あらすじ
欧州最後の独裁国家ベラルーシ。その内実を、小説の力で暴く。群集事故によって昏睡状態に陥った高校生ツィスク。老いた祖母だけがその回復を信じ、病室で永遠のような時を過ごす一方、隣の大国に依存していた国家は、民が慕ったはずの大統領の手によって、少しずつ病んでいく。10年後の2009年、奇跡的に目覚めたツィスクが見たものは、ひとりの大統領にすべてを掌握された祖国、そして理不尽な状況に疑問をもつことも許されぬ人々の姿だった。時間制限付きのWi-Fi。嘘を吐く国営放送。生活の困窮による、女性の愛人ビジネス。荒唐無稽な大統領令と「理不尽ゲーム」。ジャーナリストの不審死。5年ごとの大統領選では、現職が異常な高得票率で再選される……。緊迫の続く、現在のベラルーシの姿へとつながる物語。
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Posted by ブクログ
ちょっと前の作品だけど、ベラルーシという国の今が描かれている。10年間昏睡状態で目が覚めた時、ほとんど世界は変わっておらず、むしろ独裁具合は悪化していた。話はちょっとズレるけど、ばあちゃんめっちゃいい人
Posted by ブクログ
奈倉有里の解説を読むべき。この人の解説はいつも素晴らしい。
もちろんフィリペンコの本作はよくぞ書いてくれたと握手を求めたいほどのできだ。
ルカシェンコの恐怖政治はウクライナ戦争をきっかけに知ったが、理不尽大統領トランプも尻を捲って逃げ出すほどのメチャクチャぶり。実際の出来事を書き込みながらフィクションとして仕上げたことは驚嘆としか言いようがない。ベラルーシの人々の心に強く働きかけたことと思う。彼の勇気を賞賛する。
普通の、当たり前の考えの人を苦しめる政治家が跋扈する世の中は正常ではない。あんた気は確かかと叫びたい。あんた! ルカシェンコ、プーチン、トランプ、ナタニエフ……
Posted by ブクログ
独裁者に支配されるベラルーシで実際に起きていることが、昏睡状態の孫に語り掛けるばあちゃんや友人の話で割と淡々と描かれます。抵抗しては潰されることを繰り返すようで、閉塞感と絶望感を覚えました。一度狂った独裁者を産んでしまった国は、国民を丸ごと理不尽な渦に巻き込んでしまうことをロシアやベラルーシから感じました。
一方、孫の回復を諦めないばあちゃんの本当の愛情にも胸が締め付けられるようで、手紙のシーンは涙なしには読めません。
訳者の言うように、読み終えたらまた読み直したくなりました。すごい価値のある一冊です。
Posted by ブクログ
ロシアに隣接しているベラルーシという国のある若者の物語。
10年間、脳死状態でいて生き返ったという特殊な内容もさることながらこの国で興っている事を厳しい批判の眼で伝え、発信するという穏やかではない現代の体制を書いている。
自国では発刊出来ない内容であるとともに、
世界的にみてもこのようなことは氷山の一角なのかもしれないと思わせてくれる。
また、読んでみたい。
Posted by ブクログ
「赤い十字」に続いて、フィリペンコのデビュー作である本書を読む。
ベラルーシの現実に暗澹たる気持ちになる。
ルカシェンコ大統領の強権による虐殺、統制管理の残虐さは、同じ地球に生きていて申し訳ないと思うほど。
ツィスクの昏睡は民主主義のメタファーだ。ツィスクの目覚めを信じて語り続け励まし続ける祖母の最後の手紙で泣けた。肉親としての愛と、ベラルーシへの愛。
奈倉有里さんの訳もすばらしい。訳者後書きもまた。(これを読めばベラルーシの現状もこの本の読み方も全てわかる)
本屋大賞の「同志少女よ敵を撃て」のおかげで、ウクライナ侵攻の現状や歴史に、関心が移ってきた。奈倉有里さんと逢坂冬馬さんが姉弟だということにも驚きだが、多くの日本人がこの悲惨な戦争に関心を寄せることに貢献してくれた二人に感謝しかない。
