モンティ・ライマンのレビュー一覧

  • 脳のなかの免疫、免疫のなかの心

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    『脳のなかの免疫、免疫のなかの心』は、神経科学、免疫学、精神医学、マイクロバイオーム研究という広い領域をつなぎながら、人間を一つの統合されたシステムとして捉え直そうとする本です。

    幅広い研究を一般読者にも理解できるように紹介する手際は見事で、専門知識がなくても十分についていけます。

    本書は、大きく三部に分かれています。

    第Ⅰ部では、神経系と免疫系が医学の歴史のなかで別々の領域として発展してきた経緯をたどりながら、実際には両者が解剖学的にも生理学的にも深くつながっていることを説明します。

    さらに、そこへ腸内に生息する膨大な微生物、マイクロバイオームが加わります。

    脳、免疫系、マイクロバイオーム。この三者を著者は互いに独立した存在としてではなく、身体と外界との境界を守る巨大なネットワークとして描いていきます。

    第Ⅱ部では、その防御システムがうまく働かなくなったときに何が起こるのかを見ていきます。自己免疫疾患、抑うつ状態、慢性炎症、ストレス、Long COVID、さらには認知症など、さまざまな病態が取り上げられます。

    第Ⅲ部では、食事、運動、睡眠、人とのつながりなどを通して、この防御システムをどう健全に保つのかが論じられます。

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    2026年10月07日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    脳の作り出した痛みというものがあることが知れて面白かった
    幻肢痛のメカニズムは脳の神経可塑性にある
    腰痛の原因は大部分が分からないが、それは脊髄という重要器官を保護するための過剰防衛なのだろう
    よくも悪くも脳は柔軟なので問題があった場所を記憶して痛みを作り出し続けることも、痛みを発する必要がないと教育することもできるというのは驚き

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    2026年03月05日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    2025/07/23 17
    私にはとても難しい内容、2回読んだ。持続痛(慢性痛)は危険を体に教えるための装置。無痛症を羨ましいと思ったが危険察知できないので短命が多い、なるほど。痛みが常に体中にあり日により場所も移動する場合、どれを持続痛と捉えたらいいのだろうか。線維筋痛症で悩み中で『期待の効果』は身を持って理解。知識の裏打ちのある信頼できる医師に診てもらいクリニックにかかる事で痛みが和らぐ、気のせいではなかった。他のことに集中することとACTは主治医も同じことを話してくれるので自分で解決しなければいけない問題なのだろう。編みもので痛みを感じない瞬間があるとのこと、さっそくやってみる。

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    2026年01月12日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    ミシガン大学の人類学名誉教授でプラセボ効果の専門家であるダン・ムアマンは、自分の薬にむかって話しかけるそうだ。「やあきみたち、すごい仕事をしてくれるって信じてるよ!」

    誰かの痛みを感じることは、必ずしも誰かの痛みについて何か対策を取ることにはつながらない。共感と思いやりとは別ものだ。現に、この二つが正反対の効果をもたらすことも良くある。私たちが誰かの痛みに共感し、そのことに満足感を覚えるとき、結果として得られる報酬の感覚から、実際のところ何ひとつ達成していないのに達成感をもつことがあるかもしれない。そしてまた、誰かの痛みを目にすることで痛みや不安、苦痛を感じるなら、私たちはおそらく他人を助けるよりも自分のことにかまけるようになるだろう。この見かけ上のパラドックスを解くカギは、誰かの痛みを―一歩引いて―感じる能力を養うことだ。実験では、参加者に対して自分自身、すなわち痛がっている誰かの痛みを感じている状態に注意を集中させるよう指示すると、痛がっている人に手を差し伸べることを控える傾向が現れる。痛がっている人を見ると自分を守るような行動が促されるのだから、これは理解できる。ところが、参加者が他者志向であることに集中すると、自分が抱いた共感を慈善的な行動に転換させる傾向が強まる。

    本人がポジティブな気分であっても笑っていなければ、痛みの閾値に上昇は認められなかった。
    (笑いは誰かと一緒なら一人のときより30倍起こりやすい)

