矢島真理のレビュー一覧
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タイトル、イラスト、その分厚さから手に取り、そして最初の数ページ読んだだけで話に引き込まれて買ってしまいました。そんなこともある…
1928年、イギリス人のジュリエット・ブラウニングはベネチアに伯母と旅行をする。そしてレオナルド・ダ・ロッシと出会い恋に落ちる。ではあるがすぐに伯母に仲を引き裂かれ、帰国することになる。10年後、ジュリエットは美術の教師として再びベネチアを訪れ、予期せずレオナルドと再会し、彼が望まぬ結婚をしていることを知る。
1年後、再びジュリエットはベネチアを訪れる。今度は美術学校の生徒として。そして、レオナルドと三度再会することになる…。
時は流れ、2001年キャロライン・グラントは夫のジョシュと別れることになる。親権を行使したジョシュは、息子のテディをニューヨークに休みの間連れてくることを要求する。そしてテディが渡米している間に911が起きてしまう。すぐにはイギリスに帰れなくなるテディ。また、時を同じて今度は大伯母のレティが亡くなってしまう。「アンジェロ、探して、ベネチア」といういまわの言葉と三本の鍵を残したレティ。失意の底に沈むキャロライン。テディにも会えぬ彼女は、祖母のアドバイスに従ってベネチアを訪れることになる…。そして、60年近く前の大伯母レティことジュリエットの軌跡を辿ることになる…。
半世紀以上の時を挟み、ジュリエットの悲しい運命を知るキャロライン。かつてベネチアで何があったのか、遺言の意味はなんであったのか、という謎解きミステリー。
歴史小説としては少し文体は軽いのですが、とても引き込まれていくテンポの良さがあります。
とてもロマンチックでそして悲しい歴史に翻弄されたジュリエットの運命を知るキャロライン。
とても長文ですが(700ページ!)、サクサク読めてしまうのでみなさんに読んで欲しい作品です。
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Posted by ブクログ
ネタバレ更年期を迎え、様々な症状に苦しんでいるアルマ。
夫クライルの親の介護のため、数年前にシカゴからネブラスカ州の田舎町ガンスラムに移り住んできた。
いわゆるシティガールのアルマ、越してきた当初はこのスモールコミュニティに馴染もうと努力するが、元来の歯に衣着せぬ物言いや、生産性のない物事はすぱっと断ずる性格から、どちらかというと次第に周囲から浮く存在に。
クライルとアルマの間には子どもはいないが、もうほとんど彼らの息子同然という関係を築いているのが、クライルの営む農場で雇っている知的障がいを抱えるハル。
ハルの両親は毒親で、父親は服役後離婚し行方知れず、母親は2歳のとき、ハルがビーチで水難事故に合う傍らで酒に酔いうかれてた。
ハルはその時の事故の影響で、外見は一般的な基準からするとハンサンムな顔立ち、180cmを越える長身の28歳だが、12歳の少年のような言動をとってしまう。
アルマはあるとき、ハルの生みの母親から引き剥がすようにハルを引き取り、ハルが一人立ちできるよう、愛情を注ぎ何かと面倒を見ている。
物語はある週末の晩、彼らの暮らす田舎町に住む女子高生ペギーが失踪する事件から始まる。
当初は家出と思われていたが、時間が経つに連れ事件性の臭いを誰もが感じ始める。
事件の夜、ハルは友人らと鹿狩りに出ていた。
週明けに農場にやってきたハルのトラックの荷台は血まみれで、前部には何かにぶつかったようなへこみが。
ハルは鹿を仕留め、処理しようと乗せてきたが、上手く出来ずに捨てたと言う。
クライルとアルマはハルの話を聞き、彼は何かを隠していると思う。そもそも彼に鹿を仕留めることなんてできるのか!?。。。
ハルが少女失踪の事件に関係しているのかどうなのかが牽引するサスペンス。
その裏で繰り広げられる、クライルとアルマ夫婦のやりとりが印象的。
冷静で、温厚、それでいて芯がある、善良さの象徴にも見えてくるクライル(実は後ろめたいこともあるのだが)。
かつてはそれに惹かれると感じていたアルマの尖った個性が次第に痛い程の鋭さを見せてくる。
とにかくアルマの毒がすごすぎて、おいおい何もそこまで言う?って思ってしまう。
それでも、アルマはちょっとした瞬間に言い過ぎたことを後悔したり、クライルがかつてを懐かしむような場面に根底の絆を感じもどかしい。
失踪事件の真相究明もさることながら、この辺の今やマンネリ化した夫婦関係の機微の匙加減が絶妙で胸が苦しくなるのだ。
読書をして、正しさのヒントとなるような生き様を見て感動したり、考えを改めさせられたりすると、自分も真っ当に生きようと志すのだが、ついどうしてもこう出来ればと思うのと違う行動、言動をしてしまう。
ヒステリックな妻と、ともするとめそめそしているようにも映る覇気の薄い夫。
わかっていても直せない噛み合わせの悪くなった歯車、彼らにもそんなジレンマを見て、リアリティを感じる。
さらに事件から試されているかのような、ハルを思う心。
