックスあり。あまりこの手の物語の女王には似つかわしくない。敵方も簡単にやられてしまふ。味方の老魔法使ひ も簡単に死ぬ。戦ひの場面ではモーラのパンの魔法の技が試される。これも魔法の種類が違ふのではないかと思つてしま ふ。といふわけで、これまでかういふ魔法の物語を読んだことがないやうな気がする。ユーモアが勝つた物語である。「指輪物語」とは対極にある物語である。しかし、それはそれでおもしろい。
Posted by ブクログ
個人的にはこの表紙、納得いかない。ヒロイン、作中スカートの時なんてほとんどないじゃないか。叔母さんのパン屋で働いていた時はズボンだし、逃亡中も同じ格好だし。王宮だかに忍び込んだ時、侍女に扮装した時ぐらいしかスカート姿じゃなかったのでは?と言う訳で、ファンタジーの女の子=スカート姿というステレオタイプもそろそろ変えた方が良いんじゃないかなぁと思いました。アニメとかマンガでも行動的な女の子がミニスカ姿だと、普通の神経だったら女の子はこの衣装を選ばないよな…と思う事は多いので。
お話はパン種に魔法が使える女の子が、町の脅威と立ち向かう話。彼女の「もっと偉くて力があって頭が良い大人たちは何をしていたの」という叫びにごもっともだな…と頷いてしまいました。でも現実も実際に行動に移せる人って少ないよなぁ。見て見ぬふりをして、禍が通り過ぎるのを待っている方がラクだものなぁと自戒をこめて思いました。
とはいえ自分は肉食の殺意高いパン種からふくらましたパンは食べたくないかな… ドブネズミも取り込んでるしな、あのパン種… 勇敢なジンジャーブレッドクッキーと悪のジンジャーブレッドクッキーが可愛かったです。