古舘恒介のレビュー一覧
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小学生の頃、はじめて宇宙というものを知ったときに似た感動を覚えた。未来にワクワクすることは簡単だが、人類が辿ってきた過去に遡ってワクワクできることもあるんだな。そしてその進化スピードの変化が起きている理由についても自分なりに整理することができた。
量・知・心の3つに分けてエネルギーを追求し、最後にその旅の目的地について総括する構成となっている。
エネルギーはかたちを変えながら循環しているし、その循環を更に活発にしたり一部を支配したりして、その過程で発生する副産物を応用しながら人類は成長してきた。
すごいなあ。
トウモロコシが農産物から工業製品と化していることは恥ずかしながら知らなかった。ハ -
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非常に面白かった。
人類史をエネルギーという切り口から読み解く。火の利用に始まる広い意味での5つのエネルギー革命に着目し、それが実現した背景を考察している。
以下印象に残っていることの箇条書き。
・火の利用の人類進化への貢献。
野菜や肉など、食べ物は焼くことで栄養を吸収しやすくなり、胃腸の消化にかかるエネルギー消費量を軽減する。それによって比較的短い胃腸が実現し、余ったエネルギーで身体に対して大きい脳の活動を賄っている。
・省エネ技術の落とし穴。
省エネ技術が発展する領域は、まだ普及しきっていない領域で起こることが多い。(例えば、エアコンか。) そういった領域で起こることは、
「もっと必 -
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どんな物事でもそうなのですが、わたしは物事を単純な善悪二元論に帰結してしまうような癖があります。(みんなそうか、、、)
エネルギー問題も同様に、なんとなく石炭がすでに時代にそぐわない悪者で、再生エネルギーが良い、ただし太陽光発電は森林伐採や処分の難しさからあまり適さず風力や地熱等がよりよい、という印象を持っていました。
実際のところはそんな簡単な話ではなく、何をするにしても、有限の何かしらのエネルギーを消費していってしまうことに変わりはなく、バランスやグラデーションの問題なのだと思いました。
人間の本能と資本主義の概念は非常に相性が良いものの、限りあるエネルギーを加速度的に消費してしまうた -
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【感想】
わたしたち人類が直面している最も困難な課題は「エネルギー問題」である。現在喫緊の課題である環境問題も、もとをたどれば、ヒトが増殖と発展のために際限なくエネルギーを求め続け、そのしわ寄せが地球に向かった結果生じている。また、途上国と先進国の格差問題も、細かく見れば「エネルギーの不平等」問題に近い。地場産業の弱い国が海外資本に経済を支配され、汚職によって政治が不安定になり、貧困が深刻化する。まともなエネルギー(安定した住環境)を得られない国民が、移民となってエネルギー富裕国に押し寄せ、受け入れ先の国で衝突を招く。
国家の成立、技術革新、戦争。過去から現在までを俯瞰して見れば、人類とエネ -
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エネルギー問題について、文明史や環境史、産業革命と資本主義、熱力学の法則といった様々な視点から捉えることができる良書だった。
1865年、クラウジウスは熱エネルギーから運動エネルギーへの変換におけるエネルギー損失を説明するエントロピーという概念を考えた。高温槽から取り出される熱エネルギーの量と、運動エネルギーへ変換できずに低温槽へと捨てられる熱エネルギーの量は、両者をそれぞれの槽の温度で割った時、低温槽の数値の方が高温槽の数値より常に大きい値を取ることを示した。熱エネルギーの持つ不可逆性を数値化して明示的に示し、熱力学の第二法則として完成させた。
現在人類が耕作地として利用している土地面積 -
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面白く、「なるほど」と言う内容が豊富。
著者は日本石油から現在(2021年)JX石油開発(株)の技術管理部長と言うサラリーマン。
自身の経験では、本を書くと言う二足のわらじを履くことは、全く想像も出来ないことだが、著者の経験と読書が好きで、色々知識もあったので、このような本が書けたのだろう。
