ジュリアフィリップスのレビュー一覧

  • 消失の惑星【ほし】

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    最後の二章はもう夢中で読んで、読み終わってから、大きな大きなため息が出た…

    読みながら、映画「ウインドリバー」のことを思い出していた。
    本作もウインドリバーも、先住民がどんな思いで生きてきたか、垣間見ることができる。

    ああ、でも、あまりに感情が揺さぶられ、いろんな感情が浮かんで来ては、また別の感情に上書きされ、とても感想を書ききれない。

    先住民だから、白人だから、同性愛者だから、地元の人じゃないから、若いから、女性だから、病気だから、母子家庭だから、子供がいるから、いろんなレッテルを貼られてそれぞれが苦しんで、何かを失っている。
    これはカムチャツカ半島に限らず、地球上で広く起きてることだ

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    2023年02月11日
  • 消失の惑星【ほし】

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    2人の少女の失踪をきっかけにカムチャッカ半島に住む女性たちの虚しさや悲しみが11カ月に渡って語られる。カムチャッカ半島には本土との陸路はなく、島を出るには飛行機か船という閉鎖的な空間。そして女性の立場の弱さや先住民に対する差別的意識もあり登場する女性たちの生きづらさが伝わる。これから先生活がましになることはないと確信しながらも、生きていかなくてはならない人々。最後の章では少女たちが助かったとも取れるし、読み手に任せているところが良かった。リリヤが自分から失踪したのでなければ、心が救われる人もいるとおもう。

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    2022年11月27日
  • 消失の惑星【ほし】

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    カムチャツカ半島で起きた幼い姉妹の失踪事件。そこから波紋が広がっていくように周囲の女性たちの暮らしが描かれる。みんな何かを消失していて、でも何を失ったのか分からないままずっと何かを探しているよう。日常の中に溶け込んだ悲しみと刺すような痛みが淡々と描かれていて、それが美しいほど涙が出てくる。5月と6月は読んでて特につらかった。2月も。9月と12月は描写がとても美しいと思った。
    スラブ系と先住民の間にある不信感、偏見。偉大だったソ連時代を懐かしむ声。社会に根強く残る腐敗。都会と村の格差。少しずつ、何かを削り取られる女たち。これらが何気なく、でもきちんと織り込まれていて、あとがきを読むと、筆者が被害

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    2022年11月21日
  • 消失の惑星【ほし】

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    ネタバレ

    読んでるうちにどんどん息苦しくなって一回本を閉じてしまった。女性としての自分に突き刺ささりすぎる内容だった。ラストについては、色んなサイトのレビューを読んで、人によって解釈が違うんだと驚いた。自分と同じ解釈の人もいたけど、まったく違う解釈もあって面白い。
    二月のレヴミーラの話が個人的に一番刺さる話だった。夫が愛しくなった。

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    2022年02月09日
  • 消失の惑星【ほし】

    購入済み

    女性にお勧め

    二人の姉妹の誘拐事件から始まるオムニバス形式の物語。
    性差別や人種差別、都会と田舎の隔たりなど、誰もが少なからず感じたことのある差別意識や劣等感を
    描いた作品です。

    友人の勧めで読み始めました。
    とても面白いのですがどこか暗く重たい雰囲気でなかなか読み進められませんでしたが、大変面白かったです。

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    2021年11月16日
  • 消失の惑星【ほし】

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    「生きてゆく」ということは、
    「いくつもの大切なものが失われてゆくのを見届ける」
    という、絶望との戦いだ。

    あり得たはずの未来が失われ、
    見つけられなくなってしまう、
    そんな毎日のつらさに抗い、
    目を瞑らずに立ち向かう、
    究極の強さだ。

    それでもどうにか進んでゆく。
    それこそが人生だ。
    と認識させられた。


    カムチャッカに生きる人たちの物語。
    その薄暗くて、寒くて、過酷な土地で暮らす女性たちの物語。

    幼い姉妹が消えた8月に始まり、
    月ごとに紡がれてゆくストーリー構成もおもしろい。
    慣れないロシア名前の登場人物たちもそれぞれに描かれているため、すっと入ってくる。
    そしてループのように繋が

