サーシャ・フィリペンコのレビュー一覧

  • 理不尽ゲーム

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    半年ほど前、ジャーナリストの金平さんが、ルカシェンコにインタビューをしにベラルーシへ行った時の映像を思い出した。街角で市民に問いかけると、何の問題もないと言っていた人も居たが、泣きなから訴えていた女性もいた。何を訴えていたのか具体的な内容は忘れたが、かなり怯えていたことが印象に残っている。この本にも、大統領選挙の結果を聞きに広場に集まっただけで、暴行を受け捕まってしまう場面があった。
    訳者の奈倉さんは言う「この本の世界と私たちの目の前にある社会には、継ぎ目などない」と。「もはや他人事ではありえないのだ」

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    2022年10月29日
  • 赤い十字

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    ベラルーシで何が起こっているのか、少しでも知る手がかりがあるのでは、と思い読んだ。

    著者のサーシャ・フィリペンコは国外で暮らしているそうだ。かつて見たドキュメンタリー番組でも、同じように心あるベラルーシの人々は、リトアニアに脱出していた。ルカシェンコ大統領の不正選挙の後、民主化運動へ息を潜め、ルカシェンコ政権のもと、自由な発言は国内ではできない状態だ。もちろん、ロシア連邦の中でも同様だ。

    どんな発言が許されないのか。
    社会主義の大義に反すること。そして、独裁者の意に背くこと。

    この小説でも、アレクシェーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」でも、逢坂冬馬「同志少女よ敵を撃て」でも同様に描かれていたのは、
    「戦中に階級章を外す、後方に退く、敵に降伏するといった行為をおこなった軍人や政治指導員は悪質な脱走兵とみなし、その家族も、忠誠を破り祖国を裏切った者の家族として逮捕する」こと。
    ソ連兵には前進しか許されなかった。

    ソ連の強制収容所はスターリンがやろうとしていた「新しい人間を作る実験」場であった。しかし、その実験の具体的内容は粛清である。「新しい実験」など、全てが「戯言」であると、この小説は語る。

    そして、今はまたこの事実を小説にすることに大きな危険を伴う時代になってしまった。


    神の存在の必要性を語るタチヤーナの語りは圧巻。

    「収容所で起きていることはなにもかも愚かで残酷で救いようがなくて、心の支えになりうるのは超越的な存在だけだった」
    「看守が受刑者の苦しみを嬉しそうに眺めているのを見ながら、あたしはどこか高い高い空の上でこの悪を奨励している神様がいるのを感じていた」
    「収容所の所長も、かの惨めったらしい強欲な悪党スターリンさえも、どうでもよかった。神様が必要だった、全ての責任をとれるのは神様だけだから」

    神の存在をこのように捉える発想は初めてだ。

    文学作品としても優れた小説だと思う。

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    2022年07月22日
  • 赤い十字

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    「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず」かつて日本が戦時中に兵士たちの訓戒とした言葉だ。それはソ連も同じだった。
    2000年、ベラルーシの首都ミンスクのとあるアパートに青年サーシャが引っ越す事から物語が始まる。同じ階に住む老婦人タチヤーナは91歳でアルツハイマーを患っており強引なコミニケーションで自らの半生を語りだす。彼女が第二次世界大戦で夫が戦地で捕虜になり彼女の生活は一変され放浪されていった。経験した者が話す血の通った話に、青年は引き込まれていってしまう。

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    2022年06月29日
  • 赤い十字

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    著者と同じ名前の主人公、サーシャは、30歳の青年。ロシアからベラルーシの首都、ミンスクに越してきたばかりだ。
    家族に大きな不幸があり、母親が再婚相手と暮らしているこの街に住むことになったのだ。
    だが越してきた早々、階の入口ドアに奇妙な赤い十字が描かれているのを見つける。苛立ちながらそれを消すサーシャに、同じ階に住む老婆が話しかけてくる。十字は老婆が描いたもので、アルツハイマーを患っているため、自分の家の目印にするつもりだったのだという。
    自分の不幸で手一杯で辟易気味のサーシャに、老婆は強引に身の上話をし始める。
    それはソ連の暗部にまつわる、強烈に皮肉な人生の物語だった。

