ベン H ウィンタースのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
世に警察小説は数あります。ですが、本作ほど個性的な作品は警察小説はおろかミステリ全体を見渡しても数えるほどでしょう。
何といっても基本設定が
小惑星衝突による破滅的災厄を間近に控えた世界。古びたファーストフード店で一人の男が首を吊った。未来に悲嘆しての自殺と誰もが思った。だが、新人刑事ヘンリー・パレスは他殺を疑い、終局に向かう世界の中、地道な捜査を開始する……
だというのですから。
本作『地上最後の刑事』はかように特異的かつ魅力的な背景を持つ一作です。メインとなる舞台も、起こる事件も、主人公たる刑事と彼を取り巻く登場人物たちも、全てが「警察小説」という言葉から浮かぶイメージと一致します。
ただ、人類が確定的な滅びに瀕しているという一点を除いては。
本作は驚天動地のどんでん返しミステリではありません。キャラクターは個性豊か、かつプロットも十二分に練り込まれていますが、事件解決に至るプロセスも、真相もどちらかといえば地味だといえるでしょう。
読みどころはむしろその先にあるといえます。
終わりを待つばかりの絶望的な世界においては、人々の思考も行動も全てが変容しています。
同時発生する祝祭と暴動、機能停止した保険会社、通じない電信網。些細な描写の積み重ねが、変容してしまった世界を克明に浮かび上がらせてくれます。
わけても中盤、ある人物が呼吸をするように死をえらぶくだりは象徴的でしょう。
読み進めながら、我々は問いかけざるを得ません。
滅びに瀕した世界が異常なのか?
それとも、異常な世界で己の日常を、使命を貫こうとする刑事こそが異常なのか?
壊れゆく世界の中で悩み、苦しみながら猟犬の如く獲物を追い詰めるパレスの姿はいっそ悲壮ですらあります。
事件を追う興奮、終末を過ごす虚無感、そして究極的状況における自らの選択。これらを同時に追体験出来る、まさに思弁的ミステリというべき一作でしょう。
お勧めします。 -
Posted by ブクログ
冒頭はちょっと退屈な感じもしたのですが、中盤から一気読み。訳も良いのか非常に読みやすかったです。
3部作の3作目からいきなり読むというルール違反な読み方をしたので、ちょっと申し訳ない気分。地球の終わりにまつわる話なので、何よりも終末の描写を見てみたかったのです。
終末を目前にした世界のささくれだった感じ、嘆きを通り越して諦めに至った疲れた空気感が描写されていて、確かに週末の世界ってこんな感じなのかもと思わせてくれます。
そして、その中でも刑事であろうと行動する主人公パレス。妹を探すという目的はあれど、どちらかと言うと終末の世界の中であっても刑事であることを保つためにやっているのかも。プロ意識なのか、使命感なのか、ただそうしたいのか。自分が終末に直面したとしたら、自分を保つために何かするのかもしれないと考えさせられました。