    女性は男性にくらべると(平均して)痛みへの耐性が低く、痛みの強さを高く評価し、より長い時間にわたって痛みを感じる。

    コークヒルはさまざまなタイトルを発行する雑誌の編集部で制作担当者として働くことになる。その編集部は手工芸の雑誌を多く手掛けていた。「最初に任せてもらえた仕事のひとつが投書ページの整理。でも手紙を読みはじめたら、すぐにわかった。その手紙のほとんど全部、そうね、98パーセントは、手芸、特に編み物にどんなに良い効果があると思うかということが書いてあったの。」
    …運動は、軽いものから徐々に強度を上げていくやり方であれば、抜群の鎮痛効果をもたらす。運動をすると、抗炎症性や沈痛性のある物質が詰まった身体の薬箱が開くほか、身体組織の回復と栄養分の供給が助長される。しかし、編み物をしているときの動作にはもっと複雑な意味合いが重なっている。リズミカルな反復動作は、天然の興奮剤で痛みの緩和剤でもあるセロトニンの放出を促す。編み物は身体の左右両側が関係する調和のとれた動きだり、集中力を要する上、刺客的なインプットに依存しているが、これを修練する過程では本当に脳の再配線が起きる。

    「よい呼吸」をするための方法については多くのバリエーションがあるが、そのポイントは分かりやすい。5秒かけて、鼻からゆっくりと深く、お腹がふくらむのを確かめながら息を吸う。1秒息を止めたら、今度は7秒かけて息を吐き出す。息を吸い込むときに動くのはお腹だけだ。できれば10~15回の呼吸を1セットとして、これを日に3~5セット繰り返す。

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    2025年12月30日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    痛みについて何となく感じていた事が、この本で確からしい事がわかり非常に納得出来た。もちろん知らない事も多々あり、これからの人生に役立つものだと思う。
    痛みに苦しむ人はもちろん、多くの人が読むべき本だと思う。

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    2025年12月23日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    痛みに関して、脳神経学や認知心理学もふまえた最新の解説

    「痛みは脳がつくるものであり、わたしたちの安全装置兼守護者であり、組織損傷の通報者ではない」というこれまでの常識を覆す内容
    膝の外科手術のプラセボ効果については知っていたが、オープンラベル・プラセボは驚いた
    持続痛には編み物が良いらしいが、今後医療や製薬業界がどう変わることができるか

    感覚に対する認識が変われば、情動や思考や社会や文化まで全てに影響を及ぼす思われるが、そういった意味では革命的な内容であるかもしれない

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    2025年08月07日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    目から鱗の本です。痛みはダメージによる直接的なリアクションではなく、脳が作り出す感覚である、というエビデンスベースで示された最新の疼痛医学が、多くの持続性の痛みに悩む人の痛みだけではなくQOLの改善への道標となることを願います。私自身の経験や知見ならも、納得感がある内容でした。慢性痛に悩む人に本書を薦める価値を感じました。

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    2025年06月29日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    痛みとは組織損傷の尺度と一般的にみられているし、医師もそのように考えている。その方が説明しやすいという点もあるがそうだとすると組織が治癒したにもかかわらず持続する痛みは心因性と処理されて厄介なものとしてしか扱われない。
    しかし、痛みには身体の末端から脳まで伝わる痛みの信号というのはなく、侵害受容器、侵害信号というのもがあるだけで、それを受けた脳が痛みを作り出しているだけである。
    痛みは安全装置であり、免疫系などと協力して、身体を危険から保護する役割を担っている。持続痛などは継続的な痛みに脳がオーバーヒートしている状態であり、保護装置が適正に働いていない脳を適正な状態に戻すための対応が必要であり、ここでは催眠、編み物、痛みの知識を患者や対応する医療関係者が持つ必要が、痛みからの回復のため必要である。
    また痛みは、老化を促進し、寿命を縮める。

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    2025年03月20日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    齢を重ねると毎日どこかしら痛い。痛みはどこから来て、どこかに消えていく可能性はあるのか?誰もが願う痛みからの回避に昨今の研究は進んでいると感じた一冊。

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    2025年02月24日
  • 皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章

