古舘恒介のレビュー一覧

  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    教養書としておすすめ。著者はエネルギーをかなり広く捉えていて、森林、農耕、食糧など、これも広義ではエネルギーなのかと気付かされた。古代から現代までの経済社会の在り方の変遷、エネルギーに関する物理学の研究の歴史、人間の幸福論、人類の未来といった幅広い話題に及んでいて、著者の思考に付き合うのが純粋に楽しかった。世界の見方が変わった気がします。

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    2026年09月16日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    エネルギーとは何なのか、また、それを巡る人類や世界の変遷を俯瞰的に書かれています。エネルギー業界の方のみならず教養書としてもおすすめです。
    そしてこれだけ俯瞰的な知識を一冊にまとめられている筆者の人生観にも心打たれました。

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    2026年09月06日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    人間の脳が発達したのは、火を使って料理をすることによって効率的にエネルギーを補給出来たから。

    人間がやらないことも、別の何かのエネルギーを使って動かしている

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    2026年07月13日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    雨の日が続き、雷も多いこの時期。なぜ雷の光を「稲妻」と呼ぶのでしょうか?

    それは、雷によって空気中の窒素が酸化され、それが雨に溶け込んで植物の栄養になることで稲の成長を助けるからだそうです。雷が多い年は豊作だと古くから言われていたそう。

    世の中の大抵のことは、エネルギーの切り口で考えてみれば分かりやすく整理でき、腑に落ちるようになる。

    この導入に惹かれ、本書を手に取りました。

    特に印象に残っているのが以下です。
    --
    あなたが今この瞬間に保持している炭素原子のなかには、1200年前に空海の身体を構成していた炭素原子が含まれているかもしれませんし、100年後の世界でテニスのウィンブルドン王者となっている者へと受け継がれる炭素原子もあるかもしれません。

    あなたが育てている草花に、そっと渡される炭素原子もあるでしょう。

    そう、すべては循環しています。
    --

    人類の歴史や文明において、一見バラバラに見える出来事が、エネルギーという1本の軸でつながっている。

    目に見えないエネルギーを知る事で、世界の解像度がグッと上がる1冊です。

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    2026年07月05日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    エネルギーを通じた人類の歴史や文明にまで切り込んだ学びの多い一冊だった。エネルギーの種類も様々あるが、それらを主観やステレオタイプで善し悪しを判断せず冷静に貢献度や課題を論じる点に信頼感があった。また、なぜ人はエネルギーを求めるのかといった、日常に当たり前に溶け込んでいて気づきづらい根源的なポイントにも問いを立て論じている点に、思考を広げ深めるきっかけを与えてくれている。

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    2026年06月07日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    エネルギーの状況を知れるだけでなく、その背景や今後についての向き合い方、心の持ちようなど、複合的な観点で考えることができる一冊です。
    著者はエネルギー業界のサラリーマンしながらこれを書いたとか。自分も意識を持って仕事に取り組み、そこから繋がる活動をしてみたいと思えた点でも読んで良かった。

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    2026年05月17日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    小学生の頃、はじめて宇宙というものを知ったときに似た感動を覚えた。未来にワクワクすることは簡単だが、人類が辿ってきた過去に遡ってワクワクできることもあるんだな。そしてその進化スピードの変化が起きている理由についても自分なりに整理することができた。
    量・知・心の3つに分けてエネルギーを追求し、最後にその旅の目的地について総括する構成となっている。

    エネルギーはかたちを変えながら循環しているし、その循環を更に活発にしたり一部を支配したりして、その過程で発生する副産物を応用しながら人類は成長してきた。
    すごいなあ。

    トウモロコシが農産物から工業製品と化していることは恥ずかしながら知らなかった。ハーバー・ボッシュ法については義務教育で扱ってもいいのではないか。こんなに偉大な発明を知らなかったことに驚いたし、知ることができてよかった。我々は生きているし、生かされている。

    人類史や哲学、化学といった様々な切り口での言及と、その上での、現代に対する問題提起もおもしろいし嫌味じゃない。
    一貫してエネルギーについて述べられているけど、これはギバー&テイカー論にも置き換えられそう。
    循環して返ってくることを前提とすればギブ先行で動きやすいし、逆も然りとなる。

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    2025年12月19日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    非常に面白かった。
    人類史をエネルギーという切り口から読み解く。火の利用に始まる広い意味での5つのエネルギー革命に着目し、それが実現した背景を考察している。

    以下印象に残っていることの箇条書き。

    ・火の利用の人類進化への貢献。
    野菜や肉など、食べ物は焼くことで栄養を吸収しやすくなり、胃腸の消化にかかるエネルギー消費量を軽減する。それによって比較的短い胃腸が実現し、余ったエネルギーで身体に対して大きい脳の活動を賄っている。

    ・省エネ技術の落とし穴。
    省エネ技術が発展する領域は、まだ普及しきっていない領域で起こることが多い。(例えば、エアコンか。) そういった領域で起こることは、
    「もっと必要だからエネルギー効率を上げたい。→エネルギー効率のいい機械ができた→今までよりも低コストで同等の性能が出せる。→今まで普及していなかった層も利用するようになる→結果としてエネルギー総消費量は増える。」
    というように、個体あたりで見ると省エネが実現していても、大きく見ると逆にエネルギーをより使ってしまっている事態が起こる。
    つまり、省エネがマクロ的にも省エネであるのは、既にこれ以上地球に普及しようがない技術のみということになる。