ハルを心配し、助けようとする気持ちは間違いないのだが、果たして本当にやっていないと信じられているのだろうか。
知的障がいがあることに、どこか色眼鏡で見てはいないだろうか。
そうは言ってもの部分もあるし、この辺の尊厳を損なわない接し方というのも答えがない問題でもやもやした。
結末はほろ苦くもあるが爽やかさもあり、良き幕引きだった。 -
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前作のラストから物語が始まる。
今回も意表をつく展開の連続。
冒頭からの、まるで断片のような逃亡シーンから煙に巻かれる。
描写は実に細かいのだが、何が起きてるのが理解できないように話が進められ。それが突然全景が見えたかと思うと、一瞬で真相が変わって行く。
実に見事に話が練られていて、事件を追う刑事と公安捜査官の二人組と共に、真相を求めて事件の迷宮を巡ることになり、ラストまで濃厚なサスペンスを堪能できる。
早くも次の作品が読みたくなる。
実に映像化向けの作品で、映画ではなく6話くらいのTVシリーズにしてほしい。
しかし、北欧物は登場人物の名前が憶えられない…
(丁寧で工夫の跡がうかがわれる登場人物一覧には本当に感謝!) -
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妹が自身の誕生日に死んだ。
警察は自殺と断定するが、姉のリーナはあのような方法で妹が自殺するはずがないと考え、事件を調べ始める。
そこで判明する怪しい事実と浮上する怪しい人物たち。
目まぐるしく変化する状況に、慌ただしい気持ちで読み進める。割と面白かった。
黒人文化も垣間見えて興味深い。やっぱり現代でもアフリカ系アメリカ人の生活には、私には考えられないような制限があるのだなとしんどくもなった(リーナの感情も考えれば余計に)。
ただ、これはミステリなんだろうけど、ちゃんとした推理ものと思って読むと肩透かしを食らうかもしれない。展開が行き当たりばったりで、あまり推理要素はないなと思ったので。
リーナを中心とした家族の物語として面白いです。
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ネタバレスウェーデンの作家、アルネ・ダールのシリーズ作品。「時計仕掛けの歪んだ罠」の続編。
雪原に建つ精神病棟から逃げ出した患者。患者の名は、サム・ベリエルで…
前作もだが、今作も何も紹介できない作品。というのも、何を説明しても一作目の展開に触れてしまうので、書評家の方とか大変だと思う。
前作ほどの衝撃はなかったが、今作もとんでもない展開に。二転三転する展開がこのシリーズの醍醐味だと思うが、目まぐるしい展開に全体像が薄まってしまうため、良し悪しだと思う。個人的には楽しめたが…
非常に残念なのは、めちゃくちゃ続く終わり方なのに、続編が出ず、新シリーズの出版が始まったこと。一作目の衝撃的なラストのことは何となく解決したが、今作のラストの展開のまま放置されるのは本当に酷い。3作目が面白くなかったからなのかもしれないが…一応、今作の事件は解決しているので、問題ないと言えば問題ないが…何とか出版してくれないかなぁ。 -
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爆弾事件を国家作戦局の捜査チームが追う! 容疑者は元警部でプレッパー、エコテロリストか… #円環
■あらすじ
スウェーデンで爆破事件が発生、被害者は気温変動や環境破壊に関係する仕事に従事していた。国家作戦局(NOD)は主任警部エヴァ・ニーマンをリーダーとする捜査チームNovaを立ち上げ、犯人を追うことになった。
エヴァの元に犯行声明の手紙が届くのだが、見覚えがある言い回しを見つけた。それは、かつてNODの元警部ルーカス・フリセルがよく使う言い回しだったのだ…
■きっと読みたくなるレビュー
エコテロリストって、日本ではあまり馴染みがないですよね。世界一環境への意識がたかいスウェーデンならではですね。
私も最近は環境のことを考え、必ずエコバックを持ち歩くようにしてるんですよ、えらいでしょ。でも近くのコンビニに行くのですら自動車を使うんですけどね。なにがエコなのか、よくわかりません。
さて本作は爆弾魔を特殊捜査チームが追うというありそうなストーリー。しかしなんと容疑者フリセルは元NODの刑事なんです。しかも現チームリーダーのエヴァの元上司にあたるという。果たしてフリセルは犯人なのか…
序盤がいきなり読みどころなんですよね~。どうなるどうなるって、いきなりサスペンススリラーモード。チームNovaの面々が森の中に侵入し、フリセルの住処にアタックするのですが… もう目が離せない! 中盤以降どんな展開になっていくかは、もう言えません。ぜひ実際の読んでみてください。
本作は場面や会話が次々と切りかわる三人称視点で進行します。スピーディーなエンタメを描くのがお上手でまるで海外の刑事ドラマを観ているようなんすよね。読んでると止まらなくなっちゃう。
そしてなんといってもチームNovaメンバーがイイ!