Posted by ブクログ
読みながら息が詰まる程の閉塞感。最後の訳者あとがきを読んで、冒頭の作者の言葉を読み返し、東京オリンピックでの出来事を思い出す。かの地の実状を描き出し、読み手の心に突き刺さる。文学の力を見せつけられる一冊だった。すごい。
Posted by ブクログ
ディストピア小説のように書いてある、たぶん本当にあるような話。
初のベラルーシ文学は読んで衝撃でした。
「1984年」くらい救いのないような現実がもしあるのであれば本当にやりきれない…
Posted by ブクログ
半年ほど前、ジャーナリストの金平さんが、ルカシェンコにインタビューをしにベラルーシへ行った時の映像を思い出した。街角で市民に問いかけると、何の問題もないと言っていた人も居たが、泣きなから訴えていた女性もいた。何を訴えていたのか具体的な内容は忘れたが、かなり怯えていたことが印象に残っている。この本にも、大統領選挙の結果を聞きに広場に集まっただけで、暴行を受け捕まってしまう場面があった。
訳者の奈倉さんは言う「この本の世界と私たちの目の前にある社会には、継ぎ目などない」と。「もはや他人事ではありえないのだ」
Posted by ブクログ
理不尽ゲームとは、理不尽な出来事や物語を語り合うこと。
欧州最後の独裁国家ベラルーシで、群集事故によって昏睡状態に陥った高校生ツィスクか主人公。
老いた祖母のエリヴィーラだけがその回復を信じていたが、奇跡的に意識を取り戻したのが10年後の2009年。その時には既に祖母も亡くなっており、母はもう生きる望みがないから、脳死判断しようとしていた主治医と結婚し、義理の弟までいるという始末。
何から何まで変わっていたが、変わらないと言うか、更に強烈となったのが大統領の独裁。
ルカシェンコと言う実名までは出てこなかったが、話に出てくる正に「理不尽」な政策と強権は、実態をもの語っていることがひしひしと伝わる。
ストーリーの濃さはそれほどでもないかな と思ったが、小説で不正を暴こうとすることには大いに共鳴した。
今じゃ当大統領は"悪魔"のプーチンと大の仲良しで、自分にとつては、金正恩とも肩を並べるに至ったように思える。
Posted by ブクログ
ベラルーシという国は元々は西欧とロシアの中立的な立ち位置を取っていたが、ルカシェンコ大統領が社会主義的な体制に大きく傾倒し、ロシアの弟国のようになる。たとえば国語においても、ベラルーシ語からロシア語を母語に代えていった。(ちなみにウクライナはロシア語からウクライナ語へと代えていった)
今回、これだけ国際的に避難されているロシアに対して全く迷うことなくルカシェンコは味方している。ちなみにルカシェンコはコロナはスポーツで吹き飛ぶといっている。サウナにいけばコロナは死ぬらしい。アイスホッケーなんて最高でこんな寒いところではコロナ菌どこにも飛んでない!見えないね!みたいな感じのこと言ってる。これをまわりも微笑みながら聞いている感じ。独裁政権なんですね。それで、独裁政権で起きているあらゆる理不尽を詰め込まれているのが本書になる。
ベラルーシに生きる一人の青年が主人公。実際にあった事件、エピソードが詰め込まれていて、笑っちゃうんだけどマジなんだから驚きです。この本のテーマのひとつは「理不尽」なんだけど「昏睡」や「唐突」もテーマといえる。急に、簡単に、不可逆的に事態が転換する。私達はもう少し自分で選択できる幅が広い。デモにもいけるし、たまたまそこにいたというだけで逮捕されないし、サッカーも相手が大統領だから負けなくちゃいけないなんてこともない。
私は、ロシアやベラルーシ、ウクライナ、元ソ連の国々が大変な目にあったことはなんとなく知っている。でも今のような不協和音に未来はあるのかな?と思うけれども、同時にこの本を読んで「独裁国家の日常を生きる」ことも緩やかに体験させてもらった。
祖母は特にいい。おばあちゃーーーん!ってなります!