    ・ハーバーボッシュ法の功績。
    空気中の窒素からアンモニアを合成する技術で、窒素、リン、カリウムという植物生育に必須の栄養素のうち、窒素を含む人工肥料の作製に貢献した。この技術により、農耕可能な土地を開墾しきり、頭打ちと思われた作物供給量の限界を突破し、現在の人口規模になるまでの食糧需要を確保した。この技術がなければ、現在の5人中2人は存在しないとも言われる。

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    2025年04月29日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    人の営みをエネルギーから見るという視点は大変参考になり、また目から鱗でした。メソポタミアなど過去の文明の消滅が森林伐採が大きな原因であること、産業革命は単なる機械化の発芽ではなく人の拡張の始まりであるといった評価は興味深い。
    人間社会は資源の枯渇の前に温暖化による自然災害の激甚化による限界を迎えてしまう。これからの人口増に対しては自然エネルギーとIT技術の活用による自然への負荷の軽減で乗り切るべきで、生活習慣を自然のリズムに合わせる変化が必要になるとの意見には納得しました。

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    2025年01月12日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    どんな物事でもそうなのですが、わたしは物事を単純な善悪二元論に帰結してしまうような癖があります。(みんなそうか、、、)

    エネルギー問題も同様に、なんとなく石炭がすでに時代にそぐわない悪者で、再生エネルギーが良い、ただし太陽光発電は森林伐採や処分の難しさからあまり適さず風力や地熱等がよりよい、という印象を持っていました。

    実際のところはそんな簡単な話ではなく、何をするにしても、有限の何かしらのエネルギーを消費していってしまうことに変わりはなく、バランスやグラデーションの問題なのだと思いました。
    人間の本能と資本主義の概念は非常に相性が良いものの、限りあるエネルギーを加速度的に消費してしまうため、使いすぎを防ぐための方策の一つとして「足るを知る」ことなのかと思いましたが、周りがものすごいスピードで成長しようとしているなかで自分・企業・国がその方針をとれることはこの先も起こらないのではないか、結局今の自分たちが都合よければそれでよし、としてしまう気がしますし、この本に書かれてある人類の歴史を振り返ってみても、そのような結末になってしまう気がしてしまいます。

    個人的に最も情緒的に刺さったのは、火の概念でした。
    生きとし生けるものが時代を超えて炭素でつながっていると思うとなんだかロマンを感じます。
    数年前祖父が亡くなり、祖父の人生はこれで終わったのかと思っていましたが、火葬され土に還り、また新たな命に生まれ変わっている、次世代に命がつながれていると考えると、近い将来やってくる祖父母や両親の死も少しは前向きに捉えられそうだなと思いました。

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    2025年01月06日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    読書2周目。エネルギー初学者のバイブルだと思う。地球の誕生から、生命の誕生、人類の火の使用の起源、それがどのように人類の頭脳と文明を発達させたのか、歴史的・文化人類学的・生物学的・物理学的にとても分かりやすく記載されている。「旅」というタイトルの通り、事実の羅列ではなく、エネルギーの歴史を一つのストーリーとして著者の主観も交えながら展開されるため、1ページ1ページがとても面白い。参考文献も幅広いため、著者の思考の奥行きが本書の醍醐味となっている。

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    2024年10月06日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    エネルギーに関連する歴史、技術、地政学、哲学まで幅広く語られた本。教科書にしたらいいんじゃないかと思う。良本。

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    2024年05月23日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

    Posted by ブクログ

    【感想】
    わたしたち人類が直面している最も困難な課題は「エネルギー問題」である。現在喫緊の課題である環境問題も、もとをたどれば、ヒトが増殖と発展のために際限なくエネルギーを求め続け、そのしわ寄せが地球に向かった結果生じている。また、途上国と先進国の格差問題も、細かく見れば「エネルギーの不平等」問題に近い。地場産業の弱い国が海外資本に経済を支配され、汚職によって政治が不安定になり、貧困が深刻化する。まともなエネルギー(安定した住環境)を得られない国民が、移民となってエネルギー富裕国に押し寄せ、受け入れ先の国で衝突を招く。

    国家の成立、技術革新、戦争。過去から現在までを俯瞰して見れば、人類とエネルギーはワンセットで発展してきた。ゆえに、エネルギーの軌跡を辿ることは、人類がこれまで歩んできた進化の歴史を学ぶことであり、同時に今後の未来の方向性を考察することにもなる。そうした視点から書かれたのが本書『エネルギーをめぐる旅』だ。人間が最初に利用したエネルギーである「火」から、未来の新型エネルギーの利用可能性に至るまで、エネルギーの歴史を総ざらいし、現代社会における「エネルギー欲求」の中での正しい生き方を描き出していく。