女性ながらも指導力があるリーダーのエヴァ、その同僚であり親友のソーニャ。家族の不幸から価値観の変わったアンカン、移民で努力家のサルワニ、家族を愛するアントン。生き様や価値観や少しずつ背後から描かれていて、どんな人生を生きてきたか見えてくるんだよね。何よりチームワークがいいんですよ、あらためて仕事仲間は仲良しが一番だと感じましたね。
物語も中盤以降に入ると、事件の背景や「円環」とは何なのか?という謎に迫ってくる。最初の段階では、なるほどなーそういうことか~と単純に思っていました。しかし事件の深層に近づいてくると、更なる意味を知ることになり… 胸が詰まってしまいましたね。
終盤はもう超ドタバタのサスペンスアクションですよ、どうなるかワクワクドキドキがとまりませんでした。ラストはもうね… 気になるから、やめてください。でも次の作品に期待しちゃいます!
■ぜっさん推しポイント
プレッパーって知ってました? 災害や緊急事態に備え、過剰に自給自足の生活を志向する人々。アメリカには何百万人もいるらしく、背景には戦争、疫病、経済崩壊などのリスクを感じてるからとのこと。
私なんて緊急性もないのに、いつもスマホでニュースやSNSなどあさってばかっりですよ。すぐ情報の渦に溺れるくせに、こういった大切な事実は何も知らない。もちろん過剰すぎるのも良くないのですが、あまりに平和ボケなのも良くないですね。海外の作品はいつも学ぶことが多いです、ありがとうございました。 -
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ネタバレ2025年の16冊目は、アルネ・ダールの「円環」です。アルネ・ダールの作品を読むのは、「狩られる者たち」以来でしょうか。
環境破壊に関係する企業の幹部が、爆弾により死亡するという事件が続けて起きます。事件は、環境テロリストによる犯行と思われます。いかにもスウェーデンらしさを感じてしまいます。
事件の犯行声明と予告が、国家作戦局のエヴァ・ニーマン主任警部宛で届きます。何故、彼女の元に届いたのかが鍵となる理由ですが、彼女のチーム“NOVA”が捜査に当たる事になります。チームの面々がそれぞれ個性的で良い味を出しています。特にシャビール・サルワニがカッコ良い。
そして、もう1人の主人公というべき、エヴァのかつての上司ルーカス・フリセルの存在。彼の存在が有るからこそクライマックスで2方向に分かれてのよりスリリングな展開と緊張感溢れるシーンに繋がっていると思います。作者アルネ・ダールの手腕を感じます。
ぶっ飛び満載のエピローグも秀逸です。
1つ不満を挙げるとするなら、事件の真相が想像付き易い事ではないですかね。
☆4.7 -
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スウェーデン・ウプサラ市郊外の高速道路を走行中のBMWが、突然暴走し菜の花畑で炎上した。死亡したのは、運転中の大手製鉄会社幹部。一週間後、石油業界のキャンペーンを手がけていた広告会社幹部が第2の爆破事件で命を落とす。被害者はどちらも気温変動や環境破壊に関係していた。
容疑者に挙げられたのは、15年前に先端技術の活用を拒否したがためにある誘拐事件の解決に失敗して辞職し、森で隠遁生活を送る元警部ルーカス・フリセル。当時の彼の部下で今は国家作戦局(NOD)の主任警部エヴァ・ニーマン宛てに、彼からと思われる犯行予告の手紙が届いていたのだ。
エヴァは、立ち上げられた特捜班Novaの曲者たちを率いて事件の捜査にあたり、第3の事件を警戒しながらフリセルを追うが――。
ページターナーぶりは健在であった。過去のシリーズの翻訳がいずれも中断しているのが、残念なところ。新作ももちろん読みたいが、ぜひ過去作の紹介をお願いしたい。 -