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    ネタバレ

    メモ
    ・抗酸化サプリは今のところエビデンスなし
    ・やっぱり日焼けは良くない。ビタミンDはサプリで取ればいい
    ・ニキビの原因は脂肪より糖質
    ・肌にいいのは結局よく寝ること、いい食生活
    ・皮膚の常在菌(マイクロバイオーム)は個人で違う、家族は似る。触れ合う=菌の交換
    ・腸の調子は皮膚に影響する、皮膚の調子はメンタルに影響する。それぞれ逆も成り立つ
    ・ハンセン病は感染力は極めて低いもののけ姫のあの人たちや大谷吉継…)

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    2022年11月27日
  • 皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章

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    単に皮膚の説明というよりは、皮膚をめぐる病気を説明している。皮膚がんから梅毒AIDSライ病までさまざまな病気である。さらに太陽の光とその皮膚への影響まで説明している。みすず書房で、皆が読まない出版社であることがもったいない。余白も十分ある単行本であるので、講談社ブルーバックスで出版されればヒット間違いなしであろう。

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    2022年07月15日
  • 皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章

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    化粧品というものに関わる仕事柄、美の対象としての皮膚に興味があり手に取ったが、これは名著だと感じた。皮膚という臓器をここまで様々な角度から切り取り、しかも学術的な知見を素人にも読みやすくドラマティックにまとめている。

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    2022年06月26日
  • 皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章

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    鍼灸師を含めて皮膚を介した医療で仕事をしている人全てに読んで欲しい。
    解剖学や組織学など様々な知識を串刺しにしかもドラマティックに書いています。

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    2022年06月03日
  • 脳のなかの免疫、免疫のなかの心

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    巻末に書かれていたこと等が参考になりました。
    薬や治療には即効性があるかもしれないが、やめると元に戻ってしまうことが多い。
    人工的な治療では、脳が身体の変化に納得しない。
    生活習慣の改善は、時間をかけて脳にも納得してもらことで、真に健全な心身を築ける。

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    2026年09月17日
  • 脳のなかの免疫、免疫のなかの心

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    はっきり言って、難しかった。
    でも正直言って、わからないくせに楽しかった。

    脳と、免疫系と、マイクロバイオーム
    3つのうち、どれかひとつに何かが起きると、ほかの部分に影響が及ぶ。 そんな三角形のバランスが人体なのよ、と書いてあったのだと思う。

    自分、不器用なんで
    理解は20%くらいですが笑
    本書の最後の方に書いてあった、要するに、
    たべる、あそぶ、好きになる この3つで
    健やかにしなやかにしぶとく生きたまえ
    のメッセージを受けとりました。自分の大事な
    誰かさんにもこのメッセージをお渡ししたいです。

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    2026年08月31日
  • 脳のなかの免疫、免疫のなかの心

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    人間はシンプルな生き物なのかもしれない
    複雑にしているのは人間かも
    まだまだ未知の世界があると思った

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    2026年06月13日
  • 脳のなかの免疫、免疫のなかの心

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    タイトルに惹かれて読んだ。難しそうと思って読んだが、興味深いエピソードがあったり、後半が日常生活で生かせる実践編だったりしたので、思ったよりも分かりやすく読めたという感じがする。

    心身二元論により、つい最近まで心と身体はつながりがないと思われてきた。それが、色々な研究によって革命的に急速に変わってきた過程が分かる。今では当たり前に認知されている精神的な病も、少し前までは身体は異常なしとデータに出る故に原因不明と診断されていたと想像すると、患者の苦しみがより伝わる。私はインフルエンザに罹ったときに無気力になったが、それは私のせいではなくて自然に起こり得ることなのだと分かって安心した。心と身体のつながりが発見されたことによって精神的な病と診断がついた患者は、私以上に安心しただろう。

    心と身体、そして体内の微生物まで愛したいと思うような本だった。

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    2026年06月07日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    あらゆる痛みについての研究がわかりやすく紹介されている。痛みは脳の錯覚かも?(だから持続痛も痛みがないと覚えさせれば治るなど)とか、体を守ってくれるために大切、編み物セラピー(集中力、マインドフルネス)とか!おもしろかった!