    人間はエネルギーを得るために、火を発明してからたった100万年のあいだで地球を食い尽くしてきた。森林、石炭、石油、天然ガス。なぜヒトは際限なくエネルギーを求めるのかについて、筆者は「ヒトの脳は本質的にエネルギーの獲得に貪欲だからだ」と述べている。
    人間はエネルギーの消費量を増やしていくことで、他の生物を支配し文明を構築してきた。火を手に入れ、猛獣を寄せ付けず効率的に栄養を取れるようになった。太陽エネルギーを利用して農耕社会を築き、人口爆発的に増やした。特に産業革命以降の社会は、化石燃料などのエネルギー源を自らの体ではなく機械に「食べさせる」ことで、労働を代替させることに成功した。そして電気の発明により、石油や石炭、太陽光、風といった一次エネルギーを二次エネルギーに変換し、距離・場所・形状の制約を取り払った。最新の大型発電所、すなわち巨大化した人工の胃腸が供給する大量のエネルギーは、技術革新にも積極的に還元され、ヒトの頭脳をも超える人口知能の実現が目前に迫っている。こうした営みの根底に潜むのは、「より効率よく、より便利に」という進化欲求だ。エネルギーの高効率化によって生活を向上させてきたヒトにとって、一度回りだした車輪の動きを緩めることはありえない。それは人間にとって退化を意味するからだ。
    「もっとたくさんのエネルギーを」
    それが、私たちの脳が持つ本性なのだ。

    だが、そうした欲求を実現し続けるのには限界が来ている。エネルギーを無から生み出すのが不可能であることは、熱力学の第二法則が明らかにしている。太陽光や原子力(核融合)など、「事実上」無制限なエネルギー源はあるものの、人間はまだそれを使いこなす技術を獲得していない。そうした技術の開発を急ぐと当時に、それとは別に「人間の考え」もアップデートする必要がある。つまり、「もっとたくさんのエネルギーを」と思考する脳を落ち着かせ、モノや時間との関係性をスローに改める。そうした、より深いところでエネルギー問題に正対することで、人間社会は次なるエネルギー革命を起こすことが可能になるのだ。

    ――ヒトの脳はその成り立ちからしてエネルギーの獲得に極めて貪欲なものです。その貪欲さは、種の保存に必要な食料を遥かに上回る規模のエネルギーを得た今日においても一向に衰えることがありません。もっと賢くなるために、もっともっとエネルギーがほしいのです。これは生物のなかで、人類だけに見られる特徴です。
    「もっとたくさんのエネルギーを」
    私たちの脳が持つ欲求は、動力機械や情報技術といった外部肉体や外部脳を作り出すだけでなく、自然界の定めた窒素固定量のくびきを解き放ち、自らの代謝を支える食料さえもエネルギーまみれにしてしまいました。現代社会に生きる私たちは、今や自らの存在自体でさえも、エネルギーの大量消費によって支えられているという事実を深く認識する必要があります。
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    以上が本書の概要である。
    読んだ感想だが、筆者の深い知識と卓抜した文章力によって、歴史小説を読んでいるかのようなワクワクをずっと味わえた。しかも、情報は網羅的でありながら非常に分かりやすい。熱力学の章に関しては科学の基礎的な知識がいるが、無かったとしても図説によって問題なく理解ができると思う。また、エネルギーの科学史だけでなく、「火とヒトの心」「エネルギー社会と人間の精神」といった心理学の分野まで踏み込んで多角的に論じている。個人的にはこの「純粋科学以外の異分野からエネルギーを見つめ直す」といった目線が非常にユニークで、読んでいて新たな発見ばかりだった。

    「驚嘆必至の教養書」の名のとおり、驚きと新たな気づきに溢れた一冊。文句なしにおすすめだ。
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    【まとめ】
    1 エネルギー革命
    ●火のエネルギー
    世界最古の火の使用はおよそ100万年から150万年前といわれている。火を焚くことによる明かりと熱を嫌って肉食獣は洞窟に近づかなくなり、人類の祖先はわざわざ木に登らずとも地上で夜も安心して眠ることができるようになった。苦労して得た食べ物を他の動物たちに横取りされる心配もなくなった。
    人類の祖先は火を扱うことを覚えたことで、環境を自らに都合のよいように作り変える術を得たのである。こうして人類は、自然界における自らの立場を大きく引き上げることに成功した。人類史上初めて、エネルギー革命と呼ぶべき大きな変化が起きたのだ。
    一般に、脳の維持には多大なエネルギーが必要であるが、胃腸も脳と同じく大量のエネルギーを必要とする。しかし、人間は同程度の体重の哺乳類と比べて、脳の大きさは5倍だが胃腸の長さは2分の1程度である。胃腸が短いのは、火の活用による「料理」の発明によって、食材の栄養価を飛躍的に高め、消化にかかるエネルギーを抑えることに成功したからだ。そうして浮いたエネルギーを脳に割り当てることができたから、ヒトは高い知能を獲得したのだ。

    ●農耕のエネルギー
    1万年前頃に始まったとされる農耕は、大きな変化を生態系にもたらした。
    農耕、すなわち土地を開墾し田畑を整備して農作物を育てるという行為が意味することは何か。それはその地に自生している植物をすべて追い出して、その土地に注ぐ太陽エネルギーを人類が占有するということだ。保存のきく収穫物という形で、計画的に余剰エネルギーを蓄えていくことができるようになった。
    取り込まれる太陽エネルギー量が飛躍的に増えたことで、人的エネルギーも人口増に比例する形で増えていった。人類が自由に使うことができる人的エネルギー量は、農耕開始前の100倍に増えた。