    老婆、タチヤーナは、ロンドン生まれ。父に連れられ、1919年にソ連に移住した。数ヶ国語に通じていた彼女は、大学卒業後、外務省に勤めることになる。
    その後、結婚。娘にも恵まれた。
    産後、職場に復帰した彼女の身の回りは、徐々に不穏になっていく。戦争が忍び寄ってきていたのだ。
    やがて開戦。夫は戦地に送られた。
    彼女は外務省で書類の翻訳にあたっていた。赤十字からはしばしば、捕虜の名簿を添えて、敵国捕虜との交換を促す手紙が送られてきた。
    しかし、ソ連上層部はそれを無視し続けていた。捕虜になるような兵士は腰抜けで、国家の敵だ。交換になど応じる必要はない。
    国家は捕虜に冷たいだけではなかった。捕虜になったことが知られれば、国に残っている家族も人民の敵と見なされ、逮捕されることすらあるのだ。

    そんな日々の中、タチヤーナは、捕虜名簿の中に、夫の名を見つける。
    よかった、生きていた。安堵するとともに、恐怖が押し寄せる。これが上層部に見つかったら。夫は人民の敵とみなされてしまう。機密文書を扱う立場にいる自分が、人民の敵の妻だと知れたらどうなるのか。娘もろとも逮捕されてしまう。
    恐怖に動転した彼女は、必死に考え、1つの策を思いつく。
    それが、彼女の残りの人生の枷になるとも思わずに。

    それほど長くはない作品だが、背後にはおそらく膨大な資料がある。
    タチヤーナは架空の人物だが、同じような経験をした人物はそう少なくはないはずだ。

    強圧的な政権の下、一度狂った人生は元に戻ることはない。
    1つの誤った選択は、誤った道へとつながり、その先のどの道を選んでも、深い森の奥へと迷うばかりだ。
    だが、いったい、彼女はどんな選択をすればよかったのだろうか。

    薄れゆく記憶を抱えながら、老婆タチヤーナは運命に抗い、神に挑む。
    彼女が扉に記した赤い十字は、不幸のきっかけになった赤十字を思わせるようでもあり、死者を悼む十字架のようでもあり、「敵性国家」の国旗を思い出させるようでもある。
    神がもしも忘れろと言っても、けっして忘れない。
    それは、小さく弱いものの、ささやかだが断固とした決意表明だったのかもしれない。

    自身も深い悲しみを背負うサーシャは、次第に老婆に寄り添っていく。
    タチヤーナの墓碑に刻まれる言葉は、すべての抑圧された人々の言葉のようでもある。

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    2022年06月20日
  • 理不尽ゲーム

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    理不尽ゲームとは、理不尽な出来事や物語を語り合うこと。

    欧州最後の独裁国家ベラルーシで、群集事故によって昏睡状態に陥った高校生ツィスクか主人公。
    老いた祖母のエリヴィーラだけがその回復を信じていたが、奇跡的に意識を取り戻したのが10年後の2009年。その時には既に祖母も亡くなっており、母はもう生きる望みがないから、脳死判断しようとしていた主治医と結婚し、義理の弟までいるという始末。
    何から何まで変わっていたが、変わらないと言うか、更に強烈となったのが大統領の独裁。
    ルカシェンコと言う実名までは出てこなかったが、話に出てくる正に「理不尽」な政策と強権は、実態をもの語っていることがひしひしと伝わる。