    p.117 注射恐術症をもつようになった子どもは予防接種を避けるばかりでなく、血液検査や歯の治療、献血などもしないらしい。

    p.176 その後の研究では、人間でもこのような痛みの伝染”が起こることがわかっている。しかも、(第7章でも述べたが)この他者の痛みへの共感と理解は、見知らぬ人が痛がっているときにはずっと弱い。モーギルのチームは、私たちは知らない人に対してかなりのストレスを感じるため、知っている人ほどには共感できないことを示した。知らない人と向き合うとストレスホルモン(グルココルチコイドという)の産生量が増え、それによって共感能力が低下するのだ。さて、この課題はどうすれば克服できるだろう?二
    〇一五年に、モーギルと彼のチームはある有効な方法を発見したーそれは音楽ゲーム「ロックバンド」だ。モーギルらの研究では、自分以外の誰かの身体的な痛みに対する共感は、見知らぬ人に対しては弱まるが、ストレスホルモンを薬理学的にブロックした状態ではそうならないことが確認された。いっそう重要なのは、知らない人でも一緒に「ロックバンド」をほんの一五分プレイービートルズになったつもりでコントローラーのギターをかき鳴らしたり、ドラムをたたいたりしすれば、元知らないどうし”の二人が互いに痛みの共感を示すようになったことだ。いうまでもないが、研究者らのねらいは私たち皆に「ロックバンド」を買いに走らせることではない。望まれているのは、持続痛を抱えて生きる誰かのもとを訪ね、お茶を飲みながらおしゃべりをすること。一緒に田舎の散歩に出かけたり、編み物をしたり、トランプで遊んだりすることだ。それから、相手を励ますように、心を込めて身体に触れることにも強力な鎮痛効果がある。ぎゅっとハグをすることの威力を侮ってはいけない。意味のある人づきあいは痛みを抱える人々のためになるが、痛みに悩んでいない人々も気づきを得られ、その痛みを理解できるようになる。双方ともにストレスが減少するのだから、これは血圧や免疫系の機能、心の健康に加え、他者、特に知らない人に向けて好意や寛大さを示す上で得策以外の何ものでもない。
    人と行き来することは往々にして薬物療法よりも有効だ。この種の介入は簡単かつ安上がりで、それにかかわる人は皆恩恵を受ける。慢性痛の患者さんに対する医療従事者の接し方は変わらなければならない。そして幸い、政府機関や医療施設もそのことに気づいている。「社会的処方」といって医療従事者が患者さんを地域の支援やサービスにつなげる取り組みが、いくつかの国で浸透しはじめていむ。とはいえ、孤独を感じている人、孤立している人の手助けをするのは私たちひとりひとりの責任だ。新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて誰もが孤立の現実を経験したいま、相対的には短かったが実際にそんな時間をともに過ごしたことで、めいめいが社会の中で慢性的に孤立し、孤独な人たちを気にかけるようになっているよう願いたい。
    社会的不公正があるところには、いつも不必要な痛みが生じる。アメリカ全土における膨大な救急外来件数を調べた二〇一六年の研究によると、黒人の男女が来院した場合に鎮痛剤を投与される可能性は
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    心をひとつに
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    白人の患者の半分だった。運よく鎮痛剤をもらえたとしても、その投与量は白人患者にくらべて低い傾向があった。また、黒人の子どもが虫垂炎で来院したときに中等度の痛みに対する鎮痛剤や重度の痛みに対するオピオイドが投与される可能性は、白人の子どもよりもはるかに少なかっ加。しかしながら、同じくらい気がかりなのは、こういった格差を引き起こす思い込みや偏見がどこまで及んでいるかだろう。この点については、バージニア大学の社会心理学者からなる創意に富んだチームにより、近年多くのことが明らかにされている。彼らが行ったある研究では、六〇〇人を超える全米大学体育協会(NC
    AA)所属の医療スタッフを対象に、前十字靱帯を断裂した学生選手に関する症例研究を配布した(なお、その選手が黒人であるか白人であるかは無作為に割り当てた)。スタッフらはまず、このケースについていくつかの質問に答える。その中には選手の痛みを1から4までのスケールで評価することも含まれる。続いて、「象徴的レイシズム尺度」Symbolic Racism 2000 Scaleの項目に基づく質問がなされる。これは偏った意見(たとえば「実際問題として、一部の人は努力が足りないということだ。黒人がもっと頑張りさえすれば、白人と同じように経済的に成功できるだろう」というような文章)にどの程度同意するかによって回答者の人種的態度を測定する尺度だ。各項目のレイシスト的な意見に強く同意すればするほど、回答者のスコアは低くなる。結果は、平均的に見ると医療スタッフは黒人選手の痛みを白人選手の痛みよりも弱いと評価した。また意外なことに、各スタッフの人種的態度と黒人選手の痛みに対する認識とのあいだに関連はなかった。「ひじょうに肯定的な人種的態度を示したスタッフでも、そのような〔黒人の痛みを低く評価する〕傾向がうかがえた」と研究論文の著者のひとりであるソフィー・トラワルターは述べている。この偏見は選手がけがをした直後に感じた痛みをめぐってのもので、痛みから回復する段階においては見られなかった。つまりスタッフは、黒人は白人にくらべて痛みを感じにくいと考えはしたが、よりうまく痛みに対処できるとは考えなかったようだ。この研究は、社会構造によってもたらされるこういった偏見がなぜ存在するかの解明には至っていないけれども、それが確かに存在していることをはっきりと示している。