    ●森林のエネルギー
    人類が築いた文明社会は、大抵、大規模な森林の伐採を伴った。建築物や船舶用の建材としてや、陶器や煉瓦を焼いたり、金属を溶出させるための窯炉でつかう燃料として用いるためだ。森林の成長を育むものは、太陽エネルギーである。エネルギーの視点からみれば森林資源の利用もまた、農耕に次ぐ太陽エネルギーの占有ということになる。
    再生不可能なところまで森林を伐採し、土壌環境を永久に変化させてしまう過ちは世界各地の文明で繰り返され、多くの古代文明が衰退する大きな要因となった。森林資源を消費した理由は、金属製武器の生産や軍用船の建造など、軍事力の強化に大量の木材が必要だったからだ。資源の再生スピードを上回る消費を行った社会は、そのどれもが長期的には資源の枯渇によって衰退する運命を辿った。

    エネルギーを希求するヒトの脳の欲望には限界がない。こうした流れに歯止めがかかるようになるには、さらなる技術革新による問題解決が必要だった。森林資源枯渇への危機感が、次のエネルギー革命を引き起こす原動力となったのだ。

    ●産業革命
    蒸気機関の発明が真に革命的であるのは、エネルギーの形を変えたことである。蒸気機関が発明される以前の社会において人類が活用してきたエネルギーは、常に取り出したエネルギー形態と同じ形態のままで使用されてきた。熱エネルギーは物を温めるために使われた。しかし、蒸気機関では、石炭を燃やして水を加熱することで作った水蒸気がピストンを動かし、運動エネルギーを取り出している。蒸気機関の発明は、熱源となりうるものはすべて動力になりうることを意味した。このことが燃料の選択肢を広げ、エネルギーの大量使用を実現する道を切り開いた。
    19世紀に入ると、蒸気機関を小型化するアイデアとして、ピストンが動く機関の中で直接燃料を燃焼させて動力を得る内燃機関が実用化され、石油が燃料として注目を集めるようになった。

    産業革命は工業生産を手工業から機械工業へと飛躍させただけでなく、人類社会の在り様をも半永久的に変えていく原動力となった。それは工場経営者の登場と工場労働者の増加である。従来の地主層(貴族)に代わって工場経営者が大きな富を蓄積するようになった。初めて工業活動が農業活動を超越するようになったのだ。

    ●電気の利用
    電力の時代の到来を決定づけたもの、それは発電機の発明である。発電機は運動エネルギーを電気エネルギーに変換する新たなエネルギー変換装置である。蒸気機関は第3次エネルギー革命をもたらす大発明であったが、熱エネルギーを取り出す場所と、変換した運動エネルギーを消費する場所は同じである必要があった。しかし、電気は発電所から自宅までエネルギーを輸送することができる。電気の利用はエネルギー変換の自由に加え、場の制約からの解放をももたらす力を秘めていた。第4次エネルギー革命の幕開けであった。

    ●肥料
    19世紀に入り増え続ける人口を養うには、土地を開拓し続けるだけでは不十分であり、土地そのものの改良が必要だった。ここから、肥料をめぐる争いが幕を開ける。グアノやチリ硝石といった天然の鉱物資源に世界中が群がったが、天然資源だけでは供給が追いつかない。
    そこで登場したのが化学合成技術による人口肥料だった。ハーバーとボッシュはアンモニアの大量生産技術を確立し、大量のエネルギーを投入して食料を増産した。
    20世紀半ばになると、潤沢な肥料供給を前提に開発された高収量の品種が普及するようになり、農地からの穀物の収量は飛躍的に増える。「緑の革命」と呼ばれる成果であり、それが人口の爆発的な伸びを支えた。20世紀初頭、16億人に過ぎなかった世界人口は、1950年には25億人を超え、20世紀末には60億人を突破するに至った。


    2 エネルギーとは何者なのか
    科学の世界は、この世のすべてはエネルギーでできていることを解き明かした。物体の質量、光、熱。そのすべてがエネルギーの一形態である。
    身の回りにエネルギーが溢れているのであれば、エネルギーの確保に困るなど起こり得ないように思えるが、それは誤りである。熱力学の法則により、熱エネルギーの変換にはロスが生じる(=投入されたエネルギーは質の低いエネルギーへと姿を変え、自然と散逸していく)ことが明らかになったからだ。その性質から、熱力学の第二法則は単に「エントロピー増大の法則」と呼ばれている。エントロピー増大の法則が指し示すのは、エネルギーが散逸し劣化していくこと、つまり有効活用可能なエネルギー源は有限という事実である。


    3 エネルギーと向き合う
    1917年にロシアで生まれた科学者であるイリヤ・プリゴジンは、エネルギーが流れる開放系の研究を通して、局所的に秩序が立ち現れることがあることを発見した。それを彼は「散逸構造」と名付けた。この発見により、太陽から継続的にエネルギーを受け取る地球環境のような開放系の世界においては、生物という秩序が自然に発生することがあり得ることが説明された。
    熱力学の第二法則が支配するこの世の中で、一定の秩序を維持するためには、常に外部からエネルギーの供給を受け続ける必要がある。これが散逸構造の議論が導き出すひとつの結論だ。人類は文明が発祥した古代の世界から現在に至るまで、連綿と知識の蓄積を続けている。
    蓄積された知識を「構造」として維持、発展させていくためには、より多くのエネルギーの投入を必要とする。これが、過去から現在に至るまで、人類によるエネルギーの消費量が一貫して右肩上がりで伸び続けてきた理由だ。より複雑で多様な「構造」を維持するためには、より多くのエネルギーの投入が必要なのだ。
    これは省エネ技術に関しても同じである。エネルギー消費量が減ることで、その機器を製造するコストや使用するコストを引き下げることになり、新技術が一般化し結果的に「エネルギー消費量を増やす」方向に働いていく。

