小林祐児のレビュー一覧
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職場での会話がすれ違うのは、「コミュ力」や「相性」の問題ではなく、コモンセンス(共有知識)の不足によるものだと本書は指摘しています。
本書はコミュニケーションのモードを5つ(※小包・円卓・跳躍・音楽・創発)に分類し、それぞれの特徴や問題点を整理していますが、組織の「対話」にまつわる問題をよく捉えていると感じました。特に「空っぽ問題」(=語るテーマを持たない人の存在を想定していない、という対話推進側の思い込み)まで目が行き届いている点が印象的でした。
コモンセンスとは、「私が知っていることを、相手も知っている」という、認知されたコンセンサスのことです。本書は、これを組織の対話の場にうまく組み込むアプローチを推奨しています。
基本方針は次の4つです。
①目線誘導:情報を「狭いメディア」(1on1など閉じた場)ではなく、「広いメディア」(全体会議や社内発信など)で伝え、「みんなも知っている」という状態を作ること
②個人協議化を防ぐ:対話の成否を上司個人のスキルや努力に依存させず、部下側にも同じ知識・フレームを提供し、双方が同じ土俵に立てるようにすること
③アンカリング:「この情報は既に共有済みです」と明示的に言及し、特定の知識を「共通の前提」として位置づけること
④アップデート:組織の内輪化・固定化を防ぐため、「外」「内なる外」「外なる内」といった外部視点を定期的に取り込み、コモンセンスを更新し続けること
この4つの基本方針を押さえておけば、1on1や評価面談、会議、プレゼンなど、さまざまな場面に応用でき、目の前の相手を「話が通じない無能」と切り捨てる脳内ブロックを遅延させ、足りない前提知識のパズルピースを一つずつ揃えていくという冷静なアプローチが可能になります。「対話するぞ!」と意気込むとかえってプレッシャーになり失敗しますが、対話を目的化せず、他の業務プロセスという「主菜」の隙間に、さりげなく対話を紛れ込ませる「対話の副菜化」から始めてみる、くらいの気軽さと「うまく話すのではなく、うまく在る(共にいる)」という構えこそが、今の職場の対話疲れを解決し、対話の持つ効能を最大化させてくれるのでしょう。 -
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これまでの社会人の経験を振り返るための手がかりとして、本書を再読した。以下は気づいた点のメモ。
本書は、日本社会における転職を、感情的判断や偶発的出来事としてではなく、データと行動科学に基づいた体系的な現象として捉え直す試みである。その出発点として、著者らは日本の転職観に潜む「隠れた前提」に着目する。すなわち、本人が自分の志向や能力を正確に理解していること、その自己像が短期間では変化しないこと、企業や仕事の実態を求職者が十分に理解していること、企業と仕事が安定的に維持されること、そして両者が変化せずに相互に適合する機会を得られるという前提である(p.40)。しかし現実には、人も組織も常に変化し、予測困難な状況を生きている。こうした前提を無批判に受け入れると、転職の意思決定やキャリア形成を誤って理解する危険がある。この前提を解体するところから、本書の議論は始まる。
第1章では、人が転職意向を持つまでの心理過程が多角的に整理される。多くの場合、人は日常的な職務不満や組織の非合理性に接しても、即座に転職を決意するわけではない。不満の存在そのものよりも重要なのは、不満が「将来においても改善されない」と個人が予測するかどうかである。著者らは、職場の課題が時間とともに改善される見込みがないと判断したとき、つまり未来への期待がしぼむ時点で転職意向が強まるという研究結果を示す(p.62)。この状態はしばしば学習性無力感として説明される。努力しても状況が変わらない経験を蓄積することで、改善を試みること自体が無意味だと学習してしまう現象である(p.58)。
さらに、意思決定に過度の時間がかかり、会議が冗長で、組織の人間関係が硬直している場合、職場全体の「重さ」が心理的負担を増大させる(p.67)。形式的な手続きを重視しすぎる場や、変革に抵抗する文化が強い環境では、この重さが増幅され、働く人の疲弊感を引き起こす。そこに心身の不調、同僚の退職、転職経験者からの誘いといった「最後のダメ押し」が加わることで、離職意向は最終的な決断へと収斂していく(p.72)。このように、転職は突発的な選択ではなく、複数の心理的要因が累積するプロセスとして理解されるべきである。