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殺人事件で息子を失ったアイザックの前に突然現れた16歳のエヴァンジェリン。家族も家もない少女との共同生活が始まる。息子が殺害された影響が色んなところに出ていて、エヴァンジェリンに対する力になりたいという気持ちと、時折感じる苛立ちにアイザックの感情の揺れが見える。アイザックが自分の心の内を深くのぞいていくほどに見えてくる自分と息子へと思いや、エヴァンジェリンとのこれから。それらに視点が絞られていくような終盤がいい。それとアイザックの飼い犬のルーファスが心のよりどころのような存在でとにかくかわいい。著者デビュー作だけど今後も読みたいと思える面白さ。
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ネタバレアメリカの作家、エリン・フラナガンのデビュー作。
ネブラスカ州ガンスラムに暮らす女子高生ペギーが行方不明になる。家出か事件か。一方、障害を持つ男性、ハルを我が子のように思う中年夫婦は、ハルが運転するトラックに血の跡と凹みを見つける。
所謂、スモールタウンもの。非常に息苦しさを感じる作品。
視点は三つで、中年夫婦のアルマとクライフ、ペギーの弟のマイロ。特にアルマの視点が多いのだが、このアルマの性格が悪すぎて受け付けない人がいるかも。我が子のように思うハルに対する差別に颯爽と立ち向かう母、なんだろうけどあんまりにも意地悪おばさんすぎてちょっと。。。マイロの成長譚として見ると非常に良いのだが。。。
事件そのものというより、スモールタウンの閉塞感を味わう作品。ミステリ要素は弱め。 -
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小さな街で発生した少女の失踪事件。人間関係を静かに丁寧に重く書き綴ったミステリー #鹿狩りの季節
■あらすじ
アメリカの田舎町、鹿狩りの季節に女子高校生の失踪事件が起きた。当初家族たちはすぐに帰ってくるだろうと高を括っていたが、いつもいがみ合ってた弟が心配し始める。
一方近くに住む家畜農業を行っている夫婦は、発達障害のある青年と同居をしていた。夫婦は彼のトラックに鹿狩りの血が付いているのを見つけ、不審に思いながらも掃除をするのだった。
■きっと読みたくなるレビュー
80年代アメリカの田舎町。近所の人たちはみんな知り合いで、気心も、誰が誰と付き合っているかも、何もかも知れ渡っている。
そんな小さな小さな村で発生してしまった失踪事件を背景に、いびつで不快なやり取りが繰り広げられる人間模様。
まったく派手な展開はないですが、読めば読むほどじわっじわっ…と胸が苦しくなっていく作品です。
本書の登場人物たちが渋すぎる。
超推しなのがコスタガン夫妻。特に妻アルマの胸のうちは、読めば読むほど苦しい思いがこみ上げる。どんな覚悟をもって田舎町である夫の故郷についてきたか、そしてその後の夫婦関係、青年とその母への想い…
しみじみと書かれると、そんじょそこらのイヤミスなんかよりも強烈です。
また失踪した女子高生の弟、マイロがいじらしい。
家族や仲間たちからいつも子ども扱いされ、小馬鹿にされている。しかし彼の静かなる叫びや葛藤が丁寧に書かれ、こちらも胸が締め付けられるんです。
ただ自身で決めた彼の行動は、きっと少年から大人に成長していく第一歩目に違いありません。
そして事件の真相や背景も、本書のテーマをまるっと包み込むようにエグイです。
最後の最後まで地味で寒々しい内容ではありますが、愛や勇気も力強く感じることができる作品でした。
■絶賛推しポイント
津山事件をご存じでしょうか。日本の戦前に起こった凄惨な事件です。
犯人の凶行は許されるものではありませんが、家族や人間関係、当時の村社会を背景に発生してしまった悲しい事件です。
どこの場所でも、いつの時代でも、恵まれない身体や環境に生を受けてしまう人たちは存在します。さらにそこが狭い世界で、マジョリティが正当化されてしまったら、弱い者たちはどうなってしまうのか…
彼らを愛して支え続けることは、きれいごとはいくらでも言えるがとても難しい。何故なら支える側もひとりの人間でしかなく、強く正しく豊かであるとは限らないからです。
ただ本書のラストシーンに登場する二人を見ていると、少しだけ救われる気がしたのです。