    現代文明を維持・発展させていくためには、エネルギー消費量を増やし続けていくしかなくなってしまう。質の高いエネルギーが有限である以上、いずれ破綻することは避けられない。
    そうした運命の中で私たちがまず向き合うべきことは、技術革新による問題解決への無邪気な期待を慎むことだろう。
    現代に生きる私たちは、情報通信技術の日進月歩の進化を目の当たりにしていることもあり、いかなる問題も最後は技術革新がすべてを解決するような錯覚を抱くようになっている。しかしエネルギーの世界は、熱力学の第一法則と第二法則が支配する世界だ。何もないところからエネルギーを作り出す技術、ないしはエネルギーの質の劣化を逆転させる技術、そのいずれもが実現不可能である。加えて、省エネ技術の開発が問題を根本的な解決に導くわけでもない。したがって私たちが取るべき態度は、安易な技術革新信仰を捨て、より深いところでエネルギー問題に正対することだ。

    「より深いところでエネルギー問題に正対する」とは、人類の歴史を顧みて、なぜ人類がエネルギーの消費量を増やしてきたのかを考えてみることである。
    キーワードは「時間の短縮」。火の利用は食べ物の咀嚼にかかる時間を、農耕生活は社会全体の食料生産に費やす時間を、蒸気機関は人々の労働量あたりの労働時間を、電気は距離の克服による移動時間を、人口肥料は農業生産効率の上昇によって食料生産に費やす時間を、それぞれ短縮させた。
    人類の歴史とは、「時間を早回しにすること」に価値を見出してきた歴史である。これをいかにして抑えるかが、エネルギー問題を解くひとつの鍵となるのではないか。

    いまや生物のひとつとしての人間の時間は、完全に引き裂かれた状態にある。今よりも、もっとゆっくりとした時間の流れのなかでの生活を前提として創られた身体と、そんなことはおかまいなしに、ひたすらに時間を早回しにしたがる極端に肥大化した脳との間でだ。今、私たちが強く意識すべきことは、いかにして脳主導の思考法から脱却し、少しでも身体の方に寄り添った思考法を実現できるかということだろう。こうして自らの身体の声に耳を傾けるかたちで人間の深層心理に問いかけていきさえすれば、時間を早回しにしていく生活習慣を改めていくことは決して不可能なことではないはずだ。
    例えば、呼吸を整えて座禅やヨガに取り組むことは、脳を落ち着かせ、時間の歩みを身体に即したものへと取り戻す一助となる。タイムを気にせずゆっくり走ることも有効だ。自然と呼吸が整い、気がつくとランナーズハイと呼ばれる多幸感に満たされた状態になる。座禅やヨガ、そしてランニングが世界的に根強い人気を誇っているということは、身体の時間への回帰欲求を私たちが潜在的に持っていることの証左だろう。社会全体の時間の歩みを調整していくことは、簡単ではないが、全くもって実現不可能なことでもないはずだ。


    4 これから取り組むべき問題
    ・人為的な気候変動問題
    仮に、現時点で埋蔵が確認されている化石燃料をすべて燃焼した場合に、どれだけ大気中の二酸化炭素濃度が上昇するかを試算してみる。2018年末の可採年数は、原油と天然ガスは約50年分、石炭は約130年分となっているので、現在確認されている埋蔵量は、2100年頃まではすべてを使い切ることになる。私の概算では、その間に大気中の二酸化炭素量は合計で300ppm以上増加し、合計700ppmまで二酸化炭素濃度が上昇するという結果が得られた。

    もちろん地球の長い歴史を振り返ってみれば、地球の気候環境は変動するのが当たり前で、それを人為的に制御しようと試みることは、極めて野心的なことといえなくもない。ベーリング海峡が地続きになるようなヴュルム氷期の厳しい寒さのなかにおいても人類は生き抜いてきたし、現在よりも気候が温暖で、海面水位が今よりも2~3メートル高かったとされる縄文時代前期の日本のような場所においても、問題なく生をつないできている。
    国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2014年に発表した「第五次評価報告書統合報告書」によれば、温暖化が最も進んだ場合、2081年から2100年までの20年間の平均気温は現在より2.6℃から4.8℃上昇し、海面水位は0.45メートルから0.82メートル上昇すると予測されている。つまり、最悪ケースの今世紀末の想定においても、日本においては縄文時代に経験した海面水位よりも低い上昇に留まると予想されていることになるわけだ。
    現代に生きる私たちは、縄文時代の人類と比べて遥かに高度な科学技術を保持していることを鑑みれば、この程度の海面水位の上昇はそこまで目くじらを立てるような話でもないように感じるかもしれないが、私たちは縄文時代に比べて「自由に移動できる空いた土地」を持っていない。気候変動が加速すると、海面水位の上昇や降水量が減るなどの影響により、土地を捨てざるを得なくなる人々が移動を開始し、移動先の住人とのあいだで土地を奪い合う事態が発生するだろう。