この心理過程を定式化したものが「D×E>R」である(p.49)。ここでDは現状への不満(Dissatisfaction)、Eは転職力(Employability:転職市場で行動し、選択肢を探索し、職務経験を可視化し、応募行動を遂行できる能力の総体)、Rは転職への抵抗感(Resistance:経済的不安、組織への愛着、生活変化への恐れ、家族要因など)を意味する。転職が現実的選択肢として浮上するのは、不満と転職遂行能力の掛け合わせが、転職に伴う抵抗感を上回った瞬間である。この式が示すのは、転職意向と行動が「感情」と「行動可能性」の相互作用によって決定されるということである。転職力が高ければ、不満が比較的軽度であっても転職が視野に入る。一方、転職力が低ければ、不満が激しくても行動へ移れない。この点は、転職を行動科学的に捉える上で重要な視座である。
第2章では、転職活動そのものが「自己へのリフレクション(内省)の連続」であることが語られる(p.107)。転職活動では、過去の経験を棚卸しし、どのような場面でどのような能力を発揮したのかを明確化する作業が不可欠となる。これは単に経歴を列挙する作業ではなく、経験の意味づけを通じて「自分がどのように価値を提供してきたか」を再発見する過程である。この内省を積み重ねることで、個人の職業的アイデンティティは更新され、環境に応じて柔軟に変容していく。ここで重要なのは、エンプロイアビリティが固定的属性ではなく「行動として発揮される能力」であるという視点である。求人情報の収集、応募書類の改善、面接に向けた準備、ネットワークとの接触など、転職活動のあらゆる局面で、本人の学習と行動が問われる。
第3章は、転職後の幸福感を規定する要因に焦点を当てる。著者らの分析によれば、転職動機が前向きであるほど、転職後の幸福感が高まる。特に、社会的意義のある仕事をしたいという志向(ソーシャル)、スキル向上の志向(チャレンジ)、役職や職責向上の志向(キャリア)は、幸福感につながる三つの中心的要素である(p.113)。これらは、単なる逃避ではなく未来志向の接近動機であり、転職を通じて自己の成長軌道を設計することに関わる。逆に、現状から逃れるためだけの転職や、感情的反応に基づく転職は、結果を伴いにくい。
第4章では、転職が越境学習としてどのような意味を持つかが論じられる。越境とは、異なる制度世界に移動することで、これまで自明視していた行動様式や価値観を相対化し、自己の働き方を再構築する学習プロセスである。異なる組織文化に身を置くことで、新たな職務遂行規範、評価体系、人問関係の流儀などに接触し、自身の仕事観が刷新される。転職後に柔軟に働き方を調整できる者は、そもそも日頃から学習時間を確保し、経験を熟考している者であるというデータが示される。つまり、学習習慣の有無が越境後の適応を大きく左右し、キャリアの持続的発達に影響する。
第6章では、転職後の適応を組織側の視点から分析する。転職者の活躍は、個人の能力だけではなく、組織の構造や文化に大きく規定される。内部昇進を重視する組織では、暗黙知の共有が中心的役割を果たすため、外部からの転職者が職務を理解するまでに時間がかかる傾向がある。これに対し、専門性が中心となる組織では、外部採用が知識更新の手段として扱われることが多い。いずれの場合にも重要なのは、役割の明確化、初期段階での期待調整、情報提供、心理的安全性の確保という。
また、転職者自身による働きかけの重要性も指摘される。著者らは、転職後の適応において「自分も変わりうる存在であり、組織も変わりうる/変えられる存在である」という前提を採ることが有効であると述べる(p.240)。この前提に立つことで、転職者は受動的に組織に適応するのではなく、能動的に環境と相互作用しながら自分の働き方を整えていくことができる。フィードバックを求める行動(フィードバック・シーキング)や、人脈と情報ネットワークを構築する行動(ネットワーク・シーキング)は、越境後の不確実性を軽減し、職務遂行能力を迅速に高める効果を持つ。また、職種を問わず重要になるソーシャルスキルとして、関係形成、関係維持、そして適切に主張する力が挙げられる(p.249)。これらは転職後の職場適応に不可欠であり、組織の新旧メンバーとの橋渡しにも関与する。
