【感想・ネタバレ】テュルリュパン ――ある運命の話のレビュー

あらすじ

17世紀パリ、ルイ13世の宰相リシュリュー枢機卿は貴族勢力の一掃を決意し、陰謀をめぐらしていた。一方、運命がその企てを阻止するため選んだのは、自らを高貴の生まれと信じる町の床屋テュルリュパンだった。フランス大革命の150年前に画策された共和革命という奇想、時計仕掛めいたプロットがきりきり動いて物語は転がり落ちるように展開していく。稀代のストーリーテラーによる伝奇歴史小説。

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Posted by ブクログ

 ルイ13世の時代、1642年11月11日の聖マルタンの日、全フランスの貴族1万7千人を虐殺し一掃するという陰謀を、リシュリュー枢機卿が巡らせていた。その企てを阻止するために運命が遣わしたのが、本書の主人公テュルリュパンだった。

 テュルリュパンは捨て子だったが、成長し床屋を職としていた。しかし、彼は、自分は選ばれた存在で何か大きなことを成し遂げるはずだ、と固く信じていた。
 そんな彼が、ある偶然から公爵の葬儀に参列することになり、そこで見かけた公爵夫人の振舞いを見て、彼女を自分の母親だと確信する。何とかして公爵夫人に遭おうとするテュルリュパンだったが、次から次へと思いもかけぬ出来事の渦に巻き込まれていく。

 妄想とも思える考えを抱き、おかしな行動を取り続けるテュルリュパン。遂には恐ろしい事態に直面することになるのだが、知らぬ間に、雄々しく立ち向かい、結果としてリシュリュ―の陰謀を頓挫させることになったのは皮肉なものだが、その最期は実に感動的。

 あまり馴染みのない時代のフランスが舞台となっているが、ストーリーテリングの妙を味わえた。

0
2024年06月18日

Posted by ブクログ

20世紀前半にウィーンで活躍したユダヤ系作家
レオ・ペルッツ(1882-1957)の(わりと短い)長編小説。
舞台は17世紀のフランス、
目障りな貴族を一掃しようと目論んだリシュリュー公爵こと
ルイ13世の宰相アルマン・ジャン・デュ・プレシーの企てを
阻止せんとした(?)謎の人物を巡る物語。

空想癖のある理髪師の青年タンクレッド・テュルリュパンは
実の親を知らないが故に、
本来歩むはずだった道をあれこれ思い描きながら暮らしていた。
そんな自分の行いを神様が見ているから……と、
顔見知りの葬儀に参列しようとした彼は、
てっきり宿なしの物乞いとばかり思っていた死者が
イル・ド・フランス世襲知事のラヴァン公
ジャン・ジェデオンと聞いて驚くも、
喪に服す公爵未亡人の態度から、
彼女こそ我が母に違いないと考えて――
頓珍漢な冒険の幕が上がるのだった。

タイトル=主人公のファミリーネームを最初に見たとき
「アルルカン(arlequin)」と通じ合う響きだな、
と思ったのだが、
訳者あとがきに「turlupin《古》大道道化役者[後略]」
とあって、満更ハズレでもなかったとほくそ笑んだ。

彼は歴史の流れを制御しようとした――但し気紛れに、
単なる暇潰しとして――〈神〉が放った
ジョーカーの札だったのかもしれない。
一読者としては、
投獄→解放→理髪店主(未亡人)の娘ニコルと再会、
結婚して店を切り盛り、あるいは、
ラヴァン公爵邸の小間使いジャヌトンと駆け落ちして、
つまり、いずれかの女性とペアになって
幸せになってほしかったけれど……残念。

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2022年04月28日

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