ポール・ナースのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「生命とは何か」というワードで検索するとたくさんの本がヒットする。それだけ普遍的かつ根源的な問いなのだろう。本書はそれらの類書の中で大きく二つの特徴がある。最新の知見まで網羅している一流科学者による最新の著書であるということと、想定読者の間口をかなり広く取ろうとした、ある意味入門書であるという2点である。触れられている内容は高度なものも含まれてはいるが、バランス感覚の優れた著者なのであろう、狭いところに踏み込みすぎることなく生命に関わりのある複数の分野を横断し案内してくれる好著である。
とは書いたが、個人的には若干物足りないと感じる部分もあった。特にとても新しい情報が書かれているわけではないからである。
しかしそれは当たり前で、新しいことを知りたいならそれこそ次々に出版される新書や論文を読めばよいのであって、この本のやりたいことはそういうことではないのである。逆に、新しすぎるところを無理に入れていない分、この先も陳腐化する部分がないといえる。この本の目指しているところは、この先何年も「生命とは何か」と素朴に疑問を持った人に答える水先案内的な古典となることなのであろう。
章立ても非常にシンプルかつ合理的だ。前半3分の2まではステップを5つに分け「細胞」「遺伝子」「自然淘汰による進化」「化学としての生命」「情報としての生命」と視点を変えて生命を概観していく。そして最後の2章ではこれらを踏まえて統合的に、そして未来に向けての生命論を展開する。とてもエレガントかつストーリーテリングな展開で、著者の知の深さを随所で感じることができる。
唯一不満があるとすれば、参考文献リストがなかったことである。原著にないなら訳者が用意してくれるとよかった。この本を勧めたい相手は、背伸びをしたい中学生から高校生、視野を広げるべき大学教養課程くらいまでをまず想定するので、やはり本書だけではわかりにくいところも多くあると思う。それを補えるような各分野の代表的な良書を上げてあればなお良かったと思った。 -
Posted by ブクログ
ノーベル賞受賞者のポール•ナース氏が、細胞、遺伝子、自然淘汰、化学、情報の観点から生命の機構を説明した本。多角的な視点から生命を捉えたあとに、以下の3つを生命の条件としている(and条件):
①遺伝システムを複製しそれが変化する
②境界をもつ物理的存在である
③自ら代謝を構築し維持•成長•再生する
このあたりが興味深く、ウィルスは③が当てはまらない。では、AIはどうだろうか?今後、AIにより上記三つを満たす存在が現れる可能性は十分ある気がする。その時、何をもって生命とするかが活発に議論されるのかもしれない。
個人的には原初の生物から情報とエネルギーが連鎖していることにロマンを感じる。多角的に生物の構造を教えてくれる面白い本だった。
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Posted by ブクログ
地球では、無生物から生物への変化が1回だけ起こったか、地球外の宇宙空間の何処かから生命がもたらされた。
それが進化して現在の地球上の生物になっている。
宇宙を過去に遡っていくと、ビックバンが起こる直前の1点に行きつくように、
地球上の全生物を過去に遡ると、1つの最初の生物にたどり着く(らしい)。
現生物と異なる起源を持つ生命体も生まれたのかも知れないが、痕跡は残っていないということだ。
私は、中途半端に物理なんぞを勉強したせいか、生命の存在が不思議でならない。
生物の存在そのものが、熱力学の第2法則に反しているとしか考えられない。
時間と共に秩序だった状態から無秩序な状態に向かうエントロピー増大の法則の真逆だ。
生物は細胞でできているとか言われても、もっと細かく見れば分子の集まりで、要するに原子からできている。
生き物が持っている"遺伝子"だって物理と化学の法則に従う安定した原子の集まりにすぎない。
生き物は死ぬ。
死ぬ瞬間というのはないかも知れないが、死ぬ前と後で何が違うのか不思議だと思う。
身体を構成している原子の集まりとして見れば同じではないのか?
本書「生命とは何か」は、今だに正確な定義もなく謎だらけの"生物"について考えてみようという本だ。
図や絵が欲しいと思ったが、学術書ではなくエッセイみたいな内容なのでこれで良いのだろう。
特に目新しい情報はなく、これまで"生命"の謎についてあまり考えたことがない人向けのようだ。
著者は、「進化する能力を備えるもの」が生物であると定義している。
そのためには「生殖」「遺伝システム」「遺伝システムの変動」の3つの特性が必要と言っている。
こう定義されると、最初の生物はどの時点で生物とみなされるのかが気になる。
無生物から生物になる瞬間については、いろんな説があるがどれも納得できない。
スタップ細胞と同じで、再現できないものは認めるわけにはいかない。
最近やっと悟ったことがある。
生きていると、どこかしらガタがくる。
血圧が高くなったり、骨や筋肉が弱ったり、内臓もどこかしら調子が悪くなったり。
プログラムされた「遺伝システム」で、いつか生き物は死ぬようにできている。
何らかの病名を付けられて死ぬ。
生物にとっては "生きていること" 自体が(熱力学の第2法則に反しているという)病気なのだ。