第7章は、特にミドル層のキャリア発達を念頭に置き、転職後の行動変容を考察する。多くのミドル層は豊富な経験を持つが、越境後の環境では過去の成功パターンが機能しない場合も少なくない。このとき重要になるのが、経験の意味づけ、まず行動する姿勢、学びを実践に活かす態度、新しい居場所を自ら形成する能力、そして異なる価値観を持つ年下世代とうまく協働する柔軟性である。これらの行動は、単に転職後の適応に有効であるだけでなく、現職にとどまる場合でもキャリア停滞を回避し、環境変化への抵抗を弱める働きを持つ。 -
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まるで自社のことを言われてるかと思うかのような著書だった。特に管理職と社員とに意識や行動のギャップがある組織は要注意かもしれない。弊社でも本社組織は社員がバリバリ回したりするので該当しない部分もあるが、地域に行くと途端に本に書いてある現象が起こっている。
まだ管理職じゃないが、フォロワーシップアプローチやネットワークアプローチは社員でも積極的に広げることもできるし、負担を下げれる要素に思える。
というより、柔軟性や余白は一人一人の自発性わ成長に繋がりやすいというのがなんとなく感じた。年下部下ができたので、まずは練習として取り組もうと思う。 -
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ネタバレよくある持論や自慢話満載の新書ではなく、きちんと論理的かつ構成もきちんと書かれていたので、筆者への信頼感がまず、大きかった。
自分は管理職を目指してギアをいれるかどうかという年齢。管理職になることで幸せな自分が想像つかないことで、キャリアを悩んでしまいこの本を手に取ることに。
結論、自分でこのやばい管理職のあり方を変えていこうと思った。
いくつか心に残ったポイントを記載。
①
「逆説的に言えば、「罰ゲーム化」してもまだ管理職のなり手が現れてきているのは、日本社会に残っているこうした大きなジェンダー・ギャップのおかげだ、という言い方もできます。
つまり、性別役割分業意識を背景に、仕事を通じて女性にモテたり、妻子を経済的に支えようとする、マッチョで男性的な規範があることによって、たとえ管理職が「罰ゲーム化」しても、 「大変だが、やってみよう」と覚悟を決めていく男性が現れてくれるからです。」
これが自分が踏ん切りのつかない部分なのかもと感じた。生活に金銭的に不足している部分があるほど人は、仕事を頑張ろうという気になるのかもと感じた
②部下が自発的に動くには、信頼する・認めるが1番。
よく褒める上司はいるけど、これは優しかったたり人間ができているわけではなくマネジメントであり、自分のためになる。これはかなり良い情報。
自分の負荷を下げるには褒めるのが一番。
③
日本の管理職レースは手を挙げて入るものではなく、勝手にエントリーされているオプトアウト方式で、管理職を降ろされるときは強制的に役職定年などで落とされる不思議なシステム。
自分も管理職レースに参加してる気分だった、たしかに。
⑤管理職が罰ゲーム化していくなかで、どう対処していくかも提示していた点には希望が持てた。
筆者が提示してるのは
1.フォローワーシップアプローチ(非管理者層にも人事マネジメントのスキルを身に着けさせる)、
2.ワークシェアリングアプローチ(管理者層にも広げた働き方改革)
3.ネットワークアプローチ(縦、横、社外のネットワーク強化による、やりやすい/頼れる人間関係の構築)
4.キャリアアプローチ(管理職になりたい人を早期に選抜して強化する、スペシャリストの道も用意する)
123は今の職場の枠内のなかでもできる見込みがあるが、4は結局オプトアウトの延長でしかないと思った。管理職になるレースの時期が早まっただけで、立候補して挑戦する環境にはないから、選ばれなかった人々は急速にやる気をなくすと思う。
管理職への忌避感って、自分が選んでいないのにレースに乗せられる、知らない所でレースの決着がついている(開かれてもいなく、評価基準も相当に主観的)というところだと思う。
明確に昇進の意思を社員に問い、意思のあるものに、昇格試験を行うということが、大事なのではないかと思う。
働いている限り文句も不満も止まらないけれど、
今のやり方おかしくない?と思える自分が管理職になることは自分の次の世代のためにも良いんじゃないかなと思った。 -