    ストーリーの濃さはそれほどでもないかな と思ったが、小説で不正を暴こうとすることには大いに共鳴した。

    今じゃ当大統領は"悪魔"のプーチンと大の仲良しで、自分にとつては、金正恩とも肩を並べるに至ったように思える。

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    2022年03月28日
  • 理不尽ゲーム

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    ベラルーシという国は元々は西欧とロシアの中立的な立ち位置を取っていたが、ルカシェンコ大統領が社会主義的な体制に大きく傾倒し、ロシアの弟国のようになる。たとえば国語においても、ベラルーシ語からロシア語を母語に代えていった。(ちなみにウクライナはロシア語からウクライナ語へと代えていった)
    今回、これだけ国際的に避難されているロシアに対して全く迷うことなくルカシェンコは味方している。ちなみにルカシェンコはコロナはスポーツで吹き飛ぶといっている。サウナにいけばコロナは死ぬらしい。アイスホッケーなんて最高でこんな寒いところではコロナ菌どこにも飛んでない!見えないね!みたいな感じのこと言ってる。これをまわりも微笑みながら聞いている感じ。独裁政権なんですね。それで、独裁政権で起きているあらゆる理不尽を詰め込まれているのが本書になる。
    ベラルーシに生きる一人の青年が主人公。実際にあった事件、エピソードが詰め込まれていて、笑っちゃうんだけどマジなんだから驚きです。この本のテーマのひとつは「理不尽」なんだけど「昏睡」や「唐突」もテーマといえる。急に、簡単に、不可逆的に事態が転換する。私達はもう少し自分で選択できる幅が広い。デモにもいけるし、たまたまそこにいたというだけで逮捕されないし、サッカーも相手が大統領だから負けなくちゃいけないなんてこともない。

    私は、ロシアやベラルーシ、ウクライナ、元ソ連の国々が大変な目にあったことはなんとなく知っている。でも今のような不協和音に未来はあるのかな?と思うけれども、同時にこの本を読んで「独裁国家の日常を生きる」ことも緩やかに体験させてもらった。

    祖母は特にいい。おばあちゃーーーん!ってなります!

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    2022年03月02日
  • 理不尽ゲーム

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    ネタバレ

    ベラルーシ、あまり馴染みのない国だが、その大統領の不正、圧政に共産圏のような息苦しさを感じた。
    10年の昏睡から覚める主人公や献身的な介護をする祖母そういった個人的な物語としても楽しめるが、ベラルーシを正しく見つめ記録すること、小説の形で人々に伝えたいという思いが伝わってきた。

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    2022年02月14日
  • 赤い十字

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    引っ越し先で知り合った隣人は、認知症を患う元ソ連の外務省職員。
    夫が他国の捕虜となったことを彼女が知ってしまったことから始まる運命は、軽妙なタッチでぐいぐいと読ませる。
    そしてそこからの地獄は「理不尽ゲーム」同様。

    国家というものが、いかに簡単にそこで暮らす人々を切り捨ててしまえるのか…ジュネーブに残された赤十字のアーカイブ資料は語る。

    最後の一文に悲しみしかない。

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    2022年01月20日
  • 理不尽ゲーム

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    昏睡状態に陥った主人公が目覚めた10年後。
    そこはより一層独裁に拍車がかかったベラルーシ。

    主人公の長い眠りが、こんな社会になってしまった、こんな社会にさせてしまった世の中への諷刺と、覚醒した後の読者への状況説明の二つの役割を担っているのかもしれない。

    2020年の選挙後の様子を見ても、ベラルーシの状況は変わらない。権力は腐敗する。常に目覚め続けなければならない。

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    2021年11月23日
  • 理不尽ゲーム

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    ネタバレ

    ベラルーシの半ノンフィクション。
    ベラルーシがこんな国だったと今まで知らなかった。
    フランツィスクの昏睡状態と国民の抑圧が比喩として上手に重なっている。
    最後にはドイツの夫婦の手助けもあり国外へ脱出。
    反体制組織の人間が次々消されていったり投票結果の不正操作など、分かりやすく振り切った独裁政権だな。