Posted by ブクログ
ベラルーシ、あまり馴染みのない国だが、その大統領の不正、圧政に共産圏のような息苦しさを感じた。
10年の昏睡から覚める主人公や献身的な介護をする祖母そういった個人的な物語としても楽しめるが、ベラルーシを正しく見つめ記録すること、小説の形で人々に伝えたいという思いが伝わってきた。
Posted by ブクログ
昏睡状態に陥った主人公が目覚めた10年後。
そこはより一層独裁に拍車がかかったベラルーシ。
主人公の長い眠りが、こんな社会になってしまった、こんな社会にさせてしまった世の中への諷刺と、覚醒した後の読者への状況説明の二つの役割を担っているのかもしれない。
2020年の選挙後の様子を見ても、ベラルーシの状況は変わらない。権力は腐敗する。常に目覚め続けなければならない。
Posted by ブクログ
ベラルーシの半ノンフィクション。
ベラルーシがこんな国だったと今まで知らなかった。
フランツィスクの昏睡状態と国民の抑圧が比喩として上手に重なっている。
最後にはドイツの夫婦の手助けもあり国外へ脱出。
反体制組織の人間が次々消されていったり投票結果の不正操作など、分かりやすく振り切った独裁政権だな。
Posted by ブクログ
前半は群衆事故に巻き込まれて植物状態になった16歳のフランツィスクと、彼の回復を信じて語りかけ続ける祖母が描かれ、後半は目覚めたツィスクが目にする社会の理不尽さが描かれる。祖母も繰り返し、社会が昏睡していると話すし、スターズが教えてくれる社会は完全におかしい。盗聴器が仕込まれたカフェ、車の話しかしないように仕向けられた市民、異様な得票率で当選する大統領、選挙前はゆるく、選挙後に激化する取り締まり。ツィスクとスタースが参加したデモでは、その場にいたというだけでGPSで追跡され逮捕される。対立候補は暗殺され自殺と公表される。ベラルーシが独裁国家だから、ルカシェンコが独裁者だから、とばかりは言い切れなくて、日本にもかなりこの要素はあるなと思う。
この本は発禁で、ベラルーシで捕まった人々が獄中で読んで勇気をもらったりしているらしい。戦争の対義語としての文学、を思い出した。
Posted by ブクログ
ベラルーシのこと、あまり知らない。その歴史も現状も文化も、知らないことだらけ。何度か息が詰まりそうになりながら、不思議とポップな主人公に引っ張られて読んだ。おばあちゃんの手紙がよかった。
Posted by ブクログ
語り口自体はライトだけどなんとも重苦しい気分に。結局ベラルーシを出るしかないのか…。地下鉄駅に雨宿りしたい人々が押しかけて圧死者が出た事故はもしかしたらベラルーシで本当にあった事故なのかもしれないけど、もしやスターリン死すの一報を聞いたモスクワ市民が赤の広場に詰めかけて大勢圧死した事故のパロディかとも思えてくる。
Posted by ブクログ
独裁政権の恐ろしさ。
ベラルーシというどこか遠い国の話のようで(実際に場所や歴史など調べながら読んだ)、主人公の現代的な語りがどこにでもいるような10代の男の子で、地続きの恐怖を感じた。
以前読んだルーマニアの話(『モノクロの街の夜明け』)も独裁政権下で市民はどれほどの苦痛を強いられるのかが書かれていたが、本当に恐ろしい。
権力を集中させないこと、あきらめないこと。
今のアメリカの人にも広く読んでほしい。
Posted by ブクログ
ベラルーシがどんな国なのか、よく知っている日本人はあまりいないと思うので、最後の独裁者(とは思えないけど)と呼ばれるルカシェンコが牛耳るこの国に暮らすことがどんなに絶望的か感じられるだけでも良い本だった。
小説としての出来はどうかな…と思わなくもないが、ラストは良かった。
奈倉さんの訳は読みやすい。が、おばあちゃんの喋りはあれで良かったのか。主人公は「ばあちゃん」と読んでいる。口調は庶民的に訳してあるが、孫をチェリストにするために必死になる、科学アカデミーに勤務するおばあちゃんということは、もっとハイソな話し方なんじゃないだろうか?
