ポール・ナースのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレWHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)
生命とは何か
ノーベル賞受賞の著者が始めて著した本です。
著者は細胞が生まれてから分裂するまでの細胞周期の研究がライフワークだが、本書ではその専門分野を超えて生命とは?という問いに対して著者なりの結論を述べています。
著者の「生命」の定義は、
1.生殖し、遺伝システムを備え、遺伝システムが変動するもの
2.境界を持つ物理的な存在であるもの
3.化学的、物理的、情報的な機械であるもの
と結論づけ、その理由を
1章 細胞
2章 遺伝子
3章 自然淘汰による進化
4章 化学としての生命
5章 情報としての生命
と各章で段階的に説明しています。
6章では世界を変えると題して、現代社会が抱える気候変動や生物多様性の減少や遺伝子操作などの危険性を通じて非科学的な態度をやんわりと批判しています。
学者さんにありがちな専門知識への偏りが無く、平易な言葉で難しい最新の遺伝や分子生物学などの解説をしているのでとても分かり易いです。
竹内氏の翻訳もこなれていて○。
多くの人に読んでもらいたい科学書であるとともに、考えることの重要性を教えてくれる名著だと思います。
竹蔵 -
Posted by ブクログ
ひとつひとつで生命の要件を満たしている細胞が、膨大な数集まり情報を交換しながら緻密に正確に分業を行い秩序立って生物のかたちを成している。情報交換は化学的な操作で行われる。化学物質の濃度の濃淡で空間的な情報が伝わるという話が特におもしろかった。膨大な数の化学反応がそれぞれ時間を守って少しの狂いもなく行われるのは、そのプロセスを知れば知るほど、ほとんど奇跡のように感じてしまう。
自分が奇跡のような緻密さを保持している機械であることを実感し、また同時に、自分や人間がそれほど特別な存在ではなく、空間的にも時間的にも、連続する世界のほんの一部分なのだと感じた。 -
Posted by ブクログ
それぞれの章でそれぞれ面白かったが,なにより「情報」の章が良い.
コンピュータ・サイエンス系の目から見た情報と全く異なる様相の情報を教えてもらえる.
もちろん,科学技術に関する楽しさも伝わってくる.
「教科書」を見て「授業」を受けるときの,あの「やりたくないなぁ」という感じ.同じ対象なのに「わくわくする,面白い,知りたい」という感じになる.
例えばポケモンを全く知らず興味のない人に,ポケモン図鑑という教科書を渡して覚えてねと授業をしようとすると,その人は「やりたくないなぁ」になると思う.だけどポケモン大好き人間に上手に『何がおもしろいのか』を伝えられちゃってハマっていしまったら気がついたら深いところまで自学習しちゃってる,になってしまう.
その時,いかに上手に沼にはめてくれるのか,が重要なんだろうけど,本作者は結構上手な部類になるのだと思う.
科学は,学問は,本来とても面白い. -
Posted by ブクログ
生命とはなにか?この壮大なテーマに対し、科学の歴史ではこう考えたというアプローチ方法で説明を試みる。
本当に自分自身のことを不思議に思ってしまう。
この「生きている」という感覚は、本当に何なのだろうか?
その根源は何で、一体どう説明したらよいのだろうか?
分子、細胞から始まり、遺伝子を通じての情報の伝達へとつながっている。
理科の授業で習った、アデニン(A)・チミン(T)・グワニン(G)・シトシン(C)も懐かしさを感じてしまった。
もちろん細かくは覚えていないが、遺伝子の中にはDNAが組み込まれており、その配列がATGCの4種だけで構成されているということを思い出した。
結局のところ、生命とは情報なのではないか?という考えはある意味で的を射ていると思う。
コンピューターは「0・1」ですべてを制御している。
あらゆる生物にも遺伝子があり、その構成は4種の記号だけというのも、ロマンを感じる話である。
コンピューターは2種の記号。人間(というか生物)は4種の記号。
所詮はその程度の違いしかないということだ。
奇跡の地球という中で偶然に生まれた生命。
その悠久の旅の中で、我々は何故か変化を繰り返し、自然淘汰されていく中で生き残り、そして今に至っている。
これを旅と表現すれば、本当に不思議な道程である。
この旅に終わりがあるのかも分からないが、今現時点を考えると、まだまだ先は長いだろうと感じてしまう。
つまり人類はまだまだ変化していくし、ある意味で進化していくはずだ。
もちろん人類以外の生命についても、変化を繰り返し、適者生存の論理によって、絶滅したり生き残ったりしていくのだろう。
そういう視点でこれらを見ていくと、生命とはなにか?人間とはなにか?意識とはなにか?などと連続して思いを巡らせてしまう。
人類は、未知なるものを解明しようと、懸命の努力を重ねている。
しかし、未だに解明できていない課題は多い。
むしろあらゆる事象の数%しか解明できていないとも言われている。
そんな巨大な壁を前にして、我々は立ち竦んでしまう。
しかし、そんな大きな壁に対しめげずに挑んで来たのが、人類の歴史なのである。
すべての謎を解明できなくても、ほんの少しずつでも進展していることが、我々にとって大事なことなのではないだろうか。
無知の知を説いたのはソクラテスか。
人類の歴史が記録として残されているものは、ほんの数千年にも満たない。
遺跡や土器などを含めても、数万年前まで遡ることが限界だろう。
人類の中で未知のものを解明しようと挑んだ軌跡を追うことは難しい。
しかしながら、我々の細胞の中には、確実にその軌跡の情報がすべて刻まれている。
そう考えると、我々人類含めてあらゆる生物は、ものすごいことをしているじゃないか。
生命が誕生して何十億年か分からないが、そのすべてがこの小さな細胞の中の遺伝子の中のDNAに刻まれているのだから。
人類のような複雑な生物ですら、最初は数十億年前の小さな細胞から始まったと考えると、本当に感慨深い。
一体我々の細胞は何度コピーされ、変異して、今に至っているのだろう。
生命とは何か。
それを定義することは永遠の課題だと思うが、本書では「進化する能力を有するもの」という説を最有力としている。
この言葉も深いし、面白い!