    気候変動問題に一定の解を与えるということは、資本の神に導かれるがままにエネルギーの消費量を増やして散逸構造を発展させていくという、これまでのような発想でのエネルギーの利用を改めるということにほかならない。エネルギー消費の増大を抑え、持続性のある形に落ち着かせることができなければ、低エントロピーのエネルギー資源の枯渇という爆弾が遅かれ早かれ爆発することになる。したがって、資本の神から一定の距離を置き、低エントロピーのエネルギー資源を大切に扱っていく持続性の高い社会への変革を目指す必要があるという観点からも、足元の危機である気候変動問題は私たちにとって挑戦する価値のあることに違いない。

    気候変動問題とエネルギー資源枯渇問題の両方に折り合いのついた持続可能な社会を構築するためには、二酸化炭素を排出しない上に実質的に枯渇の心配がないエネルギー資源を中心に据えなければならない。
    その可能性を秘めるのは、太陽エネルギーと原子力エネルギーだ。原子力エネルギーは、現在の技術である「核分裂」ではなく「核融合」がすべて解決してくれる。運転によって高レベル放射性廃棄物が発生することはなく連鎖反応も起こらないことから、万が一の事故の際にも反応は直ちに停止し、制御ができなくなることもない。反応では中性子が飛び出すため炉壁については放射性を帯びることになるが、低レベル放射性廃棄物として100年程度の保管で無害化できると見込まれている。そして燃料となるエネルギー源は、海水中に豊富に含まれる重水素だ。自然界に存在する水素原子の7000個に1個が重水素のため、ほぼ無尽蔵の資源であるといってよいだろう。

    また、社会の設計図を太陽エネルギーと親和性の高いものに組み替える必要がある。
    化石燃料を中心とした社会から太陽エネルギーを中心とした社会へのエネルギー転換は、ある意味誰もが考えつくであろう将来像ではあるが、その実現への道のりは平たんではない。なぜならこのエネルギー転換は、人類史上初めて、使い勝手の良い低エントロピー資源から使い勝手の悪い高エントロピー資源への移行を人類に課すことになるからだ。
    太陽エネルギーは枯渇の心配がない代わりに、エネルギー密度が低く、そのままでは貯蔵できないという問題がある。そのため人類が文明を維持するために必要とする量のエネルギーを安定的に得るためには、大規模な土地の確保と蓄電池などのエネルギー貯蔵装置を必要とする。この2つの制約の存在が、人類社会のあり様をこれまでの集中型から分散型へと転換していくよう強く促すことにつながっている。

    持続可能な社会は、エネルギー消費量を抑制し、低エントロピー資源を大切にする社会への転換なしには立ち上がっていかない。その実現を担保するのは、再生可能エネルギーの普及を促す政策の質にあるのでもなく、気候変動モデルの精度にあるのでもない。私たちひとりひとりの意志を伴った行動にある。未来がどのように切り開かれていくのかは、結局のところ、その多くが私たちの意志を伴った行動次第なのだ。

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    2024年04月25日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

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    エネルギー問題について、文明史や環境史、産業革命と資本主義、熱力学の法則といった様々な視点から捉えることができる良書だった。

    1865年、クラウジウスは熱エネルギーから運動エネルギーへの変換におけるエネルギー損失を説明するエントロピーという概念を考えた。高温槽から取り出される熱エネルギーの量と、運動エネルギーへ変換できずに低温槽へと捨てられる熱エネルギーの量は、両者をそれぞれの槽の温度で割った時、低温槽の数値の方が高温槽の数値より常に大きい値を取ることを示した。熱エネルギーの持つ不可逆性を数値化して明示的に示し、熱力学の第二法則として完成させた。

    現在人類が耕作地として利用している土地面積は全陸域の12.6%を占め、牧草地として利用されている草地も加えて全陸域の40%が人類による食糧生産に使われている。残る陸域のうち、森林が30%、乾燥地帯や極寒の極地が30%を占めている。

    資本の神が私たちに求めることは、経済が成長し続けることを信じること。経済成長の持続は、エネルギーの大量消費によって実現された。

    日本の一次エネルギー供給量をすべて太陽光発電によって賄う場合、国土の5.5%に太陽光パネルを敷き詰める必要がある。洋上風力発電は、密集することによる出力の低下を防ぐことや航行する船舶の安全を考えれると、羽根の直径の十倍を空ける必要がある。そのため、洋上風力発電に必要な面積は太陽光発電で必要とされる面積の10倍以上になる可能性がある。これだけのまとまった面積を確保することは容易ではないため、住宅やビルの屋上なども有効に活用し、これらの小規模電源をつないで、地産地消を前提としながら不足分を融通し合う分散型システムを新たに設計していく必要性がある。

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    2024年04月10日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

    Posted by ブクログ

    #2024年に読んだ本 25冊目
    #4月に読んだ本 1冊目

    歴史、宗教、哲学、科学…と
    あらゆる視点からエネルギーを語っているため
    たいへんボリュームがあり読むのに
    時間はかかりましたが
    読みやすい文章ではありました

    エネルギーってのは「ちから」であり
    「八百万の神」ということなのだと思った

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    2024年04月07日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

