小砂川チトのレビュー一覧
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ネタバレ純文学。
読みやすい文体ながら、表現や使う言葉が独特。
東京で過ごす小波の前にツトム(小波が父だと聞かされていた、マインランド尾去沢にある坑夫の人形)が現れるという、どこからつっこんでいいかわからない設定に惹かれる。
小波は、食堂にいた会話も笑顔もない母子家族をツトムの新しい家族だと思い込んだり、ツトムと鍋を囲んで誕生日のケーキを食べようと浮き足だったりする。
苦労すら感じさせる家族を羨ましいと思い、恐らく経験のない家族の団欒を再現しようとするその姿が悲しく虚しい。
小波が拒絶されたと感じ顔も覚えていない夫は、別に悪い人ではないと思うけれど。サナちゃんと呼んで、専業主婦でいさせてくれて、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最近何らかの受賞作を読むことが自分の中で流行ってるので、芥川賞受賞作として。
タイトルが何だか馴染みづらい文字並びだなと。「坑夫」っていうところかな。作者さんはお若そうだけど、なぜ坑夫という発想がでてきたのか、キラキラした職業じゃないところに奇妙なリアリティ。
作品は、正直しんどかった。
スピード感があり、そんなに長くもない作品なのであっという間に読み終えることができるのだが、主人公の危うさにどこか感情移入してしまうのか、気持ち的に負担が若干大きかった。
主人公は、端的に表現してしまうと、何らかの精神的な病がある人なのだと思う。語られる視点がその主人公のものなので、読者は頻繁に理解に苦し -
Posted by ブクログ
面白かったー。
競歩の選手である主人公のしふみはレース中にとある出来事で炎上し休業状態にある。そんな中、しふみは動物園にいるボノボのシネノに自分を重ねて見るようになっていく───
最初シネノの視点で物語が進むのだが、読み進めていくと、シネノが見たり感じていることはおそらくしふみの妄想らしい…と分かってくる。
ボノボはチンパンジーと同様に遺伝子的に人間にとても近い生き物なのだそう。チンパンジーが同種を殺すこともあるほど獰猛な気性がある反面、ボノボは穏やかで同種を殺したりはしない。人間がどちらに近いのかといえば、残念ながらチンパンジーなのだろう。しかし、ボノボのように生きていくことも出来るはずだし -
Posted by ブクログ
ネタバレこれは…なんというジャンルの物語なのだろう。
登場するのは動植物園にいるボノボのメス、シネノとアスリートの女性、しふみ。しふみはシネノを見て、お姉ちゃんだと思う…というあらすじが気になって読み始めた。
読んでいると、誰の視点なのか?これは現実なのか?夢なのか妄想なのか。わからないところもあって、結局最後まで本当のことは何なのかよくわからなかった。(読み取る力がなくてつらい)
ただ、本当はできることをやらないのは苦しいという文章に、なるほどと思わされた。できないことをやらないのはよい。できることをやらないのは苦しい。確かに。というか、むしろできることから逃げたり面倒だから避けたりしてることで