山内一也のレビュー一覧

  • ウイルスの世紀――なぜ繰り返し出現するのか

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    ウイルス研究史が丁寧に描かれている。人類がウイルスを認識したのはつい最近の出来事だが、それまでの科学技術の発展もあり、研究はすごい速さで進んでいるように感じられる。特に疾病に関わるウイルスは盛んに研究されている。しかしそれでもまだまだ分からないことばかりで、科学って奥が深いなと思いました。

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    2026年04月09日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    おもしろい。読書メモがはかどるはかどる。
    専門的なところと小話のバランスがとても良く、難しい内容を斜め読みにしても飽きずに最後まで読めると思います。

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    2025年03月11日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    ウイルスと細菌はちがう。細胞を持たず他者(生物の細胞 )に入り込むと増殖をする、ただの微粒子。
    独特の生と死。
    不活性が起きなければいつまでも生き続ける。ノロウィルスは外気にさらされても不活性になりにくいので危ない。

    ウイルスの死は何かの原因で不活性になり増殖ができなくなったり組織が破壊された時。
    しかし破壊されたウイルス同士が集まることでフランケンシュタイン的に復活する。

    ウイルスを持ち運ぶいい方法は生物に感染させてその生物を移動させること。
    研究者の中には自らにウイルスを感染させた持ち運ぶ究極に体を張った人もいる。
    「九名の患者の便をプールし遠心器にかけたあと、細菌フィルターでろ過してヨーグルトに混ぜて飲み、帰国した」

    インフルエンザウイルスワクチンは孵化鶏卵で製造

    生命と非生命の狭間にいるとも言えるウイルスの独特の性質、生態、歴史、振る舞い、他の生命との関わり

    NASA 生命はダーウィン進化が可能な自立した化学システムである

    生命 変異を伴う自己増殖

    原子をつないでウイルスを化学的に合成した成果もある。非生命と生命の垣根を超えた瞬間。

    ウイルス同士の情報交換システムの存在が直近の研究で明らかに
    チューリップバブルもウイルスが関与。人類初のバブルはウイルスが引き起こしたと言っても過言ではない

    海水1リットルには約30億のウイルス

    気候変動にも影響を与えている恐れが

    灰色牛はモンゴル帝国の事実上の生物兵器

    進化、歴史、健康、生物、細胞、医療、免疫、経済、考古学、 畜産、気候

    野生のカモはインフルエンザウイルスの自然宿主

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    2020年06月14日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    人間とウィルスの関係を分かりやすく教えてくれている。
    そもそもウィルスとは二種ある。
    DNAを持つものと、持たないRNAのもの。
    RNAは不確実性が高く、劇的な進化を遂げやすい。
    古細菌、細菌、真核細菌
    ウィルスも同じく3種ある。

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    2020年05月27日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    ウイルスについて、素人向けに非常に質の高い情報を提供している。ウイルス発見やワクチンの歴史、分類など初めて知ることばかりだった。海の中にもウイルスが溢れていること、細菌に匹敵する大きさのウイルスの存在、人類のDNAの9%はウイルスから逆転写されたもの由来であること、などは興味深かった。
    ウイルス学は20世紀以降、発展が著しいとのこと。本書はコロナ禍以前の出版だが、ウイルス学の知見も本書の内容から上書きされているのだろう。

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    2025年06月21日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    ウイルスがヒトの遺伝子の中に組み込まれ、ウイルスによっては何億年も前から共存していたこと、海洋の深海の中でも存在して、影響を与えていたことを知った。
    今後も人類はウイルスの脅威にさらされていくことを知った。

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    2025年01月19日
  • ウイルスの世紀――なぜ繰り返し出現するのか

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    著者は1931年生まれで、長年ウイルス研究に携わっている。新型コロナ禍真っ只中の2020年に書かれた本だが、筆者の長年の経験と、人類がこれまで経験してきた多種のウイルスとの闘いの記録だ。

