窪田啓作のレビュー一覧

  • 異邦人(新潮文庫)

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    アルジェリアの太陽と海の描写が美しかったです。

    ムルソー氏の思想も、最後の司祭の思想も、あるいは検事や陪審員の思想も、それぞれの実存により形成されたものなので、本来的には、宇宙的に見れば優劣はない。

    あくまで、私の価値観から見れば、ムルソー氏には、太陽や海を愛し、友や彼女、隣人を、そしてママンのことも大事していたように思えるし、誠実な面も多いにあった。だから、殺人は犯して欲しくなかったし、犯すべきでなかった。しかし、彼にはそうしてしまうような危うさが常に付き纏っていたように感じた。それは虚無感や気怠さであり、希望の欠如でもあると思う。
    作中の最後に彼が見た希望は、出来れば、私的には、別の形

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    2025年09月21日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    深い小説だ。そして人間存在に対する深い救済の小説だ。
    そう思った。

    アルベール・カミュ『異邦人』を読んだ。よく読後の感想で語られるように、確かに不条理といえばまことに不条理な話である。アラブ人殺しの罪ではなく、ママンが亡くなった時に涙ひとつ見せなかったことを理由に有罪、しかも死刑を宣告される主人公。死刑執行の方法は公衆の面前での斬首刑。被告人の主張はろくに聞き入れられず、国家によって罪を一方的に作られ、彼はただただ執行の日を待っている。

    不条理といえば、殺人の動機を「太陽のせいだ」と主人公が主張するのもまた、不条理なのかもしれない。誰かを恨んでいるとか、仕返しをするとか、そうした明確な殺意

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    2025年08月27日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    ネタバレ

    私を含め多くの人は、自分と違う感覚を持つ人を怖いと認識する。お母さんが死んだら涙を流すものだし、結婚は好きな人とするもの。終盤まで、ムルソーの心情が描かれず、淡々とした描写が続くが、最後の最後に本音を聞くことができて、どこか安心した自分がいた。最後のページ、もっと理解したい

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    2025年08月02日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    人生で大きく影響を受けた作品。人生は無意味でだからこそ自由なのだ、という達観と希望を交えた視点にムルソーという青年が至るまでの話。ムルソーの見出す世界の美しさを青年期特有の若々しさを持って描く反面、世界の不条理や誰からも理解されない孤独感のコントラストが秀悦です。最初から最後までとても美しい小説

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    2025年07月15日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    4.5/5.0

    ひたすらムルソーの内省が描かれている小説なのに、全くムルソーの「心」が見えない。
    ハードボイルドで、ある種ロボットのような主人公は、何を思い、人を殺し、その理由を「太陽のせい」だと答えたのか。
    ただ、この上手く言えない、自分でもよく分からない感じが凄く人間の本質を突いているように感じた。
    そして、翻訳の文体がめちゃくちゃかっこいい。(なるほど、中村文則さんの文章は完全にここがルーツだったのか!)

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    2025年05月10日
  • 転落・追放と王国(新潮文庫)

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    ネタバレ

    大学生のときにゼミで扱った短編集。どれも文学的に工夫がこらされた作品ばかり。カミュがこの短編すべてを書ききるのに10年以上かかった。というのも異邦人、ペストでの成功後、自分の才能の枯渇を覚えたからだ。タイトル通り追放から王国までを綴ってある。この後ノーベル賞を受賞し、遺作となる「最初の人間」を書いたまま交通事故で他界してしまう。なんとも哲学的で悲しくも美しい作品集。

    難解だが歴史や哲学を知っていると読み解くことが出来る。「背教者」は、キリスト教の伝道者が未開の地に赴くが、逆にその地にある宗教に暴力によって改宗させられてしまう。伝道師はすっかり心を奪われ次に訪ねてくる伝道者を叩き潰すように待ち

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    2012年12月20日
  • 転落・追放と王国(新潮文庫)

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    ヨナのエピソード。
    solitaire(孤独)とsolidaire(連帯)。
    一人の時間は他者と時間を共有するために
    とても大切なもの。

    カミュは好きな作家です。

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    2010年06月19日
  • 転落・追放と王国(新潮文庫)

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    短編集だけどどれもストーリーが続いてるのかなと思えるところがあって面白い。大して読んでない中カミュで一番好き

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    2010年04月29日
  • 転落・追放と王国(新潮文庫)

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    カミュは短命の作家であり、この短編集は最晩年の作品です。世に不条理を問い続けたノーベル賞作家の唯一の短編集を収録。

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    2009年10月04日
  • 転落・追放と王国(新潮文庫)

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    いやぁ〜びっくりしたね。これ。こんだけ俺と似たような体験をしたひとがいるのかと恐怖さえ感じました。いわゆるいい人の内面が深く描写されてます。スタイルも独特。転落の原因なんて”ささいなこと”である、ってのも俺の哲学と見事に一致。

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    2009年10月04日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    結構よかった
    太陽が常に眩しいような日常が穏やかでいい。