「エネルギーをめぐる旅」、副題が「文明の歴史と私たちの未来」にもあるように、エネルギーに関する地球の歴史、人類が生み出した(古代では偶然だったのだろうが)エネルギーに関係した知恵と発明のこと、そして締めくくりは、地球温暖化対策として重要だと考えることが書かれている。
歴史、物理、化学、そして哲学の分 -
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人間社会の発展はエネルギー革命にある。
産業革命が生まれるまで、人間は森林資源を浪費して、燃やしたり、建築したりして地球環境を悪化させてきた。
産業革命により、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する蒸気機関を生み出して、爆発的にエネルギーを得ることができた。
そのおかげで、空気から窒素を取り出し化学肥料を無尽蔵に作り出し、トウモロコシと言う機械化した炭水化物を無尽蔵に生産させて、牛肉や卵を膨大に作り出すことができた。現代人が手軽に卵や牛肉、牛乳を使い捨てのように食べれるのは全てはエネルギー革命のおかげ。
しかし石炭石油による化石エネルギーの増大は気候温暖化をもたらし地球環境をさらに悪化させた。 -
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ネタバレAudible。Audible会員期間終わっても単品で購入して台所で聴きたい。歴史の補強もできる。
「なぜ二酸化炭素は減り、窒素は残ったのか」の稲妻が空気中の窒素の三重結合を解き雨とともに窒素を地面に運ぶ、という話。そして、それを大和言葉の稲妻にも表れているように古代の人々が観察によって気づいていたという話が面白かった。稲妻の語源、起源は中国なのだろうか?はたまた西欧?知りたい。
「ハーバー・ボッシュ法がもたらしたもの」のマメ科の植物の話、実家の周りの田んぼで田植え前にレンゲを育てていたのは肥料にするからと言ってたのを思い出した。 -
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前半部分はエネルギーの成り立ちなど少し難しい話もありましたが、半分を超えてくるととても内容の深いものばかりでした。
印象に残ったのは、”より少ないお金で、”より少なり財産で、より少ないエネルギー消費で幸せを感じることができるように自らの脳を意識付けすることこそが、より確実に幸せに暮らす秘訣であるということ”の部分。
自分がまさに今目指していることだからです。夫も自分も、20代のころは車だ、家だ、服だと物に執着していた部分もあった。でももう30台になると、そういうことはどうでもよくなるんですよね。それよりも、助け合いの精神におもきを置き始めて、どうすれば日本をよくできるか、自分たちの子供が大人に -
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新卒から数年在籍していた前職で、薄いながらも著者の方と関わる機会があり、出版されてから日が経つものの通読。
NHK出版新書から出ている石井彰さんの「エネルギー論争の盲点」と被る流れや記述があるものも、地球の誕生から人類の出現、火の使用、農業革命、蒸気機関の発明、電気の使用まで、どのようにエネルギーと人類が関わってきたか、そしてその使用量を爆発的に増やしてきたかを辿ることができる。また、物理法則の制限からいかに我々が利用できる質の高い資源(低エントロピーの資源)が稀少で有限なのかという視点が加えられ、第三章までとても面白かった。
第四章に関しては、著者のスタンスなのかもしれないが、一つ一つの -
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新卒で日本石油入社のサラリーマンの方らしい。すご。
エネルギーとあえて広義に捉え、火→農耕→森林→産業革命(蒸気機関)→電気、という独特?の切り口でエネルギーの変遷を説いたと思えば、だんだん環境/エネルギーに対してどのように対峙すべきかの精神論や哲学的な話に帰結していく流れ。
と聞くと堅苦しそうだが、なぜかわかりやすくしかも面白く、サッサと読んでいけた。
おそらく、それほど専門的な話にせずに、むしろちょうどいい抽象度で話がまとめられているから概要として捉えやすいから?(エネルギーはすなわち凝縮・濃さで見るとか、電気によって初めてエネルギーを移動することができるようになった、とか、概念的な話が