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    2021年10月28日
  • 消失の惑星【ほし】

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    途中までは登場人物や街の名前、場所を何度も最初のページに戻って確認しながら慎重に読み進める。夏休みから始まった物語は年を越し、お互いに接点のなかった彼女、彼等が少しずつ重なり始めてからのスピード感と驚き。
    米国生まれの著者がロシア留学時代に訪れて着想を得たという景色を想像しながら、訳者あとがき、「カムチャッカ半島案内」を堪能しました。おもしろかった。

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    2021年08月15日
  • 消失の惑星【ほし】

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    2人の子供の誘拐事件からカムチャツカ、ミステリー、ロシア、自然、閉塞感、民族、女性、家族、様々な要素が全体的に静かなトーンで語られていく。少しづつ異なる視点の登場人物が広大な半島の中で少しづつつながり合いながらそれぞれの悩みに向き合いなんとか日々を生き残っていく。単純な幸せなんていうものは誰にも存在しない。厳しい自然の力の中では肩を寄せ合って生きていくしかないはずの人間たちなのにその中でも隔たりは大きく本当は近くで支え合うはずの家族でさえも気持ちは近くにとどまることができない。それでも先住民の伝説のように太陽は生まれ変り世界は続いていく。
    とても重層的で奥行きの深い作品。犯罪を軸に話が展開する

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    2021年05月23日
  • 消失の惑星【ほし】

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    二人の少女が誘拐事件がバタフライ効果のようにさまざまな女性の生き方に変化を与えます。登場する女性たちは、みんなそれぞれの形で苦しみを抱えています。カムチャッカの豊かでありながらも過酷な環境の描写や女性たちの心的描写がとても丁寧に書かれていると思います。本の手触りがとても良いのでそれも含めて星5つです!

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    2021年03月21日
  • 消失の惑星【ほし】

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    幼い姉妹の失踪から始まる物語。だけどその事件のことはあまり語られず一章ずつ語り手を変えながらその人物の生活、不安、怒り、悲しみが描かれていく。失踪のことは語られないけれど常にその空気は感じられて読み手も不安なまま読み進めていく。その緊張感に圧倒される。何かを、誰かを失うということの痛みや悲しみが迫ってくる終盤は苦しくなるほどでなかなか冷静には読めないほどだった。久々に深く入り込んで読んだ感覚があった。

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    2021年03月02日
  • 消失の惑星【ほし】

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    幼い姉妹の失踪から始まり、まずはみっしりとした不安感に覆われる。しかし読み進むうちに、それも物語の断片であって、登場人物の誰もが、さびれた極寒の地で閉塞感や失望や喪失感を抱えて生きていることがわかってくる。群像劇から浮かび上がってくる、民族や貧困や女性の現況。

    被害者が「消費されやすいことを警戒」する筆者の姿勢は、失踪や犯罪の物語とは明らかに一線を画している。
    暗く陰鬱なトーンでありながら、遠い奥底に、人の強さも感じられる気がする。
    私は『二月』に最も掴まれた。

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    2021年02月25日
  • 消失の惑星【ほし】

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    すごく息苦しい内容だった。
    ロシア東部のカムチャツカ半島という遠い国が舞台でありながら、多くの共感できる部分がありました。
    幼い姉妹が行方不明になったことを発端に、半島中の女性たちの影の部分が明らかになっていく。先住民族や同性愛への差別、ウクライナへの侵攻が始まっている時期。
    カムチャツカの女性でなくても、誰でもそのような境遇になる可能性を感じられて苦しくて怖かった。

    クライマックスに向けてページを早く捲りたい気持ちがとてもはやりました。

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    2025年10月01日
  • 消失の惑星【ほし】