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    2021年10月28日
  • 理不尽ゲーム

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    ネタバレ

    前半は群衆事故に巻き込まれて植物状態になった16歳のフランツィスクと、彼の回復を信じて語りかけ続ける祖母が描かれ、後半は目覚めたツィスクが目にする社会の理不尽さが描かれる。祖母も繰り返し、社会が昏睡していると話すし、スターズが教えてくれる社会は完全におかしい。盗聴器が仕込まれたカフェ、車の話しかしないように仕向けられた市民、異様な得票率で当選する大統領、選挙前はゆるく、選挙後に激化する取り締まり。ツィスクとスタースが参加したデモでは、その場にいたというだけでGPSで追跡され逮捕される。対立候補は暗殺され自殺と公表される。ベラルーシが独裁国家だから、ルカシェンコが独裁者だから、とばかりは言い切れなくて、日本にもかなりこの要素はあるなと思う。
    この本は発禁で、ベラルーシで捕まった人々が獄中で読んで勇気をもらったりしているらしい。戦争の対義語としての文学、を思い出した。

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    2021年05月16日
  • 理不尽ゲーム

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    ベラルーシのこと、あまり知らない。その歴史も現状も文化も、知らないことだらけ。何度か息が詰まりそうになりながら、不思議とポップな主人公に引っ張られて読んだ。おばあちゃんの手紙がよかった。

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    2021年04月16日
  • 理不尽ゲーム

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    語り口自体はライトだけどなんとも重苦しい気分に。結局ベラルーシを出るしかないのか…。地下鉄駅に雨宿りしたい人々が押しかけて圧死者が出た事故はもしかしたらベラルーシで本当にあった事故なのかもしれないけど、もしやスターリン死すの一報を聞いたモスクワ市民が赤の広場に詰めかけて大勢圧死した事故のパロディかとも思えてくる。

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    2026年01月25日
  • 理不尽ゲーム

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    独裁政権の恐ろしさ。
    ベラルーシというどこか遠い国の話のようで(実際に場所や歴史など調べながら読んだ)、主人公の現代的な語りがどこにでもいるような10代の男の子で、地続きの恐怖を感じた。
    以前読んだルーマニアの話(『モノクロの街の夜明け』)も独裁政権下で市民はどれほどの苦痛を強いられるのかが書かれていたが、本当に恐ろしい。

    権力を集中させないこと、あきらめないこと。
    今のアメリカの人にも広く読んでほしい。

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    2024年11月05日
  • 理不尽ゲーム

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    ベラルーシがどんな国なのか、よく知っている日本人はあまりいないと思うので、最後の独裁者(とは思えないけど)と呼ばれるルカシェンコが牛耳るこの国に暮らすことがどんなに絶望的か感じられるだけでも良い本だった。
    小説としての出来はどうかな…と思わなくもないが、ラストは良かった。
    奈倉さんの訳は読みやすい。が、おばあちゃんの喋りはあれで良かったのか。主人公は「ばあちゃん」と読んでいる。口調は庶民的に訳してあるが、孫をチェリストにするために必死になる、科学アカデミーに勤務するおばあちゃんということは、もっとハイソな話し方なんじゃないだろうか?
    孫は音楽高校に通っているし、親友も医者だし、娘も(大統領派の権力のある)医者と結婚したし、この一家がそもそもハイクラスなのではないか。だとしたらあの話し方は、「ばあちゃん」呼ばわりも、ちょっとしっくりこない。
    ベラルーシでは庶民でも、高学歴でなくても科学アカデミーに勤務できるんですよ、幼いころからチェロを習い、音楽高校に通えるんですよっていう社会なら、あれでいいと思うけど。だったらリアルディストピアにはならないもんね。

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    2023年02月17日
  • 理不尽ゲーム

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    オビに全て(時間制限付きのWiFi、嘘を吐く国営放送等)が書いてあるんだよね…。だからそれ以上の驚きはないというか…。
    いや、十分驚くことではあるんだけど。

    この国で生まれていたら、大変なんて言葉では済まされないが、大変だったと思う。
    真実を知らなければ不幸と感じることもないだろうが、皆、どこかおかしい、なぜ自分たちはこんなに管理されているのだろうと違和感を持っているはず。

