ジュリアフィリップスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最後の二章はもう夢中で読んで、読み終わってから、大きな大きなため息が出た…
読みながら、映画「ウインドリバー」のことを思い出していた。
本作もウインドリバーも、先住民がどんな思いで生きてきたか、垣間見ることができる。
ああ、でも、あまりに感情が揺さぶられ、いろんな感情が浮かんで来ては、また別の感情に上書きされ、とても感想を書ききれない。
先住民だから、白人だから、同性愛者だから、地元の人じゃないから、若いから、女性だから、病気だから、母子家庭だから、子供がいるから、いろんなレッテルを貼られてそれぞれが苦しんで、何かを失っている。
これはカムチャツカ半島に限らず、地球上で広く起きてることだ -
Posted by ブクログ
カムチャツカ半島で起きた幼い姉妹の失踪事件。そこから波紋が広がっていくように周囲の女性たちの暮らしが描かれる。みんな何かを消失していて、でも何を失ったのか分からないままずっと何かを探しているよう。日常の中に溶け込んだ悲しみと刺すような痛みが淡々と描かれていて、それが美しいほど涙が出てくる。5月と6月は読んでて特につらかった。2月も。9月と12月は描写がとても美しいと思った。
スラブ系と先住民の間にある不信感、偏見。偉大だったソ連時代を懐かしむ声。社会に根強く残る腐敗。都会と村の格差。少しずつ、何かを削り取られる女たち。これらが何気なく、でもきちんと織り込まれていて、あとがきを読むと、筆者が被害 -
購入済み
女性にお勧め
二人の姉妹の誘拐事件から始まるオムニバス形式の物語。
性差別や人種差別、都会と田舎の隔たりなど、誰もが少なからず感じたことのある差別意識や劣等感を
描いた作品です。
友人の勧めで読み始めました。
とても面白いのですがどこか暗く重たい雰囲気でなかなか読み進められませんでしたが、大変面白かったです。 -
Posted by ブクログ
「生きてゆく」ということは、
「いくつもの大切なものが失われてゆくのを見届ける」
という、絶望との戦いだ。
あり得たはずの未来が失われ、
見つけられなくなってしまう、
そんな毎日のつらさに抗い、
目を瞑らずに立ち向かう、
究極の強さだ。
それでもどうにか進んでゆく。
それこそが人生だ。
と認識させられた。
カムチャッカに生きる人たちの物語。
その薄暗くて、寒くて、過酷な土地で暮らす女性たちの物語。
幼い姉妹が消えた8月に始まり、
月ごとに紡がれてゆくストーリー構成もおもしろい。
慣れないロシア名前の登場人物たちもそれぞれに描かれているため、すっと入ってくる。
そしてループのように繋が -
Posted by ブクログ
2人の子供の誘拐事件からカムチャツカ、ミステリー、ロシア、自然、閉塞感、民族、女性、家族、様々な要素が全体的に静かなトーンで語られていく。少しづつ異なる視点の登場人物が広大な半島の中で少しづつつながり合いながらそれぞれの悩みに向き合いなんとか日々を生き残っていく。単純な幸せなんていうものは誰にも存在しない。厳しい自然の力の中では肩を寄せ合って生きていくしかないはずの人間たちなのにその中でも隔たりは大きく本当は近くで支え合うはずの家族でさえも気持ちは近くにとどまることができない。それでも先住民の伝説のように太陽は生まれ変り世界は続いていく。
とても重層的で奥行きの深い作品。犯罪を軸に話が展開する -
Posted by ブクログ
幼い姉妹が行方不明になった街。連作短編のように語られていく、そこで暮らす12人の“彼女たち”の人生、生活。解決しない問題やこびり付いて剥がすことの出来ない思い悩み、不安、悲しみ。小さな喜び。世界、社会が押し付けてくるままならなさ。傷と痛み。それぞれの小さな物語。それらは少しづつ重なり合い紡がれて、大切に掬い上げられた彼女たちの小さい物語をたしかに残したまま、ひとつの街、土地の、あるいは女性たちの物語として先へと伸びて行く。その先はページが尽きても開かれているけれど、希望の光は見えている。たしかに。
彼女たちの人生、生活、物語に共感し、多分感情移入もしている。もしかしたら身近にも感じていたかも