    Posted by ブクログ

    脳を大きくするため、胃腸を小さくした→エネルギー取得効率を上げるため、人類は料理を覚えた。火の発見が最初のエネルギー革命。ハーバーボッシュ法により人工肥料の発明。もっとエネルギーを。エネルギーの語源はギリシャ語で仕事を意味するエルゴン。解決が急がれる、人為的な気候変動問題。将来的な理想のエネルギー源は核融合炉。現代人の脳は時間を早回しすることを望んでいる。全てはエネルギーで繋がっているんだなぁ。

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    2026年10月03日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

    Posted by ブクログ

    エネルギーと人間の役割を捉え直す上で、非常に示唆に富んだ一冊でした。人類がこれまでどのようにエネルギーと向き合い、発展してきたのかが体系的に整理されており、理解を深めることができました。特に終盤では、エネルギーと資本主義との関係について考えさせられ、今後どのように向き合うべきかを見つめ直すきっかけとなりました。私は、エネルギーがより効率的かつ計画的に利用される社会の実現を期待しています。

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    2026年05月04日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

    Posted by ブクログ

    すごい!人間は!エネルギーを効率的に消費循環させるために存在する装置だったんだ!!
    (なんかたぶん違う)
    観念的に見ていた「エネルギー」というものの捉え方がガラリと変わる感覚がある良書。


    冒頭の、火に関する話だけでも一読の価値がある。

    火って、太古から地球上にあるように思うけれど、そんなことはない。
    火が存在できる条件は案外厳しく、それは生命が地上に現れてから見られるようになった現象だ。
    すなわち火は、我々生き物が燃えることで発生している。

    火は、生命を燃やすものであり、多くの生き物にとっての厄災であった。
    しかし100万年から150万年前、人類の祖先は火を道具として使うようになった。

    これにより、洞窟の中で外敵から身を守ることができるようになったほか、
    食べ物を「料理」することで効率よくエネルギーを取り込むことができるようになっていく。

    ---

    ■ 人間はエネルギーを消費することで覇権を握ってきた

    生き物は多くのエネルギーを食べ物の獲得・消化に費やしている。
    一般に類人猿は1日のうち6時間を食べ物を噛むことに費やしているという。

    人間は食べ物を火にかけることで、効率よくエネルギーを体内に取り入れることができるようになった。

    食べ物の吸収率があがり、短時間で多くのエネルギーを取り入れ、脳に回せるようになった。
    その結果、人間は同程度の体重の哺乳類と比べて、脳の大きさは5倍、胃腸の長さは2分の1程度になっている。

    全体重の2.5%程度の重さである脳が、実に生命維持に必要なエネルギー量の20%を要求する。これにより、高度な知能を獲得した人間は世界の覇権を握ることとなった。

    ■ 加速する人間の時間
    通常動物が生涯に使うエネルギー量は、重量の比較で見るとおよそ一定と言える。ネズミは3年、ゾウは60年生きるが、ネズミの心臓は一分間に500回程度、像は30回程度振動し、それぞれ異なる速度でエネルギーを消費する。
    トータルで消費するエネルギー量は同等となる事が分かっている。

    対して一般の日本人のエネルギー消費量を体重に当てはめると、4.8トンのアジアゾウ並みの重さでなければならない。
    逆に単位体重あたりの代謝量に当てはめると、0.1グラム。
    ネズミよりも遥かに早い消費速度でエネルギーを消費していることになる。
    どう考えても生き急ぎすぎだろう。

    エネルギー消費という世界では、人間の時間は加速し続けている。
    エネルギーを消費することに囚われ、もはやエネルギーを大量に消費することでしか生きられない存在になってしまった。

    ■ そもそもエネルギーとはなにか?
    エネルギーとは「仕事をする能力」のこと。
    物体の質量、光、熱。そのすべてがエネルギーのいち形態である。
    すなわち、この世のすべてはエネルギーでできていると言える。

    しかし、多くのエネルギーは分散し、無秩序化(高エントロピー状態)していて取り出しにくい状態にある。現状人間が利用できるのは、一定に整列し秩序化された(低エントロピー状態)エネルギーのみ。
    エネルギーは時間とともに不可逆的に高エントロピー化し、散逸していく。

    またエネルギー保存の法則により、地球上のエネルギーの総量は一定である。

    ・活用できるエネルギーの例
    運動エネルギー: 動く物体(車、風)
    位置エネルギー: 高い場所にあるもの(ダムの水)
    熱エネルギー: 物を温める力(炎、ストーブ)
    電気エネルギー: モーターを回すなどの力
    化学エネルギー: 燃料や食べ物が持っている力
    (四国電力公式サイトより)

    ■ エネルギー消費と文明
    とかく人間はエネルギーの消費量を増やしていくことで文明を築いてきた。

    火の獲得:火を手に入れることで、外敵を寄せ付けず、料理によって効率的に栄養を取れるようになった。
    太陽と農耕社会:狩猟採集を行っていた人類は、やがて太陽エネルギーを利用して農耕社会を築くことで余剰作物を生み出し、人口を爆発的に増やす。
    化石燃料の時代:産業革命以降、人間は自分の体ではなく、化石燃料を機械に消費させることで、労働を代替させることに成功した。
    電気の時代:電気の発明により、エネルギーの変換を可能にし、距離・場所・形状の制約を取り払った。
    発電所は、外部化した労働を大量に遂行するためにエネルギーを供給する、人工の胃腸のようなものだ。