    p.188 スレイター教授のチームは、どういった手法や薬剤が実際に乳児の痛みを緩和できるのかを神経機能画像を用いて調べるアプローチを切り拓いている。このチームはまた、処置に先立って赤ちゃんの皮膚に麻酔クリームを塗布すると、EEGに現れる痛みに関連した電気的活動が減少することも発見して。
    しかし、すべての鎮痛薬でプラスの効果が得られているわけではない。同じ研究チームでは、未熟児で生まれた乳児について、血液検査や眼底検査など痛みを伴う処置の前にモルヒネを投与すると痛みを緩和できるかを評価しようとしたこともあるが、残念ながらプラセボと比較して痛みを低減する効果がまったく見られなかったばかりか、モルヒネに関連した副作用のために、試験を早期に中止しなければならなかっ樋。この研究は規模が小さく、あまり多くの結論は引き出せないことには注意したい。だが、研究チームは、簡単に使え、費用もかさまず、ローテクかつ副作用ゼロの鎮痛薬を確かに見つけた。それは手で触れることだ。私たちは皆、安心させるように撫でられたり軽くたたかれたりしたときの、気持ちがなごむ心地よい感覚を知っている。なお、撫で(られ)ることをめぐる科学は十分に確立されている。たとえば、もし読者が完璧な肌と肌との触れ合いを目指しているなら、相手の肌を(くれぐれも先方の了解を得た上で)秒速三センチメートル程度のスピードでそっと撫でてみてほしい。こうすると、皮膚に存在し、社交的な使いタッチに関連する僧号を脳に伝達する「C触覚線維」が活性化されお。大人はこのように撫でられると、短期的な痛みにおいて本人が知覚する痛みを軽減できお。グルスル博士は、乳児でも同じようなことが起こっているかを確かめようとした。そこで侵害刺を与える直前に赤ちゃんの皮膚を秒速三センチメートル(最適スピード)、または秒速三•センチメートル(速すぎ)で動くブラシで撫でるか、あるいは一切撫でずに刺数を与え、経過を観察した。すると、最適スピードで撫でた場合に赤ちゃんの痛みに関連した脳活動は減少するが、対照群二群でそのような変化はないことがわかった。この結果は、優しく安心感を与えるようなタッチは乳児の痛みを本当に緩和できるという確につながる。タッチによって乳児の脳にポジティブな情報が送り込まれ、安心だという印象を与えていることは明らかだ。またこれは、未熟児で生まれた赤ちゃんと直接肌を触れ合わせること(「カンガルーケア」として知られる)から、年齢を問わないマッサージまで、タッチには現実に健康上のメリットがあることを示す多くのエビデンスにも連なる。乳児の痛みに関する私たちの理解は、それ自体はまだ未熟ながら、新たな旅を始めようとしているすべての人間の不必要な苦しみを取り除ける可能性に大きな期待を抱かせるものだ。
    痛みは社会的な意味をもっている。社会によって傷つけられている人ー孤独な人、疎外された人、声をもたない人々ーでは、そのことによって痛みも悪化しがちだ。社会の構造が痛みを悪化させている手段が環境や心理を操る拷問者のやり方と同じだというのは注目に値するが、もしかしたら当たり前のことなのかもしれない。孤立や屈辱、威嚇、抑圧、不公平などは抽象的な概念のように思われるけれども、これらはいずれも身体的・情動的な痛みの経験をいっそうひどくする。痛みは安全装置であることを踏まえれば納得できるだろう。つまり、痛みは安全によって鎮められ、脅威によってあおられる。
    新しい痛みの理解を通して、私たちは弱い立場にある人に目を向け、虐げられている人たちに手を差し伸べたくなるはずだ。痛みは私たちを愛に導くものでなくてはならない。