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管理職への昇進を望まない若手が多いと言われる中、その現状を様々なデータで分析し、その原因と解決策を説いた話題の一冊。
本書の冒頭で、マネジャー向けの本は数あれど、管理職の「負荷」問題について、ここまで多角的に議論した本は、この国には存在しない、と明言しているように、内容を特化させた分、刺さる人には刺さる内容だった印象です。
第1章「理解編」と第2章「解析編」の途中くらいまでは、データをもとに、管理職が何に困っているのかといった内容ですので、よくあるマネジメント本に近いような感覚で読み進めていましたが、管理職のn負担が増大する構造を、人事の対処、現場マネジメント、管理職人材不足の3つが無限ループを起こしているのがバブル後の日本企業だという指摘は面白いと思いました。
その他、日本の企業と欧米の企業が同じピラミッド構造の組織を形成しながら、管理職が「連結ピン」として機能している欧米型と「入れ子構造」になっている日本型との対比も理解しやすく解説されています。
これまでの雇用環境や仕事の進め方が蓄積されたことにより、いろいろな問題が表出しているため、問題の根深さを感じます。著者は、いろいろな解決策を提言しているわけですが、その大原則として管理職自身の「アクションの過剰」を防ぐことを挙げています。
これも決して簡単なことではありませんが、少しでも「罰ゲーム」を攻略できるよう、そもそも「罰ゲーム」にならないように努力していきたいと思います。
<目次>
第1章 “理解編”管理職の「罰ゲーム化」とは何か
第2章 “解析編”管理職の何がそれほど大変なのか
第3章 “構造編”ここが変だよ、ニッポンの管理職
第4章 “修正編”「罰ゲーム化」の修正法
第5章 “攻略編”「罰ゲーム」をどう生き残るか
終章 結局、管理職になるのは、「得」なのか「損」なのか -
Posted by ブクログ
ビジネスパーソンの価値観は多様化しており、「管理職になんてなりたくない」というのも今の時代では普通の意見の一つに思われます。
こうした意見の背景にある「管理職の『罰ゲーム化』」という根深い問題について、その概観から具体的データ、構造をわかりやすく紐解き、最後にはどのように修正できるのか解説されています。
示されるアプローチのうち、特にフォロワーシップ・アプローチやワークシェアリング・アプローチには共感する部分も多く、効果的に感じます。
うまく仕事を任せていくために自身の「仕事のものさし」を柔らかくすることの重要性にも共感。
管理職以上の方は強くおすすめしたい一冊です。 -
Posted by ブクログ
終章を読んで泣いてしまった。
日本企業の特異な昇進ルールや、ルールに適応できないまま歪な形で運用されてきた成果主義と目標管理評価制度、それにより疲弊する管理職層とロールモデルを見失ってエンゲージメントを低下させる若手の構造について、多くの文献を読者向けにわかりやすく噛み砕き、再構成しながら説明されている。
それだけでも素晴らしいのだけど、終章にかかれた管理職の意義(と私は感じたのですが)に胸が震えました。
与えられる側から与える側になり、後進を育て、託すという気持ち、この気持ちを持てるかどうかが管理職にとって1番大事な能力なのかもしれませんね。
著者は経営畑の人にしては随分とエモーショナルな文章を書くなと思って経歴を拝見したら、社会学の修士でいらっしゃる。なるほどね! -
Posted by ブクログ
・管理職が多忙になっている現状に対して、会社側は筋トレ発想で研修を与えスキルアップを促している
・部下にはビクビク系、いうこと聞かない系、先回り系の3つがあり、それぞれのタイプに対してマネジメントをした時にメリットデメリットがある。とくにビクビク系、いうこと聞かない系にマイクロマネジメントをするとかえって仕事が増える悪循環に陥る
・日本の管理職は勝手に参加させられて勝手に降ろされる雑用係である(任用のプロセスの観点で)
・対策として①フォロワーシップアプローチ(メンバーも管理職の立場や必要な素養を知る)②ワークシェアリングアプローチ(権限移譲)③ネットワークアプローチ(社内外で話せる関係を作る)④キャリアアプローチ(昇任プロセスの再構築)がある
・個人的には①が響いた
・目指すべきは積極的に「やらない」上司
・こうあるべき!のレンジを広げて(余白を設けて)部下に任せていく
・まず60点で見せてもらってアドバイスして80-100点を目指させるとかが現実的?