    死を前にして「ありとある親しい物音を味わう」
    自分目に見えるものをもっと大事にしたい

    23歳で「世界をのぞむ家」に住む

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    2025年11月24日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    主人公ムルソーは自分の母親の死についても無関心
    母親の年齢すら知らず、ガールフレンドとの結婚についても「どうでもいい」と言う
    友人から言われるがままに行動したり、全く主体性がない。

    彼はこの世界からの異邦人であり、虚無的でその自覚すらない。

    ある日浜辺でアラビア人を撃ち殺し、裁判にかけられる
    その法廷を持って初めて世界からの疎外感が芽生えるのである。
    そして下された判決は死刑

    なんとも皮肉だが「死の到来」をもって初めて「生」を実感し、
    またこの世界との繋がりを感じ始めたのである。

    前半部は淡々と綴られる情景描写が多いが、非常にシネマティックなシーンがある。

    ガールフレンドに取り残され

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    2025年11月20日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    感情が読めない男の、感情にフォーカスしない物語。
    不条理に抗うでもなく、解釈し、受け入れていく姿はカミュ自身を表現しているのだろうか。
    ところでタイトルは「異邦人」だが、これはどう言う意味だろう

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    2025年11月13日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    不条理=世間が道理としている論理が通らない
    と言う意味で使われるので、ここでは
    世の中の道理としている人間らしさがムルソーに通じない、という意味に見える。
    が、そこではなくてこの本の不条理とはちょっと違う意味で、
    世の中の当たり前とか道理とされてるものが、そもそもそんなに意味を求めても仕方ない=不条理
    と言うふうに捉えた方がいいと思った。

    そう解釈すると、ムルソーに問われる
    なんで悲しまない?なんで殺した?そんなような問いに人間らしい答えが出てこないのは
    そもそも別におかしいことじゃない
    意味を求めること自体が無意味
    というメッセージに捉えられるのかな
    と思った。

    まぁただあんな男を生かし

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    2025年11月10日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    ネタバレ

    裏表紙に書いてあるあらすじでネタバレを喰らった。
    しかし、あらすじを読んだ時と物語を読み終わった時とでは、主人公の印象がだいぶ変わった。最初にあらすじを読んで良かったと思った。あえてネタバレしているのかもしれない。
    あらすじだけ読むと、主人公がすごく冷酷な人間に思えるが、本編を読むと彼が嘘をつかないまっすぐな人間だとわかる。彼の自分に対しても他人に対しても嘘をつかないところを少し見習いたい。

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    2025年11月07日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    ふわふわ。現代チックでは無いが表現が評価に値する。現代がノルウェイの森だとするならば、やはり時代を感じる。不条理な世界観は素晴らしいが、主人公の生き様と心情表現に難あり。

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    2025年10月15日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    当たり前を演じることを強要する社会に対する不条理を訴える作品。
    ムルソーは多分、自分を生き続けたのだろう。求められる行動や信仰をせず、その様子は周りからすれば異邦人だったのかもしれない。ただ、皆が死刑囚、死を待つ定めの中で、自分を生きることがどれだけ大切でどれだけ難しいか。そんなことを考えさせられる作品であった。ムルソーの思想とカミュの思想は近しいのだろうが、自分には、それらを言語化する能力がないことが悔やまれる。

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    2025年10月07日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    当初、本作で書かれる不条理は、ムルソーの性格を指しているのだと思っていた。ムルソーの日常のシーンでも所々垣間見える異常さ。そこを取って不条理を描いたのだと。
    たが、不条理なのは社会の方であった。
    当たり前の人間性を当たり前のように強要し、異端を認めず、理解できないものは排除する。
    ムルソーの言動が自分たちの尺度では理解できないから死刑にする。不条理は異常な主人公てはなく、それを取り巻く社会を構成する人々だ。そして、読者である私自身もその社会を構成する一員であることに気づかされる。

    解説ではカミュ自身の言葉が引用されておりその中で「お芝居をしないと彼が暮らす社会では異邦人と見なされる。ムルソー

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    2025年09月20日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    ネタバレ

    薄い本のわりに読むのに時間がかかってしまった。一文一文が短く区切られていて読みやすい印象を受けた。特にムルソーがアラビア人を殺すシーンでは、短い文と、人を殺すときの、思考が高速回転するようなリズムがマッチしていてよかった。しかし、発言にかぎかっこがあったりなかったり、自分にとって難解な思想が語られていたりと、同じところを読み直すのが多かった。

    自分は、ムルソーないしはカミュの思想に関して以下のように考える。彼は、いずれ訪れる「死」の立場から見れば、それまでの人生で何を信じ、どんな行動をするのかは、すべて同じ価値である、という風に考えていると思った。だから能動的に選択することは無意味であり、人

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    2025年09月08日
  • 異邦人(新潮文庫)

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    ネタバレ

    母親の死に反応悪かっただけで、裁判で不利な印象に持ち込まれる空気、小説の中の表現かもしれないけど、ありそうな話だし、心の中の閉塞感が自分もわからなくはないので、憂鬱に感する共感が残った。
    難しいこと考えてるうちにもう疲れたぁってなる心象描写がめっちゃわかるなと思った。

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    2025年07月24日