    ■ 仕事の外部化
    労働の外部化に成功し、大量のエネルギーを消費することで仕事を増やすことができるようになった人類。
    さらに、AIの登場によって頭脳労働の仕事量は無尽蔵に増やすことができるようになった。AIが脳の外部化なら、最も効率的にエネルギーを消費できる脳に対して、消化器官の制約を受けずに際限なくエネルギーを投入できるようになったということ。

    とにかくたくさんの仕事を生み出し、エネルギーを効率的に消費したいという欲求が人間には根源的にあるのだ。
    その貪欲さは、種の保存に必要な食料を遥かに上回る規模のエネルギーを得てもなお衰えることがない。
    これは生物のなかでも、人類だけに見られる特徴である。

    だから、AIが普及しても、我々は暇になったりしない。
    もっとたくさんの仕事量をこなすようになるだけだ。
    これは人間の宿命なのである。

    ■ 限界はある・そもそも体質に合っていない
    脳にエネルギーを回し続け、どんどん加速していく人間の時間。
    しかしこれは長年狩猟採集をやっていた人間の体質には必ずしも合っていない。むしろどんどん合わなくなってきている。
    そもそも農耕の頃から合ってはおらず、体を痛めながら苦労して労働していたのだった。エネルギー消費のために過剰に仕事させられているとも言えるかもしれない。

    我々は徐々にエネルギーの消費速度を落としていくよう意識を変えていかなければならない局面に来ている。


    ■ 打開策1:太陽光
    地球の中にあるエネルギーの総量は変わらない。
    ただ外部からやってくるものもある。太陽光だ。
    ただし太陽光は比較的エントロピーの高い状態で地球にやってくるので、人間が活用できる形で取り出すのは効率が悪い。
    文化レベルで高エントロピーエネルギーを活用するものに変わっていかなければならない。

    ■ 打開策2:核融合炉
    原子力エネルギーは、現在の「核分裂」ではなく「核融合」炉の実現が期待される。これが実現すると、高レベル放射性廃棄物が発生せず、万が一の事故の際にも直ちに停止させることができるという、現状よりかなり低リスクな原子力発電が可能となる。低レベル放射性廃棄物は発生するが、100年程度の保管で無害化できると見込まれている。
    そして燃料となるエネルギー源は、海水中に豊富に含まれる重水素だ。
    自然界に存在する水素原子の7000個に1個が重水素のため、ほぼ無尽蔵の資源が実現する。
    日本を含む7つの国と地域が共同で進めているITER計画により、2030年〜50年頃の実用化を目指し開発が進められている。

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    ■ まとめと感想
    AI普及の先には、確実にエネルギー問題がやってくる。
    なにしろAIは膨大な電力を消費するから。
    現在、戦争の影響でガソリンも手に入りづらくなっていくけど、化石燃料はいずれにせよ2100年には枯渇するわけで、結局頼ってはいられない。
    今でも省エネやらリサイクルやらが叫ばれているが、その先でどんな未来にたどり着きたいのかによって態度が変わってくる。
    むやみにやっても逆効果にもなりえる。
    何のためにやるのか。
    本書を読んで、エネルギー問題に向き合うということがどういうことなのか。考える解像度が上がり、世界の見え方が変わってくる感覚が生まれた。

    読んでよかったわい!

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    2026年03月25日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

    Posted by ブクログ

    昔、胃腸は脳同じぐらいエネルギーを必要としていたが、火が使えるようになり、胃を小さくしてもエネルギーを効率よく吸収できるようになって脳が発達した。
    特定のエネルギー源が他を圧倒し駆逐した歴史はない。
    ライデン瓶。ボルタ電池。
    肥料のの主な構成要素は窒素リンカリウム。
    生物は炭素酸素水素窒素リン。
    窒素は安定していて固定化されずらい。だから空気中にいっぱいある。雷が落ちると、その大きなエネルギーで窒素の結合がとかれ、地上に降り注ぎ、植物の生育を催促する。
    アンモニアがあれば窒素の結合がとける。
    熱力学の第1法則 エネルギーは減らないし増えない
    熱力学の第2法則 エネルギーは自然に散逸

    エアコンの冷房は、部屋の空気を集め、熱の取り除いてまた戻してる。冷蔵庫も同じ。ヒートポンプ。
    冷蔵庫を開けっ放しにして部屋を冷やそうとしてもそれ以上の熱が冷蔵庫から出てるから意味ない。
    エントロピーが大きい熱エネルギーは小さいものには戻れない。
    エジソンが今の送電の仕組みの始まりを作ってテスラが改良した。
    電磁気力

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    2026年02月09日
  • エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

    Posted by ブクログ

    エネルギーという観点で人間のこれまでの発展を見たときに、何が影響が大きかったのか、ということを著者古館さんの視点で書いてあるが、面白かった。
    火を使うこと→消化がしやすくなり、消化器官ではなく脳にエネルギーを使えるようになった
    農耕→人間の主食に太陽エネルギーを注ぐということができるようになった
    蒸気機関→熱から運動エネルギーへの変換
    電気→電気を送ることで、エネルギーを作る場所と使う場所が別にできるようになった
    ハーバーボッシュ法→化石エネルギー等を使って窒素を固定化し、農作物を生産することに回すことができるようになった。

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    2025年06月14日