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    カムチャッカ半島に関してあまり知識がなかったので、地名が挙がるたびにマップを検索して街並みを見るのがとても刺激的だった。ツンドラに塞がれた陸の孤島とか、伝承のような過去の災害の記憶とか、遠いどこかの物語は、遠さゆえにこちら側の寂しさも共振させるよう。

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    2025年09月28日
  • 消失の惑星【ほし】

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    幼い姉妹が行方不明になった街。連作短編のように語られていく、そこで暮らす12人の“彼女たち”の人生、生活。解決しない問題やこびり付いて剥がすことの出来ない思い悩み、不安、悲しみ。小さな喜び。世界、社会が押し付けてくるままならなさ。傷と痛み。それぞれの小さな物語。それらは少しづつ重なり合い紡がれて、大切に掬い上げられた彼女たちの小さい物語をたしかに残したまま、ひとつの街、土地の、あるいは女性たちの物語として先へと伸びて行く。その先はページが尽きても開かれているけれど、希望の光は見えている。たしかに。

    彼女たちの人生、生活、物語に共感し、多分感情移入もしている。もしかしたら身近にも感じていたかも

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    2025年01月30日
  • 消失の惑星【ほし】

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    言い回しや表現が素晴らしかった。訳者によるものか作者によるものか不明だが。
    カムチャッカ先住民とロシア人、女性と男性、田舎と都会。排他的な差別が描かれていた。
    様々な女性のオムニバスのような形で話が進み、それぞれが抱えている孤独がうまく表現されていた。

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    2023年12月15日
  • 消失の惑星【ほし】

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    誘拐事件の解決ドラマと思いきや、事件が起こった町で生きる人々の話

    ソ連時代と現在の世代間の分断、先住民族と白人との分断

    とても作者が同年代と思えないほど、語り手一人ひとりの生活が丹念に描かれている

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    2023年10月10日
  • 消失の惑星【ほし】

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    ネタバレ

    小説を読んでこんなに心が痛むのははじめてだった。ある意味ではハッピーエンド的な終わり方かもしれないけれど、リリヤ、ソフィヤ、アリョーナその後のことを考えるとまた苦しくなる。3人の母親だってきっと手放しには幸せを謳歌できない。犯罪の被害に遭うこと、そのことで残る痛みまで想像させる。

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    2023年06月17日
  • 消失の惑星【ほし】

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    ネタバレ

    良い点。題材にしている部分が面白い。ロシアの半島が舞台で、民族差別や性差別があり、それといなくなった姉妹に対する周りのリアクションを描く、という目線が面白い。

    悪い点。デビュー作なので、少し何を書いているか分かりづらい部分はあった。また、登場人物が年寄りは小言が多く、男は下品かアホで、女はそれなりに聡明で自立しているみたいな感じで、幅が少なかった。それもあり、少し途中でダレていた。

    ”異常”といい、こういう作品のスタイルが流行っているのかな。何か事件があって、それを囲む複数の人間の人生を描く的な。

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    2023年04月15日
  • 消失の惑星【ほし】

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    性別や人種の産まれもった苦しみ、集団への不満、そこで働く人々の苦悩、性的マイノリティ、消失と絶望の決して終わらない日々、などなど私たちに呪いのように付き纏う生きづらさ。

    群像劇チックではあるが、
    特に交わらない登場人物がほとんどだし、全ての章にオチを持ってこないという構成が永い時間の残酷さと希望を表している。

    ただ、その締め方が後半になるまで予想できず、
    半端なままにどんどん増えてくるばかりの登場人物に少しストレスを感じてしまったので、2周目以降が1番楽しめそうではある。

    日本も地震と島国という点で、この舞台と通ずる何かがあるはず。

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    2023年01月09日
  • 消失の惑星【ほし】

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    カムチャッカを舞台に、複数の女性を月ごとに主人公にした小説。
    とっかかりは幼い姉妹の失踪事件だが、事件の解決とかはあまり重きは置いてなく、土地ならではの閉塞感が女性の視点で描かれる。原住民、有色者への蔑視も見え隠れして、重厚だった。

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    2022年10月18日