    p.196 二、三教えてくれる。そのひとつは、これらの差はとても複雑かつ流動的なものだと理解する必要があり、背景的な事情に基づく集団の一般化や個人に対する決めつけは絶対にすべきではないということだ。
    二〇一四年に発行されたある看護学の教科書はこの点でひどい間違いをおかしている。痛みの宿念に関する文化的な差を扱った節にある記述を二つ(だけ)挙げてみる。「ユダヤ人は声高に意見を主張し、なんとかしてくれと訴えてくるかもしれない」「黒人は[中略]苦しみと痛みは避けられないと思っている」ー教科書の意図にかかわらず、こんな表現は差別的で誤りだ。またこれが仮にただひとりであっても看護師の見解に影響を及ぼすとしたら、危険でもある。この件は当然ながら大騒動となり、出版社は教材を回収して謝罪した。民族的・文化的集団を比較しようとするなら、それは尊敬や異文化理解を育てるような方法でなされなければならない。さらに理想をいえば、この多様な社会に暮らす人全員が痛みに対処する上で役立てられるようなものであるべきだ。痛みに対する文化的態度にはかなりの幅がある。たとえば、私自身の痛みに対する「文化的態度」は、おそらく私の弟のそれとはまるっきり違うだろう。私は医者で、弟は軍人なのだ。私たちは何よりも、「人々」のことを「ひとりひとりの個人の集合」ととらえる必要がある。また二つ目として忘れてはならないのは、皆それぞれに個人ではあるけれども、ひとつの国の中で民族的・文化的な少数派に属する人々は明らかに慢性痛になりやすく、痛みにつながる不当な扱いも受けやすいということだ。したがって、社会として、少数派の疎外を減少させることは何であれ追求されなければならない。

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    2025年09月04日
  • 痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章

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    痛みは脳が感じる仕組みだけでなく、プラセボ効果/錯覚、マインドフルネス/アクトなど様々なことをまとめている良書です。

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    2025年06月02日
  • 皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章

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    最初は皮膚の細かい組織や役割など、聞きなれない言葉が多く戸惑ったが、著者のユーモラスな語り口や実際の患者さんとのやりとりなど、内容にだんだん引き込まれていった。皮膚ってすごい!面白い!となる。

    「自分の皮膚の延長であるように道具を器用に扱える。」というのがすごい。鍵を鍵穴に刺す時、感覚を拡張している、みたいなことが書いていてすごいなぁと思った。
    また「帝王切開と膣からの出産では付着する菌の種類でその後のアトピーなどの発症率に差がある。」という話も印象に残った。そんなに物理的(?)な要因で決まるんだという驚き。また、タトゥーの針が免疫反応を増強させるという話も面白かった。確かに、鍼治療みたいなイメージがないこともないので、なるほどなぁ〜となった。

    こんなにすごい臓器を持っているんだから、自分の体・皮膚・組織や細菌を尊敬しようという気持ちになった。

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    2025年04月30日