    医療関係者達が命がけで対策を講じ、また数々の動物実験も含め多くの犠牲の上でウイルス対策がなされてきたことが医学的、科学的観点で語られている。

    感染源として度々登場する動物の中に豚、コウモリ、ネズミが出てくる。コウモリやネズミを見ると人間が本能的に不快感を感じることがあるのは、「ウイルス感染源」としての恐怖を感じるからだろうか。また、豚を「不浄な生き物」として扱う宗教があるのは、大昔に「豚から流行病に感染した」経験則からそのように扱うようになったのか。

    そしてウイルスを封じ込めても次々と新手が現れるのは人間の活動範囲が広がるタイミングであり、「これ以上人間だけ増えられては困る」という地球の意思なのではないかと思えてならない。

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    2025年01月11日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    面白かった…ウイルス関連本では頭抜けている

    こんなに知的好奇心をくすぐられる本は中々ない。ヒト中心の視点ではなくウイルスの視点から自然界を眺めたら、色んな概念が覆される

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    2023年02月21日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    ウイルスというと生命か、生命でないのか、というあたりで理解がとまっていたが、本書で「生命体としてのウイルスの視点」に接して、考え方が変わってきた。海洋中にも天文学的な数が存在する、人間のゲノムのなかにも、人体のなかにも潜んでいる。生命の定義にあてはまるかどうかというより、生命として考える方が、ゆたかであるということかと。ウイルスの「意味論」としては、人間の都合だけでウイルスを考えてはいけないというところかと思う。

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    2022年02月16日
  • 牛疫――兵器化され、根絶されたウイルス

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    牛疫のコントロールをめぐる一国主義と国際主義のせめぎあいが、帝国主義と冷戦構造を背景に描かれる。牛の健康は、肉やミルクの供給だけでなく、労役を通して農業生産にも寄与することから、人の食に直結する。第二次世界大戦後の「欠乏からの自由」を実現するための取組として、科学者の国際的情報共有、官僚機構の整備、現場の農民の協力などが編み上げられていく。

    食の安全保障を国際的な協力で実現していくことの意味は大きいが、一方で牛疫が細菌兵器になりうることの脅威も示し、さらに単一の疾病のみを対象にしなければ国際協力が成立しにくい現状を示唆する点が興味深い。

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    2021年12月30日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    Covid19が確認されるちょうど1年前に上梓された本。
    この本からわかることは、ウィルスのことをわかった気になってはならないということだ。
    Covid19は、どうすれば感染が防げるのかはわかっているが、ウィルスそのもののことはわからない。
    解決策がわからない問題が難しいのではなく、どうすれば解決するのか極めてはっきりわかっている問題のほうが難しいのだ。

    P3 ウィルスは独力では増殖できない。ウィルスは、遺伝情報を持つ核酸と、それを覆うたんぱく質や脂質の入れ物からなる微粒子にすぎず、設計図に従ってたんぱく質を合成する装置は備えていないからだ。

    P20 致死的な傷の場所が異なるウィルス同士では、互いに傷を直して生き返ることができる。ウィルスの死は、生物の死の概念を超えていると言えるだろう。

    P182 高い電波力・致死率の病気を起こすウィルスは、宿主の生物が高密度に集まっている環境でなければ存続できない。その意味で、これらの病は、都市化や畜産業の発展などへ舵を切った人類の宿痾と言える。今後もさらに人口が増え続ける以上、毒性の高い病原ウィルスが出現するリスクはさらに高まっていくだろう。

    P203 腸内は、皮膚の表面と同様に体の外であると考えることもできる。【中略】今後、我々の体内のウィルスが、我々の健康や病気に果たす役割が明らかになっていくと期待されている。

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    2021年08月14日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    ネタバレ

    ウィルス学の泰斗による、ウィルス及び感染症についての研究史と最新の成果(といっても、新型コロナ以前の2018年出版)を踏まえた本書は、もちろん、コロナ禍がはじまっていた2020年7月に購入したもの。なかなか、読みすすめることができていなかった。関係する書籍を複数並行読みをしているせいだ。