・こうあるべき!のレンジを広げることは管理職が自分自身を責めないためにも重要な作業 -
Posted by ブクログ
国際的にも「学ばない日本人」。その原因は企業において必要なスキルの「鋳型」を作り、工場のように人材をその鋳型にはめ込み、人手不足のポストに充てようという発想が限界に達しているからだという。個人においても受動態でもなく、能動態でもない「中動態」で愚痴を言いながらも、そこそこ真面目に、そこそこ楽しく、平等主義の中で生きている個と組織のなれ合いの関係が、今の日本で働く人の環境を形作っている。非常に鋭い洞察だと思う。
<変化抑制意識>を防止し、<変化適応力>という心理的資本を蓄積するための内部(社内)労働市場の流動性の質を高めるような”仕組み”を企業は考えないと、「学ばなさ」と「変わらなさ」という根本的な問題は解決できないという筆者の主張はそのとおりだと思った。 -
Posted by ブクログ
自分も何度か転職を経験して、いまもまた転職したい気になっている。いつも思うのが、現状逃避のような気持ちが根っこにあるんじゃないかなというところなんだけど、とにかくこの本は知識の面でもマインドの面でも学ぶところが多かった。
海外のキャリアアップ型の転職に比べ、日本の転職は条件が悪くなることが多い。それでも転職するのは、もとの職場の人間関係や働き方への不満からくる、いってみればネガティブ型の転職ということになる。
そして転職で「天職」にめぐり合うことを期待してしまうけれど、それもなかなか難しい。なぜなら――
「世の中に『完全転職』はありえない」というものです。
オリエンテーションでも述べたとおり、転職において世の中に存在しているすべての企業を選択肢として目の前に並べ、条件に完全に合致する企業を探し出すこと、マッチングを行なうことは不可能です。人の認識能力には限界があり、転職先の候補として選んだ企業の内部を隅々まで知ることもできません。転職というのは「限定合理性(限られた選択肢のなか、限られた判断資源のもとで物事を決めねばならないこと)」のもとで行なわれるものなのです。
さらに転職とは、いったん入る企業を決めてしまえば、後戻りができない不可逆的なプロセスであり、自らに一〇〇%合う転職先を合理的に選択するという「完全転職」は、そもそも不可能である、ということを、私たちは知る必要があります。(p.165)
ということで、自己認識と外部の印象を一致させるべくセルフアウェアネスを重視し、転職活動がゴールでなく一つの過程だという意識で、転職後をも見据えた学び直しの姿勢をもっていることなどが大事らしい。
幸せを求めて、現実を見据えて今度の転職活動に臨むようにしよう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレリスキリングのブームは(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流(2)人的資本開示の潮流から起きた。しかし、そのリスキリングの対応は表層的と言わざろう得ない。それはリスキリングを工場モデルで考えているからだ。(個人へスキルを注入する。)欠点としては、1)「個」への過度のフォーカス、2)学びの偏在性(学ぶ人しか学ばない)、3)スキルの明確化がスタートに置かれている(例えば、次はどのプログラミング言語が市場で求められるか?は誰も予想できない)、4)スキルを「獲得した」らすぐに「発揮出来る」と短絡的に考えている。
企業が従業員に対して行う研修が、果たして企業の業績にプラスに寄与するのか?
=>根本的な問い
人的資本への投資は「行動成果を通じて」企業業績を上げている。
リスキリングのブームは、「自律的なキャリア形成」の流れと結びついている。
「人的資本」の議論とも結びついている。
「人的資本」以外に、「文化資本」、「感情資本」が考えられている。
日本のリスキリングの成否のカギを握るのは、「心的資本」と「社会関係資本」という2つの資本概念。
「個人のやる気」頼みのリスキリングを止め、リスキリングのための動機づけを「仕組み化」すること。
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スキルの明確化とは、鋳型の正確性を求めようとすること。
x軸「スキルの広さ」 y軸「特定領域の専門性の高さ」 z軸「うまくやるスキル」(一般的な仕事のスキル)
z軸は測る物差しを作れない
日本企業はz軸を重視してきた。
政府・行政が支援すべきリスキリング領域は、非正規雇用者・有期雇用者のリスキリング。
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「世界で最も学ばない日本人」
学ばない理由は「なんとなく」。理由なぞない。
「学ばせたくない企業」と「学びたくない」国民の共犯関係。
先進国では企業横断で、「賃金相場」「労働組合」「職業資格」「教育制度」「キャリア観」が成立している。
中高年の不活性感の他人事感
