ディーリアオーエンズのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレザリガニが泣くところの筆者とそのパートナー マークによるカラハリ砂漠での野生生物(ライオン、ハイエナ、ジャッカルなどの)観察ノンフィクション。
動物のことだけでなく、野外調査に付随する様々な問題、文明化の問題、調査にかかる費用をどう捻出するか、また野生生物をどのように保護するべきかなど、様々なことが語られる。たった二人で文明と隔絶した世界で、乾季に耐え、野火に耐え、何度も命の危険を感じながら、それでも野生生物を観察し、記録し、感動し、怒り、当惑しそして記憶するという類まれないエッセイになっている。
人類の営みとは別に地球上の生物が進化してきたことをまざまざと感じることができる本。
万人におすすめ。 -
Posted by ブクログ
今年のベスト3に入る一冊。
若き動物生態学者夫婦が、カラハリ砂漠の動物たちを追って過ごした7年にも亘る日々の記録。分厚い本だが、動物が好きなら夢中で読めるだろう。
日中50℃にもなる荒野で熱中症と闘いながら、アナログな機器と身体を使って動物を探し、書いて記録し、来るかわからない補助金を待つ。でも好きなことをやる人たちってなんでこんなに幸せそうなんだろう。
そしてまた、野生の動物が垣間見せてくれる、自然のバランスの凄さ。王者ライオンとの絆、悪者イメージの強いハイエナの驚くべき社会的行動、妻になつく小鳥たち。飢えの最中にあってもコロニーの幼獣に餌を運ぶ雄ハイエナの行為を「運ぶ者が自分の血を絶やさないためにおこなう投資にすぎない」と説明しているが、利他的な愛情によるものと著者が見ていることは明らかで、胸を打つ。
共著であり、夫側のダイナミックな筆致も楽しいが、妻側の丁寧な描写は、この人がのちに『ザリガニの鳴くところ』をものすディーリア・オーエンズであることを考えると超納得だ。
すでにこのとき、旱魃と乱開発でふたりが守ってきたキャンプの地はだんだんズタズタになっていく。冒頭の、獲物を追って疾走するチーターが人の作った柵に激突死する場面から心を裂かれる思いだが、これは70年代の記録であり、すでに描かれた自然も動物も失われて久しいのだろうが、今からでもできることがあるならば、何かしなくてはと強く考えたのでした。 -
Posted by ブクログ
素晴らしかった。
「ザリガニの鳴くところ」がとても良かったので、その著者が書いた本と知り購入。「ザリガニ〜」の原点はここだったのかと納得した。
ボツワナのカラハリ砂漠での7年間にわたるフィールドワークの記録。と一言で言ってしまうには勿体ないほど壮大で、文明にまみれた今いる世界が本当に同じ地球なのか?と錯覚する感覚に陥いる。ライオンやカッショクハイエナの生態、著者との信頼関係、カラハリ砂漠の気候や生態系、とても深く考えさせられる。そして、よく著者は生きてたな…とも笑。
コロナ禍でどこにも旅行に行けない中、広大なカラハリ砂漠にトリップできて没入できる本だった。 -
Posted by ブクログ
2026/10/5
湿地に暮らす少女カイア。
一緒に暮らしていた家族は、みな父親の暴力から逃れるために次々に家を出て行った。
そしてその父までも帰ってこなくなり、カイアは「湿地の少女」と呼ばれ、生き延びてきた。
湿地の自然と暮らす彼女と、湿地で起きた不審死事件が交差する。
家族が、誰も小さなカイアを連れて行ってくれないのがとにかく悲しくて辛かった。
燃料を売る店の店主であるジャンピンとその妻になんとか支えられて生きてきたカイア。
かわいい服をもらって喜ぶ様子は普通の女の子そのものだったけれど、自然の中で、そこに生きる生き物たちと共に生活する彼女のことは、きっと理解できないんだろうと、ラストを読んで思った。
長いお話だけれど、先が気になってその長さはあまり気にならなかった。
少し物悲しい余韻が残った作品。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「湿地は、彼女の母親になった」
この言葉で感情移入できたように思います。とても悲しい感情ですが…。
ひとりで生きていくカイアに胸を打たれながらも、並行して事件の捜査が進みますが、全く誰が犯人かはわかりません。(ジャンピンかなとか思っていました)
法廷部分はとても面白く、弁護士のトムが巧みさが光りました。
最終的には犯人はカイアだとわかるのですが、いわゆるトリックのようなものはなく、ミステリーとは言い切れない部分がありました。
しかし、この犯罪はひとりで湿地で暮らして来たカイアが、生命の法則に従って起こしたのであり、そこに善悪はないのだと締めくくられているようでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレで、本作も面白かったですねー。
訳者の友廣氏が『この作品のジャンルを特定することは難しい。フーダニットのミステリであると同時に、ひとりの少女の成長譚とも、差別や環境問題を扱う社会は小説とも、南部の自然の風土を描いた文学ともとらえることが出来る』(P.605)と語っていましたが、確かに奥行のある作品でした。
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私は生物学系の本としてとらえました。
湖沼のほとりに打ち捨てられた少女・カイヤですが、実地と図書から学んだ知識は教授顔負けというところでしょう。そこでの観察を人間社会や人間関係へ適用しつつ考察するのを見て、私はかつて読んだコンラート・ローレンツの作品だったり、長谷川眞理子氏の作品を思い返さずにはいられませんでした。
また、男に裏切られ人を信じなくなった少女カイヤが今後どこまで閉鎖的になるのか、というところや彼女自身の心情描写にはぐっと引き付けられました。人恋しいのに、やっぱりまた騙されるかもって、他人との交わるを極度に嫌がるようになるカイヤの姿が印象的でした。
そんでもって、最後の最後、彼女の死後のほんの数ページの展開が心憎かったですねえ。ここはどちらかというとミステリーですよ。あの部分で本作は更に株を上げたなって感じました。
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ということで、2021年本屋大賞・翻訳部門一位の作品でした。
美しい風景描写、緻密な生物学への造詣、細やかな心情描写、そして最後の驚きの事実。どれも面白い納得の一位作品だったと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ海外文学、約600ページのボリューム。私にとっては結構なチャレンジ読書だったけれど、中盤過ぎたあたりから前のめりで読んだ。
カイアの成長物語であって、ミステリー要素は軸ではないのかあと思っていたら、最後の数ページで犯人が分かり呆然。しつつ、チェイスが本当にクソ野郎すぎて、「カイア、よくやった!」と思ったり思わなかったり。テイトも最後はいい感じに収まったけれど、お前もお前だからなー!?絶対に本筋からずれているけれど、この点だけはどうしても感想として残さずにはいられなかった。
本筋に戻ると、「ああ人情話的に終わるのかー」と思わせておいてからの真犯人判明の流れが凄過ぎた。
自然の営みの中での生殖と、情や欲が混ざる人間の性、そのギャップに苦しむ少女の姿が本当に痛々しい。症状が女性になる過程を動物行動学を踏まえた上で書かれているのもすごい。
差別問題や貧困。文化圏も歴史も時代も違うところに生きる私でもその空気感がヒリヒリと伝わってくる。苦しい場面も多いけれど、読んで良かったと思う。