    途中出てくる「理不尽ゲーム」は、本当にあった理不尽な話を順番にしていって、最後までネタが尽きなかった人の勝ち。
    皆出るわ出るわ。どれもこれもびっくりするくらい理不尽な話。

    皆、世の中のことに関心は持っているし、「これは理不尽」と感じている。
    しかし、国に逆らうことはできないでいる。

    終始、圧迫感があった。

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    2022年07月31日
  • 赤い十字

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    サーシャは幼い娘と暮らすため、アパートへ越してきた。隣の部屋に住むおばあさんタチヤーナは、アルツハイマーで最近の事は忘れてしまうことが多いという。ソ連時代に外務省で働いていたタチヤーナは、サーシャに第二次世界大戦中に自分がしたことを話して聞かせる。
    ソ連の粛清を恐れて文章の改ざんをしたタチヤーナ。長い投獄生活を送り、行方不明の夫と娘を探し続けたタチヤーナ。そして、最後にわかった真実。厳しくも悲しい人生だ。

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    2022年07月01日
  • 理不尽ゲーム

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    群衆事故に巻き込まれて、十年間を昏睡状態で過ごしたツィスク。目を覚ませば、硬直し息の詰まるような社会が彼を迎える。疑問を持つことは憚られ、自分の命の価値さえ心許ない。
    半径数メートルの世界で暮らす考えなしの高校生の物語で始まったのに、少しずつ、旧ソ連を引き摺り、ロシアの顔色を窺い、不正選挙がまかり通るベラルーシという国をツィスクの視線で見つめ、閉塞感に息苦しくなっていく。
    ジャーナリズムも世界の暗い部分を私たちの前に晒すけれど、文学も(たぶん音楽や映画やアートも)同じことができる。

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    2022年05月22日
  • 理不尽ゲーム

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    確か新聞で知った本書。なんとなく気にはなっていたものの購入には至っていなかった。
    しかし、2021夏の東京オリンピックで陸上の女性選手が強制的に帰国させられそうになって保護を求めて、ポーランドに亡命する、と言うニュースを見ていたところ、同時に報じられていた2020年の不正選挙とその後のデモのこと。
    あれ?ベラルーシ、、、そういう本をどこかで見かけなかったっけ?
    そうして購入し読んでみることに。

    この本が執筆されたのは2012年のこと。作者のメッセージや訳者解説にもあるように、その当時はこんなことが現代のヨーロッパであるわけがない、と批判されたと言う。しかし、2020年に大統領選の不正、デモが報じられると、ここに書かれていることは、本当に今起こっていることなのだ、と周囲も知ることになる。本書は、小説の体を取り、一人の少年が不幸な事故に巻き込まれて昏睡状態に陥り、10年の時を経て目覚める、という設定は設けつつも、そうした事故なども実際の事故をモチーフにしていたり、半分ノンフィクションのようなものなのだ。
    そのことには驚かされるし、独裁国家の中のことと言うのは、当然ながら、なかなか外部の人間には見聞きすることが難しく実態が分からないものなので、一国民の生きている世界はこういうものなのか、と思うと、暗い気持ちになってしまう。
    フランツィスクの祖母の「いちばんすごい奇跡はいつも、望みがないときに起きるんだよ」と言う言葉には、胸を打たれるが、でも「奇跡」が起こらないと、
    いつ反体制とされて投獄されるかもしれない、理不尽なことには気づかない振りで生きて行かなくてはいけない世の中が、変わることがないと言うことでもあり、その状況は、想像しただけで苦しい。
    こういう国に生まれなくて良かったと、つい思ってしまう自分がいたのだが、でも、日本でも知らぬ間に多くの国民が反対している法律が制定されてしまったり、官僚の人事権を握って、都合の悪いものはポジションを奪われたり、、そういうことが起こっている。まるで他人事、ではないのだよな、と思わされる。

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    2022年01月26日