実際に日本の現場で目にするのは、キャリアの主導権を企業に握られつつも「なんだかんだ、そこそこ楽しく」働いている多くの会社員の姿。
日本のキャリアは中動態的。
日本の昇進構造。「オプトアウト」方式の平等主義的・競争主義的な昇進構造。
女性が段々脱落していく。
変化抑制意識とは、組織の中で業務上の変化を起こすことを「負荷=コスト」として捉えてしまい、自発的な変化を起こすことを避けようとする意識のこと。
変化抑制意識とは「変化コスト予期」と同義。
職場の秩序を崩してしまうという意味で、イノベーションははた迷惑なもの。
社会心理学者F・H・オルポートが提唱した「多元的無知」という概念。
集団の多くの成員が、自分自身は集団規範を受け入れていないにも関わらず、他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状態。
社会学のメディア研究 「沈黙の螺旋」
日本企業の横のつながり-メンバー間の職務横断的な協働関係を支えてきた「助け合い文化」や「業務の相互依存性」-が「個の新しいアイデア」や「変化を生む意思」を削いでしまう<変化抑制意識>を高めている。
心理的資本 フレッド・ルーサンス「こころの資本」
「変化適応力」を促進する「目標達成志向」「新しいことへの挑戦や学びへの意欲」「興味の柔軟性」の3つ。
就業者のリスキリングを支える3つの学び
1)捨てる学び アンラーニング(学習忘却)
2)巻き込む学び ソーシャル・ラーニング
3)橋渡す学び ラーニング・ブリッジング
アンラーニングを妨げる中途半端な成功体験
役職について3か月から半年でアンラーニングがピークに達し、以降なだらかに低下していく
人事評価5段階中4ぐらいの評価を受けている従業員がもっともアンラーニングが低い。
アンラーニングを促進する「限界認知」
限界認知とは、「これまでの仕事のやり方を続けても、成果や影響力発揮に繋がらない」という自分の仕事の限界を感じること
限界認知を突きつけられる
修羅場の経験
越境的業務(越境学習)
新規企画・新規提案の業務
男女の経験格差も問題
他者との学びの4つの機能
「真似し合い」:模倣、真似、観察学習
「教え合い」:指導・教育、フィードバック、支援活動
「創り合い」:知識の創発、知識の共有、共同実践
「高め合い」:目標伝染、動機づけ、威光模倣
個人のやる気の付け方
ろうそく型:個々の心の内面に火をつける
炭火型:他者を通じた、他者を経由した動機づけ
アメリカの社会学者ロナルド・バーとの「構造的空隙」
世界一他人を信頼しない国 日本
社会関係資本の薄さ 社会開拓力のなさ
「工場」から「創発」へ
変化報酬と挑戦共有
報酬としての「ポスト(役職)」「金銭」「経験」
形骸化する「目標管理制度」
改善重視
明確さ重視
役立ち感
従業員の「評価観」を変えるために「なんのために目標管理を行っているのか?「人事評価の狙いは何か?」をメンバーに伝える機会をもつこと
フォワード・ガイダンス
コーポレート・ユニバーシティ -
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リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考
著:小林 祐児
リスキリングとは、業務上の技術や専門スキルを新しく獲得すること、そしてそれを企業が従業員に促進することである。DXと合わせて普及しつつあるこの言葉は、「生涯学習:「リカレント教育」などと同じく、広く大人の「学び直し」と捉えられる。
本書では、リスキリングに必要な「仕組み」を「行動変化」「学びのコミュニティ化」「意思の創発」の三つの提示及び以下の8章により説明している。
①リスキリングの流行とその課題
②学ばなさの根本を探る
③変わらなさの根本を探る
④リスキリングを支える「三つの学び」
⑤工場から創発へ
⑥学びの共同体の仕組み
⑦学ぶ意思の発芽の仕組み
⑧これからの企業における学びの方向性
「リスキリング」しかり、確実にこの「学び」の大きなうねりをどう捉えていくかが、組織・個人にとって大きな正念場となる。一時的なブームとしてやり過ごすのではなく、各個人が危機感と期待を持ちながら自身の現状とわくわくする未来を想像しながら、学びを捉えなおす、そして学びを継続すること。その環境や風土と仕組みをどのように企業が整えていくかが重要となる。
学びは個人の責任下にあるという前提はあるものの、企業としての枠組みによりそのプロセスを含め結果に対しても大きな差となって表れてくる。
本書の納得性の高さの根源はなんといってもデータからの事象の提供である。リスキリングの黎明期と言われる今でもしっかりとデータを提示することで、提供する企業側として大きなミスリードは防ぐことができる。
学び直しは置かれた環境や個人によって、異なるものではあるが、根本的な考えや大きな仕組みの構築の考えは本書から学べることは多い。危機感が先行する中にも、楽しさを見いだしながら仕組みの構築を踏まえた考え方を学びから形として運用していきたい。