本書では化学的アプローチで、生命とは何かを解き明かしているが、最終章で語った言葉が非常に印象的だ。
【今日地球上にある生命の始まりは、「たった1回」だけだったのだ】
生命は何度も何種類も生まれた訳ではない。
本当にたった1回生まれただけなのだ。
それが増殖を繰り返して今に至っている。
悠久の旅とは、まさにその通りなのだと思う。
(2023/6/10) -
Posted by ブクログ
わかりやすく書いてくれているが、私には難しいところが多々あった。それでも充分に、生命の複雑で緻密でシンプルな小さくて壮大なすごい世界を感じた。
現在も蔓延るコロナについても書かれている。
どんなに科学者が人類全体の為に頑張っても、知識もなく聞き入れる耳もない大衆に無駄にされてしまう悲しさ、悔しさ。何事も疑うことが悪ではない。自分に不都合な情報を一切合切、耳に入れないず反対することが悪に感じた。
人間も一生命体。他の生命体をおろそかにせず、どうすれば「よりよい」世界になるのか、知識を入れ、疑い、考え、試行錯誤して、「よりよい」生き方をした人間になりたいと矮小ながら思う。
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Posted by ブクログ
この素晴らしき生命というもの。
ノーベル賞受賞者による生物学の本。親しみのわく語り口で、少年時代の思い出を楽しく読んでいるうちに、自分も一度は考えた「生きているとは?」「生命とは?」という問いを一緒に解きほぐしていくことができる。中学1年生で頬の内側の細胞を観察したことを思い出した。あの時、自分の身体にある「細胞」と出会ったのだ。
文系だから、生物学は苦手だから、と敬遠せずに手に取ってほしい。身近なものを使ったユーモラスな例えと、実験の苦労やワクワク感をいきいきと語る文章を読んでいたら、そのようなことは忘れてしまう。そして読んだ後は、この生命の奇跡と大きなつながりに感動を覚えるだろう。
また新たな科学の名著が誕生した。 -
Posted by ブクログ
ノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者ポール・ナースさんの書籍。
細胞とは何か、遺伝子とは何か、進化とはどういことか、そして、今私たちが「生きている」と思っているものの基本的な仕組みがどうなっているのかを、非常にわかりやすい柔らかい言葉で書いてありました。
そして、それを踏まえて「WHAT IS LIFE?(生命とは何か)」という問いへの答えに挑戦してくれています。
ひとことで表わせるような簡単な言葉にはならないし、読み終わった私には、やっぱりよくわからないけれど、考えるためのヒントをたくさんもらいました。
生命活動に関する本はいくつか読んでいるので、「生命の定義」みたいなものは知っているけれど、いったい「何なの?」、いったい「何故生まれたの?」という問いはこれから先も続くんでしょう。
著者のポール・ナースさんの、生き物への愛情や、生命活動の謎を解き明かすための情熱みたいなものが感じられて、書籍のジャンルのわりに、とてもとても温かみを感じる本でした。
「WHAT IS LIFE?」というタイトルの本は、過去の科学者によって何度か書かれているとのこと。新しくわかったことを盛り込みつつ、著者の思った「WHAT IS LIFE?」を大切に見せてくれた、そんな感じがしました。
余談)
ところで、この本の前に読んだのが、脳卒中から回復した神経解剖学者のジル・ボルト・テイラーさんの著書「奇跡の脳」だったんですが、たまたまですが、翻訳者が同じでした。
竹内薫さん。ん?どっかで聞いたことがある名前のような…、と思ったら、NHKのサイエンスZEROに出ていた方ですよね。あー、そうか、彼はサイエンスライターの方だったのか〜!
ということで、興味の連鎖。今度、竹内薫さんの本を読んでみよう〜。 -
Posted by ブクログ
生物の目的は「自分を永続させること」にあり、その方法は「生殖」し「遺伝子を残すこと」。つまり生物としての人間が人生でやるべき唯一のことは、遺伝子を残すことだと解釈しました。一方で、生物は自然淘汰によって進化し、その進化は「生き残れなかったものたち」のおかげでもある、とも書かれていました。自分が後世に遺伝子を繋いでいく人間なのか、生き残れずに途絶えていく人間なのか分かりませんが、どちらにせよ、それは自然淘汰のシステムに従ったあくまで正常な選別プロセスなのだと理解しました。つまり、子孫を残せてもいいし、残せなくてもいい。どんな結果になろうと、それは人類の進化に少なからず貢献している…と解釈しました。
一言でいうと、「俺って将来結婚できんのかな…って思ってたけど、何か別に結婚できんくてもいいっぽい」ということです。全く本旨とはズレていると思いますが、ネクラな自分はこのように開き直ることができました。
専門用語も一定程度出てくるため理解できない内容もありましたが、大枠としては理解できました。研究の面白さ・凄さ、科学的態度の崇高さが伝わってくる本でした。