    本書をよんでいて、地球はウィルスの惑星だと思ったのは、水圏ウィルス学という最近の成果の紹介の部分である。地球上のどのような水にも、ウィルスを含む多様な微生物が発見されていて、その大多数が、全く知られていなかったもの(気づかれていなかった)であるという。また、人体には遺伝子の中に残るウィルスの痕跡をふくめて、多様な微生物と共生関係にあり、どのような共生関係であるのかも不明であるし、また、個人によってもそのバリエーションが異なり、同じ個人でも時間によって相が変わっているという。そもそもが、受精して胎盤に着床した受精卵には、精子から持ち込まれた異物が含まれているから、当然、免疫が発動されて排除されようとするはずだが、ウィルスによって持ち込まれた遺伝子コードが発現して、成長が継続するという。これは、おそらくは、有胎盤類が誕生したところまで遡るウィルス感染が我々を生んでいるということを意味している。ウィルスを避ける、清潔にするということは、生存に関わることだと言うことも、頭の中に入れておかねければならない、ということだ。

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    2021年08月09日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    新型コロナウイルスに翻弄されて2年。ワクチンを打った人も周りに増えてきている一方で、ウイルスによって、オリンピックは無観客になったり、個人的にも、世界的にも大打撃を与えられた。そもそもウイルスって何なんだろう。今だから読みたくなったウイルスの変遷、仕組みをまとめた本だ。

    例えば、「なぜ石鹸で手を洗うことが予防になるのか?」ウイルスの核を覆っている外殻が、石鹸の中の油に弱いうえ、その核だけではウイルスが生き延びれないため。また、「なぜ長い間ある国で清浄されたと思われていたウイルスが数十年後に突然現れるのか?」それには各国の発展や輸出・輸入による動物や商品の取引など、大きい経済の動きが関連していたりする。
    (個人的には動物実験や新たに出てきたウイルス性の病気に対して牛やウサギ、猿が大量に死んでいるのが心が痛んだ…。)

    ウイルスの仕組みの解説、ワクチンが作られるまでの世界的な歴史の流れなど、コロナウイルスに限らず色々なウイルスについてのイメージがよりわかるエピソードがたくさんあった。それを今の新型コロナウイルスの動きとも繋がる部分があると思う。

    読んでみるととても目から鱗な事実が多くて、すごく面白かった。この本が新型コロナウイルスが出現する前に出版されていたのに、DNAワクチンの仕組みについても解説されているのが、今の時期とリンクしていて不思議な気持ちになる。

    高校の時に生物を選択して勉強していた人なら、「あ〜この単語あったわ〜」と懐かしい気持ちになるかもしれない。

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    2021年07月09日
  • 新版 ウイルスと人間

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    テレビで専門家や医師が丁寧に説明してくれるが、どうも理解が追い付かない。そもそもウイルスも人間もよくわかっていないからかもしれない。そういう私のような人にお薦めの本。

    特に7章「エマージングウイルスの時代をどう生きるか」と、8章「人間とウイルスの関係を考える」は、説明も図表も分かりやすく、とても面白かった。

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    2021年06月26日
  • ウイルスの世紀――なぜ繰り返し出現するのか

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    エマージング ウィルスがどのように発生するのか、なぜ発生し続けるのかその疑問に答えてくれる。
    野生動物のリスクは非常に大きい。世界的なもっと厳しい規制が必要である。
    それにしても新型コロナの非常に優れたワクチンがこんなにも早く実用化されたことは、この問題に関し明るい未来を予感させる。

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    2021年01月28日
  • 新版 ウイルスと人間

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    新型コロナウイルスもいずれ人間と共生するのだろう。ウイルスも人間の出生に一役買っており、全てが悪ではない。人の手によるバイオテロのリスクを改めて認識する必要がある。

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    2020年12月06日
  • ガンより怖い薬剤耐性菌

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    文字通り、昨今話題の感染症で増えつつある薬剤耐性菌について。

