小砂川チトのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ美しい狂気
なにしろ文章が美しい。味わい深い。
色彩が豊かで、だのに言い回しがねちっこくないし、ワードセンスがクール。
計算された研ぎ覚まされた一言一言。
驚いたものをピックアップしたけどまだいっぱいある。
これはなんのジャンル?
サイコ&サイバー?
サナミの生育環境、過去からとんでもない狂気が生まれている。
子が母親に似てくるという恐怖。
鮮やかに迫ってくる得体のしれない不気味な体験。
与えられた言葉で考察の余地のあるものは愉しい。
ツトムの過去の物語も並行して繰り広げられるが、理想の架空の父親と、なんら関わりはない
結局最後までオチは言い切らずに匂わすのもニクい。
・夫は実 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの文体は読むのに気力がいるけれど、でもそれだけに感情が激しく伝わるなと思った。最後の揺らぎのない力強さ、日々言語化されることなく埋もれる奥底の感情、何もかも放り出してしまいたくなる絶望、ぐちゃぐちゃな自分をなんの躊躇いもなく抱き留めてくれる途方もない安堵。それらがこの文体だからこそ、なんだろう、鋭く刺すように身に感じられたみたいな…。
物語の展開としても(わたしがあらすじをあまり読まずに読んでたからもあったろうけど)シネノとしふみの関係性とか途中に現れる太字の意味とか、色々推測しつつも想定を裏切って進んでいって面白かった。視点が語彙が移りゆくところも、読みにくいながらも嫌いじゃなかったな。
-
Posted by ブクログ
★3.8
しふみとシネノ。ヒトとボノボ。
言葉も種族も越えて、彼女たちは通じ合った。
いや、そう信じたくなるほど、孤独だったのかもしれない。
「感動した」とか「泣いた」とか、そういう類の本ではない。
物語のすべてが抽象的で、境界が曖昧で、構造はまるで“夢”のようだ。
正直なところ、意味がわからなかった。
……が、それでいいのだと思う。むしろ、わからなさは、この物語の“仕様”だ。
「わからないから駄目」と切り捨てるにはあまりに惜しい。わたしの駄文を踏み台に、もう一度本書を手に取ってみてほしい。
なぜならこの物語は、わかりやすさや整合性ではなく、“魂の揺れ”を描いているからだ。
主人公・し -
Posted by ブクログ
ネタバレほらわたしを見て、かんむりを頭に戴きながら、頭を垂れることはできない。
“おねえちゃん”とわたしが、お互いの世界で生き延びるためのおまじない。
あまりの直向きさにぐっときてしまいました。いい子のかんむりは/ヒトにもらうものでなく/そう自分で/自分に/さずけるもの。
シネノという類人猿ボノボと人間のしふみの意識の境目が溶け合う…という突飛な内容ではありましたが、力を貰えました。ボノボ視点の部分も面白かった。
ボノボの最長記憶、26年という記録があるらしい。人類も、Yが弱くなってきてるのでこれからはボノボのほうがいいのでは…みたいなシスターフッドも感じました。
あと、動物映像はいいのに何故ア -
Posted by ブクログ
ネタバレ町田康さんが群像新人文学賞の選評で「絶望的成長小説」と評しているが、そう言われればまさにそう。
父の愛情はなかった、と気づき、そこにこだわるあまり、今までの「夢のような生活のなかに帰ることはできな」くなったと理解するバッドエンド。これまでの生活が幸福だったのか?と疑問符がつく気もするし、正直夫の実在も定かではないけど。
ツトムの過去と、小波の現在も、交わるようで全く交わらない。ツトムはバターケーキで家族から送り出されたことがあったのに、小波は母の作品である「割れたたくさんの卵の殻」の上に、手つかずのホールケーキを乗せて、おむつで蓋をし、ゴミに出す。ツトムには愛情ある家族があったが、小波にはない