垂野創一郎のレビュー一覧

  • 黄金仮面の王

    Posted by ブクログ

    幻想文学好きには知られてるマルセル・シュオッブのまさかの初文庫化。
    正直、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』文庫化以上に驚いたかも。アンソロジーなんかでマルセル・シュオッブが組まれてることはあるが、まさか文庫で、まるまるマルセル・シュオッブが読めるとは……!

    収録されてる作品はどれも傑作で、幻想的で、美しく、時にはグロテスクな作品が描かれる。
    マルセル・シュオッブは19世紀末の作家だが、今読んでも古さを感じなくて、驚く。
    それと本書には新訳がいくつかあったりするのも嬉しかった。

    ただこのマルセル・シュオッブの文庫を手に取ってしまい、もしも心を掴まれてしまったら『夢の扉 マルセル・シュオッブ名作名訳集』を手に取るか、もしくはその3倍の価格のする『マルセル・シュオッブ全集』を手に取るしかなくなるのだが……。

    0
    2026年04月21日
  • 黄金仮面の王

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    まずは何より、シュオッブが文庫で読める日が来るなんて!長生きはするもんだーと思ってしまいました。もう本当に、この人より先はない。

    0
    2026年04月28日
  • 黄金仮面の王

    Posted by ブクログ

    何よりもビジョンが素晴らしかった。ストーリーではなく、重厚な情景描写で広げていく物語は魔術そのもの。世界的にファンがいることも納得でした。何より翻訳が素晴らしいのだろうと思います。原文のフランス語でも読めたら素敵だなと思う。

    0
    2026年04月12日
  • 黄金仮面の王

    Posted by ブクログ

    世紀の文庫化。シュオッブの先も上も奥もない。文芸ここが果て。精緻で硬質な文体、同時にグロテスクで詩的な表現で綴られる幻想短編は、どれも極限まで研ぎ澄まされている。「ボルヘスや澁澤龍彦への影響」に深く頷く。燃え盛る終末。アイデンティティの崩壊。生と死を司る運命。未来/過去への希望。小舟に乗り、星を読み、年月を抱えて直走る。美しい。

    0
    2026年03月17日
  • テュルリュパン ――ある運命の話

    Posted by ブクログ

     ルイ13世の時代、1642年11月11日の聖マルタンの日、全フランスの貴族1万7千人を虐殺し一掃するという陰謀を、リシュリュー枢機卿が巡らせていた。その企てを阻止するために運命が遣わしたのが、本書の主人公テュルリュパンだった。

     テュルリュパンは捨て子だったが、成長し床屋を職としていた。しかし、彼は、自分は選ばれた存在で何か大きなことを成し遂げるはずだ、と固く信じていた。
     そんな彼が、ある偶然から公爵の葬儀に参列することになり、そこで見かけた公爵夫人の振舞いを見て、彼女を自分の母親だと確信する。何とかして公爵夫人に遭おうとするテュルリュパンだったが、次から次へと思いもかけぬ出来事の渦に巻き込まれていく。

     妄想とも思える考えを抱き、おかしな行動を取り続けるテュルリュパン。遂には恐ろしい事態に直面することになるのだが、知らぬ間に、雄々しく立ち向かい、結果としてリシュリュ―の陰謀を頓挫させることになったのは皮肉なものだが、その最期は実に感動的。

     あまり馴染みのない時代のフランスが舞台となっているが、ストーリーテリングの妙を味わえた。

    0
    2024年06月18日
  • テュルリュパン ――ある運命の話

    Posted by ブクログ

    20世紀前半にウィーンで活躍したユダヤ系作家
    レオ・ペルッツ(1882-1957)の(わりと短い)長編小説。
    舞台は17世紀のフランス、
    目障りな貴族を一掃しようと目論んだリシュリュー公爵こと
    ルイ13世の宰相アルマン・ジャン・デュ・プレシーの企てを
    阻止せんとした(?)謎の人物を巡る物語。

    空想癖のある理髪師の青年タンクレッド・テュルリュパンは
    実の親を知らないが故に、
    本来歩むはずだった道をあれこれ思い描きながら暮らしていた。
    そんな自分の行いを神様が見ているから……と、
    顔見知りの葬儀に参列しようとした彼は、
    てっきり宿なしの物乞いとばかり思っていた死者が
    イル・ド・フランス世襲知事のラヴァン公
    ジャン・ジェデオンと聞いて驚くも、
    喪に服す公爵未亡人の態度から、
    彼女こそ我が母に違いないと考えて――
    頓珍漢な冒険の幕が上がるのだった。

    タイトル=主人公のファミリーネームを最初に見たとき
    「アルルカン(arlequin)」と通じ合う響きだな、
    と思ったのだが、
    訳者あとがきに「turlupin《古》大道道化役者[後略]」
    とあって、満更ハズレでもなかったとほくそ笑んだ。

    彼は歴史の流れを制御しようとした――但し気紛れに、
    単なる暇潰しとして――〈神〉が放った
    ジョーカーの札だったのかもしれない。
    一読者としては、
    投獄→解放→理髪店主(未亡人)の娘ニコルと再会、
    結婚して店を切り盛り、あるいは、
    ラヴァン公爵邸の小間使いジャヌトンと駆け落ちして、
    つまり、いずれかの女性とペアになって
    幸せになってほしかったけれど……残念。

    0
    2022年04月28日