    抗菌薬の存在によって、これまで以上に耐性菌が増えて感染症が蔓延しつつあるいうのは、まさに現在や未来の警鐘だと改めて感じた。

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    2020年03月22日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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     たとえば天然痘は周知の通り人類を永きにわたって苦しめたウイルス性疾患の一つだが、1980年に根絶宣言がなされ現在では人々の意識に上ることはほぼないといっていい。しかし当然ながら、根絶に至るまでには原因ウィルスの特定やワクチン開発を始めとする先人たちの弛まぬ努力があった。著者もその一人であり、天然痘のウシでのワクチン製造に関わって以降、一貫してウィルスの研究に携わってきた農学博士である。略歴によれば上梓時なんと87歳。驚くほかはない。
     
    「意味論」とタイトルにあるように、本書は「ウイルスは宿主であるヒトにとってどのようなものであるか」を中心に論ずるもの。しかし読者は同時に逆の意味論、すなわち「ウイルスにとって宿主とは、環境とはどのようなものか」についても否応なく考察するよう促される。著者が指摘するようにウイルス災禍は都市化と畜産を推し進めた人類の宿痾であり、都合の良いように環境を変えれば必ず問題発生を惹起するのは、今現在も我々が思い知らされているところである。本書のような視点をもってウイルスの存在する世界を眺めることには、今日的に重要な意味があるように思う。

    (以下要約)
     第1章ではウイルスの生理一般が解説される。細菌感染性のウイルスであるバクテリアファージを不活性化しても、活性環境下に他の不活性ファージと一緒に置かれると、モザイク状に無傷の部分が組み合わされて再び活性化するという「多重感染再活性化」なる現象が面白い。いかにウイルスの生死の概念が他の生物のそれと異なるかの好例だ。
     第2章ではウイルス学の歴史を概観する。既知の内容が多かったが、ファージを用いて特定の病原菌を狙い撃ちする「ファージ療法」が興味深かった。残念ながら承認されたものはまだないようだが、最近の抗生物質耐性遺伝子を破壊するようコードされた「キャススリー」など、有用性が期待される分野も多いようだ。
     ウイルスの起源を探る第3章では、オーストラリア人ウイルス学者のバーネットの仮説に基づき「ウイルスが先か、細胞が先か」が検討される。興味深いのは、たとえばB 型肝炎ウィルスやヘルペスウィルスのように、人間特有と見えながら遺伝子配列からは人類登場より遥かに太古の昔より存在していたと推測されるウィルスが多いこと。ウイルスが人間に感染するというより、人間のほうがウイルスの生活環境に混入してきたというほうが適切なのかもしれない。
     第4章は生命の定義について。生物学者から哲学者、物理学者まで、様々な学識者が生命の定義を行なっているが、ウイルスの存在を前提とするとどの定義にも揺らぎが生じてしまう。なんせポリオウイルスは分子レベルから再構成できるし、ファージ間でも細胞間と同じく「クオラムセンシング(ペプチド放出を介した情報のやり取り)」が行われているというのだ。畢竟、2千年以上前になされたアリストテレスの「生物と無生物の境界は存在しない」という喝破が最も妥当するのではないか、とする著者の意見に共感を覚える。
     第5章では「DNA→RNA→タンパク質合成」以外の遺伝情報経路はない、とする「セントラルドグマ」の妥当性を疑う。しかしRNA情報を細胞のDNAに書き込む「逆転写酵素」をもつ「レトロウイルス」の発見により、外部ウイルスの情報が細胞DNAに取り込まれて子孫に遺伝していくケースが明らかになる。そして遺伝情報解析によれば、ヒトゲノムの大半がかつて外部のウイルスからもたらされた「内在性レトロウイルス」により占められているという。驚くのは、DNAに潜み垂直感染していく内在性レトロウイルスの中には、何らかのきっかけで宿主にとって好ましい効果を発揮するものがあるということ。たとえばHERVという内在性ウィルスのファミリーには、胎児を母親の免疫機構から守ったり、iPS細胞に見られる多能性維持に関わっているものがあるという。こうなるとウイルスを果たして他者と呼んで良いものか、どこまでが我々ヒトの身体と認識すべきかの定義すら怪しくなってくる。
