ニック・チェイターのレビュー一覧
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ネタバレ心はこうして創られる、というタイトル通りの一書。「心などなく、あるのは巧妙にストーリーを紡ぎ、何かを解った(知った)ように思い込ませる脳の働き」。
原題はMind is flat、心には奥行きも闇もなく、ただ表面を漂う、その時の気持ちのみ。
私がいままで自己啓発本や能力開発本を読んできたのと重なるところを列挙すると、
「本を読むとき目に入っているのはせいぜい1語。それを順に追いかけているにすぎない。その一語以外は視野にも入っていない。ページ全体が見えているように思うのは、脳が超高速で視覚画像をつなぎ合わせているから」…これだと速読法の根拠がひっくり返る。速読では、「ページ全体を写真を撮 -
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チョムスキー帝国を瓦解に導く強力な一撃。キーワードは、ジェスチャーゲーム、即興、ボトルネック、チャンキング。なにも難しい概念ではない。これらをもとに、人間の言語に関してまったく新しい視点が提供される。
人間どうしの意思疎通の基本は身振りや音声を用いた即興的なジェスチャーゲーム。クリスチャンセンとチェイターはそう主張する。そのゲームが何度も繰り返されて様式化し(簡素なものへと変化し)、多数の人々の間で共有されれば、それが言語になる。世界に何千という言語があるのも、それぞれの人間集団が即興的なやりとりのなかでそれぞれの言語を生み出し、受け継いできたからだ。
読みどころは4章と5章。チョムスキーのい -
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タイトルから少し重たい本かな?と思い、ついつい積読をしていたのだが、読み始めると止まらず一気に読んでしまった。言語という文化への視野が増えたように思える。
単語の意味を覚えたり理解するのではなく、如何にチャンク(かたまり)で前後と共に覚え、互いの背景、フィールドを理解してコミュニケーションをするのか。単語の意味に囚われていた私にとって、考え方を180度変えてくれた。
AIの大規模言語モデルも、AIに一つ一つの単語の意味を教え込むのではなく、その文脈の確率を覚えさせているのだと言う。例えば「空」という単語の前に付く形容詞は「青い」が多く、「黄色い」が少ないように。そうやって、文脈の単語間の -
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就活中に考えた「人生の目的」とか、流行中のMBTI診断とか、Strength Finderとか、本当の自分(の強み)を見つけよう、とか、全部疑わしく思えてくる。
本書に照らして言うならば、個性とかアイデンティティとか言うものは、今日まで生きた過程で得た経験の解釈(意味の押し付け)の中で最も馴染んだもの、程度のものであって、必ずしもそれらに基づき一貫した行動をする必要はない。
にも関わらず、どうして就職活動や転職活動では「あなたの軸は?」とか、過去から今、これからやりたいことへの一貫性とかを問われるのだろう?
思うに、わかりやすいストーリーなんか無くて、実際には都度都度の解釈で生きている、 -
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ネタバレコミュニケーションについて興味、関心があれば読むべき本。認知科学者二人による。事例による例示が多い。
私自身の興味分野でもあり、かつ、かなりの分量、結論→説明の順でない、などの体裁により読むのには一苦労。1日かかってしまった。
ヴィトゲンシュタインな哲学論考、言語ゲーム。コミュニケーションの基本となるジェスチャーゲーム。ノーム・チョムスキーの生成構文。などが本書のキーワード。
本書における筆者の主張。そのひとつが言語に正解はないということ。また、法則があるようで実は例外もたくさんあるということ。生活や文化的な背景によりその言語の利用が制限されてしまうということ。
言語に対する絶対視。正解を求め -
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普遍文法への真っ向勝負。
言語は文化的な産物なのだという主張は、近年の言語生得説に対する見方とは違う観点を学ばせてもらいました。
最後のAIへの知見は、シンギュラリティ到達に戦々恐々としている私としては安心材料の補強になりました。ChatGPTが世間を賑わせていますが、無数のデータの蓄積を統計的に紡ぎ合わせているだけで人間的な相互関係を加味したやり取りにはまだ至っていないのだという。でも、ニューラルネットワークの底力はムンムン感じますよね。
後は、「3000万語の格差」についての言及で、子どもに単に単語数を稼いで浴びせまくるのではなく、家族との会話に引き入れて相互作用を組み入れることが肝 -
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〜だから、〜だ。例えば、雲ひとつない空だから、雨は降らないはずだ。雲ひとつない空は朗らかだ。笑顔も朗らかだ。創造主が朗らかな気分だから晴れたのだ。人が善行をすれば、互いに笑顔だ。人の善行は創造主を朗らかにし晴れさせる。
この推論が物語化、意味づけの正体ではないか。
この本が明らかにするのは、我々が意味づけをしながら世界を認知する生命体であるということ。それに加えて、斬新なのは「自らの身体的変化に対しても、何かしらの意味づけをして物語化する。そしてそれこそが、感情である」という仮説である。
ロールシャッハテストのような黒いインク。あれは、一度ネタバレすると、その形状にしか見えなくなる。これを -
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「深層心理」とか「本当の自分」とかなんてない、という主張の本。
今までの自分を振り返ってみると、「心は脳の即興」という筆者の主張がわかる気がするけど、だからこそ信念を持たなきゃならない、本当の自分に気づかなきゃならないと考えてきたので、信念までも脳の即興だって言われて、共感半分、疑い半分の気持ちで読み進めた。
第11章までは、要は脳は一度に1つのことしか処理できないよね〜ってことと、だから「深層心理」なんてあるわけないよね〜ってことが多くの実験結果を引用して何度も書かれていた。実験の話はたまに「その実験結果からその結論にいくの…?」と思うところがあったけど、筆者の主張は理解。
でもずーっと -
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具体的にイメージしにくい部分があり、やや理解に苦しんだが、脳は「心の奥」があるという錯覚を創り出しているのみならず、「心というものが存在している」という錯覚さえも創り出している。感覚情報のほんのひとかけらを解釈して意味付けした結果がその瞬間の意識となっているのみであって「心」と呼ばれるものはない と言うある意味衝撃的なセオリーだった。
以下、心(と言ってはいけないのだが)に残った言葉。
「喜びや怒りといった感情も、内なる深みから湧き上がってなどいなくて、人は自分の感情をその瞬間に解釈している。かつ、その解釈は、自分の置かれた状況(居合わせた人が浮かれているか怒っているか)のみならず、自分の