小砂川チトのレビュー一覧

  • 猿の戴冠式

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    ネタバレ

    第170回芥川賞候補 
    初出 群像2023年12月号

    第37回三島由紀夫賞候補入おめでとう御座います。

    人間がおそろしい。

    「わたしたちのいち生物としてのテリトリーはすでに議論の余地もないほど、こてんぱんに侵され踏みにじられている。
    ー捕獲されたボノボによる人的、物的被害はありませんでした。」

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    2024年04月22日
  • 猿の戴冠式

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    自他境界が無意識に曖昧になったり、そんな文章を書く人はいるけれど、自覚的に個と他が混じり合う文章を書く人は稀有なんじゃないだろうか。
    面白かった。

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    2024年03月12日
  • 家庭用安心坑夫

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    猿の戴冠式が好きだったので、こちらも。
    とても良かったです。どこからが本当で、どこからが妄想?となるけど、私たち自身も私たちの生きてる世界も、きっとそんなもの。
    静かな狂気が心地よい物語だった。

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    2024年03月11日
  • 猿の戴冠式

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    作者は岩手県出身者。惜しくも芥川賞は逃したが、純文学ならではの分かる人にはわかりすぎる感じ、又吉さんが言っていた本が頭の上でめくれていく感じが最高。

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    2024年03月01日
  • 猿の戴冠式

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    ネタバレ

    主人公が檻の外に出る物語。あるいは、虎になりそこねた李徴の話。

    自我をとろけさせる心地よい相手もずっと存在するわけではない。自分を呪うわかりやすいトラウマがあるわけではない。不倶戴天のわかりやすい敵もいない。自分を不愉快にさせる相手や知らない大勢の悪意も自分を縛るものではない。頭の中で目まぐるしく移る思考を、身体はどう思うか。

    空想の安全地帯を何度もループし、主人公は結論に達する。自分は自分というだけで王冠を戴き、誇りをもてばよい。安全地帯を出て無様にもがけばよい。

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    2024年02月17日
  • 猿の戴冠式

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    ジャケットが気になったのと、著者が岩手県出身とのことで同郷のよろこびで購入しました。
    自己と他者を理解.識別できるボノボと、臆病な主人公の女性との邂逅から、心の成長を一歩一歩描く様子がとても心に響きます。
    現実と空想?の境目をあえて曖昧に描いているためか、途中で読むのをやめられなくなり、すぐに読み終えることができました。
    芥川賞候補作とのことですが、受賞していい本だと私は感じました。

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    2024年01月22日
  • 家庭用安心坑夫

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    幼き頃に母親から「あなたの父親」と教えられた廃鉱の鉱夫人形ツトム。その人形が小波の暮らす東京に姿を見せるようになり……少しずつ不安定な世界がじわじわと広がっていく感じが良かった。意味が分からなくて解説サイトを見てしまった(笑)

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    2023年01月19日
  • 家庭用安心坑夫

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    ネタバレ

    言葉の選び方の新鮮なこと、この現象や動作をこう表現して、その表現が初めて出会うものなのにストンとハマるのでグイグイ読み進めていきました。小波が平常でいないのは他者から見れば勿論分かるけれども、小波の視点から見ると、なにか真っ直ぐだなとも思いました。靄に包まれて方向が分からなくなるような、かと思えばどこからか剣が飛んできそうな、とても凄まじい作品、、、読めて良かったです。

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    2022年12月16日
  • 家庭用安心坑夫

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    ネタバレ

    美しい狂気

    なにしろ文章が美しい。味わい深い。
    色彩が豊かで、だのに言い回しがねちっこくないし、ワードセンスがクール。
    計算された研ぎ覚まされた一言一言。
    驚いたものをピックアップしたけどまだいっぱいある。

    これはなんのジャンル?
    サイコ&サイバー?
    サナミの生育環境、過去からとんでもない狂気が生まれている。
    子が母親に似てくるという恐怖。
    鮮やかに迫ってくる得体のしれない不気味な体験。
    与えられた言葉で考察の余地のあるものは愉しい。

    ツトムの過去の物語も並行して繰り広げられるが、理想の架空の父親と、なんら関わりはない
    結局最後までオチは言い切らずに匂わすのもニクい。

    ・夫は実

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    2022年10月03日
  • 猿の戴冠式

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    ★3.8
    しふみとシネノ。ヒトとボノボ。
    言葉も種族も越えて、彼女たちは通じ合った。
    いや、そう信じたくなるほど、孤独だったのかもしれない。


    「感動した」とか「泣いた」とか、そういう類の本ではない。
    物語のすべてが抽象的で、境界が曖昧で、構造はまるで“夢”のようだ。
    正直なところ、意味がわからなかった。

    ……が、それでいいのだと思う。むしろ、わからなさは、この物語の“仕様”だ。
    「わからないから駄目」と切り捨てるにはあまりに惜しい。わたしの駄文を踏み台に、もう一度本書を手に取ってみてほしい。
    なぜならこの物語は、わかりやすさや整合性ではなく、“魂の揺れ”を描いているからだ。