孫は音楽高校に通っているし、親友も医者だし、娘も(大統領派の権力のある)医者と結婚したし、この一家がそもそもハイクラスなのではないか。だとしたらあの話し方は、「ばあちゃん」呼ばわりも、ちょっとしっくりこない。
ベラルーシでは庶民でも、高学歴でなくても科学アカデミーに勤務できるんですよ、幼いころからチェロを習い、音楽高校に通えるんですよっていう社会なら、あれでいいと思うけど。だったらリアルディストピアにはならないもんね。
Posted by ブクログ
オビに全て(時間制限付きのWiFi、嘘を吐く国営放送等)が書いてあるんだよね…。だからそれ以上の驚きはないというか…。
いや、十分驚くことではあるんだけど。
この国で生まれていたら、大変なんて言葉では済まされないが、大変だったと思う。
真実を知らなければ不幸と感じることもないだろうが、皆、どこかおかしい、なぜ自分たちはこんなに管理されているのだろうと違和感を持っているはず。
途中出てくる「理不尽ゲーム」は、本当にあった理不尽な話を順番にしていって、最後までネタが尽きなかった人の勝ち。
皆出るわ出るわ。どれもこれもびっくりするくらい理不尽な話。
皆、世の中のことに関心は持っているし、「これは理不尽」と感じている。
しかし、国に逆らうことはできないでいる。
終始、圧迫感があった。
Posted by ブクログ
群衆事故に巻き込まれて、十年間を昏睡状態で過ごしたツィスク。目を覚ませば、硬直し息の詰まるような社会が彼を迎える。疑問を持つことは憚られ、自分の命の価値さえ心許ない。
半径数メートルの世界で暮らす考えなしの高校生の物語で始まったのに、少しずつ、旧ソ連を引き摺り、ロシアの顔色を窺い、不正選挙がまかり通るベラルーシという国をツィスクの視線で見つめ、閉塞感に息苦しくなっていく。
ジャーナリズムも世界の暗い部分を私たちの前に晒すけれど、文学も(たぶん音楽や映画やアートも)同じことができる。
Posted by ブクログ
確か新聞で知った本書。なんとなく気にはなっていたものの購入には至っていなかった。
しかし、2021夏の東京オリンピックで陸上の女性選手が強制的に帰国させられそうになって保護を求めて、ポーランドに亡命する、と言うニュースを見ていたところ、同時に報じられていた2020年の不正選挙とその後のデモのこと。
あれ?ベラルーシ、、、そういう本をどこかで見かけなかったっけ?
そうして購入し読んでみることに。
この本が執筆されたのは2012年のこと。作者のメッセージや訳者解説にもあるように、その当時はこんなことが現代のヨーロッパであるわけがない、と批判されたと言う。しかし、2020年に大統領選の不正、デモが報じられると、ここに書かれていることは、本当に今起こっていることなのだ、と周囲も知ることになる。本書は、小説の体を取り、一人の少年が不幸な事故に巻き込まれて昏睡状態に陥り、10年の時を経て目覚める、という設定は設けつつも、そうした事故なども実際の事故をモチーフにしていたり、半分ノンフィクションのようなものなのだ。
そのことには驚かされるし、独裁国家の中のことと言うのは、当然ながら、なかなか外部の人間には見聞きすることが難しく実態が分からないものなので、一国民の生きている世界はこういうものなのか、と思うと、暗い気持ちになってしまう。
フランツィスクの祖母の「いちばんすごい奇跡はいつも、望みがないときに起きるんだよ」と言う言葉には、胸を打たれるが、でも「奇跡」が起こらないと、
いつ反体制とされて投獄されるかもしれない、理不尽なことには気づかない振りで生きて行かなくてはいけない世の中が、変わることがないと言うことでもあり、その状況は、想像しただけで苦しい。
こういう国に生まれなくて良かったと、つい思ってしまう自分がいたのだが、でも、日本でも知らぬ間に多くの国民が反対している法律が制定されてしまったり、官僚の人事権を握って、都合の悪いものはポジションを奪われたり、、そういうことが起こっている。まるで他人事、ではないのだよな、と思わされる。