宇津木健太郎のレビュー一覧
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小説新潮の冒頭で引き込まれ、続きを読みたいと望んで …しろがねの葉 と同じ流れ。リラも最高だったし
文芸誌の存在と、ステキな出会いに感謝
ファンタジーノベル大賞2024受賞時の選評では、後半、話のスケールが小さくなってしまうそうなので改稿に期待
→逆に壮大に膨らんで行ったと感じたのだが、改稿されたっぽい
猫の自分語り→古書店で起こる出来事、少女の成長と葛藤 が互い違いに同時進行する感じに変わったのかも。
作者さんの、文章を書き物語を作り出すことに関する苦悩や葛藤が、古書店店主の身の上(物語を作れなくなった神)に投影されている気がした
猫の飄々とした口調が好き&自分にとっては新鮮だった
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猫には九つの命がある。
英国の古い諺にある言葉のとおり、九つめの命を生きる黒猫が主人公。自称「己」、見た目からクロとも呼ばれる彼は三つめの命の時、自分を主人公にしたかの有名な名作を書いた作家の元で暮らし、その時の思い出を誰にも触れさせない聖域のように大切にしていた。九つめの命を生きる現世で、己がたどり着いたのは「北斗堂」という名の古書店。そこは数匹の猫が居着いており、猫の言葉を理解する北星恵梨香という女性が店主で、猫達からは「魔女」と呼ばれていた。この謎めいた古書店と魔女の正体は?
ほのぼのストーリーを勝手に予想していたのですが、いい意味で裏切られました。人の世も生きにくいが、猫の世も波乱万丈 -
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2024ファンタジーノベル大賞受賞作
猫は転生して9回の猫生を生きるのだそうだ。(100万回という話もあるが)
主人公の黒猫は、1生目は天明の飢饉で人に食われ、2生目嘉永の江戸で馬車に轢かれて死んだ。3生目は文豪の家に居着いて『吾輩は猫である』のモデルとなった。
4生目は高浜虚子の弟子に飼われたが東京大空襲で死に、5生目は高度成長期に悪ガキどもに殺され、6生目ではバブル期の悪徳ブリータの多頭飼育の犠牲になり、7生目は猫島でボスにやられ、8生目はゴミ屋敷の老婆が死んで保健所に収容されたが東日本大震災の津波で死ぬという、まことに波乱万丈の歴史の中で翻弄されたため、人も他の猫も信頼しない。
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猫が主人公の小説は多くありますが、「9つの命」で転生を繰り返す猫、それも夏目漱石に飼われ「吾輩は猫である」のモデルになった猫が主人公というのは面白い設定でした。
それまでの8つの命で悲惨な死を遂げ、人間にも同族にも心を許せなくなった「クロ」。本当の名前「真名(マナ)」や漱石との思い出を明かすことなく頑なな態度を取り続けていたものの、長い月日を経て周りの猫や人への思いやりを持つようになるクロの姿は感動的でもあります。
そして、普通の動物は決して行わない、「物語を紡ぐ」という行為を尊重し慈しむクロの視点は、物語を書くひとにとっても、読書が好きな人にとっても共感できるものではないかと思います。
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ネタバレ夏目漱石に飼われていた猫が、何回か転生した後、現代に生まれ変わり、不思議な古本屋に住む話です。最初はどんな話なのか分からず、読むのに辟易してしまいましたが、話が進んでくると読む手が止まらなかったです。
主人公の猫のツッコミや性格が面白くて、そこが個人的には大好きです。
しかし、導入が退屈だったので、よく一次で落とされなかったな……と思ってしまいました。文章がよかったのでしょうか? あと、最後の円の書いた小説が受賞したのは、そう簡単にいかないだろと、小説を書いたことがある身からすると思いました。
ですが、間違いなく面白い本なので読んでほしいです。後半からは、主人公を応援したくなる心温まる話です。 -
Posted by ブクログ
猫には九つの命がある。
最後の命を迎えた黒猫は導かれるように古書店「北斗堂」に
辿り着く。謎めいた店主と猫たち、訪れる人々。
彼は「真名」への拘りを抱えながら「北斗堂」で生活することに。
その中で知る“魔女”と呼ばれる店主の謎。
更に知る「北斗堂」集う猫たちの記憶と役目。
人を嫌悪し、同族で群れることもせず、偏屈で孤高に
生きようとする黒猫のかたくなさは、凄惨な過去の命の記憶ゆえ。
だが、あの作家との生活を生きた命の記憶は、彼を捉えている。
そんな彼が魔女や住まう猫たち、そしてあの娘との出会いは、
年月と共に緩やかに、彼の心を変え、思いやる心が芽生えてゆく。
そして、あの娘と魔女にあの男の創作 -
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表紙の雰囲気から、ハートウォーミングなお話かと思いきや、全然違います。主人公のクロネコは性格がひねくれてるし、態度も悪い。ドーンと重苦しくてなかなか読み進まないんだけど、しばらくしてはたと気付きました。この子、高校時代の私と似てるかも。当時、ウチはお金がなくて、習い事も塾も行かせてもらえず、進路も限られた選択肢しかなかった。何不自由なく高校生活をエンジョイしている級友たちの輪に入らず、横目で見てひがんでた。きっと態度にも出ていて、嫌なヤツだったに違いない。私の黒歴史。それが、不思議なことに、この本を最後まで読んだら、黒いページがシュレッダーされました。まだ胸の痛みはあるものの、黒い影は雲散霧消
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Posted by ブクログ
ネタバレ出版社に公募原稿として届いたある「記録」。それは、隔絶された村落に深く根付く奇妙な土着宗教「奉森教」の継承者となった親友を訪ねた女性が遺したものだった……。
隔絶された環境、奇妙な土着信仰、独自の慣習に従って生きる人々、旧家に纏わる因習とそれに抗う者、徐々に起こる惨劇、そして怪物……いわゆる“田舎ホラー”に頻出のガジェットはほぼフルラインナップ。ないのは村人による新参者イジメくらい(よしなさいって)。
前半部は淡々、時に心霊系な脚色も入れつつじわじわと正調田舎ホラーの雰囲気を盛り上げていくが、半分を過ぎた辺りで突如弾け、一挙に阿鼻叫喚の地獄絵図な展開へ。そして明かされる惨劇の真犯人と、「奉森