    主人公・し

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    2025年06月19日
  • 猿の戴冠式

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    ネタバレ

    ほらわたしを見て、かんむりを頭に戴きながら、頭を垂れることはできない。

    “おねえちゃん”とわたしが、お互いの世界で生き延びるためのおまじない。
    あまりの直向きさにぐっときてしまいました。いい子のかんむりは/ヒトにもらうものでなく/そう自分で/自分に/さずけるもの。
    シネノという類人猿ボノボと人間のしふみの意識の境目が溶け合う…という突飛な内容ではありましたが、力を貰えました。ボノボ視点の部分も面白かった。

    ボノボの最長記憶、26年という記録があるらしい。人類も、Yが弱くなってきてるのでこれからはボノボのほうがいいのでは…みたいなシスターフッドも感じました。

    あと、動物映像はいいのに何故ア

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    2025年06月01日
  • 家庭用安心坑夫

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    秋田から上京し日常を送る小波さんの所に何故か秋田にいるはずの父(?)・尾去沢ツトムさんが現れて、、というお話(?)。

    何故ツトムは小波に姿をみせたのか、そこから発展して、親子関係を描いた作品と言ってよいのか、なかなかに不思議な作品だった。

    ツトムさんの過去と結末や、途中小波さん何しているんだろう?、謎老人の登場、誰?ツトムさん?パイセン?、最後どうなったんだろう?、と??多く消化不良気味ながら、いろいろ考えることができて楽しかったです。

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    2025年05月06日
  • 家庭用安心坑夫

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    ネタバレ

    町田康さんが群像新人文学賞の選評で「絶望的成長小説」と評しているが、そう言われればまさにそう。
    父の愛情はなかった、と気づき、そこにこだわるあまり、今までの「夢のような生活のなかに帰ることはできな」くなったと理解するバッドエンド。これまでの生活が幸福だったのか?と疑問符がつく気もするし、正直夫の実在も定かではないけど。
    ツトムの過去と、小波の現在も、交わるようで全く交わらない。ツトムはバターケーキで家族から送り出されたことがあったのに、小波は母の作品である「割れたたくさんの卵の殻」の上に、手つかずのホールケーキを乗せて、おむつで蓋をし、ゴミに出す。ツトムには愛情ある家族があったが、小波にはない

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    2025年02月14日
  • 家庭用安心坑夫

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    やはり愛されて生まれ育つことが人格形成に欠かせないものだと思わさせられる物語でした。
    自分の周りには居ないし、居ないで欲しい人種だとも主人公に対して思いました。
    ただ心の安定を保つことが出来る依存先があることは悪くは無いと思いますが、それを子供の人格形成や環境に悪影響を及ぼしてはならないとも感じさせられました。

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    2024年11月11日
  • 家庭用安心坑夫

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    クレイジー妄想小説? こういうの私は好き。嫌いな人は嫌いだと思う。
    ところどころ、それはやりすぎだろうと冷めるところもあったけど。
    こういうものが書ける感性は、天性のもので誰にも真似できない。誰にも真似できない作家さんになると思う。

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    2024年09月30日
  • 猿の戴冠式

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    小砂川チトさんの作品は一読では理解が追いつかない。
    前作の『家庭用安心坑夫』も疾走感があったが、
    本作も置いてきぼりになるほどのスピード感。

    でも私はこの小砂川さんの作品がなんとも気になってしまう。

    ボノボのシネノと、人間のしふみ。
    それぞれが自分は何がが欠けていると感じているような思い。
    しふみが感じた破壊衝動のようなもの。
    母親や周りからの良い子、悪い子の評価。
    ぐるぐると回る。

    再読したい。

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    2024年03月29日
  • 猿の戴冠式

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    とても不思議な作品で、様々な解釈ができそうだ。ボノボとヒトが理解しあえるのかどうかや、そもそもヒト同士ボノボ同士で分かりあえることはできるのだろうかとか、ヒトへの進化の過程だとか、様々な解釈と回答が読む人の数だけ出てきそうだ。個人的にはヒトとボノボは分かり合えないと思ったし、そもそもヒト同士も分かりえないとも思った。それでいて、どこかに物理的な自分はそんざいしているし、論理的な(自我的な)自分もどこかに存在していて、分かろうと努力をしている。けど、どうなの? と小説が囁いてくる。奥深さを感じる作品だった。

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    2024年03月19日
  • 猿の戴冠式

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    競歩選手の女性と動物園のメスのボノボ。
    女性はボノボに自分を重ねる。
    2つの軸で話はすすむ。
    現実なのか妄想なのか?こんがらがった。

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    2024年03月02日
  • 家庭用安心坑夫

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    言い回しが楽しい。主人公が真剣であればあるほど、それを表現する言葉が大仰になればなるほど、おかしみが増していく。
    正しく生きることが全てではない。これぞ文学の醍醐味という感じの作品だった。

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    2024年02月08日
  • 猿の戴冠式

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    独創的すぎる。
    自他境界、アイデンティティが曖昧で、ないまぜになって起きる幻想の文芸。
    他種とのシンパシーにグラグラする世界観。
    その疾走に酔いそうになるけれど読み進める。
    前作も主人公は心的現実を生きていたが
    言語化できないけれど、ありきたりなさに最後までどう展開するのか全く読めない。

    けれど、しふみはきっと大丈夫。

    いろいろな読み方ができる本は面白くて好きです。







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    2024年01月26日