     第6章はウイルスと宿主の共生について。興味深い例がいくつか紹介されているが、ウイルスが本来の宿主でない生物に出会うと重篤な病変を引き起こすケースが多いというのが、今更ながら恐ろしく感じられる。人類のグローバルな活動の、間違いなく負の側面である。
     第7章は過酷な環境に生きるウイルスや、細胞を上回るサイズを持つウイルスなど、これまでの常識を覆すウイルスの紹介。
     第8章は水中におけるウイルスの活動について。現在生命の起源の有力候補と目されるブラックスモーカー(熱水噴出孔)に住む細菌等のゲノムに、ウイルスの活動痕跡である「クリスパー」が見られるが、これが同種ウイルスに再感染したときの免疫機能を司るという。
     第9章は著者の守備範囲。天然痘、麻疹、牛疫と人間との戦いの歴史が紐解かれる。
     天然痘は根絶されたとはいえ、米国とロシアにゲノム解析目的で保管されており、また科学的に天然痘ウイルスを再合成する技術も実現されつつある。仮にテロに使用された場合、現在は種痘が行われていた当時の要件(多数の免疫保有者の存在、ワクチンの存在、人権無視の封じ込め対策)がなく、また潜伏期間が10日と長いため、甚大な被害が予想されるという。
     麻疹は伝播力が高いため、存続のためには常に無免疫者を必要とするが、現代の人口密度の高い都市環境を利用して広まった。子供に多いのは、そもそも感染力が強いため大人は免疫を獲得していることが多いためである。症状は比較的軽いが、免疫を低下させるため日和見感染による他の感染性疾患を誘発してしまい、結果として高い致死率を引き起こす。
     第10章は、ヒトの体内に潜みながらヒトと共存するウイルスについて。HIVウイルスによる死亡例は減少している一方で新たな感染者は増加しており、結果としてHIVウイルス保有者の数も増加している。このことから、HIVウイルスがヒトと共存するまでに毒性を低下させてゆく可能性が示唆される。
     第11章ではウイルスの環境適用様式の多様性が語られる。ウイルスも真核生物と同様、外部環境の干渉を受けつつ進化してきたことを再認識させられる。
     エピローグでは、当時話題に上っていたジカウイルスの感染経路について触れた後、「DNAワクチン(ワクチンとして働くタンパク質を合成するよう設計されたDNAをプラスミドに組み込んだもの。ウイルスを用いないことが特徴)」や、「遺伝子ドライブ(DNA切断酵素であるキャスナインを用いて、ウイルスを媒介する蚊などの生物の繁殖を、その種自体が絶滅せぬようコントロールしてウイルス伝播を抑える技術)」が紹介され、本書が締め括られる。

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    2020年03月14日
  • ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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    ウイルスの意味について、結局明快な結論は出していないように思います。しかし、普段の生活ではほんの一部しか関わりのない莫大なウイルス世界について嫌というほど知識を得ることができます。
    たかだかいくつかのDNA/RNAとタンパク質が入っただけの、普通の分子みたいに結晶化もできてしまう塊、それも他の生物の細胞がなければ何もできない物体を生物と言っていいのか…?でも環境に合わせてこれでもかと遺伝子を残そうとする様はまさに生物の進化そのもの…
    改めて遺伝子というシステムの巧妙さに驚きつつ、生物の歴史に想いを馳せることのできる一冊だと思います。

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    2019年11月27日
  • ガンより怖い薬剤耐性菌

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    非常に読みやすくわかりやすい。
    今まで薬剤耐性菌について少しでも知っている人はもう少しいろいろ知ることができるし何も知らなかった人には基本的なところから知ることができる。
    また耐性菌だけではなく細菌が原因あるいは発生の重要なファクターと考えられてきている病気やがん等についても想定されている仕組みから説明されている。
    1つ希望だったのは薬剤耐性菌は満員してもその後薬剤の使用中止すればしばらく後には再びその効果を回復することができると言う事。

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    2019年06月05日